「丁寧に、大切に、扱えたら」~鳥越裕貴、多和田任益、荒井敦史が語る『極めてやわらかい道』
GORCH BROTHERS PRESENTS『極めてやわらかい道』
2025年3月20日(木・祝)から30日(日)まで『極めてやわらかい道』が本多劇場で上演される。
本作は、池松壮亮主演映画『君が君で君だ』(2018年公開)の原作としても知られる作品で、2011年ゴジゲン第11回公演として駅前劇場にて初演、2018年にゴジゲン第15回公演『君が君で君で君を君を君を』としてリブートもされた、松居大悟の渾身作。
演出は、これまで松居の演出助手として長年の師弟関係を築いてきた川名幸宏が手がける。出演者は鳥越裕貴、多和田任益、荒井敦史、長友郁真、灰塚宗史、長南洸生、そして永島敬三、ゴジゲンの本折最強さとしが顔を揃えた。
鳥越裕貴、多和田任益、荒井敦史に話を聞いた。
中に入っていくと、すごく純粋なものを感じた(鳥越)
ーー今回、『極めてやわらかい道』に出演が決まっていかがですか?
鳥越:松居さんと川名さんの公式コメントにすごくいろんなものが詰まっていて、ちょっと「読まなければよかったな」と後悔するくらい(笑)、熱いものがあるので。素敵だなと思いながらも、ばしばしプレッシャーかけてくださるやん……ってことも感じています。
多和田:以前から松居さんと、そして川名さんも、いつかご一緒できたらと思っていたので今回すごくうれしいのですが、僕もコメントを読んで、鳥ちゃんと同じくこれは相当がんばらないといけない、と思いました。そういう熱がこもった作品に参加させていただけるのは、役者としてとてもありがたいことだなと思っています。
荒井:僕も同じですよ。そりゃそうですよ。
一同:(笑)
荒井:川名さんとは『いとしの儚』(2021年)でご一緒して、そのときに演出助手時代のお話も聞いたりしていたので、あのコメントにある“熱”のようなものが具体的にイメージできてほんとに……どうしようかなって。もうね、どうしようかなって感じです。
鳥越・多和田:(笑)
荒井:そういう作品に声をかけていただいたことはうれしいし、このメンバーだからこそできるものもあると思っています。松居イズム、ゴジゲンイズムともまた違う、川名さんのイズムもあると思うから。それと先日、ゴジゲンの公演を観に行ったときに松居さんに挨拶させてもらったのですが、「好きにやっちゃってください」とおっしゃっていて、それはそれで違う意味のプレッシャーも感じました。
ーー『極めてやわらかい道』は2011年ゴジゲン第11回公演として駅前劇場にて初演され、2018年公開の映画『君が君で君だ』の原作でもありますし、2018年のゴジゲン第15回公演で『君が君で君で君を君を君を』としてリブートもされています。過去作は映像などでご覧になりましたか?
鳥越:僕は一通り見ました。舞台は映像で観ました。
鳥越裕貴
多和田:僕は脚本だけ読みました。映像は今の時点では見ていないです。見ないで稽古に行こうかな、と思うくらい。
鳥越:迷うよな。
多和田:うん。
ーー荒井さんはまだ脚本を受け取ってないんですよね。
荒井:なので僕は映画だけ見ました。
ーー鳥越さんは過去作を一通りご覧になって、どんな印象を持たれましたか?
鳥越:最初に脚本を読んだ時は「なんやこの狂った世界観は」と思ったんですけど、どんどん中に入っていくと、すごく純粋な……「恋の仕方を知らないんだな」っていうのを感じて。その人たちに巻き込まれていく周りの人たちも、なんかすごく「男の子だな」じゃないですけど。“自分の中にあるもの”にみんなが徐々に触れ合っていくというのが、人間味があっておもしろいなと思いました。
ーーそれをこのメンバーでやることにはなにか考えましたか?
鳥越:すごく楽しみです。あのばかばかしさをこのメンバーでできるのもおもしろいと思う。初演(駅前劇場)からは劇場も一回り大きくなるので、熱量っていうところでも大変だろうなと思うし、その中で自然なやりとりをするのも大変そうだけど、楽しそうです。
ーー多和田さんは脚本を読んでいかがでしたか?
多和田:僕も「とち狂ってるな」っていうのがあったんですけど、その中にも「あ、わかる」と思う瞬間があったりして。「このシーンをこのメンバーでやったらめっちゃおもしろくない?」って笑いながら読んだりもしました。重いのかもと思っていたので、「読むのに時間がかかるのかな」「何回も読み直したりするのかな」とか考えていたんですけど、そんなこともなくサクサク読めました。
ーー内容はどうでしたか?
多和田:シンプルなんですけど、言葉で言うのは難しいっていう印象です。でもみんな不器用すぎるし、ザ・人間って感じ。子供かな、と思いました。素直すぎて。
多和田任益
ーー荒井さんは映画を見ていかがでしたか?
荒井:映画だから成立する部分というか、これが舞台になるとどうなんだろうというところもあったので、そこをどう表現していくのかみたいなところも含め……早く脚本を読みたいです!(笑)
ーーこのメンバーの中では荒井さんだけが川名さんの演出を受けた経験がありますが、川名さんの演出にはどんな印象をお持ちですか?
荒井:僕が一緒にやった時は、イギリスの演劇みたいな繊細で緻密な印象でした。でもこちらからもアイデアはどんどん出して、川名さんもそれを受け入れて、どんどんつくっていくって感じでした。その時に僕が演じた役が博打打ちのクズで、とにかく叫んでることが多かったんですけど、そういう中にもあれこれ取り入れてくれる演出家さんだと思います。
「鳥越裕貴さんが座長で」って言われた瞬間「やります」って(荒井)
ーーみなさんは『熱海殺人事件』というタイトルも頭に浮かんできてしまうメンバーでもありますが、今作をこのメンバーでやるということはどう思われていますか?
鳥越:チラシのビジュアルが出たときに、周りの役者から「おもしろそうなことするね」ってすごく言われたので、チラシ負けしないようにっていう気持ちです。
多和田:実際、鳥ちゃん(鳥越)とあっちゃん(荒井)がいるのはめちゃめちゃ心強いです。それこそ僕も二人の名前を聞いて「熱海殺人事件!」って言いましたけど、逆に言えば(そのくらい色のついたメンバーなのに)『熱海殺人事件』じゃない作品で一緒にできるというのは本当にありがたい。『熱海殺人事件』で感じてきた二人のすごさや好きな部分がありますけど、違う作品、違う現場でやることで、もっとそこを感じそうだなと思っています。すごく好きだし、信頼している二人がいてくれて既に感謝。楽しみしかない。
ーーちなみにその「すごさや好きな部分」とは、どういうところですか?
鳥越:こしょばいなあ。
荒井:やめようよ、ガス欠されたら困るよ。
多和田:(笑)。ガス欠しない。特別なんですよ、このふたりって。『熱海殺人事件』を同じタイミングで一緒にできている役者仲間ってほんとに特別。そこはこれからもずっと変わらないと思っています。鳥ちゃんとの出会いは舞台「文豪ストレイドッグス」で、その時は鳥ちゃんが座長だったんですけど、「こういう座長さんっているんだ」と思ったんです。ちゃんと座長なんだけど、「俺、座長だから」って感じは一切なく、むしろ多くは語らず、芝居と作品への取り組み方で示してくれていた。だから鳥ちゃんがトップにいると、もし不安な人がいても「大丈夫」って思える安心感がある。と同時に背中を叩いてくれるお兄ちゃんってところもあるので。『熱海殺人事件』でも、4人という少ない人数の芝居だからこそ、人間としてもそうだし役者としての素晴らしさと厚みと、他の人を寄せ付けないおもしろさがあると思っているんですけど……
鳥越:(唐突に)もうはずかしい! やめて!
多和田:(笑)。なのですごくうれしいです。大変な思いも悔しい思いも一緒にしてるから、そういう仲間とできるのはめちゃめちゃうれしい。そしてあっちゃんは、
荒井:いいっていいって!
多和田:(笑)。“ハッピーセット”なのでね、僕とあっちゃんは。
荒井:そうですそうです。どっちがポテトなの。
多和田:2人ともポテトじゃないの?
鳥越:(笑)
多和田:でも僕があっちゃんを信頼していることは伝わると思う。そういうものは舞台上でも出ると僕は思っているから。そういう意味ではこの作品でも、僕らの空気感みたいなものをちゃんとつくっていければ、僕らがやる意味が出るんじゃないかなと思います。
多和田任益
荒井:ありがとうございます。
ーー(笑)。荒井さんはこのメンバーでやることをどう思われていますか?
荒井:僕はもちろんたわちゃん(多和田)もそうなんですけど、なにより今回一番楽しみにしているのは、鳥越裕貴さんとはこれが“ちゃんと初共演”なんですよ。
鳥越:あ、ほんまやわ。
多和田:あ、そうか。
荒井:これね、荒井あるあるなんです。僕はいろんな稽古場に行ったり、いろんな現場にいるっぽいような雰囲気だから(?)、共演していそうで実はしてない人がいっぱいいるんです。今回、鳥ちゃんとちゃんと共演するのは初めてで、というかお話をいただいた時に「鳥越裕貴さんが座長で」って言われた瞬間「やります」って言いました。
鳥越:うれしいな。
荒井:あとね、なんかね、以前もあったんですけど、こういうふと来るお話には絶対に多和田がいるんですよ。
多和田:(大笑い)
荒井:「多和田、いそうだな」と思ったら「多和田さんも」って言われて、「おいなんだこの3人」ってなりました(笑)。だからすっげ―楽しみですよ。
ーー鳥越さんが座長ならやりたいって思った理由はありますか?
荒井:やりたいから、です。ただ僕は去年くらいから、人生のテーマみたいなものに「やったことないことを消していく」というのがあるんです。だから「鳥越裕貴」「やります」っていう。
鳥越:あ、消された。
荒井:だから二度目はないかな。
一同:(笑)
荒井:でもコロナ禍の(公演中止で)苦しい時期もなんだかんだ近くにいて、同じ楽屋にいたのに共演してなくて。気付けば(知り合って)4年位経ってますからね。一緒にやりたいですよ。すごく楽しみです。
荒井敦史
ーー鳥越さんはふたりのことをどう思っていますか?
鳥越:役どころとしても絶妙だなと思っています。この作品に描かれている「10年間(姫を)一緒に推す」みたいな空気感は、なにかしら一緒に過ごした時間がある人のほうがより濃さが出るんじゃないかと思うから。このふたりがいたら相当心強いなと。最初に言ったようなプレッシャーはもちろんありますけど、このメンバーだと楽しみしかないっていう感じです。今の時点で、上演後にあっちゃんと本多劇場の階段に座って呑んでる景色しか浮かばないです(笑)。下北沢の街を眺めながら。
多和田:呑んでそう(笑)。
ーーそこに多和田さんは参加しないんですか?
多和田:僕はあんまり飲まないからね。
荒井:でも4回に1回くらい来そうだけどね、寂しくて。
多和田:ジュース持って行くかも。今回けっこう行くと思う。
鳥越:たしかに。一緒にいる時間が増えれば増えるほどいいなと思う。
多和田:うん、増やしたいと思ってる。
ーーみなさんの博多弁も楽しみですよ。
鳥越:たしかになあ。
荒井:僕は坂本龍馬だから、「ぜよぜよ」練習してたんですけど。
ーーぜよぜよ(笑)。鳥越さんと多和田さんは元が関西弁ですからね。
多和田:そう、どんな感じになるんだろう。
鳥越:余計にむずそうよね。関西弁と博多弁、近そうで近くない。
荒井:そうか。埼玉弁でよかったな。だけど埼玉の人のいいところは、どの地域にも染まろうとするところなんですけどね。いろんなものを受け入れよう精神があるので。
ーーそうなんですか?(笑)
荒井:そうですよ。僕はいま、埼玉代表として喋ってますよ。
一同:(大笑い)
“純粋と歪(いびつ)”は得意分野の3人(多和田)
ーー最後に、今の時点で楽しみなことをお聞かせください。
荒井:みんな言ってますけど、このメンバーで作品をつくることができるということがなにより楽しみです。あと、キャストの中にゴジゲンの最強さん(本折最強さとし)がいらっしゃるのも楽しみです。最強さんは『極めてやわらかい道』には出演されていなかったので、フラットな感じで来てくださるでしょうし。もうひとつ言うと、前回川名さんとご一緒した時の舞台セットが、踊りで言えばコンテンポラリーみたいな……いろんなものをなにかに見立てるっていうつくりだったんです。そういう発想をする川名さんが、本多劇場というサイズ感でどんな劇場空間をつくるのかも、いま自分の中で楽しみなことです。
多和田:さっき鳥ちゃんも言ってましたけど、僕たちはずーっと一緒にいて姫のことを見守っているという関係性の役柄で、そういう役をこのメンバーでできるっていうのはうれしいし楽しみです。本多劇場でできることもうれしいです。役者はみんな立ちたいと思っているような演劇の聖地だし、僕自身にとっても「役者としてがんばっていこう」と思わせてもらった特別な場所なので。今回ご一緒する(永島)敬三さんは、その作品の時に、鳥ちゃんとあっちゃんみたいな感じで、チームが別で共演はしてないけど一緒の楽屋にいたという存在なんですよ。そういう敬三さんと本多劇場という場所でご一緒できるのが楽しみだなと思っていますし、本多劇場がより大切な場所になれるよう挑んでいきたいです。そしてきっと僕らって「熱海殺人事件?」と思われると思うんですよ。だから「いやいや、『熱海殺人事件』じゃなくても僕らはおもろいですよ!」ということをちょっと示したい(笑)。個人的に“純粋と歪(いびつ)”は得意分野の3人かなと思っていますし。この3人とみなさんとで、がんばっていきたいと思ってます。
鳥越:すでにもうこの雰囲気が楽しいですし、このメンバーで、あの作品で、本多劇場で、しかもビジュアルが出た時点で楽しみにしてもらえている。これはプレッシャーでありつつもうれしいことです。後半のあのジェットコースター感も、このメンバーは『熱海殺人事件』の熱量も出せますけど、また違った熱量でかき乱しまくるんちゃうかなっていうのを想像するだけで楽しいです。あと僕はいわゆる“応援してもらう側”に立つことが多いので、応援する側目線に立てるのもなんかちょっと自分の中ですごい楽しみというか。(内容的には)ちょっとニュアンスが違いますけどね(笑)。そしてやっぱ松居さんに観てほしい。観に来ていただいて、感想……は欲しいけど、一旦川名さんにだけこっそり伝えてもらいたいです(笑)。自分たちもこの『極めてやわらかい道』を、丁寧に、大切に、扱えたらと思います。
ライター:中川實穗
公演情報
作:松居大悟
潤色・演出:川名幸宏
出演:鳥越裕貴 多和田任益 荒井敦史 長友郁真 灰塚宗史 長南洸生/永島敬三 本折最強さとし
スウィング:松尾敢太郎
■イープラス先行(抽選)
2025年1月25日(土)12:00〜1月26日(日)23:59
https://eplus.jp/kiwamete/
■イープラス先着先行
2025年1月29日(水)12:00〜2月1日(土)18:00
https://eplus.jp/kiwamete/
【公式X】https://x.com/gorch_stage #極めて2025