まだ間に合う!極上の体験への誘い 『ティファニー ワンダー』展でうっとりしよう
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『ティファニー ワンダー』展(エキシビション『ティファニー ワンダー』技と創造の187年)
最近、何かにうっとりしただろうか。驚き、ため息をつき、その日の夢に見るような鮮烈な憧れを、何かに抱いただろうか。
エントランスで来場者を出迎える、巨大なティファニー ブルー ボックスとバード
本記事は、虎ノ門ヒルズ ステーションタワー45階にある「TOKYO NODE」にて2024年6月23日(日)まで開催中の『ティファニー ワンダー』展の鑑賞レポートである。ホームページなど資料を見ると『エキシビション ティファニー ワンダー』が正式なイベントタイトルのようだが、敬意を込め美術館風に『展』と紹介したい。正直言って、ラグジュアリー宝飾ブランドのプロモーション展示会、くらいに捉えていたのだが(申し訳ありません)、実際の印象は全然違った。これは明らかに美術展である。ジュエリーは単に身を飾るものではなく、貴石・貴金属を素材とした超小型彫刻でもある。恥ずかしながら、本展を鑑賞して初めてそのことに気がついた。
会場エントランスのロゴ。TIFFANYのネオンもティファニーブルー!
日本では約17年ぶりとなる大型の展覧会ということで、500点以上の展示作品うち半数以上が日本初公開作品となるそうだ。会場を巡れば、ゴロリとこぼれ出すような極上の宝石たち、そして優美かつ、ときにユーモラスなデザインに目を奪われて、あっという間に時間が溶けること間違いなしだ。また作品だけでなく、ティファニーの歴史や職人魂、セレブたちとの関わり、ウィンドウディスプレーの傑作などについても触れることもでき、高い知名度を誇る「ティファニー」というブランドを多角的に捉え直す、非常に充実した内容となっている。
ブランドを象徴するイメージをスタイリッシュに交錯させた、本展オリジナルのオープニングムービーは必見
何はともあれ、その見どころの一部を紹介していこう。問答無用に“凄いもの”と出会うと、人は誰かに伝えたくなるものなのである。
織り上げられたキラキラの歴史
展示風景 壁一面にティファニーの歴史を織り上げたジャカード織のタペストリーが張られている
ティファニーの創業は1837年。日本で言うなら江戸時代後期、大塩平八郎の乱が起きていた頃である。冒頭では年代順に、創業当時の現金出納帳などの貴重な資料や、歴史を作ってきた傑作ジュエリーの展示を見ることができる。
展示風景
例えば、左はティファニー ブルー ボックスの最初期のもの。今でこそ商標登録され、ティファニーの代名詞となっているあのカラーだが、 当初はまだ色が定まっていなかったのだとか。なんだか新鮮である。
展示風景
展示ケースの中はどれも、ジュエリーが反射する無数の光の粒でプラネタリウムのよう。
決して販売されることの無い至宝《ザ ティファニー ダイヤモンド》を筆頭に、ティファニーアーカイブの名品や、各方面から借りたという逸品の集まる貴重な機会。これは価値がつけられないほどの催しなのだとしみじみ感じた。
展覧会をもっともっと楽しむために
AR体験中。バード オン マイ ハンドである
会場を巡っていると、ところどころで見つけるQRコード。こちらをスマートフォンなどで読み取ると、オリジナルのAR体験を楽しむことができる。キラキラの小鳥が手元にダイヤのかけらを振りまいてくれて、なんだか嬉しい。会場エントランスにも居たこの鳥は一体何ものか、というと……。
(C)Tiffany&Co.
ティファニーの伝説的デザイナー、ジャン・シュランバージェの代表作のひとつ《バード オン ア ロック ブローチ》を見つけた。ちなみに着想源はオウムなのだそう。喜び、自由、希望を象徴するというこのデザインは様々な宝石のバージョンで制作されており、筆者は本展中でこの鳥を10羽ほど見つけた。もっといるかもしれないので、会場で探してみるのも面白いかもしれない。
展示風景 こちらの壁面ももちろんジャカード織り
なお本展の会場デザインは、ニューヨークのティファニー本店「ザ ランドマーク」のリニューアルにも携わった建築設計事務所OMAが手掛けている(会場である虎ノ門ヒルズ ステーションタワーも然り)。美意識とこだわりを強く感じさせる空間づくりも、展示と併せて注目したいポイントである。
まさに創造性と技術の結晶
さらに奥へ進むと、デザイナーごとの作品展示空間が広がっている。レジェンドのジャン・シュランバージェを筆頭に、各時代をリードしてきたデザイナーたちによる個性豊かなジュエリーが勢揃いだ。
展示風景
まず注目は、創業者の息子でありデザイナーのルイス・コンフォート・ティファニーによる《メドゥーサ ペンダント》だ。渦巻く触手のようなゴールドと、オパールの揺らめく光が妖しい魅力を放っている。こちらは紛失→発見を経て、本展が日本初公開の場となるそうな。
展示風景
約715ctという衝撃的な大きさを誇るクンツァイトのネックレスは、画家ピカソの娘であるパロマ・ピカソによるデザイン。この大きさはぜひ会場で実際に見てほしい。紫がかったピンク色の宝石クンツァイトは、ティファニーの宝石鑑定士だったクンツ博士が発見し、自身の名前をつけたものである。
展示風景 石留め職人のブース
展示室の両サイドにはティファニーの職人が常駐し、「石留め」と「ハンドエングレービング(手彫り)」の実演を行っている。改めて、ジュエリーとは大自然×アーティスト×クラフトマンの合作であり、こんな小さなものの中にどれほどの魂が込められているのかと感動を覚える。いや、クンツァイトは結構大きかったけれども。
知るほどに深い日本との絆
展示風景 ショーケースの真っ赤なフレーム部分は、本物の漆で仕上げられている
まるで障子越しのような柔らかい光に包まれたゾーンは、ティファニーの「日本への愛」をテーマにした一角だ。日本での展覧会だから特別に用意されたエリアなのかな……と思いきや、日本美術や伝統工芸品からの影響を見て取れる作品が並んでいて驚く。衣紋掛け(写真奥)にはさりげなく、真っ赤な漆塗りの《オープン ハート》がぶら下がっているので、これはぜひ現地にて確認してほしい。日本の文化や素材を好んだという、デザイナーのエルサ・ペレッティによるものだそうだ。
展示風景
ルイス・コンフォート・ティファニーの《ポニー ウィステリア テーブルランプ》は藤の花をモチーフにした傑作デザイン。実際に見るとコロンとした形状が絶妙で、可愛さに悶絶である。曲線的なデザインは、アメリカにおけるアール・ヌーヴォーの旗手と言われた同デザイナーのオーガニックな美意識を十全に伝えている。
洒落っ気全開。物語を語りかけるウィンドウ
展示風景 中央の通路を挟んで左右に小ブースが並び、それぞれの世界が綺麗に独立するように工夫されている
ここで展示はガラッと雰囲気を変えて、ティファニー本店のウィンドウディスプレーの数々を再現したエリアへ。足を踏み入れた瞬間、奥へ奥へと誘われる不思議な印象を受ける空間だ。
(C)Tiffany&Co.
例えばこのウィンドウでは、淡いブルーの宝石(アクアマリン)が氷ハサミにつままれた姿で展示されている。まるで巨大なロックアイスから取り出したかのようだ。写真ではちょっと見づらいが、ウィンドウの四隅も霜が降りたように装飾されていて、遊び心いっぱいである。
展示風景
個人的に気になったのはこちら。2匹のサイのオブジェの角を使って展示された華麗なバングル。現代アートのようなシュールな佇まいだ。
展示風景
突き当たりには、本展のために用意された特別な扇形ショーケースが。ジャン・シュランバージェ《ドルフィン ブローチ》の背景に、富士山や桜、花火といった日本の美が次々と現れては移り変わってゆく。和のモチーフと調和して、ドルフィンがまるでシャチホコか鯉のぼりのように見えて来るから不思議だ。
ちょっと回って映画でも……
続いての展示室のテーマは「ティファニーで朝食を」。著作権の都合上全景を撮れないので、ルーム中央に設えられた座席の写真でイメージをお伝えしたい。ご覧の通り、映画館である!
展示風景 ぐるりと360°の展示を楽しめるシネマチェア
しかもこの十数席は回転盆に載っており、ゆっくりと360°を見回すことができるという。周囲で展開されるのは、ティファニーがジュエリーを提供した映画の名シーンや、映画にまつわる貴重な資料の数々。『ティファニーで朝食を』でオードリー・ヘップバーンが着用したドレスや帽子、オスカー像まで見ることができるのは、ファンならずともたまらないポイントだ。
映画に音楽、各界のスターたちとともに
さらに奥へ進もう。ティファニーが制作した数々の優勝カップ・トロフィーの展示を経て(本展のため各スポーツの優勝チームらから借りてきたというからすごい)、来場者を待つのは、名だたる映画スターやアーティストが身につけてきたティファニー作品だ。
展示風景
左はライザ・ミネリが愛用したという《ボーン カフ》、右はマリリン・モンローが映画『紳士は金髪がお好き』で着用したリングとブレスレット。会場では着用した著名人の写真パネルが併せて展示されているので、感慨もひとしおである。
展示風景
映画『華麗なるギャツビー』でヒロインのキャリー・マリガンが付けていた、印象的なヘッドドレスにも対面できて感動! 改めて、往年の名作映画の時代から現在に至るまで、変わらず人々の憧れの的になり続けているティファニーのパワーを思い知る瞬間だ。ちなみにこのほか、フレディ・マーキュリー愛用の口髭用コームなども展示されていて面白い。
怒涛のダイヤモンドラッシュが来ます。心の準備を。
いよいよ展覧会もクライマックスだ。次なるエリアでは、ティファニーの誇る世界有数のダイヤモンドコレクションが展示されている。グッとギアを上げ、目眩めく世界へダイブしよう。
展示風景 ガラスの反射まで計算され、美しく作品が見えるよう配慮されているのを感じる
ティファニーが「ダイヤモンド キング」と称されるようになった重要な節目は、1887年(日本で言う明治中頃)にあったらしい。創業者がオークションで“フランス戴冠宝器”の3分の1近くを購入し、時の人として話題になったのがきっかけのようだ。聞き慣れない“戴冠宝器”が気になって調べたところ、“王様の持ち物”だった。正統な王権を象徴する、三種の神器的なアレである。「それって買えるの……?」とびっくりしたが、考えてみればフランス王室は廃止されているので道理である。写真の3点は、元々ナポレオン3世の皇后のために作られたものだそうだ。宝石って長生きだなぁ、としみじみ思う。
展示風景
ダイヤモンドそのものの輝き・大きさだけでなく、ジャン・シュランバージェによる圧巻のデザインにも注目を。花と葉っぱをモチーフにしたネックレス(中央)とブローチ(右)がパネルに落とす影は、植物そのものである。ちなみに左下には《バード オン ア ロック》のダイヤモンドバージョンを発見。会場ではぜひ近くで見てほしい。
展示風景 「DJブースだろうか?」と思ったら研磨台だった
またこの展示室の一角では、高度な技術を要する「ダイヤモンドの研磨」の実演が行われており、ガラス越しにその繊細な手仕事を見学することができる。取材時には会えなくて残念!
至宝《ザ ティファニー ダイヤモンド》の引力
展示風景
展覧会の最後は、天井高12mの空間に、ショーケースがひとつ。ティファニーを象徴する至宝《ザ ティファニー ダイヤモンド》の展示だ。あまりに輝きが強く、写真に撮ると中に小さな太陽か星が入っているようだ。
展示風景
《ザ ティファニー ダイヤモンド》とは、世界最大級という中央の128.54ctのイエローダイヤモンドを指す。およそ150年前にティファニーが入手・カットして以来、ブランドの魂として輝きを放ち続けている。これまで特別な機会にだけリデザインされており、今回は2023年のニューヨーク本店リニューアルを記念し、新たに5羽のバードに囲まれたブローチ(ペンダントトップ)となった姿での登場だ。
裏面も鑑賞できる。またとない機会なので、ぜひ時間をかけて対話を楽しもう
言葉が無意味に思えてくる美しさに、見つめていると、周囲のプロジェクションマッピングも相まって心地よくクラクラしてくる。取材員がふと「(無意識に顔を近づけて見入ってしまうから)ガラスケースが自分の鼻息で曇る……」と呟いたひと言に、取材班一同、深く頷くのだった。
綺麗なものは、見てほしい。
本展は基本的に会場内の写真撮影もOK。憧れのハイジュエリーは手に入れることは叶わなくても、思い出と一緒に画像をコレクションすることはできる。ぜひ足を運んで、クラクラするほどのきらめきを、目に、カメラに、焼き付けてみてほしい。
日本をイメージした夜桜を背景に、ダイヤモンドを撮る。灯籠は人が近づくと光が入る仕掛けだ
展示作品数およそ500点。そのうち世界初公開となる作品が180点、日本初公開となる作品が約380点。ティファニーの技と創造の187年を辿る『ティファニー ワンダー』展(エキシビション『ティファニー ワンダー』技と創造の187年)は、2024年6月23日(日)まで、虎ノ門ヒルズ ステーションタワー45階「TOKYO NODE」にて開催中。
文・写真=小杉 美香 写真(一部)=オフィシャル提供
イベント情報
会場:TOKYO NODE 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー45階
開館時間:09:00~20:00
最終入場:19:00まで
※会館時間は変更になる場合がございます。詳しくはホームページをご確認ください。
※ご予約した日時に関わらず、ご入場が可能です。
入場
一般:¥2,000 / 高大専門学生:¥1,700 / 65歳以上:¥1,700 / 小中学生:¥800