上川隆也、林原めぐみ、山寺宏一が藤沢文翁の名作を再び形作る 『VOICARION XVIII~Mr.Prisoner~』インタビュー

2024.8.15
インタビュー
舞台

左から 上川隆也、林原めぐみ、山寺宏一

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一流の役者たちの朗読と音楽家の生演奏、美しい照明や美術、衣装によって形作られる世界が人気を呼び、数々の作品が上演されてきた劇作家・藤沢文翁による音楽朗読劇『VOICARION』シリーズ。その中でも人気が高い『Mr.Prisoner』の再々演が決定した。

4年ぶりに集結し、読み合わせを終えたタイミングで、初演から引き続き出演する上川隆也、林原めぐみ、山寺宏一、原作・脚本・演出の藤沢文翁による取材会が行われた。

――初演や再演の思い出を教えてください。

上川:僕は長年アニメーション好きを患っていまして……。

一同:(笑)。

上川:お二人と御一緒した初演時は心の中で常に浮き足立っていた様に思います。再演はカンパニーのチームワークの深まりもあって、長年の患いとはまた違う心持ちでした。

林原:患っていただけて光栄です(笑)。今では声優が表に出ることも当たり前になってきましたが、私が声優になりたての頃はあくまで裏の仕事でした。まだ朗読劇がそこまで上演されていなかった頃、共演も多い山寺さんからの誘いで朗読劇に挑戦し、新鮮さを感じました。

上川さんは1回目のお稽古の時だけ緊張されていたけど、2回目以降はなにもかも掌握している印象です(笑)。私たちの仕事は、演出に合わせて自分の考えを変えたり、自分の解釈のすり合わせをしたりする柔軟性が大切。吸収と加味と放出の速さに驚いたのが初演の思い出です。再演後はコロナ禍になり、世の中の空気の変化を感じました。この作品は牢獄から自由を求める話でもあるので、再演できただけでも奇跡だと思いましたね。

林原めぐみ

山寺:初演で感じたのは、「一生やり続けたい作品と仲間に出会えた」ということ。このチームでできたのを嬉しく思いますし、この作品だけは声が続く限りやりたいと思いました。次の機会を待っていたので、今回の再々演が嬉しいです。

藤沢:初演はこのキャスティングが揃うのを想像した時点で浮き足立っていました。しかも原作・脚本・演出なので、浮き足立つ×3(笑)。演出の最初の仕事はキャストの方に言葉を届けるためにいろいろ考えること。そこから関係が深まり、考えを伝えるのが楽になっていきます。でも再演の時、演出家モードの自分を録音した音声で聴いて「この人たちにこんな偉そうなこと言って大丈夫か!?」と思いました(笑)。今回も同じことになるだろうなと。ただ、初演からの時間を経て、より熱いものを作れる関係値になれたんじゃないかと思います。

――作品を書いた時のお気持ち、作品から感じる魅力を教えてください。

藤沢:着想については言葉にするのは難しいです。ただ、この作品が生まれたきっかけは山寺さん。ある作品でメインキャストが本番直前に体調不良で降板した時、山寺さんが全ての仕事をキャンセルして出演してくださったんです。僕が「どう恩返しをしていいかわからない」と言ったら「またいい作品書いてよ」と返してくださった。そこから数年後、この企画が立ち上がり、恩返しを兼ねて作品を書きました。

山寺宏一といえば「七色の声を持つ男」。そんな方に「声を聞いてはならない」と言われる囚人を演じてもらおうと思ったんです。初演はとても評判が良く、千秋楽の後、山寺さんから「あの時のお礼、確かに受け取りました」とメールが届きました。

一同:おお~!

上川:僕のモチベーションは、追いつけないこと。再々演ですが、声の表現に突出したお二人にはやっぱり追いつけないと、お芝居を間近で浴びるたびに感じます。目標として見失うことなく追いかけていける。

林原:怖い!

山寺:どうしてそういうことを……。

一同:(笑)。

上川:すごく真面目に言いました。

上川隆也

林原:……というどこまでも真摯な姿勢を持つ上川さん、常にいろんなことを研究して披露する山寺さんや奏者からも刺激を受けます。

また、そもそも教育というテーマ自体、日本では少ないと思っています。言うことを聞くのが良い子という風潮が色濃く、時代にそぐわないことも「ルールだから」と言われる学生たちがいる。でも社会に出ると急に「君の個性はなんだ」と聞かれてしまう。この作品は、教育というものを知らない子が真の教養を持つ囚人から何かを得る物語。「いる場所が苦しければ牢獄だ」という言葉が刺さる人は年代問わずいると思います。そんな作品に関われることがとても光栄です。

山寺:上川さんはあんなことを言っていますが、僕らが舞台を見に行くと「本当にこの人友達なのかな」と感じます。

林原:思う!

山寺:みんなに自慢したくなる(笑)。林原さんは最も尊敬する声優仲間ですし、一緒にできるのが幸せです。「自由」が一つのキーワードになっていて、本当に美しい物語だと思います。(藤沢は)よく飲む友達なんですけど、この人が本当に書いた? って思っちゃう(笑)。何回も上演しているにも関わらず、黙読しているだけで涙が出てくる。今日も「家で泣いてきたから大丈夫かな」と思いながら読み合わせをして、やっぱりグッときました。

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