ALI エモーショナルだが湿っぽさは一切ない、3人体制ラストライブをレポート
-
ポスト -
シェア - 送る
ALI
ALI presents professionalism BEYOND release party!!
2024.10.04 渋谷CHELSEA HOTEL
10月3日、4日の2日間にわたり渋谷CHELSEA HOTELで『ALI presents professionalism BEYOND release party!! at CHELSEA HOTEL』が開催された。3日は『- JUNGLE -』、4日は『– LOVE –』と各日に異なるタイトルを冠し、3日の公演にはゲストにラッパーの般若、GOMESSを招き、灼熱のライブが行われた、そのたった24時間後に行われた4日の公演をレポートする。
今日のライブを最後にメンバーのLUTHFIとCÉSARが脱退し、バンドはボーカル・LEOのソロプロジェクト体制へ移行する。3日前に突然発表されたニュースを受け、二度とない瞬間を目撃するためにフロアはぎゅうぎゅうに埋まった。笑顔か涙か、どちらにせよ大きなターニングポイントだ。
オープニングは「仁義なき戦いのテーマ~Dance You, Matilda」。この規模のハコにこの分厚いサウンドは反則だ。メンバー3人をフロントに、ドラム、キーボード、コーラス、3人のホーン隊を加えた圧倒的パワーがフロアを揺るがす。「NEVER SAY GOODBYE」から「EL MARIACHI」へ、イキのいいラテンのグルーヴでフロアを踊らす。ギターソロを弾くCÉSARの肩を抱き、“こいつを見ろよ!”とLEOがアピールする。ステージの上はみな笑顔だ。
「BEYOND feat. MaRI」では声もボディもダイナマイトなラッパー・MaRIをフィーチャーし、LEOとの濃厚なコラボを見せた。オーディエンスは飛び跳ねながらのタオル回しで忙しい。「Under My Skin」ではトロンボーン、サックス、トランペット、キーボードの気合の入ったソロ回しが聴けた。長い間ライブハウスで揉まれに揉まれた、泥臭いまでに強靭なグルーヴと一人残らず観客を巻き込む吸引力。ALIの真価はライブでわかる。その中心にLEOのカリスマ性がある。
「突然知ったニュース、びっくりしたかもしれないけど。俺たちはめちゃくちゃハッピーなんで。盛大にパーティーしようと思うんで、一緒に最高の時間にしてくれますか」
俺たちに涙は似合わないぜ。LEOが粋なセリフを決めてパーティー再開。横揺れラテン/ファンクの「VIM」からタテノリロックンロール「TEENAGE CITY RIOT」へ、LEOがフロアに突っ込みそうに身を乗り出して歌いまくる。「GABBA GABBA HEY HEY」はコール&レスポンスで盛り上がり、ホーン隊が前線に飛び出して煽る。一歩下がった位置でリズムをキープし続ける、にんまりとしたLUTHFIの笑顔が印象的だ。
現体制最後の日のMCだというのに、CÉSARがツアー中のLUTHFIのナンパ話を暴露してウケまくっている。全くいかしたバンドだ。そこに呼び込まれた強力ゲスト、般若のラップをフィーチャーした「Professionalism feat. 般若」でぶち上がる。ファンキーなディスコナンバーに般若のラップを乗せようという発想自体がぶっとんでいる。圧倒的存在感で曲と張り合う般若も凄い。そうかと思えば次の瞬間、「MY FOOLISH STORY」ではLEOがピアノと歌でソウルフルなバラードをじっくり聴かせる。引き出しの多さがハンパない。
ここから3曲は、LEOの10年来の友人でありラッパーのesを大フィーチャーする。レゲトンのリズムに乗った「Temptations」、情熱的でメロウな「BONNIE」、そしてファンキーなダンスナンバー「No Tomorrow(Give It Up)」。esのラップは外連味(けれんみ)なく正攻法で言葉がしっかり届く。全員の一体感あるステップに合わせてフロアが揺れる。「久々にやったけど、ちょっとチャラいな」とLEOが笑う。
「昔の曲をやると、やめていったメンバーのことを思い出すよ。その時は傷ついたけど、やり続けると結局こうやってハッピーに伝えられるのがALIのいいところだよな」
LUTHFIとCÉSARも、今後はそれぞれの音楽を追求していくが、サポートとしてALIに参加すると言ってくれたというLEOの言葉に拍手と歓声が湧いた。つくづく不思議な、音楽と友情で結ばれた愛すべきバンド。
「俺は一人になるけど、俺は一人じゃない。Because、おまえらがいるからだ」
LEOが冴えたセリフを吐きまくり、ライブは最後のダンスセクションへ。コーラス・MOMONADYが煽りまくるスカとファンクのハイブリッド「Wild Side」、ラテングルーヴとタオル回しでぶっとばす「FIGHT DUB CLUB」、“渋谷の歌!”とLEOが叫び、『呪術廻戦』でお馴染みの大ヒットチューン「LOST IN PARADISE」まで、ノンストップのダンス天国。ステージとフロアの区別なく、熱気が凄い。
「12月24日にリキッドルームでクリスマスパーティー。そして来年もガシガシ活動していこうと思ってるんで、ヨロシク」
アンコールはLEO、LUTHFI、CÉSARとサポートドラムのBOBOと4人で聴かせる「Going Up the Country」。LEOがハーモニカを吹く、キャンド・ヒート(Canned Heat)のロックンロールスタンダードをしれっとかっこよく決めてみせる、このセンスの良さがALIらしさ。そしていよいよラストシーン。
「自分が望むような生活が少しは手に入ったか? 何のためにやってるんだ? 金か、名誉か、数字か、友情か、家庭か。俺は満たされてるのか? ちょっと待ってくれ、俺は何にも満たされちゃいない。乾いて乾いてしょうがないんだ」
「世界中の人が俺を嫌いになっても俺はALIをやり続ける。理由はわからない。みんながうらやましいと思うようなどんなものも、俺がALIをやりたいという気持ちにはかなわない。だからどうかお付き合いください」
台本なんてない、LEOの長い一人語りにオーディエンスが耳を澄ます。歓声が飛ぶ。拍手が湧く。エモーショナルだが湿っぽさは一切ない。LEOは熱い男だ。この日のラストナンバー「Funky Nassau」の強烈なグルーヴがフロア中の一人残らず踊らせる。“LOVE,MUSIC AND DANCE”と書いたタオルをLEOが高々と掲げる。そして“音楽万歳!”とLEOが叫ぶ。
宣言通り、涙の一粒もない現体制ラストライブ。固定メンバーに関わらず有機的音楽集合体をバンドと呼ぶなら、ALIは過去も現在も未来もずっとバンドだ。このCHELSEA HOTEL公演の2日後には、早くも新体制のライブがスタートしている。むしろこれからどう進化するかが楽しみで仕方ない。とにかくパーティーを続けよう。
取材・文=宮本英夫 撮影=甲斐田 爽太