ドミトリー・マスレエフ(ピアノ) チャイコフスキー・コンクールの覇者、見参!
2016.1.29
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ドミトリー・マスレエフ(ピアノ)
チャイコフスキー・コンクールの覇者、見参!
実力ある若手ピアニストが数多く出場した、2015年のチャイコフスキー国際音楽コンクール。激戦の末、頂点に輝いたドミトリー・マスレエフは、ロシア東部に生まれ、モスクワ音楽院で学んだ27歳。優勝の翌月となる8月には副賞演奏会のため早速来日し、PMF音楽祭のフィナーレを飾る公演で、ゲルギエフ指揮のもと協奏曲を披露した。この時は、特に2曲のアンコールで繊細な感性と美しい音を持つピアニストだということを印象付け、得意のプログラムによるソロをじっくり聴いてみたいと思わせた。
その機会が、この6月に行われるリサイタルでようやく訪れる。用意されているのは、彼が今弾きたい作品を丁寧に選んで組み合わせたということが感じられるプログラムだ。
冒頭は、スカルラッティのソナタ。マスレエフの繊細なタッチとみずみずしい音がよく合うだろう。そしてベートーヴェンの告別ソナタ、プロコフィエフのソナタ第2番を続け、音楽の構成力と豊かな感情表現も見せる。
後半はピアニストとして敬愛しているというラフマニノフの作品。幻想的小品集や「断片」「V.R.のポルカ」、絵画的練習曲集から小品を組み合わせて、物語を編む。ラストには、やはり彼が好きな作曲家だというリストの「死の舞踏」と、ドラマティックで技巧的な作品も忘れない。
ゲルギエフが高く評価するというこの新星の音楽性を、あらゆる側面から確かめる公演となりそう。会場が、ピアノを聴くのにぴったりの浜離宮朝日ホールだというのも嬉しい。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年2月号から)