ヴァイオリンの名手・堀米ゆず子が若手アーティスト4人とともに室内楽を披露 『堀米ゆず子と仲間たち』開催
アルゲリッチやゼルキンをはじめとする錚々たるアーティストたちと室内楽の共演を重ねてきたヴァイオリンの名手・堀米ゆず子が、信頼を寄せる若手アーティストたちを招いて、東京・紀尾井ホールで久々の室内楽演奏会を開催する。
エリザベート王妃国際音楽コンクール優勝を経て、2020年にデビュー40周年を迎えた堀米ゆず子。今回の公演では、若手ながらも、名実ともに申し分ない実力者たちが一堂に会す。
堀米ゆず子(c)Samon
まずは、オーボエの荒木奏美。2023年より読売日本交響楽団首席奏者に就任し、ソロ・室内楽・新曲初演と幅広い活動を展開する荒木は、美しい音色と歌いまわし、そして安定した技術を持ち合わせる。プログラム前半に演奏されるモーツァルトのオーボエ四重奏曲、フランセのコールアングレ四重奏曲ではその魅力が存分に発揮されることだろう。
荒木奏美(c)Kenryou Gu
そして、抜群の安定感と、温かみのある艷やかな音色が持ち味の経験豊富なヴィオラ奏者・鈴木康浩。全国各地でリサイタルを行うほか、ソリストとしてオーケストラとの共演や、宮崎国際音楽祭に出演する等、多方面で活躍している。室内楽にも力を入れており、豊富な経験に裏付けられた、聴き応えのある演奏に注目だ。
鈴木康浩
チェロの横坂源は、優れた技術と表現力で聴き手の心をとらえる、生き生きとした力強い演奏が魅力。13歳でソリストデビューを果たした後、2010年ミュンヘン国際音楽コンクールにて第2位を受賞、その他多数の受賞歴を持ち、国際的なチェリストとして第一線で活躍している。聴衆と一緒に楽しめるコンサートを心掛けていると言う横坂。今回はどのように作品の魅力を表現してくれるのか。
横坂源(c)Sotaro Goto
唯一無二の美しい音色と柔軟さを兼ね備えたピアニスト・津田裕也は、ソリストとして数々のオーケストラと共演し、日本各地でソロリサイタルを開催するほか、堀米をはじめとする多くの著名音楽家と共演を重ね、厚い信頼を得ている。共演者を引き立てながらも決して個性を失わない、津田の絶妙なピアノにも注目だ。
津田裕也(c)Christine Fiedler
プログラムは、室内楽の傑作選ともいえる名曲揃い。前半は、古今のオーボエと弦楽のための名曲集、そして後半は、堀米の音楽人生の中核をなす作曲家、ブラームスのピアノ四重奏曲を演奏する。
前半1曲目に演奏されるモーツァルトのオーボエ四重奏曲は、当時の名オーボエ奏者フリードリヒ・ラムのために書かれた作品であり、高度なテクニックと豊かな音楽性が求められる、オーボエ奏者にとって欠かすことのできないレパートリーだ。続いて、2曲目に演奏されるフランセのコールアングレ四重奏曲は、20世紀後半に書かれた比較的新しい作品。軽妙で躍動感のある楽章と、美しく優雅な楽章が交互に演奏され、フランセの作風が詰め込まれた魅力的な作品となっている。この楽曲では、荒木奏美がオーボエからコールアングレに持ち替えて演奏する。コールアングレ(イングリッシュ・ホルン)は、オーボエよりも低い音域を持ち、深みと温かみのある音色が特徴的な楽器で、その持ち味が特に発揮される2楽章は必聴。演奏機会が少ないプログラムでもある。
後半は、ピアノの津田裕也が加わり、ブラームスのピアノ四重奏曲 第2番が演奏される。ブラームスは生涯に3曲のピアノ四重奏曲を作曲しており、同時期に作曲された1番が暗い雰囲気を持つト短調であるのに対し、今回演奏する2番は、明るい雰囲気を持つイ長調で書かかれている。また、演奏時間が50分前後と、ブラームスが残したほとんどの交響曲よりも長く、室内楽作品の大作の一つとしても知られている。この曲も、演奏機会はあまり多くはないが、明るい雰囲気の中に散りばめられた哀愁漂う旋律や、ピアノと弦楽器の緻密なバランスなど、聴きどころが随所に散りばめられた名曲だ。堀米はかつて、ブラームスの作品は感情表現の基本であり、音楽作りの核となっていると語っている。息の合った共演者とのアンサンブルを通して、音楽への愛情あふれる、温かな好演に期待だ。
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