パイロットになりきって臨場感たっぷり空の旅へーー中川月碧と髙山晴澄が復興のシンボル・長田を訪れた『神戸セラボ探検日誌』Vol.5
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神戸セーラーボーイズ 中川月碧、髙山晴澄 撮影=福家信哉
神戸で活躍中の演劇ユニット・神戸セーラーボーイズ(以下、神戸セラボ)が神戸のまちをナビゲートする連載『神戸セラボ探検日誌』。第5弾は、3月で神戸セラボを卒業するリーダーの中川月碧(るきあ)×中学生の髙山晴澄(はると)コンビでお届け。今回は大の飛行機好きで知られる髙山きってのリクエストで、西日本唯一の本格フライトシミュレーター施設・テクノバードを訪問。続いて新長田駅から続く大正筋商店街にある日本茶専門店・お茶の味萬に移動し、濃厚な抹茶アイスを堪能。髙山が神戸セラボ加入直後にジェラートの食レポ体験をしたという二人。あれから約1年、二人の距離はさらに近づいていた。3月14日(金)からは『神戸セーラーボーイズ 定期公演vol.4 RICE on STAGE「ラブ米」~Golden wheat~』(以下、『米ステ』)がAiiA 2.5 Theater Kobeで開幕。神戸セラボ初の東京公演も控える『米ステ』への意気込みも語ってもらった。
準備を整え……テイクオフ!
臨場感たっぷりのフライトシミュレーションでパイロット体験!
実寸大の本格的なコックピットに座り、パイロットになれる瞬間を提供するテクノバード。新長田駅から徒歩約10分のところにあるこの施設で、中川と髙山はパイロットの制服姿でボーイング737-800のフライトシミュレーションを体験した。旅客数180席クラスで、世界で最も多く使用され、最も人気の高いジェット旅客機のひとつであるボーイング737-800。パイロット養成学校で訓練を積んだプロライセンス保有者がスタッフとしてアテンドしてくれるとあって安心感も抜群だ。
はちきれんばかりの笑顔で操縦する髙山
まずは髙山が実寸大のコックピットに入り、機長席に座って操縦桿を握る。あこがれのパイロット体験だけに、自然と笑みがこぼれる。エンジン音や出発前の機内のサインなど、まるで飛行機の中にいるよう。髙山は神戸空港を離陸し、淡路島や神戸港上空をフライトするコースを選択。目の前のワイドスクリーンに広がる光景がみるみる高度を上げ、本当に空を飛んでいるような感覚に。「髙山くん、うまい!」とスタッフの副機長に、なめらかな操縦をほめられた。
中川は真剣な面持ちでシミュレート
続いて中川は同じく神戸空港から離陸し、ちょっと本格的なフライト体験を。実際にはありえない急旋回など体験し、髙山とはまた違った臨場感を味わった。フライトコースは大阪上空。あべのハルカスや大阪城、遠くは京都、琵琶湖まで見渡せるまで高度を上げたのちに、伊丹空港(大阪国際空港)に着陸することに。中川のフライトもまたセンス抜群と副機長、「まれにみるソフトランディング」とノンストレスの着陸が高評価だった。中川は格納庫へ向かうシミュレーションも体験し、陸上での車輪の動かし方も学んだ。
ひとりで操縦できる172スカイホーク
ツインエンジンのG58バロンでパワフルな操縦を体験
また、中川は小型機の代名詞的存在であるセスナの172スカイホークで夕景の、髙山は訓練で使われることの多いG58バロンで夜景のフライトシミュレーションも体験し、それぞれの機体の個性も味わいテクノバードを後にした。
髙山の将来の夢は飛行機を操縦できる俳優!?
髙山晴澄、中川月碧
フライトシミュレーションを終え、感想を尋ねると、「ボーイングのコックピットを見たことがなかったので楽しかったです。操縦桿が思ったより重かったのが印象的でした!」と声を弾ませる髙山。「ほんまに空を飛んでいるみたいでした!」と続ける。中川も「晴澄と違ってそこまで飛行機に詳しくないんですが、コックピットに座ってみたらめちゃくちゃワクワクしました。リアルで楽しかったです! こういう訓練を経てパイロットになるんだなと、すごく貴重な経験になりました」と話した。
髙山の知識量に、施設スタッフからも驚きの声が!
「小さいころから飛行機がめちゃくちゃ好きで、『ハッピーフライト』という映画を観たり、伊丹空港にもよく飛行機を見に行ったりしていました」という髙山。フライトシミュレーション中にパイロットになりたい夢が再燃してきたそうで、「将来は神戸セーラーボーイズとパイロットを両立させたいです。神戸セラボのワールドツアーがあったら、僕が飛行機を操縦してみんなを世界に連れていきます!」と壮大な夢も語った。
キッズサイズのキャプテン制帽とサングラスも着こなす二人
中川も今後の俳優活動の参考になったと目を輝かせる。「パイロットの役をいただいたら、リアルな操縦席を思い出しながら演技できそうだなと思いました。神戸セラボのメンバーにもテクノバードさんで教えてもらったマニアックな知識をいろいろ教えてあげたいと思います(笑)!」と収穫も大きかったようだ。
濃厚抹茶アイスを堪能! その味を知ったら「もう戻れないかも……」
髙山晴澄、中川月碧
続いては大正筋商店街にあるお茶の味萬で抹茶アイスの食べ比べを。その前に、1995年の阪神淡路大震災で建物の倒壊や大規模火災など甚大な被害を受けた長田区について、店主の伊東正和さんに語ってもらった。「長田は映画館が6軒あって、映画を見て、食事を楽しめるような町やったんです。それが突然、地震で全部なくなって。あの時、水が出なかったから小さな火でも消せなくてね。ここから500メートル南にある海の水を汲み取って、夕方になってようやく消し止めました」。
焦土と化した長田区だったが、街は徐々に再建されていく。そんな中、多くの著名人も長田区を元気づけようと、この街を訪れた。伊東さんはスポーツ選手や歌手、お笑い芸人など商店街の復興を支援した人々の手形やメッセージなどを陶板に焼き付け、商店街の路上に埋め込んだ。その名も「長田スター街道」。今までもそれらは商店街を訪れる人を笑顔にしている。
伊東さんの現在の楽しみは「若者に夢を持ってもらうこと」という。そこで中川と髙山も将来叶えたい夢を色紙に書かせてもらった。二人の夢の色紙も店内に掲げられているので、そちらも楽しみにぜひ味萬に立ち寄ってみてほしい。伊東さんは柔和な表情で「叶えたらまたお店に来てな」と二人にエールを送った。
復興の努力を発信するシンボルとして2020年1月17日に発売された味萬の「高級抹茶アイス」。髙山は「抹茶アイス食べ比べ」(950円)を、中川は金箔がまぶされた「抹茶アイス 極」(1,500円)をいただくことに。「いただきます。うまっ! めっちゃおいしい!」(髙山)、「いただきます! うわ! めちゃくちゃ濃厚です!」(中川)と、アイスを口にふくんだ2秒後に驚きと喜びが入り混じった声色で食レポする二人。中川×髙山コンビでのアイスの食レポは1年ぶりとのこと。では、お願いします!
まずは「抹茶アイス食べ比べ」の髙山から。「普段食べている抹茶のアイスと香りの広がり方が全く違いますし、この二つのアイスも香りと味が全く違います。すごくおいしくて、普通の抹茶アイスが食べれなくなっちゃうかもしれないなって思いました」。中学3年生にして唯一無二の抹茶味を知ってしまった髙山、「もう前には戻れないかもしれない……」と後退不可の新たな扉を開けた。
「抹茶アイス 極」を味わった中川。「前回の食レポでは、僕はジェラートにエスプレッソをかけたアフォガードをいただいたのですが、その時は苦味と甘みのバランスがいい感じでした。今回の高級抹茶は苦味の中にしっかりとしたおいしさがあって、香ばしさもあります。これはくせになりそうですね……」とすっかりはまった様子だった。
『米ステ』で新キャラクターを演じる二人、どう立ち向かう?
交換しながら3種類のアイスを楽しんだ二人
3月14日(金)に開幕する4回目の定期公演は『RICE on STAGE「ラブ米」』。お米を擬人化したキャラクターが登場する短編TVアニメ『ラブ米 -WE LOVE RICE-』を原作とした作品で、2017年11月に初舞台化以降、何度も上演されている人気作だ。今回は神戸セラボのメンバーだけでなく、健人や川上将大、北乃颯希ら舞台『米ステ』シリーズキャストも多数出演。なおかつ、中川と髙山はそれぞれ今作オリジナルの新キャラを演じる。
年明けに神戸三宮シアター・エートーで上演されたBoys☆Act ~camellia『パニックカフェ』のteam COFFEEで一部の神戸セラボメンバーと共演した田内季宇の、初めて役が付いた作品は『米ステ』だったという。田内は神戸セラボにこんなメッセージを残してくれた。
「『米ステ』に神戸セラボの子たちも加わって、また新しい物語として上演すると聞いてものすごく興奮しましたし、あの世界にこの子たちが接してどう思うのかと期待しました。僕も稽古場にいたいくらいですし、彼らの戸惑う姿を見たいですね。絶対、この経験は勉強になる。あの世界を作る仲間になれることが僕はすごく嬉しいので、戸惑わずに、全力で、(脚本・演出・作詞を手がける)村井雄さんと米米フレンズの先輩方を信じて演じればいいものができると思います。めちゃくちゃ楽しみながらやったら絶対面白くなるので、頑張ってください!」。
中川月碧
田内のエールを受け止めた二人は、次のように意気込んだ。中川はこう話す。「原作アニメを観させていただいた時に、独特な『ラブ米』ワールド全開だと思いました。今回、僕たちは舞台オリジナルの新キャラクターを演じるので、今まで『米ステ』の世界をつくりあげてこられた先輩方に負けずに、いい化学反応を生み出せたらいいなと思います」。
髙山も「原作アニメと舞台シリーズの両方を観させていただいたのですが、個性がめっちゃ強いキャラたちばかり。演出も僕が知っている舞台とはちょっと変わった雰囲気で、次の公演ではどんな感じになるのかなと、出演する自分の姿が想像ついていません。だからこそめちゃくちゃワクワクしています!」と期待感を込めた。
中川は「食(ショク)」の豆沙(トーサー)を、髙山は「関西稲穂学園」のさとのつきを演じる。個性際立つキャラクターを演じるにあたって、二人はどんなことを気にかけているのだろうか。「前回の『パニックカフェ』で、思いっきり振り切った芝居をすることは大事だなと思いました。常識にとらわれず振り切ることで、逆に非日常的な世界にうまく溶け込めるし、スパイスになるんだと感じました。今回も自然とキャラクターとして生きられるように、ひとつひとつのシーンで存在価値を見せていきたいです」と中川。
髙山も次のように語った。「僕が大切にしていることは、演じている時間はキャラクターになりきって、振り切るということです。僕も『パニックカフェ』でそのことを学ばせていただきました。今回の『米ステ』で登場する新キャラも個性が強いキャラクターばかりなので、しっかりとさとのつきの個性を活かして、キャラクターを魅力的に演じたいなと思っています」。
3月で神戸セラボを卒業する中川「もっと自立して恩返ししたい」
夢を色紙に書いて店主に託した二人「叶えて戻ってきます!」
『ラブ米』の出演を最後に、神戸セラボを飛び立つ中川。リーダーとして神戸セラボをまとめ、昨年4月に新加入した髙山にとっても精神的支柱だった。「僕は緊張しいなので、入った時から本番前は月碧くんに「大丈夫やで」と言ってもらうことがルーティンになっていて、そのお陰でいつも安心して舞台に上がれています。来年度からの僕への「大丈夫」を誰かに引き継いでほしいです……」と不安げな表情を浮かべる。そんな髙山に「全然、大丈夫です。晴澄は僕よりもしっかりしてるんじゃないかと思うくらいで、みんなが気づかないことにも気を回して動いてくれて。僕の手は要らないなって思います。もう安心です」。
そんな中川に贈るメッセージを髙山にもらった。「僕は歌もダンスも、お芝居も経験したことがなくて、ゼロの状態で神戸セーラーボーイズに入ったのですが、月碧くんがずっと支えてくれたこと、本当に感謝しています。心の支えにも、稽古中の支えにもなってくれていた存在が来年度からいなくなってしまうのは不安もあります。でもこの業界にいる限り、絶対また会えると思うので、その時に成長した姿を月碧くんに見せられるようにこれからも頑張ります」。
髙山晴澄
中川は神戸セーラーボーイズは「生きがい」だったという。「高校生活の半分以上を神戸セラボとして活動できたことが幸せです。普通の高校生活ではないですが、神戸セラボの活動を通して自分の未来が見えてきて、目標も見えてきました。心からこの選択をして良かったと思います」。
中川は次のように感謝の気持ちを語った。「自分の活力はやっぱり神戸セーラーボーイズでした。この2年間、応援してくださるファンの皆様がいなかったら続けられなかったと感じますし、このメンバーだから今の自分があります。関わってくださった大人の方々には、人間としても成長させていただきました。神戸セラボでリーダーをやらせていただいた経験もすごく大きかったです。神戸セラボを離れる不安もありますが、もっと自立して活動の幅を広げていきたいですし、神戸セーラーボーイズがこれからもたくさんの方々に応援してもらえるよう、卒業後も恩返しをしていけたらいいなと思います」。
中川月碧、髙山晴澄
取材・文=Iwamoto.K 撮影=福家信哉
公演情報
2025年3月14日(金)~16日(日)AiiA 2.5 Theater Kobe(兵庫)
2025年3月23日(日)~28日(金)Mixalive TOKYO 6F Theater Mixa(東京)
【脚本・演出・作詞】村井 雄(KPR/開幕ペナントレース)
【アニメ原案】高林ユーキ
【キャラクターデザイン】あおいれびん
<イーストキング>
ANN(アン):細見奏仁
SHOCK(ショック):柊木智貴
CARRY(キャリー):明石侑成
龍(ロウ):津山晄士朗
豆沙(トーサー):中川月碧
蓮蓉(リェンヨン):崎元リスト
ネリカ:健人
平山:川上将大
キヨハタモチ:北乃颯希
日本晴:吉澤 翼
てんたかく:中三川歳輝
風さやか:大見洋太
姫ごのみ:石原月斗
さとのつき:髙山晴澄
ぴかまる:⽥中幸真
弟鴨:福島海太
デビー:奥村頼斗
ビル:髙橋龍ノ介
【主催】神戸セーラーボーイズ製作委員会
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TEL : 050-3185-6683(10:00~18:00 オペレーター対応)
【神戸セーラーボーイズ SNS】https://lit.link/kobesailorboys
【公演ハッシュタグ】#神戸セラボ #ラブ米 #米ステ