2026年も開催決定!関西最大級の復興チャリティーフェス『COMING KOBE25』をプレイバック、震災から30年の節目に想いが人と人を繋いだ日
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『COMING KOBE25』2025.5.18(SUN)兵庫・神戸メリケンパーク
2025年5月18日(日)、兵庫・神戸にあるメリケンパークを中心とした特設ステージにて、関西最大級の復興チャリティーフェス『COMING KOBE25』が開催された。2026年5月10日(日)には、『COMING KOBE26』の開催が決定。SPICEでは、2026年の開催に向けて前回の模様をプレイバックする。
本イベントは阪神淡路大震災をキッカケにスタート。震災を風化させずに語り継ぎ、神戸からの恩返しとして被災地支援を行うことで、神戸の魅力を伝えることが最大のテーマ。イベントでは減災や防災についても向き合ってもらい、ひとりでも多くの人に”気づき”のキッカケを作ってもらうべく、商業ではなく入場無料のチャリティー音楽イベントとして開催。前身の『GOING KOBE』を含め、2025年で21回目の開催を迎えた。
2025年は阪神淡路大震災から30年の節目の年。今回は「神戸まつり」ともコラボし、ステージ数は13カ所、出演者数は約100組と、過去最大規模の開催に。ステージの端から端までは2駅分ほどの距離があり、なんと徒歩で30分以上もかかる距離間に。それでも休むことなくいろんなステージでライブが繰り広げられるサーキット型のイベント。ステージ間を練り歩きつつ、魅力溢れる神戸の街を存分に楽しんだ『COMING KOBE25』(以下、『カミコベ』)の模様をお伝えしたい。
イベント当日は気持ちが良いくらいの五月晴れ! イベントは入場無料だが、会場にはクラファンや日帰り温泉付きなど特典付き
アイアムアイ
「ひとぼうトークSTAGE」では早い時間からオープニングアクトやトークイベントが繰り広げられていて、なかでも「カミングライダー2025 GOAL LIVE」は朝の9時30分からの開始にも関わらず大盛り上がり。被災地と被災地を自転車で繋ぐという企画の「カミングライダー2025」。今回は能登半島地震で被災地となった珠洲市から開催地である神戸の街・カミコベへ、自転車のみで移動。開演日に間に合えばカミコベ出演、新曲が披露できるという何とも過酷で名誉ある(!?)ステージで、今回で11回目の開催、カミコベファンなら誰もが知るイベントのひとつとなっている。今回はチャリライダーにアイアムアイが挑戦するも、道中ではアクシデントがあり、代走にセックスマシーン!!・森田剛史、四星球・北島康雄らがサポートする様子がSNSで報告されていた。そして迎えたイベント当日、無事ゴール地点に辿り着いたアイアムアイをひと目見ようと、大勢の観客で大賑わいに。
Liver Shot
各ステージのトップバッターもまた、注目度の高いアーティストが数多く出演していた。「UNDERGROUND STAGE」には「COMING KOBE25 無料公開オーディションLive10代部門:【悪魔の子供2025】」でグランプリを獲得した、滋賀県出身の平均年齢19歳の4人組ロックバンド、Liver Shotが出演。”恐るべき才能を秘めた10代惡魔の子供たち覚醒完了”と銘打たれたオーディションということもあって、そのタイトルのままに「(朝早くて)まだまだ眠たいと思うんで、僕らの音を聴いて目覚ましてください!」と、トッパーにふさわしい勢いあるステージで観客の視線を惹きつける。
All I Clacks
同じく「COMING KOBE25」のオーディション「一般部門:【フクロのネズミ2025】」でグランプリを勝ち取った、大阪出身4人組ポップパンクバンド・All I Clacksも「PORT STAGE」のトップバッターに登場。大阪のライブハウスを中心に数多くのステージをこなし、前日に開催された前夜祭にも出演するなど、すでにシーンで頭角を現している彼ら。ライブハウス最前線を自負するだけあって「誰でも出れる現場じゃない。(オーディションに参加した)10バンドの分まで!!最高の景色にしてやります!」と、がつんと腹にくる硬派なサウンドを鳴らす。
Parallel Frank
さらに『カミコベ』主催オーディションだけでなく、神戸市がバックアップする全国初の官民合同オーディション「Battle de egg2025」のバンド部門のグランプリに輝いた、大阪発、3人組エレクトロポップロックバンド・Parallel Frankは「カミコベ チャリティーフェスSTAGE」に登場。「全力で楽しんでいこうぜ! せっかくの晴れ舞台じゃ!」と、身体がシャキっとするポジティブでキャッチーなロックサウンドで観客を躍らせる。
『カミコベ』は神戸を代表する観光地・メリケンパークのど真ん中で開催されるイベント。エリアのあちこちで休むことなく、ライブハウスさながらの大音量のサウンドが打ち鳴らされている。港町・神戸の街並みを散策しようと、地元の人が子ども連れで立ち寄ったり、何も知らない観光客が現場を目の前に驚く姿も頻繁に見える。なかには、関西でいう”えぇとこ”風の服を着た子どもが音に釣られて踊っていたり、外国人観光客が「どうやったらライブが観られるの?」「彼らはなんてバンド?」と、スタッフに尋ねるシーンもちらほら。「楽しい」に境界線はないし、音楽、ライブ好きが集まるだけじゃない。長い期間をかけて神戸の街に根付いたイベントだからこそ観られる光景だろう。
先述したように、『カミコベ』は入場券こそ必要ではあるが、
ひと際大きな募金箱が設置されていたのがメリケンパーク中央テントだ。テント周辺では阪神淡路大震災や東日本大震災、能登半島地震などの震災写真のパネル展を展開。集まった観客は20代を中心とした若い世代が多いこともあって、30年前の阪神淡路大震災を知らない世代も多い。震災写真を見ながら子どもに説明をする親子がいたり、写真をじっくりと眺めたあとに募金箱へ足を運ぶ人がいたり。
また、パネル展では海外の震災の様子を収めた写真もいくつか展示されていた。2024年4月に発生した台湾東部沖地震だ。『カミコベ』では昨年の募金の一部を「台日爆音」という、日本と台湾をつなぐ音楽イベントに寄付。さらにパネル展だけでなく台湾ブースも登場。台湾屏東(ピントン)県で開催される音楽フェス「台湾祭」についての紹介などが行われた。
The Salitus
ブースだけでなく『カミコベ』には台湾からのアーティスト2組が来日。日本人2人、台湾人2人からなるメロディックパンクバンド・The Salitusはメロディアスなサウンドで初見の観客もさらりと自身の世界観へと引き込む。ポストハードコアバンド・OBSESSは日本と台湾の繋がり、復興のサポートへの感謝、そして神戸の街が大好きだと伝えつつ、国境の壁をさらりと越えるタフなサウンドで観客を圧倒。
OBSESS
メリケンパークエリアから足を伸ばし、3会場を展開する神戸まつりエリアへ。「震災30年復興STAGE」はステージトラックを舞台に展開。片平里菜は「地震で壊れた建物が復興して。こうやって笑えるようになって最高だね。いっぱい笑って帰ってね」と、アコギの弾き語りで「オレンジ」や「女の子は泣かない」を披露。自然発生する手拍子やシンガロングに、柔らかな笑みを見せる。「30年前もロックバンドが駆けつけていて。その時に生まれた歌が民謡みたく広がった」と、復興を願う心の支えとして多くの人に歌い継がれる「満月の夕」をカバー。神戸まつりを見に来ていた通りすがりのおじいさんが「この曲、えぇ歌やでな」とぽつりと言葉を漏らしていた姿がとても印象的だった。
片平里菜
片平里菜、防災士のバカビリー
黒猫CHELSEAの渡辺大地は神戸市出身で、幼い頃に震災を経験。阪神淡路大震災当時について、母親が身体を張って守ってくれたことなど、小さい頃の最初の強烈な記憶だと語りつつ、「例え行動に移せなくても、気持ちを持った大人でありたい。支え合って生きていきましょう。神戸はキレイな街。支え、想いがあって今の神戸の街がある」と語り、小さい頃から歌っている”神戸”といえばの作品として「しあわせ運べるように」を渾身の歌声でひりだすように、今にも泣きそうな表情を見せながら歌う。「もっともっと続いていきますように。年数は関係ない。忘れない、伝えたい気持ち。(カミコベが)残ることに支持、賛同します。(カミコベに)参加できて幸せ」と想いを告げ、「東京」で熱量高いメッセージを響かせた。
黒猫CHELSEA
黒猫CHELSEA
神戸まつりエリアでは『カミコベ』ライブのほかにも、サンバや地元音楽隊によるパレードが次々に登場し、会場は常に大賑わい。場内ではフードやドリンクなどのブースも充実していたが、『カミコベ』ブースのセレクトからも震災復興に向けての想いが随所に感じられた。「能登の食」「能登の地酒」「能登のお土産」など、能登半島の魅力を発信するショップが数多く登場。能登で人気のコーヒー店なども出店し、ライブの合間に神戸の美味しいパン店でパンを買ってコーヒー片手にランチを楽しんでいる人がいたり、いつも以上に神戸の街を存分に楽しめたのは今回の『カミコベ』ならではの光景だろう。
『カミコベ』のほとんどが屋外ステージだが、神戸まつりエリアにある「COMIN’ KOYO STAGE」は屋内、しかも音楽&ダンス専門学校のホールを使った本格的なステージ。キャパシティが限られていることもあって、どのステージも入場制限が幾度となくかかるほどの人気ぶりを見せていた。
STANCE PUNKS
8年ぶりの『カミコベ』出演となるSTANCE PUNKSは「パンクロックの時間だよー!」と「すべての若きクソ野郎」からど真ん中のパンクロックを鳴らしまくる。「最高の客たちに最高の曲をやるわ。いつ死ぬか分かんないけど、死ぬまで生きてやろうじゃないか!」と、軽快なビートが刺さる快感に襲われ、フロアが大きく揺れる。
STANCE PUNKS
『カミコベ』はステージ数も出演者も多いものだから、ひと組のアーティストによるステージ時間は20~30分ほどと極めて短い。『カミコベ』常連のセックスマシーン!!は少しでもバンドの魅力を打ち出そうと、サウンドチェックもステージタイムに含めるように「サルでもわかるラブソング」からゲストボーカル(観客)と一緒にシンガロングを決め込む。「先祖にラブソングを」では『カミコベ』の初代実行委員長の故松原氏に向け、「全国からバンドが集まってチャリティーを呼びかけ、目標金額に向けて邁進している」と、チャリティーへの協力について語ると「君を失ってWow」でこの日もフロアライブで観客を大いに巻き込む!
セックスマシーン‼︎
セックスマシーン‼︎
「COMIN’ KOYO STAGE」のトリのワタナベフラワーもサウンドチェックから「泣きなさんな」でとにかくハッピーに愛の賛歌を響かせていく。待ちに待った本編へ…と思ったら、クマガイタツロウが募金箱に扮した衣装でステージへ。しっかり笑いも取りつつ、募金も募る。らしさ全開のステージで観客を笑顔に換えていく。
ワタナベフラワー
ワタナベフラワー
メリケンパークエリアに戻ると減災ヴィレッジにある「ひとぼうSTAGE」では写真家・石井麻木や東北ライブハウス大作戦スタッフらによるトークショーやそれぞれの出演を終えたアーティストらによるトークセッションが繰り広げられていた。
ほかにも、チャリティーオークションやグッズの販売が行われたほか、汚れた写真を復活させる「写真洗浄あらいぐま」、「幡ヶ谷再生大学」「防衛省 兵庫地方協力本部神戸出張所」まで幅広いジャンルのショップや企業、団体が出店。アーティストによるライブステージも楽しみだけど、震災を風化させずに語り継ぎ、神戸からの恩返しとして被災地支援を行うことで、神戸の魅力を伝えることをテーマとしている『カミコベ』にとって、このエリアは核たる存在といってもいい。少しの気付きをきっかけに、減災への意識を高めてほしい。そんな思いがこのエリアから感じとることができた。
アルカラ
アルカラ
神戸に所縁のあるアーティストが数多く出演する『カミコベ』。「カミコベチャリティーフェスSTAGE」に出演したアルカラは「震災から30年後の未来も、こうして笑い合えることに感謝してアルカラ、始めます!」と「アブノーマルが足りない」や新曲など真正面から心震わすパフォーマンスで魅せる。神戸市東灘区で被災した経験を持つ稲村太佑は、震災から30年を経て互いに笑い合える景色を作れていることに感謝しつつ、「この素敵な空間からエネルギーを届ける手助けをしよう。支援の輪が大きな愛になるまで手助けし合おう」と、イベントへエールを送る。
四星球
四星球
『カミコベ』の最西端にある「MOSAIC STAGE」ではトリの四星球が「鋼鉄の段ボーラーまさゆき」から豪快なプロレスを仕掛け会場を大いに沸かす。「ちょんまげマン」では北島康雄ならぬ、ちょんまげマンが神輿に乗り込み、募金を呼び掛けるのではなく、自ら募金を集めにいくという前代未聞?画期的?なスタイルを考案。公式サイトに記載された募金額速報でも高額を叩き出すなど、楽しみながらイベントに貢献する彼ららしいステージに感服させられた。
ガガガSP
「COMING KOBE25」の大トリを締めるのはもちろん今回もガガガSPだ。25年2月、メンバーの旦那こと桑原康伸(Ba)の逝去の報せに驚いた人は多いだろう。コザック前田は「すべては当たり前じゃない。バンドをやるか悩んだけど、今回も『カミコベ』に呼んでもらえた。これからもバンドを続けていきます。生きてる限り、終わらない青春時代がありますよ」と、「青春時代」「はじめて君としゃべった」と、スコンと心を無条件に明るくさせる青春パンクを打ち鳴らし、シンガロングが盛大に沸き起こる。6月25日にはカバーアルバム『青春謳歌 カバーアルバム』をリリースした彼ら。「桑原やメンバー4人と選曲した作品。メンバーが1人欠けても最後までバンドを観てくれることは愛やと思う」と「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ/サンボマスター」を披露。ただひたすらに真っ直ぐ前を見据えて愛を歌う姿に思わず胸がこみ上げる。
「桑原は44年という短い人生だったけど、ガガガSPとして死んでいった。僕らもガガガSPとして死んでいきたい! これから先、旦那のために何ができるか。それはガガガSPとして売れること。伝手やコネではなく”ガガガはトリで当然”と思ってもらえるバンドになりたい」と、これからの活動に懸ける思いを叫ぶ前田。そして「どうしようもなくしんどい日は誰にでもある。どうにかせなあかんって、ちょっとでも幸せや興奮のためにライブに来てるはず。少しでもケセラセラになる歌を」と新曲「ケセラセラ」を歌う。ポンっと詰まりものが取れて、心がふわっと温くなる楽曲に自然と誰もが笑みを見せながら「笑いながら全部気楽にいこうぜ♪」と共に歌う姿に笑い泣きしてしまう。
「いつまでも生きていきましょう。おもろく生きていきましょね。しんどい中でもライブに来てるってことは何もしないより人生2倍得してますから!死ぬまで生きてやろうじゃないか!」と「晩秋」で本編を締めるも、まだまだ物足りないと思っていたのは観客だけではなく、『カミコベ』に集まったバンド仲間たちも同じ。コザック前田は「足りてひんのやったら金払ってちゃんとライブハウス来いよ!」と愚痴を言いつつ、「ライブバンドとして頑張っていくんで!」と改めて決意を語り、ラストは名曲「線香花火」へ。ステージには続々と仲間たちが集まり、『カミコベ』スタッフお手製の桑原パネルに、初代実行委員長・松原氏のパネルも飛び出し、最後の瞬間までお祭り騒ぎのまま、『COMING KOBE25』の全ステージが終了した。
ステージの最後、イベントを主催する一般社団法人COMING KOBE実行委員会・上田佑吏(初代実行委員長·松原氏の息子)が登壇。「震災から30年。イベントは存続の危機的状況もあるなか、クラウドファンディングの実施やたくさんのボランティアスタッフがいるおかげで運営できている。父の遺志を継いで『カミコベ』を続けていきたい。より多くの人に来てもらえるイベントにしたい」と集まった観客へ感謝の気持ちと、今後のイベント存続のための募金を語りかけイベントは終幕。たくさんの観客が帰路に向かう道中、ボランティアスタッフに「お疲れ様でした」「ありがとうございました」と声をかけ、何度も何度も募金する姿があちこちで見ることができた。たくさんの思いが支援を繋ぐ『COMING KOBE』、来年の開催も心待ちにしたい。
取材・文=黒田奈保子 写真=『COMING KOBE』提供
イベント情報
出演:アイスクリームネバーグラウンド / ammo / アルステイク / EGG BRAIN / SABOTEN / SHAKALABBITS / セックスマシーン!! / TETORA / KNOCK OUT MONKEYMOS / 夕闇に誘いし漆黑の天使達 / ROTTENGRAFFTY / ワタナベフラワー ........and more
※WEB登録による入場券は必要になります。