What’s FAVOY ~ルーツと今を紐解き“ふぁぼい”を知る~ 第6弾:Empty old City

2025.4.16
インタビュー
音楽

Empty old City

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『FAVOY』ー それは細分化されたネット音楽を網羅するために立ち上がったプロジェクトである

その第1章となるライブイベント『eplus presents FAVOY TOKYO -電鈴合図-』が、2025年8月7日(木)・8日(金)にZepp Shinjuku(TOKYO)にて開催される。
イベント名である『FAVOY』とは、FavoriteをFaveと略して推しと解釈する海外の若者文化に、2010年代に日本のSNSで流行した「ふぁぼる(いいねを押す)」を掛け合わせた「ふぁぼい(推せる!いいね!)」という造語。インターネットを超えリアルで推しを実感し、新たな推しとの出逢いに繋がるきっかけになってほしいという意味が込められている。
SPICEでは本イベントの開催に向けて、出演者であるSou、超学生、缶缶、DAZBEE、水槽、Empty old City、キービジュアルを担当したイラストレーター・萩森じあにインタビューを実施し、バイオグラフィを紐解く。
第6弾となる今回は、Empty old Cityが登場。活動の原点やネットカルチャーと触れあうことになったきっかけ、いまの“ふぁぼい”など、たっぷりと語ってもらった。


──まず、先日渋谷WWWにて行われた1stワンマンライブ『Blood in the Void』のことをお聞きできればと思っています。かなりタフな内容でしたよね。結成以降に発表した楽曲をほぼすべて披露するという。

Neuron:そうですね。オリジナルバージョンに関しては、インスト含めて1曲も欠かさず全曲をやりました。そこはストイックというよりは、約4年活動を続けてきた中で、ライブをやってほしいとか、ワンマンライブはいつやるんだろうという声は、僕らのところにも届いていて。それでようやく1stワンマンを開催するということと、ちょうど今の持ち曲が28曲とかで、できなくはない状態というか(笑)。

──なるほど(笑)。多いことには多いけれども。

Neuron:ただ、(一般的なワンマンライブの曲数でもある)20数曲でまとめようとすると、初ワンマンだけど数曲溢れるという、ちょっと寂しいことが起こってしまうから、今回は全曲やろうかと。それでちょっと頑張ってボリューミーにしたという背景があります。

『Blood in the Void』セットリスト

──そういう理由だったんですね。kahocaさんはいかがでしたか? 1stワンマンライブ、歌っていた感じたことや思ったことというと。

kahoca:4年やってきて、多くの方たちが待ってくれていたんだなというのは、を応募してくれた段階でわかってはいたけど、そのことを改めて実感できたというか。本当に今までやってきてよかったなって思いました。

──歌っていてグッとくる瞬間もありました?

kahoca:そうですね。イントロが流れて、歌い始めたときに歓声が上がった瞬間にグっときて、ちょっとニヤッとしちゃったりはしてました(笑)。

Neuron:歌いだした瞬間に歓声が上がったのは、曲を愛してもらっていることもそうなんですけど、演出として原曲には存在しなかったイントロを作っていた曲も結構あったので、これは何が始まるんだろうっていう気持ちでみんな静かに観てくれていたんですよ。そこから歌い始めて“この曲か!”という反応があの歓声だったのと思うので、そこは演出した自分としても手応えがあったというか。そういったライブならではの楽しみを準備してよかったなと思いました。

──kahocaさんもライブアレンジされたバージョンで歌うと、また少し気持ちが違ったり、感情が高ぶったりも?

kahoca:Empty old Cityは空白を残す、余白を残すことを大事にしているんですけど、音源を録るときとは違って、ライブだとやっぱり気持ちが高まるし、その場でしか聴けないものでもあるので、結構自由に感情を乗せて歌うことができるというか。楽しむことにフォーカスして歌っているのは自分でも感じています。

──ライブ後半ではリズム隊のお2人を招かれていましたが、どんどんテンションが上がっているのが伝わってきました。

kahoca:そうですね。セトリ的にもだんだんと上がっていくような流れになっていたし、お客さんの熱気もあって自分がどんどん興奮していくところはすごくありました。

──後半のバンドアレンジも、ジャズ、フュージョン、ネオソウルなど、いろいろな形になっていておもしろかったです。

Neuron:いつも曲を作るときは、いろんなジャンルやカルチャーの要素を持ってきたりしていることもあって、行き来がしやすいというか。たとえば「Moonian」という曲は、ダンスミュージックで言うならシンセウェーブを軸にはしてるんですけど、同時にフレージングとかピアノの音作りとかは、わりとフュージョン系のものを用いて原曲を作っていたので、T-SQUAREとかDIMENSIONみたいなフュージョンバンドに落とし込みやすかったところもあって。“この曲はこのジャンルに寄せていける”というのが結構見えている状態ではありましたね。

──どのバージョンもすごく素敵でした。では、ここからは今日のメインである『FAVOY TOKYO -電鈴合図-』のお話について。今回のオファーが来たときの率直な感想というと?

Neuron:珍しいラインナップというか。もちろん豪華な方々なんですけど、その方達が同じ界隈やカルチャーで固まっているイメージはなくて。でも、いろいろなところから雑多に引っ張ってきて組み合わせた感じでもなく、新鮮だけど確かにこの組み合わせは相性良さそうだよなって。自分たちも含めてそこに加わったらナチュラルに楽しめるんじゃないかなという印象を抱きました。

kahoca:私も似通ってはしまうんですけど、すごく豪華な面々に入れていただけて光栄だなと思ったのと、普段から聴いている方々だったので、ライブが楽しみだなと思いました。

──Empty old Cityが出演される2日目には、水槽さんとDAZBEEさんが出演されますが、交流がある方はいます?

kahoca:水槽さんはご飯に行かせていただいたりしてます。

Neuron:ここ最近ライブで共演する機会が多かったんですよ。お互いのステージに出たり、水槽さんに僕らの「Area G」を一緒にやってもらったりもして。結構深く交流させてもらってます。

──DAZBEEさんとはいかがです?

Neuron:交流はないんですけど、よく聴いてます。声もめちゃくちゃ好きですし、タイムリーなことに最近リリースされたEPの内容が、僕が今やろうとしていることのヒントのひとつになるなって感じたところもあって。詳しいことはまだ言えないんですけど(笑)、それぐらい親近感が湧くところがあるので、今回ぜひ仲良くなりたいです。

──kahocaさんは、先ほど共演者の方を“普段から聴いている”とおっしゃっていましたが、DAZBEEさんも?

kahoca:そうですね。私もDAZBEEさんの声がすごく好きで、歌い方とかも結構参考にさせてもらったりしてます。

Empty old City

──当日が楽しみですね。イベントのキーワードでもある“ネットカルチャー”について、お2人が触れ合うようになったきっかけというと?

Neuron:Empty old City自体はネットカルチャーのものとして見られていると思うんですけど、どの辺りと繋がっているのか、どういう界隈にいるのかと聞かれると、全然答えられないぐらいどこにも位置していないというか。結びつきが薄いし、それがいいところだと今まで思っていたんですけど。そういう感じなのもあって、Empty old Cityを始めるときも、“ここのカルチャーでやりたい”という構想をしていたのではなく、一番やりやすいツールとしてネットを使ったので、そのカルチャーに入り込んでいくというよりは、活動していくうちに少しずつ繋がっていった感じでしたね。

──kahocaさんもそこは同じく?

kahoca:そうですね。中学生の頃に友達の影響でボーカロイドを聴いてハマっていたこともあったんですけど、そこから長い間離れていたので、ネットカルチャーに詳しいかと言われるとそういうわけでもなく、そこにすごくこだわっているわけでもなく。それこそEmpty old Cityを始めてから繋がっていった感じでした。

──Empty old Cityというユニット自体はどんなところから始まったんですか?

Neuron:こういうことをやりたいなという構想を、長い間ぼんやりと頭の中で揉んでいて。曲の雰囲気はこういうものにしたいとか、あとはイラストレーターへの尊敬が自分の中でかなりあるので、インディアニメーション系の映像で多くのカットを描写するよりはすごく精巧に描かれた一枚絵で出したいとか。そのなかで、女性ボーカルにお願いしたいと思っていたんですけど、自分のイメージとぴったりだったのがkahocaで。元々知り合いだったんですけど、声をかけて一発OKで決まりました。

kahoca:デモを聴いたときに、自分がすごく好きな系統の曲だったのでやりたいなと思ったことと、始めるときに「作品はゆっくりでいいから自分たちの納得のいくものを出していこう。ライブとかも最初は考えずに、自分たちがやりたいことをやろう」と言われたことにすごく共感して、すぐに返事をしました。

──音楽はもちろん、活動スタンスも共感できたと。

kahoca:そうですね。自分は音楽がやりたかったので、音楽第一で進めていく姿勢にすごく共感しました。

──あくまでも音楽をやること、「作品ファースト」というのは、活動していく上で大切にしていることであって。

Neuron:そうですね。僕らはあくまで音楽家であって、音楽体験に関して興味があるし、それをやりたくてやっているので、タレントにならないようにしているというか。音楽以外のことではなく、自分たちの音楽でアピールしなきゃいけないと思っているし、プロモーションをガンガンやっていろんな人に広くアプローチしようというのではなく、本当に自分たちの音楽を好きになってもらえそうなところに的確に届けるということは、活動し始めた頃からすごく大切にしています。

──Empty old Cityの楽曲を作る上で大事にしていることというと、どういう部分があったりしますか。

Neuron:一番は自分の好みに忠実に作ることだと思います。音楽家としてのアイデンティティについて考えることもありましたが、個性って、自分がこれが個性だと思っていても、周りから見たら別にそんなに尖っていないことはよくあるし、その逆もしかりで。誰に見せるかによって個性的か個性的じゃないかは全然違うし、強いて言えば、自分の好みの寄せ集めが個性になると思うので、自分の好きなものは縛りなく自由に、躊躇なく入れる。その上で必要ないものを削ったり、あまりにもEmpty old Cityとしてこれは違うというものだけを入れないようにすれば、あとはkahocaがなんとか形にしてくれるので(笑)。

──kahocaさんが歌ってくれればという。

Neuron:その上でサウンドデザインの面で言うのであれば、小難しすぎて意味が分からないという印象にはならないように意識はしてますね。“この音、おもしろいな”とか“聴いたことないけど気持ちのいい音だな”とか。“こういう歌詞だからこれは水の音をイメージしていて”みたいなメタ的な視点ではなく、音楽を音楽として、音を音のまま楽しんでもらえたら嬉しいなと思って、実験的だけどポップで馴染みやすいものにしています。

──kahocaさんとしては、自分が歌えばEmpty old Cityになるという自覚も芽生えてきていたりしています?

kahoca:自分ではあまりわかってないというか。まだ自信がない部分も多くあって。この4年でだんだん確立できてきた感覚もあるけど、やっぱりまだ足りないんじゃないかなって。作品を出した後に自分で聴いていると、ここはやっぱりこうしたほうがよかったなと思うことも多いです。もちろんレコーディング時の自分ができる精一杯のパフォーマンスをして、納得できるまで歌っているけど、自分が目指すクオリティも日々更新されていくから、常に“もっとできたのに……”とばかり思っています。

──その気持ちも大事ですよね。他の方の作品やライブなどにインスパイアされることはありますか?

Neuron:本当にいっぱいあるんですけど、ここ1〜2年で結構ヒントをもらっているのは、『NieR』シリーズとかですかね。岡部啓一さんが作られるような、ちょっとダークで透き通るような音は度々入れたくなります。

──そもそもEmpty old Cityという名前自体にそういったニュアンスがありますよね。直訳すると“空虚な古い街”で、意訳すれば“廃墟”みたいな。そういった幻想的なものとか、物悲しさや虚しさを感じるものに惹かれたりします?

Neuron:そういった価値観とか概念はすごく好きですね。寂しいとか、報われないとか、儚いとか。音楽もそうだし、映画やゲームとか他の作品に触れるときも、悲しいとか、涙ポロリみたいなことじゃなくて、胸がキュッてなるようなもの。そういった寂しさや空虚さみたいなものは、自分の美学の根幹みたいになっているところがあります。

──kahocaさんはどんなものにインスパイアされたりします?

kahoca:私も本当にいっぱいあって。それこそ水槽さんの歌にも影響を受けているし、ケシとかチャーリー・プースとか、海外のアーティストの歌い方にも影響を受けたりしています。

──その人の歌を聴いたときに、声質に耳が行くのか、スキル的な面に耳が行くのか、どっちが多いですか?

kahoca:どっちもありますけど……感覚的なことなので言語化が難しいんですが(苦笑)、歌を聴いたときにその人がどういう表情で歌っているのかが、声色によって分かるというか。

Neuron:ああ。口の形とかね。

kahoca:そうそう。その表現の仕方に一番耳が行くかもしれないです。

Empty old City

──では、今後挑戦してみたいことや、目標はありますか?

Neuron:特に大きな目標はないですけど、この前話していたのは、海外でライブやってみたいねって。それに向けてガツガツやるというよりは、できる機会がいつかあったらいいなという。そこは純粋にやってみたいことのひとつとして2人とも共通しています。

──お2人の活動を見て、自分もインターネットを使って作品を発信したいと考えている方々にメッセージをいただければと思うんですが。

2人:うーん……(考え込む)。

──難しいですよね(苦笑)。活動してきた中で、自分だったら伝えられるものとしてはいかがでしょうか。

kahoca:自分も常に出来ているわけではないので偉そうなことは言えませんが、やっぱり自分の好きなことを表に出すのって結構勇気がいると思うけど、自分の好きをとことん追求するのが一番なんじゃないかと思います。

Neuron:確かに。ネットシーンで活動すると数字が如実に出るから、SNSのフォロワー数とか動画の再生数とかすごく気になるし、もちろんそれがずっと少ないとモチベーションもなかなか上がりづらいとは思うんですけど。でも、そのコンテンツ自体が伸びる/伸びないというのを求めずに、自分のやりたいことをやったほうが長く健全に続けられると思います。活動するというのは自分自身が資本になるということであって、気持ちと健康もそこに結びつくと思うので、自分自身を長く運用させる方法としても、自分が好きなもの、自分ができることを中心に考える。内容を磨くことは大切だけど、ある程度のクオリティにまで持っていけば届く人はいるはずなので。やっぱりそこだよね?

kahoca:うん。と思いつつ、自分もSNSの数字を気にしちゃったりしてますね(苦笑)。

Neuron:あははは(笑)。

──それが人間というものですよね(笑)。最後にいまの“ふぁぼい”(推し)について教えてください。

kahoca:いっぱいいるけど、今すごく聴いているのはa子さんですね。映像も含め、スタイルが確立されていてとてもかっこいいなと思います。

Neuron:ていぬさんというサウンドデザインが特徴的な作曲家の方がいて。水とかガラスみたいな質感の音をシンセで波形をイジって作って、よくXに動画を投稿されているんですけど、その音が僕の好みとすごく一致していて。すごく素敵だなぁと思いながらいつも楽しみにしてます。


取材・文=山口哲生

イベント情報

eplus presents FAVOY TOKYO -電鈴合図-
会場:Zepp Shinjuku(TOKYO)
開催日時:
2025年8月7日(木)     17:15開場/18:00開演
2025年8月8日(金)     16:30開場/17:15開演
出演(五十音順):
2025年8月7日(木) 缶缶/Sou/超学生
2025年8月8日(金) Empty old City/水槽[LIVE SET]​/DAZBEE(ダズビー)
U-18限定通し券 9,800円(税込) SOLD OUT/1日券 6,900円(税込)
主催/企画制作:イープラス
制作協力:YUMEBANCHI(東京)
 
【公演に関するお問い合わせ】
https://eplus.jp/favoytokyo2508078/

 
【公式リンク】
公式サイト:https://eplus.jp/favoy/
Instagram:https://www.instagram.com/favoy_eplus/
X:https://x.com/favoy_eplus

キャンペーン情報

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キャンペーンの詳細はFAVOY(@favoy_eplus)公式Xをチェック
詳細はこちら:https://x.com/favoy_eplus/status/1908444508473155715

ライブ情報

Empty old City 5th Anniversary Live "Quintennial: recall"
開催日:2025年10月19日(日)
時間:16:00 開場 / 17:00 開演
会場:Shibuya WOMBLIVE
価格:¥5,500(税込)+1drink
出演:Empty old City
   and Guest Artist(後日発表)
第1次抽選受付:2025年4月9日(水)12:00 ~ 2025年4月20日(日) 23:59