ノノを演じる熊谷彩春に聞く、NHKみんなのうたミュージカル『リトル・ゾンビガール』~ノノとショウと秘密の森~の魅力とは

2025.5.7
インタビュー
舞台

熊谷彩春

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1961年に放送開始、これまでに1500曲以上の名曲を送り出してきた「みんなのうた」の名曲を使用した「NHKみんなのうたミュージカル『リトル・ゾンビガール』~ノノとショウと秘密の森~」が今年、3年ぶりに再演される。ゾンビと人間が分断されて暮らす世界で、新米ゾンビの小さな女の子・ノノと人間の男の子・ショウの友情が、二つの世界を共存へと導いていく可愛らしい物語だ。初演は2022年だったが、もともとは2020年に初演予定で、この時はコロナ禍のため全公演中止。その幻の2020年公演と初演に続き、今年もノノを演じる熊谷彩春に作品の魅力を聞いた。


ーー上演されるはずだった2020年公演を入れると、熊谷さんにとっての3度目のノノ役です。この「『リトル・ゾンビガール』~ノノとショウと秘密の森~」という作品は熊谷さんにとってどんな作品ですか。

役者としても、関わらせていただくことが本当に嬉しいと思える大切な作品です。出演している私たちもすごく幸せな気持ちになれるんです。共演の方々とは今も仲が良くて、公演が終わったあともよく集まるのですが、集まるといつも「この公演は自分にとってのご褒美だ」という話題になるくらいなんですよ。また、2020年公演をご一緒するはずだった上白石萌音ちゃん(熊谷とWキャストでノノを演じる予定だった)に先日お会いした時に、ようやく落ち着いた状況の中で上演できる、というような話をしたら、萌音ちゃんも喜んでくれて「わたしも観に行きたい」と言ってくれました。初演から関わったたくさんの人の思いを背負いながら、今年の公演を良いものにしていきたいです。

ーー物語を彩るのは「みんなのうた」の名曲たち。「みんなのうた」にはどんな思い出がありますか。

思い出は色々な曲にありますが、「手のひらを太陽に」は子役としてミュージカルに出演していた頃、オーディションで毎回歌うくらい、私の十八番でした(笑)。また「プレゼント」も、高校の時に合唱で歌った思い出があります。繊細な時期に優しく包み込んでくれる歌詞が響いたし、今でも好きな曲です。『リトル・ゾンビガール』でも物語のとても大事な場面で歌われるので、嬉しいです。

熊谷彩春

ーー「『リトル・ゾンビガール』~ノノとショウと秘密の森~という物語については、どんな印象をお持ちですか。ファンタジーだけど現代社会が内包する問題にも切り込むような深い話でもあります。

子ども向けのファンタジーとして描かれていますが、現代に生きる私たちにとても重要なメッセージを投げかける話です。ゾンビと人間のあいだの出来事という架空の話として描かれていますが、分断されている世の中というのは今の世界そのものです。子どもは楽しめて、大人にはハッと突き刺さるものがあると思います。戦争といった大きな話でなくても、今の世の中はSNS上などで簡単に分断が起こっていますから。私、全世界の人が『リトル・ゾンビガール』を観てくれたら、平和な世界になるのにな……と思うくらいです。

ーーそれを子どもの目線で描いているのがいいですよね。

そうなんです。子ども同士って、万国共通で仲良くなれますもんね。私自身、インターナショナルスクールに通っていたことがあって、そこでイスラエルやイエメンといった、今まで出会ったことのなかった国の友だちができました。子ども同士って相手のバックグラウンド関係なし、単純に人対人で向き合える。大人もそうであればいいんですけど……。この物語でも大人同士は対立しているけれど、ゾンビの女の子のノノと人間の男の子のショウはすぐに打ち解けてお友だちになれます。

ーーその物語の中で、熊谷さんが演じるのは新米ゾンビの女の子・ノノです。好奇心旺盛、元気な子ですね。

私は本当にノノみたいな子だったんです(笑)。自然の多い土地で育ち、森の中を駆け回って遊んでいた子ども時代でしたし、疑問に思ったことはすぐに「なんで? なんで?」と聞いていました。今でも親に「目に入るものすべてに『なんで?』と聞いてくるから本当に大変だった」と言われます(笑)。最初は10歳の役をどう演じよう……と悩んだのですが、中身は今もあの頃とそんなに変わっていないので、ありのまま演じたらいいのかなと思いながらやっていました。

熊谷彩春

ーー演じる上で苦労したことは。

子どものスピード感と大人のスピード感は全然違いますので、そこは少し苦労しました。子どもってすぐに別のものに興味が移って、その前に興味津々だったものはどうでもよくなっちゃったりする。この物語でもノノはこっちに行ったと思ったらあっちに行ったりしています。街の中で子どもを見て「ああ、こういうことか」と研究していました。でも共演の皆さんが全力で子どもの役を楽しんで演じていて、そのパワーにも助けられて、みんなで和気あいあいと10歳の役を演じていました。本当にここは学校かなと思ってしまうくらいの楽しい現場でした。

ーーテーマ曲の『夜明けをくちずさめたら』も素敵な歌ですね。

はい。いきものがかりの水野良樹さんが曲を書かれていて、オリジナルは上白石萌音ちゃんが歌っていますが、この『リトル・ゾンビガール』の物語にピッタリ合っています。劇中ではノノとショウのデュエットとして歌われますが、とても切ないシーンで、私も毎回歌うたびに涙がこみあげるのを我慢していたのを思い出します。

ーー今回ショウ役は新しく南野巴那さんになります。南野さんとはお話しましたか?

しました! 初共演なのですが、昔からミュージカルや宝塚歌劇が好きだったり、子どもの頃に「ベルばら(ベルサイユのばら)ごっこ」をしていたりといろいろと共通点が見つかったので、仲良くなれそうです。私は今でもバスティーユのシーンのダンスは踊れます(笑)。小学生の時に「おしりかじり虫」で歌って踊っていたという話でも盛り上がりました。あの曲は、歌詞といい歌手の方の声といい斬新で、子どもはハマりますよねぇ……。しかも誕生日が同じなんですよ。ちょうど1年違いで4月2日生まれ。ちょっと運命を感じています(笑)。

ーー最後に改めて、意気込みをお願いします。

全世代の方に楽しんでいただける作品です。特にミュージカルファンの方の中には、「子ども向けかな」と思って観劇のご予定から外されている方もいらっしゃるかもしれませんが、物語の中に自然に音楽が散りばめられていて、日本オリジナルミュージカルとしてとても良くできています。「みんなのうた」の楽曲の強さもありますし、しかもこんなにも「みんなのうた」がぴったりハマるのかと思う物語。さらにキャストも経験値の高い、素晴らしい俳優さんばかりです。どんな方も楽しんでいただけるミュージカルだと思うので、ぜひ劇場に足を運んでくださったら嬉しいです。

熊谷彩春


取材・文:平野祥恵    撮影:曳野若菜

公演情報

日生劇場ファミリーフェスティヴァル 2025
NHKみんなのうたミュージカル『リトル・ゾンビガール』
~ノノとショウと秘密の森~
 
日程:2025年8月23日(土)、24日(日)
会場:日生劇場
 
出演:
ノノ   熊谷彩春
ショウ  南野巴那
 
親分   コング桑田
ハル   石田佳名子
クルス  丸山泰右
 
リリィ  大和悠河
ほか
 
スタッフ:
脚本 徳野有美
作曲・音楽監督 八幡 茂
演出 鈴木ひがし
ほか
 
 
【公式サイト】
  • イープラス
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