1期・2期と積み重ねてきたからこそ描けるものの詰まった作品に――TVアニメ『アークナイツ【焔燼曙明/RISE FROM EMBER】』、黒沢ともよ・石上静香インタビュー
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撮影:大塚正明
2025年7月から放送がスタートしたTVアニメ『アークナイツ【焔燼曙明/RISE FROM EMBER】』。TVアニメ第3期にあたる本作は、龍門へと侵攻するレユニオン・ムーブメント(以後レユニオン)とロドス・アイランド製薬(以後ロドス)の戦いを描きつつ、レユニオンの指導者・タルラ(CV:坂本真綾)の過去も掘り下げるなど、原作ゲームのエピソードを丁寧に紐解いている。そんな第3期のクライマックスが迫るなか、本稿では黒沢ともよ(アーミヤ役)と石上静香(チェン役)へのインタビューを敢行。いよいよ佳境に近づく物語自体についてはもちろん、10月4日に開催される『アークナイツ』TVアニメシリーズオーケストラコンサート【暁光追奏/FILM ON ORCHESTRA】への期待など、多岐にわたった話題についてじっくり訊いた。
■過去編を経て見えた、アーミヤとタルラの“似ている”ところとは?
――まずはここまでの物語を振り返っての感想や、印象に残っているシーンからお聞きできますでしょうか。
黒沢:実はアーミヤ、第2期までの間に結構しっかり個としての成長が描かれていまして。第3期に関してはあまり時系列が長い話でもないので、それよりも「目の前の問題にどう立ち向かっていくか?」みたいな側面が強いんです。だからアーミヤとしての印象的なシーンはこれからなんですけど……個人的に印象に残っているシーンだと、やっぱりパトリオットかなと思います。
撮影:大塚正明
――20話で戦った。
黒沢:はい。今までCGを使った作画が特別多い作品ではなくて、結構手描きによる力の比率が大きかったんですけど、パトリオットのところでかなりガッツリCGを使ったシーンが出てきたりもして、質感がガラッと変わった戦いだったんですよ。それと、サルカズの王としてアーミヤが最後に幻想を見せたことに対して怒られたりと、あの一連の戦いはすごく印象的でしたね。
石上:私は元々第3期を迎えるにあたって、演じたいシーンは多々ありまして。なかでも印象的だったのは、第3期の最初、17話のところのウェイさんとの衝突と、あとエンディング後のホシグマさんとの衝突ですね。
黒沢:ありがとう。本当に。
石上:あはは(笑)。まさか同じ話数でまとめていただくことになるとは知らなかったので、台本をいただいた時には「すごい、見せ場がギュッと詰まってる。第3期の掴みとしては抜群な話数になるだろうな」と思いまして。収録も、ウェイ役の山寺(宏一)さんとホシグマ役の安野(希世乃)ちゃんと一緒に録らせていただきました。
(C)HYPERGRYPH
――それぞれのシーン、お芝居されてみていかがでしたか?
石上:ウェイさんとはほぼ親子喧嘩みたいなシーンで、怒鳴り合うんですけど、最初は「山寺さんの声量に、私が勝てるのか?」と思い(笑)。でも負けちゃうとチェンが劣勢になって聞こえてしまうので、食らいつくように収録したのはすごく印象的です。あとはホシグマさんとのシーンも、ゲームも遊んでいるので収録がとても楽しみだったんです。文字で表現されていたものが、初めてアニメーションで動きと音がついて表現されるわけですから。原作が好きな方にとってはすごく好きなシーンでもあり、アニメでも観てみたいシーンのTOP3に入るんじゃないか? というぐらい私は第3期の中ではイメージを思い描いていたシーンだったので、そこに尺を使って演じさせていただけたことは役者としてすごくありがたかったですね。
黒沢:私もすごく好きでした。ホシグマとチェンさん、あとはお嬢(スワイヤー)との関係が大好きなので。だからこそ、試写で初めて観た時にはえぐられる気持ちで拝見していました。
石上:そこのシーンは、最後二人でスタジオに残って、一対一で収録させていただきました。
(C)HYPERGRYPH
――拝見しても、やはり気合いの入りぶりを感じます。
石上:あはは(笑)。そうですね、ほぼリテイクもなく……。
黒沢:そうなんだ!
石上:ほぼほぼどっちも一回で、OKいただきました。
黒沢:なにそれ! かっこいい! いいなぁ……。
撮影:大塚正明
――そんなチェンは、今回のキービジュアルからタルラとも相まみえそうな雰囲気が漂っていますが、第3期全体ではどのようなところに意気込みを感じられていたのでしょうか?
石上:やっとタルラがお姉ちゃんだということや、チェンさんが感染者だということが明かされ、第3期になってチェンの立場もいろいろ変わったんですよ。そんななかで、元々は「お姉ちゃんを止めよう」という考えだったところから、チェンさんもだんだん「もう対話では止められない」というのをなんとなく察して。“戦闘モード”じゃないですけど……私は一人っ子なので兄弟に対しての想いというものは想像でしかないんですが、肉親が今までの事件に深く関わっていて、それを姉妹である自分が止めるというのはすごい心境なんだろうなと思うと、私は心が痛かったですね。
――ちなみに、第3期全体としてどういった印象を受けられましたか?
黒沢:たぶんしずちさん(=石上)は先にゲーム内でシナリオに触れられていて、逆に私は毎回TVアニメの台本で物語を知っていったので、印象がそれぞれ違うかもしれないですね。
石上:たしかに! 受け取り方が違うかも。
黒沢:私は原作のシナリオからTVアニメにどうピックアップされて今回の構成になっているのか分からないんですけど、第3期は徹頭徹尾“家族”とか“親子”というものにフォーカスが当たって最後まで走っている……“親子愛”という言葉が簡単な言い方に聞こえてしまうぐらいの、いろんな形の関係性の描写みたいなものがすごく色濃くて。第1期・第2期と積み重ねてきたからこそ描ける緻密な心の機微を、アクションの中に織り交ぜて描くという難しいことを、渡邉(祐記)監督はやろうとしたんだな……ということを走りきってから感じました。「すごいことをしようとしたんだな」と思って、感動していましたね。
――おっしゃられたように、第1期・第2期の積み重ねがあるからこそ、“想いが繋がれていく”というような印象もあります。
黒沢:そうですね。渡邉監督が「あまり回想シーンを入れたくない」ということをおっしゃっていまして。実際に「うん。いらない、いらない!」と思えるぐらい、一枚絵の一瞬のフラッシュバックだけで全部思い出して「うわ、涙止まんない!」みたいになれるのが、このTVアニメ『アークナイツ』が今まで積み上げてきたことの成果だと感じています。そこにも感動しました。
石上:実は18話。ゲームでは『闇夜に生きる』というサイドストーリーのお話で、本筋には入っていなかったお話なんですよ。
黒沢:そうなの!? ……渡邉監督って、すごくない?
石上:あはは(笑)。なので原作をプレイしている身として、初めてオンエアで観させていただいた時には「ここに挟んでくるんだ!」ってまず衝撃を受けました。でも、Wの掘り返しや「ドクターってどんな人だったんだろう?」という過去のチラ見せもありましたし。それにちっちゃいアーミヤやドクターみたいな服を着ているケルシー先生とか、すごく意味深なシーンが今後どう作用するんだろう? と視聴者に期待感を持たせる演出で、まず「渡邉監督すごいな」と思いましたね。あと、『アークナイツ』は戦いのある作品なので、どうしても死んでしまうキャラクターが出てくるんですけれども……。
撮影:大塚正明
――先ほど話題に出た、パトリオットもそうですね。
石上:はい。その他にも今まで亡くなったキャラクターたちの姿がで出てくるのですが、そのシーンがより、残酷と言いますか。ロスモンティスも言っていますけど、「忘れちゃいけない」という演出が、本アニメーションの中でもすごく描写されているんですね。それが第1期・第2期を経ての第3期では……「人の心をえぐるやり方が分かってるな」という、演出になっていて(笑)。観ていてすごく辛い気持ちにもなりましたけど、それを観た先の「そういう方々の気持ちを、ちゃんと汲んで進まなきゃいけない」というアーミヤとロスモンティスとの会話が、私はすごく印象に残っています。
――さて、第3期ではタルラがフィーチャーされ、彼女の過去も描かれています。それを通じてレユニオンが設立された経緯も明らかになってきましたが、それを踏まえてレユニオンの面々の印象などに変化はありましたか?
黒沢:レユニオンの面々との印象は、私たちにとっては第2期が印象的で。ReoNaさんの「R.I.P.」という楽曲もあるぐらいですし、特に“人間”として描かれているので、より一振り太刀を振るうごとの重さみたいなものは感じるようになりましたよね。
石上:うん。ただ“敵”じゃなくて、お互い信念を持ってぶつかっている描写がありますし、どっちも別に間違ってもない……タルラの過去編を観ると、それをより感じますね。
黒沢:そう。
石上:「別に、レユニオンみたいな思想があっても正しいよね」というか。ただ、タルラがどうしてレユニオンの思想から変わっていってしまったのか……というところが本アニメを観てくださっている方は気になるところなんでしょうけど、「それがなかったら、ロドスとレユニオンは手を取り合えたんじゃないかな?」といつも思いながら収録していました。
黒沢:うん、思う。アーミヤは度々、「あの頃のタルラの眼差しを思い出す」っていろんな人に言われていたんですけど、私は「雰囲気が全然違うじゃん」と思っていました。でも、テントの中でタルラがすごくアーミヤっぽいセリフを言うところが何ヵ所もあって。「あー! こういうことかぁ」みたいに腑に落ちたんです。「理想を過激なまでに推し進めて、一つもつつかれるところがないようにいきたい」みたいな頑張り具合から、「似てる」と言われることに納得しました。
(C)HYPERGRYPH
――タルラ役の坂本真綾さんの、お芝居の印象はいかがでしたか?
黒沢:え、すごくなかったですか?
石上:いやぁ、もう……回想のシーンはもちろん一緒に録れなかったのでオンエアで初めて観たんですけど、“全然違う”というか。
黒沢:うん! 本当に。
石上:私たちは対立している側のタルラとしか対峙していなくて、その時も「二人がかりでも、倒せるのか?」みたいな圧を感じたんですけれども……。
黒沢:一人の理想を掲げた少女が、だんだんだんだん摩耗していって最後プツッと糸が切れるまでをあんなにシームレスに描かれると、俳優としてはドキッとするものがあるんですよ。「できるかな?」って。それを「楽々とやってのけたんだろうな」というのが目に浮かぶので、「やっぱり先輩の背中はでかいなぁ」と思いました。
撮影:大塚正明
――タルラ役の坂本真綾さんと一緒に収録はされたのでしょうか?
石上:はい。掛け合いしているところは、だいたい一緒に収録させていただきました。
黒沢:真綾さんって「集中して、役に入る」というタイプの方じゃないので、ギリギリまで楽しく談笑されて、始まったら急にタルラになる方なんですよ。
石上:たしかに。マイク前に立つと、スッとタルラに切り替わるんですよね。
黒沢:だから、アフレコの時は楽しくお喋りしていた記憶しかないかも。「あそこのケーキが美味しい」とか、「暑い」とか「寒い」とか。しかも、タルラって複雑な設定のキャラクターじゃないですか?「今はどっちサイドからどう喋ってるんですか?」というのが複雑なキャラクターだから、渡邉監督が大活躍されて。
石上:結構細かく、すり合わせをされていた印象はありますね。
黒沢:「これ分からないんですけど、ここってこうなんですか?」みたいに真綾さんがおっしゃったら、「行きます!」と監督がブースの中に来られて、改めて説明……みたいな。ありましたねぇ。
石上:うん。懐かしい。
■日本では初となる本作のオーケストラコンサート、二人が期待することとは?
(C)HYPERGRYPH
――さて、少々脱線なのですが、10月にはTVアニメシリーズオーケストラコンサートが開催されることが発表されました。
石上:日本では初めてですよね、たしか。
黒沢:ねぇ! すごい……。
――本当に劇伴も魅力的で、物語をドラマティックに盛り上げてくれるものだと思うのですが、お二人はそんなオーケストラコンサートに期待することがあればお聞きしたいです。
黒沢:私はずっとアーミヤとして、中国での音楽祭で使われる声を何度か収録してきたのですが、やっと近くで完成したものが観れます。
石上:TVアニメのBGMがオーケストラのいろんな楽器で奏でられるというのは私も聴いたことがないので、ぜひ聴いてみたいです。
黒沢:本当にテンポがいいアニメーションなので、劇伴として一瞬しか聴けないような曲もたくさんあって。サウンドトラックが発売されていますが、「みんなで一緒に聴く」という普段体験できないことを、体験できる機会ですから。それを綺麗な照明の中で聴けたら、一瞬でストーリーがわっと広がって楽しいですよね。
石上:たしかに。アニメーションを思い出させるような演出がみられたら、嬉しいですよね。
黒沢:あと、最近気付いたんですけど、このアニメって他の作品に比べてセリフがない時間がとても少ないんですよ。ずっと誰かが喋っているから。普段はセリフの裏にいる劇伴が主体になるというのも、すごく楽しみだなぁ……。
(C)HYPERGRYPH
――そういう意味でも、演奏を通じて各シーンを鮮明に思い出せそうですし、オーケストラからの降ってくるような音で体感できるわけですよね。
黒沢:そうですよね。詳しいことは私もうかがっていないのでなんとなくですが、例えばフロストノヴァが出てきたシーズンでは、雪のような「パッパッ」という聴いたことがない楽器の音が聴こえていたりするので、それが奏法によってそうなっているのか、そういう特別な楽器が出てきているのか?……第3期は“炎”にちなんだ独特な楽器が使われてるのか? みたいなものも、目で見て確認できたら楽しいかなと思います。
――石上さんは、「どんな曲を聴いてみたい」みたいなものはありますか?
石上:パッと浮かんだのは、フロストノヴァの子守唄ですね。歌声も相まってすごく素敵なんですけど、ゲームではBGMだけが流れているんですよ。あの曲を好きな方って原作でもすごくたくさんいらっしゃるはずなので……ぜひオーケストラの中に組み込んでほしいなとは、“ファン”として思います。
黒沢:私も! 同意です。
石上:あと、ReoNaさんと糸奇はなさんも出演されるということは、きっとオーケストラの演奏で歌ってくださるってことですよね? それも楽しみです。
――最後に、さらにクライマックスへと向かっていくこの先の物語を楽しみにされている視聴者の皆さんへ、ひと言ずつメッセージをお願いします。
石上:ここからは怒涛の展開になってまいります。きっとこの第3期を観てくださっている皆様は第1期・第2期を観てくださっていると思うので……その期待に応える出来上がりになっております。ぜひ最後まで、見届けていただければ嬉しいです。
黒沢:本当にこの作品は、第3期通して渡邉監督のすごい愛情と、まるでアーミヤのような過激な正義感のもと、ここまで突き進んできたんですけれど。第3期の最後には、アーミヤも、「武器なのか、私たちは?」という壁にぶつかることになって。そのなかで、「人間ってなに?」とか「憎しみってどうしたらいいの?」みたいな私たちが日常の中でつまずいてしまうようなことを、大々的に突き付けてくれる展開がこれから待っています。ファンタジーを観ているようで、ちょっと自分の生活が変わるような物語を、最後まで楽しんでいただければと思います。
取材・文:須永兼次 撮影:大塚正明
イベント情報
『アークナイツ』TVアニメシリーズオーケストラコンサート【暁光追奏/FILM ON ORCHESTRA】
■会場:LINE CUBE SHIBUYA
(〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町1-1-1)
■時間:昼公演開場13:00 / 開演14:00
夜公演開場17:00 / 開演18:00
■出演:林ゆうき/ReoNa/糸奇はな(敬称略、順不同)
■指揮:吉田行地
■演奏:Heartbeat Symphony
(1階席・2階席):¥14,000(税込)
(3階席):¥11,000(税込)
〇プレミアム記念グッズ
※グッズは全席共通、会場内でのみの配布となります。
(郵送対応は致しかねますので予めご了承ください)
オフィシャル2次先行販売中
受付期間:2025年8月4日(月)12:00~2025年8月24日(日)23:59
イープラスにて販売 https://eplus.jp/arknights_orche/
放送情報
TVアニメ『アークナイツ【焔燼曙明/RISE FROM EMBER】』
TOKYO MX 7月4日(金)23:30~
KBS京都 7月4日(金)24:00~
サンテレビ 7月4日(金)24:30~
BS11 7月6日(日)23:30~
アニマックス 8月2日(土)23:30~
※放送時間は編成の都合などにより変更となる場合がございます。
■STAFF:
原作:Hypergryph / Studio Montagne
キャラクター原案:唯@w
監督:渡邉祐記
副監督:西川将貴
アニメーションキャラクターデザイン:高藤彩
シリーズ構成:Yostar Pictures
アニメーションプロデューサー:畑岳央
プロップデザイン:若山温
美術監督:大西穣(ビック・スタジオ)
美術設定:坂本竜(ビック・スタジオ)
色彩設計:後藤恵子
撮影監督:蔡彩云(グラフィニカ)棚田耕平(グラフィニカ)
CGディレクター:上野雄大(IKIF+,Inc.)
編集:重村建吾
音響監督:渡邉祐記
音響効果:川田清貴
音楽:林ゆうき
音楽制作:レジェンドアグラウンディングラボ
アニメーション制作:Yostar Pictures
製作:Hypergryph Studio Montagne YostarYostar Pictures
■CAST:
ドクター:甲斐田ゆき
アーミヤ:黒沢ともよ
タルラ:坂本真綾
チェン:石上静香
ケルシー:日笠陽子
ロスモンティス:小倉唯
テレジア:南里侑香
W:竹達彩奈
ホシグマ:安野希世乃
ウェイ:山寺宏一
フミヅキ:日髙のり子
Guard:小林千晃
フロストノヴァ:高垣彩陽
パトリオット:銀河万丈
アリーナ:内田彩
メフィスト:天﨑滉平
ファウスト:堀江瞬
オープニングテーマ:ReoNa「End of Days」
エンディングテーマ:糸奇はな「Truth」
アークナイツ公式X:https://x.com/ArknightsStaff
Yostar Pictures公式サイト:http://www.yostar-pictures.co.jp/
Yostar Pictures公式X:https://x.com/YostarPictures
『アークナイツ』TVアニメシリーズ公式サイト:https://arknights-anime.jp/
(C)HYPERGRYPH