ニーアシリーズ初の展覧会『NieR 15th Anniversary EXHIBITION 消セナイ記録』レポート
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『NieR 15th Anniversary EXHIBITION 消セナイ記録』
ニーアシリーズ15周年。その世界観にひたり、絶望と希望を振り返る展覧会『NieR 15th Anniversary EXHIBITION 消セナイ記録』が、2025年8月31日(日)まで、池袋・サンシャインシティ 文化会館ビル2F 展示ホールDにて開催されている。本展では、世界中にファンを持つゲームシリーズ『NieR Replicant/Gestalt』、『NieR Replicant ver.1.22474487139...』、『NieR:Automata』、『NieR Re[in]carnation』、そしてメディアミックス作品『舞台劇ヨルハ』のそれぞれに焦点を当てている。制作スタッフのコメントとともにストーリーやキャラクターに思いを馳せる展示や、作品世界から抜け出てきたような精緻な立体作品に出会える、ファンにとっては嬉しい展覧会である。会場の雰囲気やその見どころの一部をレポートしていく。
※本記事は展示内容のネタバレを含みます。初見で楽しみたい方はご注意ください。
■ 記録 シリーズ15年の歴史
展示風景
冒頭では、シリーズ15年の主な出来事を年表形式で総覧することができる。隣ではゲーム3作のムービーシーン+舞台映像を組み合わせたオリジナル映像が。
展示風景
こちらは自己増殖を続けるエミールの、とっても可愛いフォトスポット。鑑賞のおともとして、会場内のあちこちにいる隠れエミールを全部見つけようという企画も用意されている。「すべてを見つけることができたとしても報酬はございません」と明記されているが、そう言われたら挑戦せずにはいられないのがゲーマーなのかもしれない。
展示風景
コンセプトアーティストの幸田和磨氏によるシリーズ15周年記念のキーアートや、海外コンサート(2023年)用のキーアートも展示されている。対になるように創られたというこのふたつの作品をじっくり堪能して、先へと進もう。
■ 記録 『NieR Replicant(ニーアレプリカント)』
展示風景
まずはシリーズ1作目『NieR Replicant/Gestalt』(2010年)および、その約11年後にリリースされたバージョンアップ作品『NieR Replicant ver.1.22474487139...』(2021年)のエリアだ。会場中央のガラスケースでは、ヨコオタロウ氏が社内向けの資料として作成した、『NieR Replicant/Gestalt』の初期企画書を見ることができる。実際の製品版とだいぶ異なるところもありつつ、当初からブレることのないテーマ性を感じさせてくれる貴重な資料だ。
展示風景
壁面には、作品世界を彩る登場人物たちを紹介する展示や、名シーンを振り返る展示が。整然とした記録のあちこちに、ノイズのように混ざっているキャプションパネルこそが本展最大の見どころである。小さなパネルには「一番好きなキャラクターは?」「心に残っているシーンは?」「この作品があなたに与えた影響は?」といった質問に答える形で、様々な部署のスタッフや担当声優からのコメントが記されている。プレイヤーだけでなく制作者にも、いかにニーアの世界が愛されているか(そしてトラウマを植え付けているか)がビシビシ伝わってくる、15周年を記念するにふさわしい展示だ。
展示風景
主人公の象徴的な武器2種と、「白の書」の迫力ある立体展示も見逃せない。重厚感ある「百獣の剣王」もさることながら、オープニングシーンに登場する「鉄パイプ」の生々しさも溜息ものである。展示に手を触れることはできないが、この鉄パイプはきっとさぞ冷たいんだろうな、とか、ちょっとヌルヌルしてたりするのかな……と想像が膨らんでいく。
展示風景
ついに本物に会えた、という感動のある実物大「白の書」。金属部分はもちろん、革の表紙部分の柔らかな質感に注目だ。こちらは『NieR Replicant ver.1.22474487139...』のPRのため、スクウェア・エニックスの欧米版社が製作したものだという。
■ 記録 『NieR:Automata(ニーアオートマタ)』
展示風景
続く『NieR:Automata』(2017年)の章では、主人公・2Bの精巧な等身大立像が出迎えてくれる。一瞬、コスプレイヤーさんが立っているのかとびっくりするほど、生々しい存在感だ。それでいて、生身の人間では不可能な理想化されたボディライン……こちらはシリーズ初の等身大スタチューで、衣装は布地で、肌の部分はシリコンで、とリアルな素材にこだわって製作されたのだという。
展示風景
バックスタイルも完璧! まさに、完全顕現である。時間を忘れて、さまざまな角度から見入ってしまう。
展示風景
この展示室ではさらに、ハイエンドモデルの精巧なフィギュアや、プロジオラマ作家による「水没都市」イメージジオラマの展示も。もう眼福に次ぐ眼福である。
展示風景
随行支援ユニット「ポッド042」と「ポッド153」は、ふわふわと漂っているように高さのある展示がされているのが心にくい。これらは兵庫県高砂市でプラスチック加工業を営む匠工芸が製作したものだそうだ。
■ 記録 『NieR Re[in]carnation(ニーアリィンカーネーション)』
展示風景
さらに奥へ進むと、シリーズ3作目にあたるスマホゲーム『NieR Re[in]carnation』(2021年)の章に入る。こちらも同様に、関係者コメントが散りばめられたキャラクター紹介・名シーンピックアップの展示に注目だ。写真右手は、ゲーム内に登場した数百種類のキャラ衣装が大集合した壁面アート。隅々まで眺め、自分のお気に入りの衣装を探してみるのも一興だ。
展示風景
ストーリーを振り返る壁面展示をよく見ると、大小のモニターはどれも、壁に埋め込まれたスマホやタブレットである。プレイヤーひとりひとりがその物語に触れた時の「手元の感動」が蘇るような、胸の熱くなる演出だ。
展示風景
本展のために特別に制作されたという「ママ」の等身大フィギュアとは一緒に写真撮影が可能。繊細なグラデーション塗装で、布のヒラヒラ感まで見事に再現されている。背景にはママの名台詞が散りばめられているのも見逃せない。
■ 記録 『舞台ヨルハ』シリーズ
第4章は、ニーアの世界を舞台化した作品『舞台劇ヨルハ』シリーズの衣装展示である。複製ではなく、実際に俳優たちが身につけてステージに立った実物衣装だ。
展示風景
シリーズ演出を務めた松多氏のコメントにあったとおり、「衣装とは役者の皮膚の一部であり、その一つひとつが、舞台空間を生き抜いた“命”の痕跡」である。公演期間を経て役者と観客の熱を吸い込んだ衣装は、ニーアの世界におけるウェポンのような、物語を持った特別な存在になる。それらが全キャストぶん勢揃いした贅沢な展示空間を、じっくりと堪能してみてほしい。
展示風景
よく見ると、なんと一着一着に、衣装制作スタッフによる制作意図コメント、さらに俳優からの「印象に残っているシーン」や「稽古や本番中のエピソード」などが寄せられている。『音楽劇 ヨルハVer1.2』(2018年)で二号役を演じた声優・石川由依のコメントでは、二号の衣装着用の際の苦労話が明かされていて面白い。
展示風景
本展では『少年ヨルハ』以降の全ての衣装が展示されるという。展覧会会期の前半・後半で展示替えがあり、前期では『音楽劇 ヨルハVer1.2』『舞台ヨルハVer1.3aa 』の衣装、後期では『舞台 少年ヨルハVer1.0』『舞台 少女ヨルハ Ver 1.1a』の衣装が公開となるそうだ。
■ 記録 月の涙
展示風景
展覧会の最後には、ゲーム中で“願いが叶う花”とされている、「月の涙」の花畑が再現された静謐な空間が待っている。願うのは、愛すべきキャラクターたちの幸せ……そしてシリーズ新作のリリースである。
展示風景
来場者からのメッセージコーナーでは、イクラこと魔法弾を模した丸いポストイットに、思いを記して残していくことができる。内覧会時はポツポツと貼られていたものの、会期終了時にはどんな弾幕が出来上がっているのか楽しみだ。展覧会のラストが、ゲームと同じお約束のフレーズ「本当に、本当にありがとうございました」で締め括られているのもニヤニヤしてしまうポイントだった。
■ 記録 特設ショップ
ショップ風景
ニーアの世界をたっぷり堪能したあとは、展示室の後に広がるミュージアムショップへ。会場限定のオリジナルグッズや、先行販売の一般商品が豊富に取り揃えられている。アクリルスタンドやキーホルダーなどのスタンダードな商品に加え、中にはちょっと捻りの効いたおもしろグッズが混ざっているのも見つけた。
「Koaji wo [K]utta」(税込990円)
例えばこちらは、作品愛と遊び心が融合した奇跡の商品「Koaji wo [K]utta」。『NieR:Automata』での、2Bがアジを食べるイベントに由来している逸品だ。
手前:「黒文病アームカバー」(税込2,200円)
個人的には「黒文病アームカバー」(黒文病=『NieR Replicant/Gestalt』の世界に蔓延する不治の病)を企画・発売した制作元に拍手を送りたい。腕が文字で黒く汚れるのを防いでくれるので、紙と鉛筆を使ったテスト勉強などにいいかもしれない。
推奨:速やかな 購入
展示風景
『NieR 15th Anniversary EXHIBITION 消セナイ記録』は、ニーアの作品世界に浸り、そこにある“人の想い”を感じられる展覧会だ。この記録は確かに消すことはできないな……と、しみじみ本展タイトルに納得するのだった。本展は、池袋・サンシャインシティ 文化会館ビル2F 展示ホールDにて、2025年8月31日(日)まで開催中。
(C) SQUARE ENIX
文・写真=小杉 美香
イベント情報
※一部展示は、会期の途中で入れ替えを予定しております。
前期展示は8月9日(土)~8月19日(火)、後期展示は8月20日(水)~8月31日(日)
■開催時間:10:00~19:00(入場は閉場の30分前まで)
■会場:サンシャインシティ 文化会館ビル2F 展示ホールD
■イベント問合わせ先:
■主催:NieR 15th Anniversary EXHIBITION 消セナイ記録 実行委員会