NIPPON REGGAE SPLASH 2024、新世代の躍進とシーン全体の成熟を体感
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NIPPON REGGAE SPLASH 2024
『NIPPON REGGAE SPLASH 2024』2024.01.10(sun)日比谷公園大音楽堂
第一線で活躍しているアーティストが日比谷野外大音楽堂に集結した『NIPPON REGGAE SPLASH 2024』。期待のニューカマーとビッグネームの共演は、現在の国内レゲエシーンに渦巻いている熱気を示していた。屋外で鳴り響くレゲエミュージックの圧倒的な心地よさも体感できたこの公演の模様をレポートする。
MASTER BRIDGE
MASTER BRIDGE
JAH WORKS
開場直後から観客を盛り上げていたMASTER BRIDGEによるDJを経て迎えた開演。BOB MARLEYの息子・DAMIAN “JR GONG" MARLEYが主催する『Welcome To Jam Rock Reggae Cruise』SOUND CLASH at SEAで優勝を果たしたJAH WORKSのステージが始まった。「いつもと違った挑戦をします」と宣言して、次々プレイしたのはPUSHIM「FOREVER」、Spinna B-ill & The cavemans「ライオンの子」、Youth of Roots「Reggae Man」、FIRE BALL「Dreamer」など、全てが日本のレゲエナンバー。そして後半は、RINGO、BIG EAR P、TAKAFINが登場。日没に近づく時間帯を3人の歌声が心地よく彩った。
ジャマイカを拠点としているレーベル・MEDZと所属アーティスト・ZENDAMAN、Jr.Santa、SOMAJIの共演は、若手のフレッシュな息吹を感じさせてくれた。「Do my Thing」「Bed room belly」がまずは披露されたが、セレクターがプレイするリディムに対して3人が各々のスタイルでアプローチするのがスリリング極まりない。「エーヨー(ZENDAMAN, SOMAJI)」「Wipe Out(ZENDAMAN, Jr.Santa)」――歌声のコンビネーションを変化させた2曲を経て、「レゲエはレベルミュージックだから、この音をやつらに止めることはできない。みんな、まだまだ行けるか?」と観客に問いかけていたZENDAMAN。反骨心を滲ませる彼の歌声が客席の熱気を上昇させていくのも痛快だった。日が暮れて、鮮やかな色調のライティングがステージを包み始めた頃、ベーシストのプレイも加わって一際厚みを増したサウンド。「Liquid(ZENDAMAN)」を皮切りに、飛び跳ねながら盛り上がる観客が続出した。「Stepz(Jr.Santa)」「Mad ants(SOMAJI)」「DIWALLI(ZENDAMAN, Jr.Santa)」「Nah go Love it(ZENDAMAN, Jr.Santa, SOMAJI)」も披露され、会場を激しく揺さぶった全力のコール&レスポンス。「ふたり(Jr.Santa, SOMAJI)は岸和田で、俺は岩手出身だけど、ジャマイカで会いました。レゲエが俺らを繋いでくれたから、ここにいるみんなともレゲエでもっと繋がっていきたいです」というZENDAMANの願いが、まさしく具現化されていた。
YANGHEE
aami
Cornbread a.k.a Jaken
絶妙なコンビネーションによるダンスパフォーマンスを繰り広げたYANGHEE、aami、Cornbread a.k.a Jaken。仙台発のレゲエサウンド・YARZ、横浜出身のディージェイ・RUDEBWOY FACE、横須賀出身のディージェイ・RUEED――各々のエリアでシーンを盛り上げている者同士のリスペクトに満ちた共演を経て、イベントはいよいよ後半に突入した。「2ヶ月前くらいに誘ってもらいました。俺らLIFESTYLE、関西のサウンドなんですけど、実は東京の人たちが一番聴いてくれているんです。いつもありがとうございます」という言葉が届けられ、彼らのステージは「正念場 DUB (feat. GAZZILA & TONY THE WEED)」からスタート。「今、日本に必要なのはレゲエだと思うんです」という言葉を実証するかのように808「You」「BEST PARTNER (feat. CHEHON & ジャパニーズマゲニーズ)」「交差点 DUB (feat. EXPRESS) 」などが最高の空間を作り上げていた。
そして「誰が出てくるかわかってますよね? いろんな曲を作ってるけど、本邦初公開。LIFESTYLEとVIGORMANの未発表曲。ここで初めて披露したいんですけど、準備できてますか?」と呼びかけて始まった「BOVA」。マイクを手にしたVIGORMANが現れると巻き起こった大歓声。ステージ上を左右に移動しながら全エリアに届けた歌声が、観客の心に着々と火を灯していた。「もう1曲歌って、RAYくんを呼び込もうと思うんやけど。去年、Red Bullから連絡が来て、“64小節、ヴァースを蹴り続けてください”って。その動画はもう出てるんやけど、一発で64小節をキックし続けています。今日はその目で確かめてください」と言い、VIGORMANが披露した「Red Bull 64 Bars」は、生々しいエネルギーを放った。ビートを巧みに乗りこなしながら連射する言葉が圧巻だった。
RAY
「脳内麻薬」「日の出る国」「JUMP UP」を歌ったRAY。「ラバダブ」は、彼とVIGORMANの共演となった。少し雨が降ってきていたが、ライトを浴びた雨粒がキラキラ輝くのが綺麗。腕を振り上げながら盛り上がる人々の熱気に包まれていると、雨はまったく気にならず、いつの間にか天気は回復していた。LIFESTYLEがプロデュースを手掛けた能登半島復興応援ソング、12人がマイクリレーを繰り広げる「HINOMARU REVIVAL」がプレイされると、自身のパートを歌ったVIGORMAN。そしてLIFESTYLEのステージは、NG HEAD withヤマカシBAND 「人にやさしく」で締めくくられた。
CHOUJI
CHOUJI
石垣島出身のラッパー・CHOUJIのステージは、「コンクリートジャングル」からスタート。日々の暮らしの中で抱く想いを「オカエリ」「ジャージのチョージ」「バッズマン」「kamasereba」「生きてゆく」などで歌い上げていた。随所に沖縄的なエッセンスを香らせていた「琉球OkiSt」では、指笛を吹き鳴らしながら踊る観客が続出。ラストの「奮闘中」は、メロウなサウンドと生活のリアルを映し出すラップが、耳を傾ける人々の心を震わせているのを感じた。
J-REXXX
J-REXXX
『NIPPON REGGAE SPLASH 2024』の大トリを飾ったのはJ-REXXX。華々しいSEと共に降臨して歌い始めた「最近の若いやつは」が、観客の身も心も熱く揺さぶった。客席から届けられる《最近の若いやつは》という大合唱を燃料とするかのように全力で歌い続ける姿が鮮烈。客席にいる幼児にマイクを向けて響かせた《最近の若いやつは》という可愛らしい声が和ませる場面も交えながら、「大人も負けんな!」と大合唱を煽り続けていた。
J-REXXX
J-REXXX
高速の言葉の連射を浴びた人々が無我夢中で飛び跳ねていた「早口バカ」「FASTEST FASTEST」の直後に迎えた小休止。「この場所は、たしかブルーハーツが解散したとこだよな?(※正確には1994年8月13日に開催された『あんずの里ロックフェスティバル』がラストライブ)。だからJ-REXXXも今日で引退します。ありがとうございました!」と言って明るい笑いを誘っていた。「引退する代わりに、今日は好き勝手にやらせていただきたいと思います」と言って歌い始めたCHEHONの「みどり」は、すぐに「GANJAH GANJAH」に変化。自由奔放に歌いながら危険なムードを醸し出す様が痛快だった。
J-REXXX
J-REXXX
ジャケットとシャツを脱いでメッシュシャツ、通称アミシャツを露わにしながら「アミシャツ」を歌ったJ-REXXX。後方にいるセレクターもアミシャツを着ているのが判明した後、「もしかしたら着てるのかな? 脱いでみなよ」と言われた撮影スタッフが裾をめくると、現れたのはアミシャツ! 事前に仕込まれていた細かなネタが観客を大爆笑させていた。「この会場でのレゲエ、ダンスホールのイベントは、これで最後らしいです」と、『SOUL REBEL』『さんピンCAMP』など、様々な伝説的イベントが開催されてきた日比谷野外大音楽堂が立て替えられることへの寂しさを言葉に滲ませる場面もあったが、「またいろんな形で、新しい場所で『NIPPON REGGAE SPLASH』やると思うんで、遊びに来てください!」という力強い言葉が観客の喝采を浴びた。
音源では紅桜が担当しているラップパートも歌い、ブルーハーツの「リンダリンダ」の一節を盛り込む斬新な展開で盛り上げた「MY TOWN」。途中でJ-REXXXから届けられた「ブルーハーツはここで解散したけど、日本のレゲエ、ダンスホールは、これからもずっと続いていくから、みんなサポートしてくれ!」という言葉は、胸に深く迫ってきた。そしてラストに披露されたのは「最後の一本」。《名残惜しいけれど 最後の1本で これ吸ったら帰ろう》《最後の1本で 明日から頑張ろう》というフレーズは、会場に集まった観客の想いをまさしく代弁していたのだと思う。高鳴り続けた手拍子が、J-REXXXの歌声と温かに融け合っているのを感じた。
NIPPON REGGAE SPLASH 2024
J-REXXXのライブが終了する直前、このイベントを盛り上げた出演者たちが再登場。時間がまだ余っていることが判明すると、RUB-A-DUB(フリースタイル)がステージで突然始まった。先陣を切ったJ-REXXXに続いて次々マイクを握ったアーティストたちが、実に楽しそう。流れるリディム、歌声に託された想い、自由なステージの雰囲気が、レゲエミュージックの素敵さを再確認させてくれた。そして終演を迎えた『NIPPON REGGAE SPLASH 2024』。新世代の躍進とシーン全体の成熟を噛み締めることができるイベントだった。
取材・文=田中大 撮影=JUNYA S-STEADY
イベント情報
J-REXXX
CHOUJI
・JAH WORKS wiz
TAKAFIN fr.MIGHTY JAM ROCK
RINGO fr. Dunns River
BIG EAR P
・LIFESTYLE wiz
RAY
VIGORMAN
・MEDZ wiz
ZENDAMAN
Jr.Santa
SOMAJI
・YARZ wiz
RUDEBWOY FACE
RUEED
Cornbread a.k.a Jaken
aami
YANGHEE
MASTER BRIDGE