稲垣吾郎、平岡祐太ら舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』4年目新キャストの稽古開始 レポート&稽古写真が到着

2025.6.13
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TBS赤坂ACTシアターにてロングラン上演中の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』。4年目に出演する新キャストの稽古が開始し、オフィシャルレポートが到着した。

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は、小説「ハリー・ポッター」シリーズの作者であるJ.K.ローリングが、ジョン・ティファニー、ジャック・ソーンと共に舞台のために書き下ろした「ハリー・ポッター」シリーズ8作目の物語。小説の最終巻から19年後、父親になった37歳のハリー・ポッターとその息子・アルバスの関係を軸に描かれる新たな冒険物語は、2016年7月のロンドン初演以降世界中で多くの演劇賞を獲得し、好評を博しており、国内でも第30回読売演劇大賞の選考委員特別賞、第48回菊田一夫演劇大賞を受賞するなど高い評価を獲得。2022年より開幕した東京公演は総観客数110万人を突破、さらに通算1100回公演を達成した。

ロングラン上演4年目を迎える2025年夏からは、ハリー・ポッター役に稲垣吾郎と平岡祐太が抜擢。そして1年ぶりに大貫勇輔がカムバックし、トリプルキャストでハリー・ポッターを演じえる。さらにハーマイオニー役を松井玲奈と奥村佳恵、ロン役を上山竜治と関町知弘(ライス)、ドラコ役を渡辺邦斗、ジニー役を安藤聖と吉井怜が務めるほか、ダンブルドア役には市村正親が決定するなど、実力派キャストが集結した。

稽古場レポート

2022年に開幕した『ハリー・ポッターと呪いの子』東京公演も、今年で4年目。総観客動員数110万人を超え、ますますの盛り上がりを見せている。本作にはこの7月から新キャストが参加し、また新たな風を吹かせてくれることだろう。
5月中旬には、この新キャストたちによる初めての読み合わせが行われた。一般的に読み合わせとは台本の台詞をキャストが読むことだが、このカンパニーではワークショップと組み合わせた独自のスタイルとなっている。その様子をレポートしよう。

半円に並べられた席にキャストたちは座った。初めましての人たちも多く、誰もが少し緊張した面持ちだ。中央にはハリー・ポッター役の稲垣吾郎と平岡祐太が並んで座った。二人ともあの象徴的な黒縁メガネをかけているのが新鮮だ。
演出補のエリック・ローマスが「ホグワーツへようこそ」と挨拶した後、早速課題を投げかけた。その課題とは、「ハリー・ポッターと繋がる自分の中の大切な記憶を皆さんと共有してください。どんなに些細なことでもOK」。

それを聞いて、最初に手を挙げたのは松井玲奈(ハーマイオニー・グレンジャー役)。「私は子供の頃からハリー・ポッターが大好きで、小説も隅から隅まで読み込んでいました。映画が初公開された時、両親に映画館に連れて行ってもらいました。鑑賞後、母に感想を聞かれて「いろんなところを端折ってたけど、ハリー・ポッターの話だったね」と答えたそうです(笑)。ずっとハーマイオニーになりたいと憧れてきました」と松井が言うと、「だから今日ここにいるんだね」とエリック。思わず拍手が起こった。

松井の発言を皮切りに、次々と思い出が語られた。平岡は「僕は舞台を見るまでハリー・ポッターを忘れていて。舞台ではハリーが僕と同世代に成長していて、すっかり世界観に引き込まれてとても感動したんです。帰宅したら、引き出しの奥にハリー・ポッターのコンプリートDVD BOXを見つけて、昔好きだったんだ!と思い出しました」と語った。

関町知弘(ロン・ウィーズリー役)が「僕は列車が苦手で、新幹線では切符を無くして自腹になったり(笑)。それこそトラウマなのですが、ハリー・ポッターのホグワーツ特急を観て、これよりマシと思えるようになりました」と言うと、エリック「ある意味セラピーになったのでは」、稲垣「トラウマの方が覚えているものだね」と考えるところがあったよう。渡辺邦斗(ドラコ・マルフォイ役)は「僕は中学から高校までカナダのモントリオールに留学。その学校は全寮制で、ホグワーツみたいな歴史のある建物でした。ハリー・ポッターを見るたびに、寝ても覚めてもずっと友達と一緒にいた楽しい時間を思い出します」。

原嶋元久(アルバス・ポッター役)は「ハリーが「自分の息子じゃなければいいのに」というシーン、幼少期、父親に厳しく怒られたことを思い出しました。あとからそれを知った母が逆に父を怒ってくれていました。今ではとても仲良しです」、大久保樹(スコーピウス・マルフォイ役)は「小学校の体育の時間に雪が降って外に出られず、初めてハリー・ポッターの映画を見ました。このオーディションでも雪が降っていたので運命めいたものを感じます」。その他、様々な話が披露された。

それぞれの物語をシェアした後、エリックは質問を出した。「『呪いの子』は何年から始まりますか?」。
様々な年号が飛び交う中、エリックは2017年9月、ロンドンのキングスクロス駅で始まります」と正解を明かした。つまりロンドン初演時(2016年)はまだ未来の話だったわけだ。『ハリー・ポッターと死の秘宝』のラストが『呪いの子』の冒頭にあたるということで、エリックが「一人ずつ順番に『死の秘宝』の最終章を声に出して読んでください。どこまで読むかは自由です」とキャストの一人に本を手渡した。順番に少しずつ音読していく。平岡が2、3行読んで稲垣に本を渡すと、「もうちょっと読めば?」と稲垣が押し戻す場面も。徐々にキャストたちの緊張が解け、和やかになっているのがよくわかる。

最後まで読み終わり、エリックに感想を聞かれた上山竜治(ロン・ウィーズリー役)は「最後がピッタリ終わって、いいチームだなと思いました」と満足気だ。

エリックはこの場面について、当初の二部制の舞台では5分くらいこの場面が盛り込まれていたこと、J.K.ローリングが盛り込む死の要素やリリーの目について、丁寧に解説した。「本の形で7冊も資料がある舞台はなかなかありません。いくらでも深く追求できるのがこの作品。迷ったり不思議に思ったら本に戻ってください」とエリック。

ここまで知識を積み上げた後、1幕1場と2場の読み合わせが始まった。舞台はキャストが変わるとまるで違う作品のように生まれ変わる。キャストたちはそれぞれしっかりと予習してきたようで、その人物として喋っている。聞いているとしっかりその場面が浮かんでくるから面白い。早く劇場で観たい!と心が躍り出した。

休憩を挟んで、今度はポッター家、ウィーズリー家、マルフォイ家で別れて座る形に。エリックが新たな課題を出した。「ホグワーツの戦いから『呪いの子』が始まる2016年7月までの19年間に自分の役にとって大切な出来事を3つ考えてください」。キャストたちは3つの答えを考えた後、各グループでシェア。すると、「お互いのことを知ったら、あと4つ考えてください。最初の3つは個人的なことでしたが、4つは間口を広げて、家族や社会の動きに繋がることを考えて」とエリック。また、それをグループでシェアすることに。

様子を見ていると、その家の特徴が現れていて面白い。ハリー、ジニー、アルバスからなるポッター家は皆座って、真剣に話し合っている。ロン、ハーマイオニー、ローズからなるウィーズリー家は立ちあがって話す人、ジョークを飛ばして大笑いする人など実に賑やかだ。ドラコとスコーピウスからなるマルフォイ家は3人と人数が少ないこともあり、またキャスト本人たちの品の良さも相まって落ち着いた雰囲気が漂っている。もう役がキャストに根付き始めているのだろうか。

これらの要素を年表にまとめることになった。模造紙とマジックが配られ、各グループで作業する。「誰が書く?」「ここに線を引いて」「想像の出来事でもいいんだよね?」など会話が弾み、まるで学校の授業のよう。他のグループを偵察に行く人、エリックに質問する人など、皆積極的に動く。キャストたちがすっかりこの時間を楽しんでいるのがよくわかる。

本に書かれていること、そして想像力を駆使したことも含めて、個性に溢れた年表が完成し、発表タイムとなった。マルフォイ家は、ルシウスのことに始まり、ドラコとアストリアの出会いと結婚、アストリアの病気と妊娠、スコーピウスの誕生と英才教育など。「2013年にハリーが魔法省長官に就任します」と言うのを聞いて、ポッター家が、なぜ君たちがハリーのことに言及?というような反応をしたのが、さすが犬猿の仲というところ。続いて、「2014年にドラコはスコーピウスに初めて鬼っこペッパーをもらいます」で、場がほっこり。

ウィーズリー家は2枚にわたる、盛りだくさんの年表となった。ロンとハーマイオニーの魔法省入省、二人の結婚、ロンの退職とジョークショップ、ローズ誕生など。「ハーマイオニーは子供が生まれてホルモンのバランスが崩れ、育児書通りにならないと癇癪を起こし、過去最大の夫婦喧嘩。ロンはどうにかしようと料理を始めます」「第二子ヒューゴが誕生(拍手)。お祝いに花火を打ち上げたらジョークショップが燃えてしまい、ハーマイオニーが魔法で隠蔽します」と、思いもよらなかった出来事も。

ポッター家はハリーとジニーの仕事について、二人の結婚、ジェームズとアルバス、リリーの誕生、アルバスが内向的になったきっかけなど。「ハリーとジニーは2003年新婚旅行に日本に行きます。マイホーム購入」と平岡が言うと、稲垣が「日本の建築に興味を持ってね」と付け加えた。またこちらの夫婦にも離婚危機があり、吉井怜(ジニー・ポッター役)曰く「なぜすれ違いになったかというと、ハリーが仕事ばかりしていて、なかなか育児を協力しないから」。あり得る!と納得してしまう出来事だ。また「2010年には私(ジニー)もずっと新聞社に勤めていて、いよいよ本を出版しようと、得意である料理・育児本を出して大ヒットとなりました」と安藤聖(ジニー・ポッター役)。そこで奥村佳恵(ハーマイオニー・グレンジャー役)がハーマイオニーになりきって「読んだかもしれない」と反応。安藤は「(ハーマイオニーに)あげたはずですよ。なかなか活かしてもらえないけど」と、役そのもののやりとりで盛り上がった。

発表を聞いたエリックは「とても楽しかったです。『呪いの子』は照明やイリュージョンの関係もあり、舞台上での動きが制限されます。でも役については自由に作ってほしい。今までのキャストと同じことをしようなんて絶対に思わないでください。皆さんがこの役に何を吹き込んでくれるのかが見たいんです」と真摯に語った。

より深く掘れば掘るほど、広がりと発見があるハリー・ポッターの世界。入り口に立ったばかりの新キャストたちがこの先、稽古を重ねて舞台でどのように立ち上がるのか。彼らがデビューする日が待ち遠しい。

取材・文:三浦真紀/撮影:スズキメグミ

公演情報

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

[日程]上演中~2025年10月31日(金)
[会場]TBS赤坂ACTシアター
[上演時間]3時間40分 ※休憩あり
【主催】TBS ホリプロ ATG Entertainment
【特別協賛】東海東京フィナンシャル・グループ
      With thanks to TOHO
      In association with John Gore Organization
【舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』公式Webサイト】https://www.harrypotter-stage.jp