【インタビュー】生誕100周年 ポール・モーリア “ラヴ・サウンズ” オーケストラの指揮を振る佐々木新平に聞く
-
ポスト -
シェア - 送る
「恋はみずいろ」「オリーブの首飾り」など数多くの名曲を生み出し、イージー・リスニング界のトップに君臨した偉大な音楽家、ポール・モーリア。日本でもおよそ1000回に及ぶ回数のコンサートを開催するという偉業を成し遂げて、日本の音楽文化にも大きな影響を与えてくれた。そんなポール・モーリアの生誕100周年を記念して、世界で唯一の“公式コンサート”が東京公演は2025年7月31日(木)8月1日(金)の2日間、大阪公演は8月17日(日)フェスティバルホールにて開催される。好評につき、7月31日に追加公演として17時30分開演の回が行われることが決定した。
本公演は、イレーヌ夫人の賛同を得て、全曲オリジナルスコアによるものとなる。演奏は、70年代半ばから一世風靡した“LOVE SOUNDS(ラヴ・サウンズ)”をシンボルに日本のトップ・ミュージシャンによる「PAUL MAURIAT “LOVE SOUNDS” ORCHESTRA(ポール・モーリア “ラヴ・サウンズ” オーケストラ)」が行い、ポール・モーリアを彷彿とさせるエレガントな指揮で多方面で活躍する佐々木新平が指揮を務める。貴重な“公式コンサート”の指揮を任された佐々木に、ポール・モーリアの魅力、そして今回のコンサートへの思いを聞かせてもらった。
佐々木新平(ポール・モーリアが当時、実際に着用していた衣装をイレーヌ・モーリア夫人より寄贈して頂きました。)
――今回の公式コンサートで指揮を担当されますが、どういった経緯で担当されることとなったのでしょうか?
今までキョードー東京さんとは、映画音楽を演奏する“シネマコンサート”をはじめ、いろんなコンサートをやらせていただきました。そんな中で、今回のポール・モーリア生誕100周年を記念したコンサートの開催が決まり、キョードー東京さんとしては、ポール・モーリア自身もクラシックから自作のオリジナル曲、アレンジしたカバー曲までいろんなジャンルをクロスオーバー的なレパートリーを持っている音楽家ということもあり、いろんなステージを経験してきた僕に白羽の矢が立ったんだと思います。
――ジャンルの幅広さ、クロスオーバー的なところが決め手になったということですね。
はい、音響も入りますし、照明も入って一つのショーになると思うので、そういう現場で経験があるからだと思います。あと、これは偶然ではあるんですけれど、ポール・モーリアと体型が同じだったんです。白いスーツを着ている僕の写真がフライヤーなどに載っているんですが、ご本人が着ていた衣装なんです。レプリカじゃなく、イレーヌ夫人から寄贈された本物です。
――貴重な衣装ですね。サイズが同じという偶然も含めて、佐々木さんとポール・モーリアに何か縁があった感じが。
そうであればいいなと思ってます(笑)。往年のポール・モーリアのコンサートを見られた方は、映像で見た方も含めて、曲を聴く時にその姿を頭の中で再現されると思うので、見た目も含めて僕が適任じゃないかということだったようです。
――ポール・モーリアの音楽に触れたのはいつ頃ですか?
僕自身はポール・モーリアのコンサートを生で見た世代ではないんですが、親がレコードを持っていて、それで知りました。3歳くらいから食事の後にポップスとか童謡も含めて、その中にポール・モーリアの曲もありました。その時は曲名は知らなかったんですけど、後々、ポール・モーリアという音楽家の存在を知り、聴いていたのが「涙のトッカータ」だったと曲名と楽曲が一致していくわけですけど、そうやって改めて聴いた時にも「やっぱりいい曲だなぁ」「この曲、大好きだったな」と思いましたし、僕の音楽のルーツの一つでもあるということを実感しました。
――“イージー・リスニング”と呼ばれるだけあって、スーッと入ってきて聴き心地のいいサウンドですし、多くの人に好かれる音楽というのもよく分かります。
ノンストレスで聴けて、感情を寄せやすい音楽だと僕も思いました。幼少期に初めて聴いて、その後もたくさん耳にする機会がありました。そして今回、指揮を務めさせていただくことになり、改めてじっくり聴きましたが、今聴いても斬新だと感じました。オーケストラのアコースティックサウンドも使うし、シンセサイザーも使うし、チェンバロも使い。そのサウンドが“古くて新しい”という感じなんです。日本での初めてのコンサートは55年くらい前だと思うんですが、その時の新しさ、斬新さは今でもずっと変わってないんじゃないかと思います。それとやはり“メロディー”の良さですね。聴けばすぐに口ずさめるようなものが溢れていますし、それも大きな魅力です。
――その音楽を奏でる“PAUL MAURIAT “LOVE SOUNDS” ORCHESTRA“の特徴は?
通常のオーケストラの編成に加えて、トランペットが入っていたり、ドラムセットとかバンド的な楽器もあって、ポップス的な容姿もありますし。チェンバロ奏者もいて、ピアニストもいて、というすごくハイブリッドな形になると思います。それもまた50年以上前から同じことをやっているというのもすごいところだと感じています。
――お話を聞いていると、ファンの方が求めているものも、演奏者の考えていることは同じで、“変わらぬ良さ”というところが重要だと分かりますね。
はい。特に、公式コンサートとなれば、それは重要なことなので、オリジナルスコアで演奏できるのは本当にありがたいことなんです。往年のファンも満足していただくというのが大切なので、そこに全然違うサウンドは必要ないと思っていますし、僕らもそれを求めつつもりはありません。今回、まずはそういった以前からポール・モーリアのコンサートを楽しんで来られた方々に満足していただきたいと思うんです。その再現した時に新しい人たちにどうやって満足してもらえるか?というのも、多分、来年以降も続くプロジェクトだと思いますので考えていかなければいけないことだと思っています。
――それはどのような取り組みを予定されていますか?
実際にそれを行うかどうかはまだ分かりませんが、たとえば、ポール・モーリアご本人もビートルズをはじめ、当時の最先端の音楽をポール・モーリア風にアレンジして演奏するなど、新しいものも積極的に取り入れることをされていました。もしかしたら、そういうのも可能になってくるかもしれないですよね。たとえば、日本のポップシーンで活躍されているアーティストの楽曲とか。
――これまでにリリースされたアルバムの中にはカバー曲をアレンジによってポール・モーリア楽曲にしたものも多いので、可能性としてはありそうな感じも。
そういうふうに演奏する楽曲が今後増えていけば、往年のファンの方から今の最先端の音楽を聴いている世代までポール・モーリアの音楽が受け入れてもらえるんじゃないかと思います。
――発表されている楽曲の数も膨大なので、今回のコンサートをきっかけに過去の作品、アルバムを聴いてみるというのも良さそうですね。
はい。僕も知らない曲がたくさんありますので、いろんな発見があるとさらに楽しく、興味深くなるんじゃないかと思っています。
――演目(セットリスト)を組んでいくのも大変なくらいの。
そうなんですよね。でも、楽曲に関しては、日本公式ファンクラブの代表をされている小渕(隆志)さんが全部知ってらして、全コンサートの記録も持っているんです。今回のコンサートでも、どんな楽曲をどういうふうに組んでいけばいいのかを相談させていただきましたし、本当に心強い味方です。
――演目を決めるのが結構大変な部分かなと思っておりました。
はい。ジャンルやアレンジに関しても小渕さんが考えてくださって、激しい曲から物悲しい曲、穏やかな曲など幅広い楽曲が選ばれています。いろんな感情に寄り添える感じになっていて、これからライティングなどステージセットも順序立てて作ってくださると思いますが、一つのエンターテイメントショーとしてきっと楽しんでいただけると思います。
――ちなみに、佐々木さんご自身が好きな楽曲を挙げていただくとすると?
最初に浮かんでくるのは「涙のトッカータ」ですね。やっぱりポール・モーリアの音楽との出会いの曲でしたし、僕の中でのポール・モーリア・サウンドの原点です。もう一曲挙げるとしたら「エーゲ海の真珠」でしょうか。短調で始まって中盤ですごく明るくなっていって、一曲の中でもいろいろと雰囲気が変わっていく感じが好きです。他の曲でもそういう雰囲気が変わったり、違う色が感じられたりするものも多いので、それが大きな特徴にもなっていると思います。
――佐々木さんはいろんなジャンルのコンサートで指揮をされていますが、今回のコンサートではどのようなことに気を付けてタクトを振られますか?
指揮の振り方で言いますと、僕の振り方もありますが、無駄がなく、そしてオーケストラに任せるようなふわふわとしたところもあるのがポール・モーリアの指揮の振り方で、彼のサウンドを生み出しているところだと思いますので、僕もできるだけ彼のエモーショナルなところを参考にしながら振っていきたいと思っています。ですが、「こういうふうにしよう」ということは今のところ考えてなくて、結果的にオーケストラから返っていくる音を聴きながらキャラクターを作っていこうと思っています。
――ポール・モーリアのコンサート映像を見て参考にしつつ。
はい、そうですね。指揮者はそれぞれ個性がありますので、全く同じにはなりませんし、僕も意識して真似するつもりはありません。でも、“ラヴ・サウンズ”オーケストラの音を意識していけば、少しずつポール・モーリアに近づいていけるんじゃないかとは思っています。
――東京公演は7月31日は13時開演と追加公演の17時30分開演の2公演、8月1日も13時開演と2日間で3公演、大阪公演は8月17日にフェスティバルホールで1公演行われますが、どんなふうに楽しんでいただきたいですか?
ポール・モーリアの音楽は全世代向けの音楽です。ポール・モーリアのコンサートを体験されてきた往年のファンの皆様は、その音楽の良さをよく知ってらっしゃいますので、下の世代の人たち、自分の子どもや孫といった家族で来ていただきたいと思っております。きっとそれぞれの世代の方がいろんなことを感じると思いますし、新しい発見もあると思います。誰が聴いても気持ちよく聴ける音楽がポール・モーリアの楽曲の魅力なので、オーケストラの生演奏でその良さを感じていただければうれしいです。
取材・文=田中隆信
公演情報
<東京公演>
■日時:2025年7月31日(木)13:00開演/8月1日(金)13:00開演
追加公演:2025年7月31日(木)17:30開演
■会場:東京国際フォーラム ホールA(有楽町)
■追加公演
<大阪公演>
■日時:2025年8月17日(日)13:00開演
■会場:フェスティバルホール
■
■
S席12,000円、A席9,000円、B席7,000円、バルコニーBOX席(2席セット)¥24,000、BOX席¥15,000
※バルコニーBOX席、BOX席は大阪公演のみ販売
※未就学のお子様のご入場はお断りさせて頂きます。
※車椅子をご利用のお客様はS席をご購入の上、東京公演は、キョードー東京
※出演者の変更による
■問い合わせ:
<東京公演>キョードー東京 0570-550-799(平日11:00~18:00/土日祝10:00~18:00)
<大阪公演>キョードーインフォメーション 0570-200-888(月~金 12:00~17:00、土日祝は休み)
■主催:フジテレビジョン/キョードー東京(東京)、キョードー大阪(大阪)
■後援:ニッポン放送/文化放送/TOKYO FM/Inter FM(東京)、フェスティバルホール(大阪)
■企画・制作:キョードー東京
■後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
■制作協力:ブルーシート
■公式HP:https://tickets.kyodotokyo.com/paulmauriat