「ここに愛がある」Survive Said The Prophet、ファンとの絆を再確認した『Hold the Door Tour』ファイナルをレポート

レポート
音楽
2025.1.23
 撮影=Daiki Miura

撮影=Daiki Miura

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Survive Said The Prophet『Hold the Door Tour』2025.1.17(FRI)東京・恵比寿LIQUIDROOM

ファンとの絆を再確認するというテーマも掲げ、サバプロことSurvive Said The Prophetが昨年9月から全国各地を回ってきた『Hold the Door Tour』が2025年1月17日(金)、東京・恵比寿LIQUIDROOMでツアー・ファイナルを迎えた。因みにサバプロは前日も同じ会場でゲストにROTTENGRAFFTYを迎え、ライブを行っている。そのセミファイナルも、ワンマンで臨んだファイナルも、ともにソールドアウトしたことで、見事、有終の美を飾ったわけだが、900人キャパのライブハウスを2日間、ソールドアウトできたことは、後述するようにバンドにとって意味のあるものになったはず。ファンとの絆を再確認するためのツアーは結果、バンドとファンの結びつきの強さを見せつけるものになったということを、まず声を大にして言っておきたい。

それを伝えることがこのレポートの役目なのだと信じて、書き進めていくが、Yosh(Vo)によるサビのシャウトから一気に演奏がハジけ、観客にダイブに加え、ヘドバンもさせた1曲目の「Useless」。続けざまにラウドロック・ナンバーをたたみかけていった序盤からバンドと観客は、これまでライブハウスで育んできた絆を見せつけていった。

「全員で来い!」と声を上げ、繋げた2曲目の「T R A N S l a t e d」で早速、観客がシンガロングの声を上げる。「アップ!アップ!来い!」と煽るYoshにリフティングで応えた観客達が「1-2-3!」というYoshの合図でダイブになだれこむ光景は痛快の一言。

観客全員が跳ねながら手を振った「Fool’s gold」から繋げたアンセミックでアップテンポのロック・ナンバー「found & lost」で、冒頭からいきなりシンガロングした観客は、続く「Bridges」「Drive Far」でもシンガロングする。<石橋叩き続けてきたんだ>というキラーフレーズが耳に残る前者、Ivan(Gt)のリードボーカル・パートも含む後者ともにサバプロが持つもう1つの魅力を物語る、海外のメインストリームも視野に入れたポップ・ナンバーだが、そこで不意に気づいたのだった。自然に沸き起こる観客のシンガロングが多くの場合、単純なユニゾンではなく、Yoshの歌と掛け合いになっていることにーー。

もちろん一朝一夕にライブ・バージョンができたわけではないのだろう。ライブで何度も演奏しながら、現在のYoshと観客が掛け合うスタイルができあがっていったのだと想像したら、サバプロがこれまでどんなふうにライブに臨んできたかが窺えはしないだろうか。

「ツアー・ファイナルお越しいただきありがとうございます。2025年はサバプロの年にしてもいいんじゃないかな。ベラベラ喋ってても音楽にならないからこのまま続けてもいいですか?」

Yoshによる短い挨拶を挟んでからの中盤は「HI | LO」以下、R&Bの影響も感じられるポップ・ナンバーを序盤と同様に観客のシンガロングとともに繋げていく。「S P I N E」でTatsuya(Gt)からIvan、そしてShow(Dr)とリレーした間奏のパッセージも聴きどころ。その「S P I N E」で観客が見せた一糸乱れぬワイプは壮観の一言だった。

同期で鳴らしたピアノの音色が跳ねた「The Happy Song」では、そのピアノに合わせ、観客がハンドクラップで応える。その様子を誇らしげに眺めていたYoshは笑顔で頷くと、オチサビを敢えて歌わずに観客のシンガロングに聴き入ったのだった。

「いつ聞いてもおまえらの声は最高だな!」とYoshが快哉を叫んだ「NE:ONE」はアップテンポのロック・ナンバー。イントロに歓声が沸いた「Paradox」はバラードとも言える曲調ながら、ShowのグルービーなドラムプレイとTatsuyaのブリッジ・ミュートが演奏にラウド・ロックの要素を加えるところがおもしろい。続く「red」も同趣向の曲だが、Showのスクリームを含め、バンドが見せつける凄みが観客を圧倒しながら、観客の目をステージの4人に釘付けにする。

そこから一転、バンドはリラックスしたムードを持つトラッド・フォーキーなバラード「3.A.M.」とR&B調のポップ・ナンバー「When I」を立て続けに披露して、フロアの空気を180度変えてみせる。Ivan、Tatsuya、Showの演奏がファンキーにハジけた後者ではYoshと観客が再び見事なコール&レスポンスを繰り広げ、大きな一体感を作り上げたのだった。

「HI | LO」以下の展開は、脱ラウド・ロックと同時に王道のロック・バンドであることを証明しようとしているようにも思えたが、エモいギター・ロックともポップ・パンクとも言える「Conscious」からいきなりなだれこんだラストスパートでは、再びバックボーンにラウド・ロックを持つバンドの矜持を存分に見せつけていく。

「金曜日のこの時間から来てるなんて、システム化されていない奴らが集まってる気がする。どうだ? やる気あんのか?」

Yoshのシャウトを合図にTatsuyaがジェット音を交えながらかき鳴らしたストロークにIvanがザクザクザクと刻むメタリックなリフが絡みつく。

「全員で来い!」

Yoshが声を上げる。観客はすでにシンガロングの声を上げている。曲はもちろん、「Network System」。メタリックなサウンドを纏ったアンセミックなロック・ナンバーは、Showのスクリームに加え、IvanとTatsuyaが繰り広げる激しいアクションも見どころだ。観客のシンガロングが響きわたる中、ダイブしながらステージに押し寄せる観客とYoshがハイタッチを交わす。ライブのエンディングとして、これほどふさわしい光景はなかっただろう。

しかし、「その絵面を壊したい」と言ったYoshをはじめ、この日、サバプロは大騒ぎの中、ライブを終えたくなかったようだ。なぜなら、観客に語り掛け、しっかりと伝えたいことがあったからだ。長くなるけれど、バンドからの大事なメッセージだからYoshの言葉にぜひ耳を傾けていただきたい。

「僕達は明日がどうなるかわからないことが多くて、この4人が一緒にいないと不安になってしまうんです。だけど、この4人が集まっても不安があるってことに気づいて、たくさんライブをしようって思ってライブをしています。だから、今回、LIQUIDROOMって大きな箱を2デイズ、ソールドアウトにしてくれたみなさんは僕達にとって、とてつもなく大事なライフラインなんです。大事な時間とお金を音楽に使ってくれてありがとうございます。その行為を僕らは奇跡と呼んでいます。僕達にはラブがある。それでも愛はどこにあるんだろうと悩むことが僕は毎日あります。ラジオを聴いたり、ネットを見たりしていると、恋愛ソングは多いし、愛はこうだって言われることが多いけど、僕はそこには愛を感じない。だから、歌い続けようと思います。どこに愛があるんだろうなんてネガティブな思いじゃない。僕はここにラブがあるんだよって思いながら、愛はどこにあるんだいってみんなに聞いているつもりなんです。最後にそんなお祈りの歌をやってもいいですか?」

観客が掲げるスマホの明かりの中、本編の最後を飾ったのは、ロック・バラードの「Prayer」。そこに込めた思いは、Yoshが語った通り。

同期のピアノの音色とともに曲がエンディングを迎え、暗転すると、ステージからメンバー達の姿が消えているという演出が心憎い。そこで終わってもよかっただろう。しかし、そこはライブハウスで多くのバンドと鎬を削ってきた4人だ。しっとりと終わるのは性に合わないと考えたのか、今年の夏、アルバムをリリースすることと、憎しみの過ちを音源化したという前作の『Hateful Failures』とは真逆のタイトルになることを発表して、観客を沸かせると、アンコールにファンキーなポップ・ソングの「Right and Left」とアンセミックなロック・ナンバー「MUKANJYO」を披露。

「全員飛んでこい!」と言いながら、Yoshがダイブしてきた観客とハイタッチを交わし、ライブのエンディングにふさわしい光景を今一度作り上げながら、聴く者の胸をえぐるような歌で観客にとどめを刺す。そしてYoshは指でハートマークを作りながら、「ラブ、ピース&ロックンロール! 今年もいっぱい遊んでな!」と言ったのだった。

取材・文=山口智男 撮影:Daiki Miura

セットリスト

Survive Said The Prophet
『Hold the Door Tour』

2025.1.17(FRI)東京・恵比寿LIQUIDROOM

<セットリスト>
1 Useless
2 T R A N S l a t e d
3 Fool's Gold
4 found & lost
5 Bridges
6 Drive Far
7 HI | LO
8 S P I N E
9 The Happy Song
10 NE:ONE
11 Paradox
12 RED
13 3.A.M.
14 When I
15 Conscious
16 Network System
17 Prayer ※Ivanアコギ

En1 Right and Left
En2 Mukanjyo

公式サイト:https://survivesaidtheprophet.com/

ツアー情報

『Survive Said The Prophet “State Of Mind Tour”』
2025年03⽉28⽇(金) 香川県 高松DIME
2025年03⽉29⽇(土) 広島県 LIVE VANQUISH
2025年04⽉04⽇(金) 石川県 金沢EIGHT HALL
2025年04⽉06⽇(日) 愛知県 DIAMOND HALL
2025年04⽉12⽇(土) 福岡県 BEAT STATION
2025年04⽉13⽇(日) 大阪府 GORILLA HALL OSAKA
2025年04⽉18⽇(金) 東京都 Spotify O-EAST
2025年04⽉19⽇(土) 宮城県 仙台darwin
2025年04⽉25⽇(金) 北海道 札幌PENNY LANE24
2025年04⽉26⽇(土) 北海道 苫小牧ELLCUBE


SABA CULT:6,500円(税込 / ドリンク代別)
一般:5,500円(税込 / ドリンク代別)

イープラス先着先行
1月28日(火)12:00~1月30日(木)23:59まで(先着制)

 

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