ザ・クロマニヨンズ×サンボマスター ロックンロールを演奏しながら生きる希望を歌い続けた、初の対バンライブ『RED-HOT ROCKSTREAM』レポート

12:00
レポート
音楽

ザ・クロマニヨンズ

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RED-HOT ROCKSTREAM
2024.12.10 Zepp Haneda

サンボマスターの山口隆(唄とギター)はこの日、いつも以上に饒舌だった。そして、誰よりも気持ちを高ぶらせていた。なぜなら念願だったザ・クロマニヨンズとのツーマンライブが12月10日、『RED-HOT ROCKSTREAM』というイベントタイトルの下、Zepp Hanedaでついに実現したからだ。

フェスや複数のバンドが出演するイベントで共演したことはあった。しかし、クロマニヨンズとサンボマスターの2バンドだけによる対バンはこの日が初めてだった。

サンボマスター

先攻はサンボマスター。1曲目の「輝きだして走ってく」から、山口はいつもどおり観客を煽りたおして、シンガロングの声を上げさせながら、同時に、きっと歓喜だけじゃない、さまざまな感情が入り混じる心境も隠さず言葉にしていく。

「今日は最高にならなきゃいけない訳があるんですよ!」
「俺にとって特別な夜だ。理由はわかるだろ!? わかるんだったらやることは一つしかないだろ!」
「今日は普通の日じゃねえんだ! クロマニヨンズとのツーマンだ!!」

それがまた観客の気持ちに火をつけるのだった。

サンボマスター/山口隆

ロックンロールを身上としながら、ロックンロールはロックンロールでもソウルミュージックのメロウネスが曲に滲むところがサンボ流。スタートダッシュから一転、中盤の「ヒューマニティ!」と「自分自身」の2曲ではそんな魅力も楽しませる。前者は木内泰史(ドラムスとコーラス)のドラムがドッタン・ドドタンと跳ねるポップナンバー。途中、レゲエになって観客を踊らせる。ワウを踏んでトレモロピッキングから華麗なギターソロを弾いてみせた山口は「やべえ! 俺、神様の前でもめちゃめちゃギターうまいんですけどぉ!」と自画自賛。同じステージに立つ以上は、神様でさえもあっと言わせたいと思っているようだ。

もう1曲の「自分自身」は、“自分にアイラブユーって言うってすばらしい”というメッセージも込めたサンボマスター流のディスコナンバー。近藤洋一(ベースとコーラス)のスラップベースと木内がツチドチ・ツチドチとハイアットとスネアを刻みながら、サビで鳴らすキックの4つ打ちに観客がワイプで応える。ディレイをうすく掛け、山口が軽やかに鳴らすギターのコードストロークの音色も心地いい。この曲のアウトロで山口はクロマニヨンズと2マンライブができる歓びを短いラップに乗せてみせる。

サンボマスター/近藤洋一

さあ、ライブは早くも後半戦。「全員! 優勝! 全員! 優勝!」と観客と一緒に声を上げた「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」から一気にラストスパートをかけるのかと思いきや、ステージの3人はソウルフルなバラード「ラブソング」を繋げ、観客の感情を揺さぶるのだった。

そして、89年にパンクロックやロックンロールを聴き、自分を肯定することができたと語った山口は、「その中には、あの2人もいたよ。その時と同じことを言いに来たんだ!」と語ると、「おまえはクソじゃねえ。生きてていいんだって言いに来た!」と続け、「Future is yours」になだれこむ。ちなみに前掲の“あの2人”とは、もちろん、89年当時はTHE BLUE HEARTSをやっていたクロマニヨンズの甲本ヒロト(Vo)と真島昌利(Gt, Cho)のことだろう。

サンボマスター/木内泰史

ポップなロックンロールの「Future is yours」を近藤から山口、さらに木内とリレーしたソロ回しで盛り上げると、サンボマスターのライブには欠かせないアンセムの「できっこないをやらなくちゃ」に繋げ、「クロマニヨンズとのツーマンだぞ。そんなもんかぁぁぁ!?」と山口が煽りたおしながら、観客をジャンプさせる。

ラストを飾ったのは、モータウンビートが跳ねるロックンロールの「花束」だった。

サンボマスター

「この1年がんばったおまえらが花束だって言いたいんだ」

歌いながら、歌詞に込めるだけでは足りない思いが山口の口から溢れ出す。

「あの人たちがいたから、俺、ロックンロールをやってるんだよ!」
「今年も1年、みなさん誠におつかれさまでした。生き抜いちゃう呪いをかけちゃうからね。生き延びろよ! 勝手に死んでんじゃねえぞ。今年も1年、生きててくれてありがとう!」

山口はなぜ、そんなにも“生きろ!”と訴えかけるのか。それは、そう訴えかけることがかつてロックンロールに救われた自分に与えられ、受け継ぐことを決めたロックンロールの使命だと考えているからだ。この日、クロマニヨンズについて語る山口の言葉から、改めてそれを知った筆者には、「あの人たちがいたから、俺、ロックンロールをやってるんだよ!」という山口の言葉が、「あの人たちがいたから、俺、生きているんだよ!」と聞こえたのだった。

ザ・クロマニヨンズ/甲本ヒロト

そして、オンステージするなりいきなり甲本ヒロトが言った「オーライ! ロックンロール!」を合図に演奏になだれこんだ後攻のクロマニヨンズはメンバー全員で「人間! 人間!」と雄叫びを上げながら、ステージに押し寄せる観客を揺らしていった。

1曲目はクロマニヨンズのテーマソングとも言える「クロマニヨン・ストンプ」だ。

「お喋りは山口君がいっぱいしてくれたから以下同文です。どんどんやっていくぞ!」

途中、ヒロトが言った通りステージの4人はたたみかけるように曲を披露していく。一息つくという言葉はクロマニヨンズの辞書にはないらしい。パンクロックとロックンロールの2本立て。セットリストに並ぶのは、「タリホー」「生きる」「どん底」他、ほぼシングルナンバーばかりだ。

ザ・クロマニヨンズ/真島昌利

アイリッシュなのか、トラッドフォーキーなのかはさておき、牧歌的なメロディを持つ「タリホー」はヒロトの歌の裏でマーシーこと真島昌利がチャック・ベリー直系のフレーズも交えながら、奏でるジャングリーなギターも聴きどころだった。

ステージの袖で見ていたサンボマスターの山口がバンザイしている。

「ありがとう。よく来てくれた。最高だね。楽しいね。最高の仲間、友達。サンボマスターとやれてうれしい! あっちも最高、こっちも最高、全員最高だ! どんどんやるぞ!」(甲本ヒロト)

Bメロがレゲエになるロックンロールの「イノチノマーチ」は、聴く者の気持ちを高揚させる《命のマーチ 鳴らせ 水平線に 無限のファンファーレ》という歌詞もさることながら、他に歌詞を思いつかなかったのか、2番のAメロをメンバー全員で《ニャカニャカブン ニャカニャカブン》と歌ってしまうんだから堪らない。

ザ・クロマニヨンズ/小林勝

夜明け前の世界の美しさを称える「ランラン」から繋げた「あいのロックンロール」は、2ビートが炸裂する超高速ロックンロール。桐田勝治(Dr, Cho)のツーバスがドカドカドカと唸る。

ヒロトのタイトルコールに観客が悲鳴を上げた「炎」は、Zepp Hanedaの2階席まで揺らすほど、観客が飛び跳ねた。ピート・タウンゼントばりにウインドミル奏法でコードをダイナミックにジャーンと鳴らすマーシーがただただかっこいい。ロックンロールを演奏するならやっぱりステージアクションもかっこよくなきゃダメだろう。

桐田が立ち上がって、踊りながら観客にアピールしてみせた「雷雨決行」は、《引き返す訳にゃいかないぜ 夢がオレたちを見張ってる》という歌詞のパンチラインとタイトルがロックンロールに人生を賭けたバンドマンの覚悟を思わせ、聴いているこちらも思わず胸が熱くなる。

ドラムの連打からちょっとジャムセッション風に始まった「暴動チャイル(BO CHILE)」は、ヒロトのハーモニカといい、マーシーのソリッドなコードカッティングといい、クロマニヨンズ流のR&Bパンクなんて言ってみたい。タイトルはジミヘンっぽいけど、サブタイトルのBOと桐田が打ち鳴らすジャングルビートからロックンロールのパイオニア、ボ・ディドリーの賛歌だということは明らかだ。

ザ・クロマニヨンズ/桐田勝治

マーシーと小林勝(Ba, Cho)が高速でリズムを刻みながら、ドラムソロに繋げ、オー、オー、イエー、イエーのコール&レスポンスで客席をぐっと盛り上げる。

《ロックンロールにさらわれる》という歌詞を聴きながら、そうだ、この日、ここにいる全員がロックンロールにさらわれたのだと確信する。

「12月は暑いな。Tシャツを脱いだのはやる気の表れです」とTシャツを脱ぎ、上半身裸になったヒロトが「残すところ短いですが、最後まで楽しんでってください!」と声を上げ、バンドは「エイトビート」からラストスパートをかける。

ザ・クロマニヨンズ

ヒロトのタイトルコールに声を上げた観客がヒロトのハーモニカのブローに応え、オイ! オイ! オイ! オイ! と声を上げる。いつも以上に《ただ生きる 生きてやる 呼吸を止めてなるものか》という「エイトビート」の歌詞が響くのは、“生きろ!”と必死に訴えかけたサンボマスターの後だからか。小林がランニングベースを閃かせ、ハーモニカを鳴らすヒロトの後ろで3人が向かい合い、エンディングを迎えると、そこからはもうあっという間だった。

《今日は最高の気分だ》と歌いながら、ヒロトが勢いあまってステージにぶっ倒れた「ギリギリガガンガン」から「紙飛行機」に繋げ、“1-2-1-2-3-4!! Yeah!! Yeah!!”と声を上げながらなだれこんだ「ナンバーワン野郎!」で作り上げた熱狂の中、「またやろう。もっとやろう。絶対やろう」とヒロトが言いながらライブは終了。もちろん、アンコールはなし。50分ずつの対バンというところが潔くていいじゃないか。ロックンロールに上下関係はない。

この日、サンボマスターもクロマニヨンズもロックンロールを演奏しながら、生きることに対する希望を歌い続けた。ともにロックンロールバンドであることはもちろんだが、そんなところにもサンボマスターとクロマニヨンズの共通点を見出したのだった。

ザ・クロマニヨンズ


取材・文=山口智男
ザ・クロマニヨンズ撮影=柴田 恵理/サンボマスター撮影=SARU

ザ・クロマニヨンズ情報

ザ・クロマニヨンズ × さらば青春の光
12月22日(日)新潟テルサ
 
FM802 35th ANNIVERSARY “Be FUNKY!!” ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2024 ーレディクレ15th-
12月27日(金)インテックス大阪
>>情報詳細 https://eplus.jp/sf/word/0000038921

NEOLAND CASE.4
2024年12月28日(土)福岡市民会館
>>情報詳細 https://eplus.jp/neoland-case4/

Website:https://www.cro-magnons.net/
YouTube:https://www.youtube.com/cromagnonsSMEJ

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