世界的テノール歌手・ハビエル・カマレナが日本初ソロコンサートを開催

2025.2.21
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ハビエル・カマレナ

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2025年5月15日(木)東京オペラシティコンサートホールにて、『ハビエル・カマレナ 21世紀の”キング・オブ・ハイC” 日本初ソロコンサート』が開催される。

ハビエル・カマレナは世界的テノール歌手。この度、彼のソロコンサートの魅力を語った、オペラ評論家の香原斗志のコラムが届いたので紹介する。

(C)Toshi Kahara

ナポリの観客が大興奮したカマレナの《ロメオとジュリエット》

香原斗志(オペラ評論家)

歌えば世界が注目し、各国から人が集まるスター歌手がいる。メキシコ生まれのテノール、ハビエル・カマレナもその一人だ。ナポリのサン・カルロ劇場で2月15日に初日を迎えたグノーのオペラ《ロメオとジュリエット》も、カマレナが近ごろレパートリーに加えたロメオ役を歌うというので、大いに注目された。私も日本からナポリに出かけた一人だが、その甲斐があったどころか、お釣りをたくさんもらったほどの公演だった。

ロメオといえば若さと純粋性が漲らなければはじまらない役だが、カマレナの叙情的でやわらかい声は、そんなロメオそのもの。やわらかいまま輝く高音で、無辜の情熱がいっそう強調され、弱音が自在に加えられることで、繊細な感情が浮き彫りになる。また、洗練された端正な歌唱がグノーの音楽とマッチして、とにかく歌が美しい。

ジュリエット役のネイディーン・シエラとの声の相性も抜群で、第2幕も第4幕も愛の二重唱で歌われた情熱に強く打たれたが、なんといっても心を揺さぶられたのは第5幕のフィナーレだった。ジュリエットの墓にすがっての悲痛な叫び、彼女が生きていたと知ってのよろこび、毒薬が回っての絶望……。すでに述べたカマレナの歌唱の帰結として、すべての感情が耳に生々しく迫って、心を強く打たれた。

(C)Toshi Kahara

2人の純粋な愛が死によって解決されるこの場面は、ともすれば感情が安っぽく上滑りしがちだが、真の感情が怒濤のように押し寄せて、私はこのオペラのこの場面ではじめて涙をこらえることができなかった。客席が興奮に包まれたのはいうまでもない。

世界最高峰の歌唱テクニックを誇るカマレナだが、彼が名だたるスターなのは、そのテクニックを駆使して、美しすぎるほどの歌に本物の感情を漲らせるからだ。世界のどこで歌っても聴きにいく価値があるのは当然だが、この5月には彼のほうから日本に来てくれるのだから、こんなにうれしいことはない。

METでアンコールに応えたことがすでに伝説のように語られている《ラ・チェネレントラ》も、《連隊の娘》も、圧倒的にうまいだけではない。歌われる感情が圧倒的に本物なのだ。これだけの本物が東京にいながらにして味わえる。こんなにうれしいことはない。

公演情報

『ハビエル・カマレナ 21世紀の”キング・オブ・ハイC” 日本初ソロコンサート』
 
日程:2025年5月15日(木)
会場:東京オペラシティコンサートホール
 
出演
テノール:ハビエル・カマレナ
指揮:園田隆一郎
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

曲目・演目
グノー:歌劇《ロミオとジュリエット》より「あぁ、太陽よ昇れ」 
ドニゼッティ:歌劇《ラ・ファヴォリート》より「王の愛妾?・・・あれほど清らかな天使」 
ロッシーニ:歌劇《チェネレントラ》より「必ず彼女を見つけ出す」 
ドニゼッティ:歌劇《連隊の娘》より「ああ!友よ!なんと楽しい日!」 
ドニゼッティ:歌劇《ランメルモールのルチア》より「わが祖先の墓よ」 
マスネ:歌劇《ウェルテル》より「春風よ、なぜ目覚めさせるのか」 ほか