「100年に1度」の開発で変わる梅田で、ずっと変わらない特別な音楽体験をーーBillboard Live OSAKAの魅力とシェフのこだわりとは
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Billboard Live OSAKA 撮影=ハヤシマコ
「100年に1度」といわれる大規模な再開発が進んでいる大阪の梅田。JR、阪神、阪急、大阪メトロの路線が通る、利便性抜群の西日本最大のターミナルであり、最近では阪神甲子園球場約2.5個分の広大な都市公園を有する「グラングリーン大阪」が誕生し話題を集めた。芝生が一面に広がる広場は、近隣住人からインバウンドまで多くの人が活用する新たな憩いの場として連日賑わいを見せている。
写真提供=Billboard Live
大きな発展を遂げて変わりゆく街並みがある一方、同じ梅田で開業当時から変わらないスタイルで、人々を魅了しているのが世界基準のライブレストラン・Billboard Live OSAKAだ。2007年にオープンして以来、国籍・ジャンル問わずさまざまなステージが日々繰り広げられ、料理やお酒を楽しみながら音楽に浸ることができるライブレストランとして愛されてきた。音楽ファンなら一度は訪れたことがある、または訪れてみたいと思ったことがある歴史ある会場と言っても過言ではないはず。一歩足を踏み入れれば、洗練された空間で最高の音響を全身で浴びる他にはない贅沢なライブ体験に心を奪われて、何度も通いたくなるような魅力に溢れている。しかし、音響にもサービスにもこだわり抜いているからこそ、「少し敷居が高いイメージ」「ライブハウスにはよく行くけれど、Billboard Liveはシステムや利用方法が難しそう」といった声も時々聞こえてくる。そこで今回SPICEでは、まだビルボードに行ったことがない人のために、編集部が実際に利用し体験したことをレポート。横浜クラブの紹介に続いて、大阪クラブでは料理長の話を伺いながら、その魅力に迫る。
冒頭で記した通り、Billboard Live OSAKAのある大阪・梅田は再開発で街並みがずいぶんと変わってきた。駅周辺は「グラングリーン大阪」のほかにも、JR大阪の西側にはオフィスや商業施設の複合ビル「イノゲート大阪」や旧大阪中央郵便局の跡地に立つJPタワー大阪内にある商業施設「KITTE大阪」がオープンし賑わっている。
Billboard Live OSAKAのある、商業ビル・ハービスPLAZA ENTはというと劇団四季の専用劇場も有し、今年で開業20周年。長年に渡って大阪からエンターテインメントの発信の拠点となってきた。阪神電車「大阪梅田」駅から徒歩3分、JR大阪駅から徒歩5分、大阪メトロ「西梅田駅」から徒歩2分と好アクセスで。地下一階にあるBillboard Live OSAKAまでは、駅の改札を出て、そのまま地下道を通って行けるので雨の心配もなし。目の前にある「KITTE大阪」と直結した「JR大阪駅」西口改札ができたこともあり、さらにアクセスが良くなった。
Billboard Liveでは、ジャズやクラシックのコンサートも多いことから、「敷居が高い」イメージを持たれることもあるが、実際は老若男女が楽しめる会場でドレスコードもなし(公演によってはドレスコードを設ける場合があり)。好きな服装で、または仕事帰りでも気軽に利用することができる。しいて言えば、特別な音楽体験をより楽しむために、いつもと違ったオシャレをして行くというのもおすすめ。ジャケットやシャツ、ワンピースなどの「スマートカジュアル」な服装なら、場内の雰囲気にもピッタリだ。
クラシックながら洗練されたエントランスをくぐると、まずは
写真提供=Billboard Live
スタッフが注文を聞いて席まで料理を届けてくれる「サービスエリア」には、ステージに最も近い席を含む前方のテーブル席とフロア後方のソファ席、正面向きのカウンターからなる「S指定席」と「BOXシート」、ステージ正面のベーシックなテーブル&左右のカウンター席からなる「R指定席」がある。1ドリンク付きのカウンター席で、追加ドリンクや軽食はバーカウンターで注文する「カジュアルエリア」もあり、それぞれ席によって料金が異なるので予算や楽しみ方に合わせて選ぼう。
One Plate Dinner Plan(MUSIC FEE+¥2,900 / サービスエリアのみ)
Billboard Liveといえば、シェフ手作りの本格的な料理を音楽と一緒に楽しむことができるところが魅力。東京、大阪、横浜のクラブごとにメニューが異なるほか、季節によっても変わり、公演によってアーティストとのコラボメニューも登場する。クラブごとにシェフの色が出ているのも特徴で、Billboard Live OSAKAでは料理長・永岡沙理のこだわりが光る。開業当初から勤めていて、料理長には2016年に指名された。
Billboard Live OSAKA 料理長・永岡沙理さん 撮影=ハヤシマコ
料理長になった当時は29歳。女性でそれも若い世代への風当たりが近年ほど優しくはない時代の大抜擢だった。当時の由井園支配人(前回SPICEでインタビューでも登場 https://spice.eplus.jp/articles/329297)の後押しもあり料理長に選ばれたそう。「当時の料理長が体調を崩されて、後任が若い女性の料理長になるなんて誰も想像していなかったと思います。だけど副料理長の推薦もあり、また支配人の由井園さんが「この子ならいける。何かあったら僕が責任を取る」と後押ししてくれて、料理長になることができました。周りのスタッフにも支えてもらったし、働きやすい環境も整えてもらったので、孤立することもプレッシャーもなく、今日までやってこれました」と振り返ってくれた。
アルバイト時代から「いいものを持ってる」と評価されてきたそうだが、「それがまだ自分ではなにかわからない」と謙遜。周りのスタッフに聞いてみると、「どうやって思いついたん!?」と驚かされるようなメニューを考案する発想力がすばらしいとのこと。
撮影=ハヤシマコ
厨房ではさまざまなポジションに分かれて調理を行い、1度に100人規模の料理を作って提供しなければいけない。永岡シェフは全体をみながらも、冷製とデザートがメイン。メニュー作りは自身のアイディアだけでなく、スタッフと意見交換しながら構成していくそう。コラボメニューは「アーティストさんの好みやリクエストと、お客さんのニーズのバランスが難しい」といい、一方で「リクエスト通りに作れて喜んでいただけた時の達成感と、お客様に美味しいと喜んでいただけた時はとてもやりがいを感じます」と永岡シェフ。
『角松敏生 meets アロージャズオーケストラ Vol.10』で提供されたコラボレーションデザート/蘭王卵のカスタード&イチゴ/チョコ/ほうじ茶とアプリコット
特に印象に残っているメニューについて聞いてみると、シンガーソングライターの角松敏生とのメニュー作りについて話してくれた。これまで何度もBillboard Liveのステージに立ってきた角松だが、コラボメニューのリクエストは毎回好物の「カスタード」一筋。永岡シェフは手を変え品を変えながら、さまざまなカスタードを使ったデザートを考案。公演までに、プリン、タルト、ブリュレ、シュークリームなど複数のメニューを実際にメニューに組み込んで試し、オーダー数の統計と照らし合わせながらベストなメニューをセレクト。しかし、Billboard Liveは2公演制で、2日間公演と複数行うこともあり、全公演に足を運ぶファンも少なくない。「何度でも美味しく楽しんでほしい」との思いから、永岡シェフは少なくとも2種類以上は考案して提供しているのだという。3ヶ月の試行錯誤の末、完成させたメニューは大盛況となり「角松さんも喜んでくださり、ホテルで食べる用にとお持ち帰りいただきました!」と笑顔で話してくれた。
ほかにも「たこ焼き」というテーマのリクエストでは、たこ焼き風のピザを明石焼きのように出汁のジュレにつけて味変しながら楽しめるメニューを考案したり、チーズケーキひとつとっても成形できるギリギリの比率までチーズをふんだんに使って濃厚な味わいを実現したり……アーティストやお客さんはもちろん、プロのスタッフたちも驚かされるアイディアばかり。
「若い頃は一流レストランみたいな華やかな料理を食べてほしいと思っていましたが、今はビルボードライブはお客様の年齢層が広いからこそ、みんなが喜んでくれる料理を模索しながら取り組んでいます。大阪クラブではスタッフひとりひとりの個性を活かせたらと、アイディアを出し合って支え合いながらメニューを考えているので、ぜひ音楽と一緒にお料理も味わってみてほしいです」とアピールした。
撮影=ハヤシマコ
楽屋エリアでは、アーティストやスタッフのためにブッフェスタイルで楽しめるまかないが提供される。肉と魚に揚げ物、サラダ、スープ、ご飯ものとピザなど本気のラインナップ! 昼夜公演の合間に食べたり、公演後に打ち上げ的に食べたりとそれぞれで、このまかないを楽しみにしているアーティストも多いという。
撮影=ハヤシマコ
この日拝見したライブでも、観客は体を揺らしながら、イベントオリジナルのカクテルと料理のペアリングを味わっていた。出演アーティストもカジュアルなMCで、ひとりひとりと会話するように和やかなムードで展開。アーティストと観客がグラスを片手に笑い合い、お酒を飲み交わすような距離感がなんとも印象的だった。
華やかな煌めきを感じるステージでありがながら、食卓を囲むような親近感も同時に感じられるような(実際に最前はステージとほぼゼロ距離!)、ほかにはない距離感がなんとも刺激的な非日常空間だった。それは、おいしい食事やドリンクが、アーティストとお客さんのお腹と心を満たし笑顔にしてくれたことで、生まれた特別な体験だったように思う。
写真提供=Billboard Live
仕事帰りにふらっとお一人さまでも。家族や友人、恋人との特別な時間に。ショッピングや観光とあわせて……など、さまざまシーンで楽しむことができるBillboard Live。変わり続ける梅田の街で、ずっと変わらず記憶に残る時間を、ぜひ一度体感してみてほしい。
取材・文=大西健斗 撮影=ハヤシマコ