頭をノリさんにして楽しむべし! ちょっとヘンテコで自由なアート展『木梨アート大サーカス展』レポート

2024.12.13
レポート
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アート

『木梨アート大サーカス展』

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「とんねるず」のノリさんとしてお茶の間を沸かすほか、アーティストとしても精力的に創造活動を続けている木梨憲武。そんな彼のアート作品を使った、ちょっとヘンテコで自由な展覧会が、この冬横浜にて開催されている。その名も『木梨アート大サーカス展』だ。

記者会見に登場した木梨憲武

ことの起こりはおよそ2年前、木梨のアートを取っ掛かりに、最新技術を使って何か面白いことができないだろうか? とソニーミュージックのクリエイティブスタッフから打診があったのが始まりだそう。本展はアート作品が展示されているという意味ではれっきとした美術展なのだが、その展示方法や観客とのコミュニケーションの取りかたが大幅にぶっ飛んでいる。そもそも木梨のアート自体が、固定観念にとらわれず自由で柔らかい表現に満ちている……のだが、今回は会場の隅々までそのマインドがいきわたり、なるほど「美術展」というより「サーカス」というのはとても腑に落ちるネーミングである。

会場エントランス

会場は横浜のアソビル2階にあるYOKOHAMA COAST。それではサーカスのテントの中で一体何が繰り広げられているのか、メディア向け内覧会および記者会見の写真を交えながらレポートしていこう。

めくるめくサーカスの世界へ

会場入口を抜けると、サーカス感を盛り上げるアンティークな装飾のフォトスポットがまずお出迎え。右手の台の上に乗って写真撮影が可能だ。入場時にノリさん風のピエロのお面がもらえるので、早速そちらを活用するのもいいだろう。

展示風景

ちなみに、そのお面はかなりしっかりした厚紙で作られており、サイズ調節もできる親切設計。老若男女誰もがしっかりノリさんになれるあたりに企画の本気ぶりが伺える。

アトリエそのまま持ってきちゃいました

展示風景

最初の展示は「ノリさんのアトリエ」。展示室を埋め尽くす細やかなアイテム(フィギュア、画材、ポスターなど)はすべてノリさんの実際のアトリエからトラックで運ばれてきたもの。こんなに持ってきてしまって、アトリエに何も無くなってしまうのでは? と心配になったが、ノリさん曰く「おかげでアトリエの大掃除に入ることができました」とのこと。

展示風景

なかでも、画材一式や創作時のチェアなどの展示はじっと見入ってしまうような緊張感があった。ここは企画のクリエイティブスタッフたっての希望で、まずはアートが生まれる場所である「作家のアトリエ」から展覧会をスタートさせたい、という思いがあったそうだ。

バシバシっとコミュニケーション

アトリエから先に進むには、茶室の「にじり口」のように身を屈めないと通れない狭い隙間を通る。何かと思えばコレは、なんと巨大なノリさんの顔(の口)なのである。「みんなで“REACH OUT”」と題されたこのエリアでは、来場者とノリさんが繋がれるような仕掛けがたくさん用意されている。

展示風景

「REACH OUT」とは大きく開いた手のひらをモチーフにした、木梨アートの代表シリーズだ。来場者が歩くと、足元にカラフルな「REACH OUT」がついてくる。さらに、巨大なノリさんフェイスをバシッと叩くと、そのたびに多彩なリアクションを返してくれるのである。「たたいてみて〜!」と直筆メッセージもあることだし、ここは遠慮なく叩いてしまおう。

花の香りと××の香り

展示風景

続いては「“Flower”のかおり」のエリアだ。ここではノリさんの鮮やかな「Flower」シリーズの作品が、まるで地面から生えているかのように展示されている。そして花の絵一つひとつから、リアルに植物の香りがするという驚きの趣向である。

展示風景

奥にあるマシンは遊びゴコロの塊とも言える、「Flowerスロット」。スロットを止めると、ランダムで「Flower」の香りが手元のファンから噴き出すという恐怖の代物だ。なぜ恐怖かというと、何分の一かの確率で臭い匂いが混ざっているらしいのだ。取材時に試したときは爽やかなグリーン系の香りに当たっていい気分だったが、気になったので「臭いのって、なんの匂いなんですか?」と尋ねてみた。

「それは……×った××の匂いです」

……。あなたも、勇気を出してぜひ挑戦してみてほしい。

アートも妖精も、すぐ隣にいる

展示風景

先へ進み、ダンボールでできた無数の妖精たち(フェアリーズ)が動き回るエリアへ。この「フェアリーズ」はアーティスト・木梨のライフワークの一つとなっている作品シリーズで、日々溜まっては捨てられていくダンボールを素材に、ハサミとボンドで生み出された小さな生物たちである。創造の背景には、妻である女優・安田成美が「幼い頃、家の中にいる小さな妖精さんが見えていた」というエピソードが関係している、とのこと。木梨によって「フェアリーズ」として制作された妖精さんの数は、実に1000体以上にのぼる。

展示風景

芝生のようなグリーンのサークルの中では、クリエイティブスタッフによって電池とモーターで命を吹き込まれたフェアリーズたちがゆる〜く自由に動き回っている。以前別の展覧会で「フェアリーズ」について質問された際に「このキャラクターたちがいずれ動き出して、最終的には映画化するんじゃないかと思ってます(笑)」と冗談まじりに語っていたが、今回そのイメージがまさに現実となっていて驚いた。

木梨憲武(中央)とクリエイティブスタッフ加藤氏(右)

記者会見では「ソニーさんの技術で動くっていうから、てっきりAIBOみたいに音声センサーなんかで動くのかなって思ったら……普通に電池でしたけど?」と、楽しそうにクリエイティブスタッフの加藤氏にツッコミを入れる一幕も。細かい技術を駆使しつつ昔ながらのアナログさを感じさせるその手触りこそ、メカニックたちがこだわったポイントなのだそうだ。

アスレチックならぬ「アートレチック」

続いては「木梨アートレチック」のエリアへ。ここでは来場者自身の身体を使ってアートを楽しむことが推奨されている。観光地によくある「顔ハメ」の巨大かつ複雑なポージングのものや、床に寝転んでアートの一部となり、真上から自撮りをするスポットなど。なかでも面白いのは、床一面に描かれた「ツイスター」のような模様である。

展示風景

「Flower」「フェアリーズ」など木梨作品のモチーフがランダムに並んでおり、会場に流れる音声に合わせて、指定されたモチーフだけを踏んでゴールまで到達するというもの。脳のいろいろな場所が刺激されてゲームとして面白いのだが、注目してほしいのは壁に描かれたノリさんの手描きメッセージだ。

会場内の至る所にノリさんからの直筆メッセージが描かれている

そうだ、何事も頭を柔らかくして、好きに楽しまなくては。作品とはまた別のところで、木梨アートの真髄に触れたような気がした。

なお、会場内ではあちこちにこのようなノリさんの直筆コメントが描かれている。会期中、訪れるたびに描き増やしていく予定とのことなので、壁や看板などの何気ないポイントにも注目である。

ノリさんとコラボレーションも可能!

展示風景

「みんなの“OUCHI”」のエリアでは、様々な色合いの小さな「おうち」が壁に貼り付けられている。隣の特設コーナーで自分だけの「おうち」を作成し、エリア内の好きな場所に設置することが可能だ(別途500円)。会期中にたくさんの作品が集まって街となり、この空間自体がノリさんと来場者とのコラボレーション作品となるのである。中央の展示ケース付近には、キャイ〜ンの天野ひろゆきによるサイン入りの「おうち」も発見できた。

展示風景

さらに「おうち」の中には、内部の様子を覗き見できるものがあって面白い。昭和風のおうちだったり、ラジオの放送局だったり……時にはギョッとするような仕掛けが用意されているものも。街の灯りのひとつひとつの向こうに、状況も感覚も何もかもが違う誰かの「おうち」があるのだと改めて思うと、つくづく「街」ってヘンテコなものである。

茶目っ気たっぷりの写真館

展示風景

いよいよ展示も終盤だ。「木梨憲武肖像」のエリアでは、「木梨憲武って何者なんだろう?」と改めて問い直すかのように、彼の幼少期から現在に至るまでのメモリアルな写真たちが展示されている。

展示風景

……と、あれ? 進んでいくうちに現在のノリさんを追い越して、木梨の活動をAIが学習し、木梨の可能性を導き出したものをAIと人の手でビジュアル化した「おじいちゃんノリさん」の姿が……。さらに、石器時代に古代エジプト、西洋名画の世界に、そして未だ見ぬSFチックな未来の世界にまでノリさんが? リアルな思い出の写真から、しれっとフィクションの肖像に移行してゆくマジックリアリズム的な展示にニヤニヤである。ここは企画陣のお茶目心に敬意をもって「なわけあるかーい!」とツッコミを入れるのが礼儀だろう。

もっともっと、伝えよう

次の「み〜んなノリさん」が、いよいよラストの展示エリアだ。ここでは木梨アートとテクノロジーが融合した、本展のシンボル的な展示を見ることができる。

展示風景

小劇場のようなステージに、来場者を包み込むような3面の大モニターが設置されている。反対側にあるブースで自分の顔写真を撮影すれば、あっという間にショータイムの始まりだ。3rdアルバム『木梨ソウル』に収録されているソウルフルなナンバー『伝えなくちゃ』に合わせて、ノリさん風に自由な姿になった自分たちがコーラス隊として登場。ピエロやチンパンジーになっていたり、会場内で見てきた木梨アートのモチーフに囲まれていたり、デコレーションは様々だ。

展示風景

「ノリさんのような自由な発想やマインドを持ち帰っていただきたい、という思いを込めて、最後はみんながノリさんのような姿になって一緒に歌える仕掛けをつくりました」と語るクリエイティブスタッフ。ノリさんも隣で「この曲はAIちゃんが(あ、エーアイじゃなくてアイちゃんね!)作ってくれた大好きな曲です」と顔をほころばせた。

慌ただしい日常の中で、最近の自分は他者に大切なことをちゃんと伝えられているだろうか。「あなたにもっと心の声を伝えなくちゃ」の歌詞がグッと胸に迫る展示だった。

ショッピングも楽しみのうち!

会場風景

展示エリアを出たところで、「おねえさ〜ん!」とノリさんの声で呼び止められてびっくり。廊下を巡回しているグッズのPRロボットだった。

グッズショップ風景

グッズショップもサーカス感たっぷりで、覗くだけで笑顔になりそうだ。展覧会の公式グッズのほか、「み〜んなノリさん」で撮影したデコレーション写真も購入できるそうな。

アート & テク“ノリ”ジー

記者会見の様子

記者会見の締めくくりに、ノリさん自身の言葉で来場者へのメッセージが伝えられた。

「いつもとはちょっと違った、五感を使いながら鑑賞する参加型のアート展となってます。ちっちゃい子も遊びに来てくれたらいいな〜。お父さんお母さんたちにとっては、ここ横浜はデートコースですのでね。例えば中華街で散歩して、ブルース・リーのヌンチャクとか普段買わないようなモノ買ったりして……その、ついでに! ぜひこのアート展で遊んでいってほしいなって思います(笑)」

 『木梨アート大サーカス展』は、YOKOHAMA COASTにて2025年1月13日(月・祝)まで開催中。この冬は笑いに満ちた新感覚の展覧会で、心をポカポカにしてみては。


文・写真=小杉 美香

イベント情報

木梨アート大サーカス展
会場:YOKOHAMA COAST(神奈川県横浜市西区高島2-14-9 アソビル2F)
会期:2024年12月4日(水)〜2025年1月13日(月・祝)
※2025年1月1日(水・祝)~3日(金) 定休日
営業時間:10:00~20:00(最終入場19:00)
主催:木梨アート大サーカス団
特別協力:キナシコッカ株式会社
協力:TBSラジオ / YOKOHAMA COAST
お問い合わせ:info@kinashiart-circus.jp
■入場券
販売サイト:会場窓口またはイープラスのスマートフォン限定電子「スマチケ」https://eplus.jp/kinashiart_circus/
※会場窓口は営業時間内の販売です(10:00~20:00(19:30最終入場)、2025年1月1日(水・祝)~3日(金) 定休日)
※イープラスからお申込み、の受取りはイープラスのスマートフォン限定電子「スマチケ」となります。動作機種・推奨環境をご確認の上、お申込みください/※スマートフォンをお持ちでない方、動作機種・推奨環境に該当しない方は、お申込みできませんので来場希望日に会場窓口でご購入ください/※スマチケの動作機種・推奨環境はお申込みページよりご確認をお願いいたします/※スマチケのご利用にはイープラスアプリ(無料)のインストールが必要です
※小学生以下のお客様は必ず保護者(18歳以上)同伴でご入場ください/※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料/※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は、日時指定予約は不要です。直接会場へお越しください。ただし、会場内の混雑等により、ご入場をお待ちいただく場合があります/※その他注意事項は公式HPをご確認ください。
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