新連載『神戸アリーナプロジェクトを動かす人々』ーー2025年4月誕生「GLION ARENA KOBE」の“中身”を考えるキーパーソンたちは、いったいどんな仕事をしているのか
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2025年4月に神戸市で開業する大型アリーナ「GLION ARENA KOBE(ジーライオンアリーナコウベ)」。アリーナの位置する新港第二突堤エリア「TOTTEI」では、屋外イベントが開催されるTOTTEI PARKやレストランやカフェなどがオープン予定で、365日にぎわいが生まれるエリアに整備される。270度が海で囲まれた日本初の「水辺のアリーナ」で、関西最大級となる1万人収容のビッグキャパを誇る同アリーナには、いったいどんなアーティストらが訪れ、またどんなイベントが開催されるのか。
誰もが気になる“中身”の部分を日々詰めているのが「神戸アリーナプロジェクト」である。SPICEでは同プロジェクトに密着し、それぞれ担当業務の内容、さらにはパーソナルな部分にもスポットをあて、深く掘り下げる企画『神戸アリーナプロジェクトを動かす人々』を始動。
第一回目となる今回は、同プロジェクトのコーポレートセールスDivisionイベントセールスグループに所属する、谷口正一郎グループリーダー、松野嵩チームリーダー、鈴木優香チームリーダーにインタビュー。
3名は神戸アリーナプロジェクトでどういった仕事をしているのか、そしていかなるパーソナリティの持ち主なのか、じっくり話を訊いた。
●「関西のエンタメシーンに大きな伸びしろを感じました」
左から松野嵩 チームリーダー、谷口正一郎 グループリーダー、鈴木優香 チームリーダー
――まず、みなさんの現在の仕事内容とこれまでの経歴を教えてください。
谷口:我々3名は「GLION ARENA KOBE」の貸館窓口として、興行主様、主催者様と向き合って仕事をしています。私の担当は営業全般で、同アリーナの情報を発信しています。私自身前職では『東京2020組織委員会』(※註1)でベニューマネジメント、イベントサービス(※註2)を担当していました。また、かつてはコンサートのイベンターとして音楽興行に接した職歴もあります。
※註1…『東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会』
※註2…競技会場の運営
松野:私は法人のコンベンション、MICE(※註3)を担当しています。前職は旅行代理店で、同じく法人のMICE関係を担当していました。
※註3…企業、学校などの式典、表彰式、会議、総会、学会の主催
鈴木:私は関西のプロモーター、イベンターに「GLION ARENA KOBE」に関する営業をおこない、スケジュールを各社と調整する役割を担当しています。前職は、
谷口正一郎 グループリーダー
――神戸アリーナプロジェクトに参加するキッカケは何だったのですか。
谷口:私はこれまで東京に住んでいました。その当時は、自分の知識不足もあるのですが、関西のコンサート会場は数えられるほどしか思い浮かびませんでした。ただそこに「GLION ARENA KOBE」が加わることで、関西のエンタメのマーケットや認知がより高まるんじゃないかと期待し、参加しました。つまり関西に大きな伸びしろを感じたのです。今後、東京以外の場所からもどんどんムーブメントが起こっていくのではないかと。
松野:私は転職サイトに登録していたところ、谷口から声をかけてもらいました。今までの仕事では会場を借り、お客様をお連れして催しをおこなうのが役目でしたが、貸す側にまわることで、これまで経験したことがない仕事に携われる部分に魅力を感じたんです。そうすることで、企業様などに、周年パーティほか、さまざまなことをより具体的に提案できるようになります。
谷口:会場の平日稼働は今後の課題の一つで、MICEの需要は確実にあります。松野はそのエキスパートなので「一緒にやりませんか」と伝えました。
鈴木:私は東京で前職に就いていましたが、谷口同様、関西の“ハコ不足”は感じていました。そんな中、神戸に大きなアリーナが誕生することを聞きました。そこで「たくさんの方がエンタメに触れる機会がより増えるはず。その立ち上げに参加したい」という意欲が湧きました。「GLION ARENA KOBE」が開業すれば、関西はきっとイベントの質・量的にもさらに充実したものになると思います。そういうキッカケを作りたいというのが、プロジェクトに参加した動機です。
●海外アーティスト、eスポーツ、関西で頑張るミュージシャン……それぞれが語る“夢”のブッキング
左から松野嵩 チームリーダー、谷口正一郎 グループリーダー、鈴木優香 チームリーダー
――これまでのみなさんの経験がアリーナの運用に活かされると思いますが、同時に非常に重要なのが、それぞれのエンタメ体験ではないでしょうか。これまでの実体験から得た興奮こそが、新たなアリーナに必要な要素ではないかと。
谷口:私は、海外アーティスト公演を積極的に招致したいです。自分が印象に残っている音楽ライブは、2017年におこなわれたアデルのイギリスでの“ツアー引退公演”です。あと個人的な願望を言えば、「GLION ARENA KOBE」でマギー・ロジャースのパフォーマンスを観てみたいです。アメリカではブレイクしていますが、その熱を日本にも持ち込みたい。ぜひ「GLION ARENA KOBE」を含めたジャパンツアーをやって欲しいですね。
提供=One Bright KOBE
松野:私はeスポーツの大きな大会を招致したいです。現在のeスポーツは、日本と海外では雰囲気に違いがあります。前職でお客様をロサンゼルスへお連れしたときにeスポーツを観たのですが、ものすごいライブ感でした。まさにスポーツのようで、ゲームの概念が覆され「こういうイベントを日本にも引っ張ってきたい」と感じました。日本ではまだまだ選手のプレーをお客様がじっくり鑑賞するような雰囲気なので、当時体験したあの熱狂を再現したい。あとeスポーツの大会を開催するとコアなファンが訪れるので、神戸という街の飲食関係の需要がふくらむことが予想されます。街とコラボをしてオリジナルグッズを作るのも、良いかもしれません。
鈴木優香 チームリーダー
鈴木:私は、ユーミンさん(松任谷由実)の50周年記念ツアー『THE JOURNEY 50TH ANNIVERSARY コンサートツアー』を拝見し、アリーナでできる最大限の演出の数々に感動を覚えました。ちなみにアリーナの良さは、シンプルな演出から凝った演出まで幅広い仕掛けができるところ。「GLION ARENA KOBE」も、様々なジャンルのアーティストの要望に応えられるアリーナにしたいと思っています。私自身の願いは、関西で頑張っているアーティストにとって「いつか「GLION ARENA KOBE」のステージに立ちたい」という目標になることです。あと会場内で開かれるイベントだけではなく、会場の外のパークエリア(TOTTEI PARK)もお店などが充実しているので、お客様も「行きたい」と思っていただける場所になるのではないでしょうか。多様なアーティストのライブが行われ、各地から遠征で来られる方が増えることで、神戸の街全体が盛り上がる気がします。
谷口:鈴木、松野がお話ししたように、「GLION ARENA KOBE」は会場での興行だけではなく、都市づくり、街の整備の一端を担う役割も期待できます。このプロジェクトは、再開発が進んでいる各地と同様に、関西の盛り上げ役になるはずです。2025年の『EXPO 2025 大阪・関西万博』を機に関西がもっと潤っていくイメージもあります。そこに「GLION ARENA KOBE」が加わり、さらに発展していくことを期待しています。
松野嵩 チームリーダー
松野:『EXPO 2025 大阪・関西万博』の開催と、「GLION ARENA KOBE」の開業が重なる2025年は、関西にとって一つの重要な分岐点になるようにも感じられます。それを自分自身が体験してみて、どういうものかを感じた上で、将来的なIR(※註4)に期待しています。そのために「アリーナを使ったMICE関係であれば、GLION ARENA KOBE」というイメージを付けていきたいです。
※註4…カジノ構想のIntegrated Resort
鈴木:現在も関西は、海外の方がたくさん訪れる場所です。2025年の『EXPO 2025 大阪・関西万博』で、より賑わうと思います。その賑わいは、2025年に「GLION ARENA KOBE」をホームとする男子プロバスケットボールクラブ、神戸ストークス(B.LEAGUE)にも好影響を与えると思います。というのも、神戸ストークスのホームーゲームにはすでに多くの海外の方が観戦に訪れているからです。神戸は様々な人が楽しめる街であり、海外のお客様も神戸を好きになるはず。そんな神戸の街を象徴する「GLION ARENA KOBE」の立ち上げ業務は楽しくもあり、一方で重大な責任を感じてもいます。どうすれば皆様に喜んでいただけるかを一生懸命考えているので、開業を楽しみにしていただきたいです。
提供=One Bright KOBE
取材・文=田辺ユウキ 撮影=川井美波
会場情報
敷地面積:約23,700㎡
延床面積:約32,300㎡
階数:7階
収容客数:約10,000人
構造:鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造
竣工時期:2025年2月(予定)
開業時期:2025年4月(予定)
土地所有者:神戸市
建物所有者:NTT都市開発
運営会社:One Bright KOBE
設計・施工会社:大林組
コンストラクションマネジメント会社:山下PMC