岸本加世子、北野組は「忘れられない一座」――40年ぶりの舞台は前川 清&藤山直美主演の旅一座ドタバタ劇『だいこん役者』
岸本加世子 撮影=髙村直希
6月1日(土)より8年ぶりに新歌舞伎座にて上演される舞台『だいこん役者』。2016年7月に大阪・新歌舞伎座で誕生し、藤山直美主演で上演したオリジナル作品で、今回、スタッフ・キャストを一新。新たな息吹がもたらされた。
同作は、前川清演じる座長の川上恋次郎と、藤山演じる恋次郎の女房・唄子ら一座が、和歌山・白浜を舞台に巻き起こすドタバタ劇だ。恋次郎の劇団員役として岸本加世子、山田まりやらが出演する。前川、藤山、田畑智子、山田、米原幸佑、岸本が登壇した制作発表では、稽古前にも関わらず和気あいあいとした雰囲気を醸し出しており、この座組の相性の良さを物語っていた。
劇団員の津村多恵役を担う岸本は、本作で40年ぶりの舞台出演となる。ドラマや映画など、数々の名作に出演している岸本。中でも『HANA-BI』や『菊次郎の夏』など北野武監督作品にも欠かせない存在だ。「忘れられない一座」として挙げた北野組について、また、本作に向けての意気込みなどを聞いた。
岸本加世子
――今回は旅一座の物語ですが、岸本さんにとって忘れられない座組はありますか?
長いことやっているので沢山あるのですが、唯一無二というのはやっぱり北野組です。他の監督と全てが違います。まず、俳優さんに演技を求めない。セリフもその日に変わる。「台本を覚えてこないで」というところから始まります。
――「台本はちゃんと覚えるもの」というイメージがあるので、それは戸惑いそうですね。
「自分はこうやってこの役を作ってきました」「こういうアイディアでこの役をやりたいと思います」みたいなものは要らないよと。素で撮影に入っていました。そんな北野組の経験は大きかったですね。
――『だいこん役者』で40年ぶりの舞台出演になりますね。
10代終わりから20代くらいは森光子さんの舞台に何作か出させていただいたのですが、スケジュールが合わなくてお断りしているうちに、だんだん舞台から遠ざかってしまって。気が付けば40年という時間が経ってしまいました。
――森光子さんとは舞台『放浪記』で共演されました。当時、レジェンドの先輩方との共演は、どんな経験をもたらしたでしょうか?
間(ま)とか声色とかは、直にやりとりさせてもらえないと(自分の中に)入ってこないものだなと思いました。映像で観るだけでは、そういうことは入ってきません。ありがたいことに、共演させていただくことで自然と学ばせていただきました。
岸本加世子
――岸本さんがお芝居で最も心がけていることは何ですか?
役の心情です。特に舞台は、日によってアドリブが飛んできたりと、様々ですが、それらを楽しみながらも、根底では役の心情から外れないようにしようと思っています。
――藤山直美さんとはドラマでの共演経験もおありですが、藤山さんからはどんな刺激を受けますか?
本当に唯一無二、芸筋が一本、スッと通った素敵な女優さんなので、一挙手一投足に惚れ惚れしてしまいますね。今回も学ばせていただきたいと思います。
取材・文=岩本和子 撮影=髙村直希