ラカトシュ・古澤巌・葉加瀬太郎らが開拓したロマ的なアンサンブルの新星登場!
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本場ハンガリーからは「ヴァイオリンの怪人」と呼ばれたラカトシュが登場し、古澤巌や葉加瀬太郎といった有名日本人ヴァイオリニストたちもかつてアンサンブルを組んだ、ロマの音楽から影響を受けた弦楽器アンサンブルの新星が登場した。玉置浩二やリアル・トラウムのストリングスのトップとしても話題を呼んでいるヴァイオリニスト大槻桃斗を軸とした「MOMOTOSアンサンブル」である。
大槻は東京音楽大学を卒業したのち、さまざまなストリングスやオーケストラ、弦楽四重奏でトップを担当する一方、ラカトシュ・アンサンブルに代表されるロマの音楽に魅せられて、「MOMOTOS」と明らかにラカトシュを意識した名前を使ったアンサンブルでの活動をこれまでも継続して行ってきたが、浜離宮朝日ホールクラスでのコンサートは初めての挑戦である。
ロマは北インドに起源を持つ移動型の民族であり、中近東、北アフリカ、ヨーロッパなどで生活している。ロマは以前「ジプシー」と呼ばれていたが、ポリティカル・コレクトネスのため「ロマ」と呼称が変更された。ロマは各地を放浪し、音楽の演奏やダンスなどを行う旅芸人として生計を立ててきたが、彼らによってもたらされた音楽は、現地の音楽に影響を与え、また影響を受け、相互に発展してきた歴史がある。スペインのフラメンコやブラームスやリストが大いに刺激を受けて「ハンガリー舞曲集」や「ハンガリー狂詩曲集」の形に結実した作品群は、クラシック音楽の名曲として200年近い時を超えて歴史の一角をなしている。ヴァイオリンの名手サラサーテは「ツィゴイネルワイゼン」を世に送り出し、今年生誕150年のアニバーサリーイヤーを迎えた「ボレロ」で知られるフランスの作曲家ラヴェルにも「ツィガーヌ」が多くのヴァイオリニストに愛奏され続けており、間違いなくヴァイオリンのもっとも魅力的な演奏スタイルのひとつとして、ロマの音楽が存在し続けてきた。めまぐるしく変化するテンポや激しく上下動する装飾音などのいくつかの音楽的な特徴はあるものの、その音楽スタイルは自由かつ情熱的でポピュラー音楽のように親しみやすく楽しい。
弦楽四重奏とギターとピアノという編成も、ピアソラの楽団とも似ており、幅広い音楽的な表現と即興性を得やすいスタイルなのかもしれない。
大槻自身はラカトシュに大きな影響を受けてヴァイオリンを始めており、大槻のこれまでの活動を見ても、クラシックにとどまらない幅広い音楽性はまさしくこのアンサンブルにそのまま反映されており、おそらく彼の音楽性のコアをなすものだと想像できる。今回のコンサートでもすでに発表となっているモンティの「チャルダッシュ」やディニークの「ひばり」などの代表的なロマ・スタイルの曲はもちろん、そこから影響を受けたブラームスの名曲「ハンガリー舞曲第5番」も彼ららしいロマ・スタイルで料理してくれそうだ。さらに追加で「二つのギター」、「黒い瞳」といったロマ・スタイルにもなじむロシア民謡や、ひばりの作曲者ディニークの孫のグリゴラシュ・ディニークによる「ホラ・スタッカート」なども追加で演奏曲として発表された。今年生誕200年の節目となったワルツ王=ヨハン・シュトラウス2世の「トリッチトラッチポルカ」などハンガリー周辺の国のダンス音楽をどう料理するのかも楽しみである。今回のメンバーは、高宮城凌(第2ヴァイオリン)、宮川清一郎(ヴィオラ)、山本健太郎(チェロ)、豊島悠太(ピアノ)、髙石大和(ギター)。
第1次先行販売のタイミングで本人からのメッセージが届いた。
「浜離宮朝日ホールという素敵な舞台で、幼少期から憧れていた音楽を演奏させて頂くのは本当に幸せです。最高のメンバーと超絶技巧から甘いメロディまで、愛を込めて演奏します。会場でお待ちしております!」
文=神山薫
公演情報
日程:2025年5月4日(日・祝)19:00(開場 18:30)
会場:浜離宮朝日ホール(東京)
大槻桃斗(ヴァイオリン)
高宮城凌(ヴァイオリン)、宮川清一郎(ヴィオラ)、山本健太郎(チェロ)
豊島悠太(ピアノ)、髙石大和(ギター)
ブラームス:ハンガリー舞曲第5番 ほか