音楽の未来が生まれる場所・SPACE ODDから新人アーティストにフォーカスしたイベント第一弾をレポート

2024.10.10
レポート
音楽

ODD WAVE vol.1

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『ODD WAVE vol.1』2024.09.24(tue)代官山SPACE ODD

9月24日、代官山SPACE ODDで『ODD WAVE vol.1』を観た。『ODD WAVE』はサマーソニックを始めロック・フェス、国内外アーティストのライヴを企画制作するプロモーター、クリエイティブマンが運営するライブハウス・SPACE ODD主催の、新人アーティストに焦点をあてた新たなイベントだ。この地下の小さなステージは、サマーソニックの大ステージへ通じている。若いバンドの想像力と創造力が試される場だ。

Xanadoo 撮影=Mizuki Abe

Xanadoo 撮影=Mizuki Abe

先陣を切ったのはXanadoo(キサナドゥ)だ。結成2年、福岡出身の4人組。ファンクなリズムにラウドなギターを掛け合わせ、洒落たディスコ/ファンクに野蛮なロック味を絡みつかせるところが福岡らしい、というと偏見になるか。うねるグルーヴを生むベースと猛進するドラムの組み合わせが面白い。リードをばりばり弾きまくるギターと苦み走ったヴォーカルに、自然と目が行く。

「今日は僕たちのノリで盛り上げていくので。最後まで乗っていきたいと思います」

Xanadoo 撮影=Mizuki Abe

Xanadoo 撮影=Mizuki Abe

しゃべる時は一瞬笑みを見せる、無骨そうでたぶんはにかみ屋のギター&ヴォーカル、カイヤ。曲は「meander」「3号線」「shake it down」、短いMCをはさんで「sneaky」「不気味」「darling」と、曲間を開けず一気に飛ばす。リズムが途切れないことで踊りたい気持ちをキープする、たぶん根っからのダンスロックバンド。マイナーコードが主流だが、7月に出た最新曲「shake it down」のように明るい広がりを感じる曲もある。「不気味」ではドラムソロ、ベースソロ、2本のギターの絡みを聴かせるなど、演奏力にも自信あり。踏んだ場数の多さを感じる、度胸ある演奏に好感だ。

Sijima 撮影=Mizuki Abe

Sijima 撮影=Mizuki Abe

続いてはSijimaがステージに上がる。セッティングの合間に奏でた即興のジャムがフュージョンぽかったので、そういう音かと思ったらばりばりのJ-POP、いやシティポップ。オーセンティックな歌謡とポップスを感じるキャッチーなメロディと歌詞を聴かせる、まっすぐな歌ものバンド。80年代のトレンディドラマから抜け出たようなファッション、ヴォーカル・髙城の端正なルックスも目を惹く。バンドに華やかさがある。

「初めてのイベントに出させてもらって嬉しいです。最後まで楽しんでください」

Sijima 撮影=Mizuki Abe

Sijima 撮影=Mizuki Abe

キーボードはサポートで、この4人による編成は今年かららしいが、音楽性がはっきりしているので安定感がある。特筆すべきは、素材を持ち込んでスクリーンに都会の映像や歌詞を映す演出で、音楽をイメージとして丸ごと届ける姿勢にこだわりあり。曲は「永い夜」「Word Mirage」「Summer time」「yowaki」「Goodbye」「いつまでも」の6曲。シティポップ系と言えども、シュガーベイブよりもオメガトライブ的な大衆感覚を感じる、ウェルメイドな聴き心地が魅力。演奏力は確かで、しかし誰も目立とうとせずに歌を支えるチームワーク。吹き抜ける爽やかな風。

春風レコード 撮影=亜希

春風レコード 撮影=亜希

三番手、つまりトリを取ったのは春風レコードだ。東京発、今年からリリースを始めたばかりのバンドだが、音楽専門学校出身ゆえに実力に疑いはなし。ドラム、キーボード、ヴォーカルが女子、ベースとギターが男子の混成バンドで、なんたってヴォーカル・池田春の存在感が目と耳を惹く。清楚なJDふうの見掛けから、R&Bとシティポップを感じるしなやかで芯の太い声が飛び出してくる。幼さとクールさと、強さとはかなさとの、バランスが面白い。

「10月9日にセカンドシングルがリリースされます。MVも公開予定で、ぜひ見て聴いて楽しんでください」

春風レコード 撮影=亜希

春風レコード 撮影=亜希

曲は「Idler」「花鳥画」「夏風」、そして新曲の「木犀歌」は、力強く前進するリズムにスラップベースを効かせた、メロディアスなディスコ&ロック。R&B色の濃い「雨傘」からギターのカッティングがかっこいい「ブルーライト」へ、歌と演奏が良いバランスで自己主張しあう、歌ものバンドとしてはかなりアグレッシヴな演奏が印象的。特に愛想を振りまくわけでもなく、自分の世界で歌う池田のキャラと洗練されたR&B/シティポップ的サウンドとの相性がいい。体が自然に動く。

『ODD WAVE vol.1』ということは、つまりこれがはじめの一歩。たぶんそのバンドを初めて観る人もいるだろう、盛り上がるよりもじっくり聴くタイプの観客の前で、この日の3バンドはしっかりと持ち味を見せてくれた。この先の彼らに幸運を、そして次回以降に出演するバンドに祝福を。新しいウェーヴがどこまで大きくなれるか、楽しみしかない『ODD WAVE vol.1』だった。


取材・文=宮本英夫

セットリスト

『ODD WAVE vol.1』2024.09.24(tue)代官山SPACE ODD
Xanadoo
01.meander
02.3号線
03.shake it down
04.Sneaky
05.不気味
06.darling
 
Sijima
01.永い夜
02.Word Mirage
03.Summer time
04.yowaki 
05.Goodbye
06.いつまでも
 
春風レコード
01.Idler
02.花鳥画
03.夏風
04.木犀歌
05.雨傘
06.ブルーライト 

イベント情報

『ODD WAVE vol.1』
2024年9月24日(火)代官山SPACE ODD
Sijima、Xanadoo、春風レコード
 
『ODD WAVE vol.2』
2024年12月10日(火)代官山SPACE ODD
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