ものまね“とか”に真摯に取り組み続けて30年とちょっとーー 15年ぶりの単独ライブ『我夢謝裸』を前に、芸人・原口あきまさが考えていること

2025.9.18
インタビュー
舞台

原口あきまさ 撮影=福家信哉

画像を全て表示(8件)

この秋、福岡・大阪・東京の3カ所でライブの開催が決定している芸人・原口あきまさ。自身15年ぶりとなる単独公演『原口あきまさ30周年記念ライブ~我夢謝裸~』開催に先駆けてプロモーションのために来阪した原口に、SPICEでは単独インタビューを敢行した。実はこのインタビューの前に関西のマスコミ各社が顔を揃えた合同記者会見が行われたのだが、これがもう原口の独壇場と言いたくなる、完全なショーだった。超ご陽気に入室するやいなや「ものまね“とか”やらせてもらってます、原口です〜!」と場を和ませ、もちろんジャケットのポケットには明石家さんまの付け歯を忍ばせて要所要所でサッと装着し、ものまねで答えると記者たちの笑い声が聞こえる。原口のファンでライブも観に行く筆者は、最後列で肩を震わせて泣き笑いしながらメモを取った。こんなライブを観ているような記者会見、ライター歴20年を超えていても初めてのこと……!  続いたSPICE単独インタビューでは、30年のあゆみを振り返りつつ、15年ぶりとなる単独公演への思いを語ってもらうことができた。このインタビューの撮影中も、明石家さんまをはじめ江頭2:50や勝俣州和のモノマネを次々とくりだす原口にカメラマンが笑いを堪えながらシャッターを切ったこと、SPICE独占の映像には初披露のものまねが収録されていることもお伝えしておきたい。

原口あきまさ

ものまねという芸を積み重ねてきてよかった

15年前まで、原口あきまさがコンスタントに開催していた単独ライブのタイトルが『我夢謝裸(がむしゃら)』。これは当時、自分の描いた夢に向かって感謝の気持ちを忘れずにまっすぐぶつかっていこう――全てを見せます! という意味が込められたものだったが、久しぶりの単独ライブ開催を前にしてやはりこのタイトルがいいと今回も採用されたという。「そっくりは求めないようにお願いします、8割雰囲気でやってますんで〜」とおどけて記者陣を笑わせたが、ものまねをはじめとした芸事に真摯に取り組む人。記者会見で得たのはそんな印象だった。

原口あきまさ

――先ほどの記者会見で「ものまね界を盛り上げたいという気持ちで若手たちとユニットライブをやっているうちに、自分の30周年を忘れていた」とおっしゃっていましたが、ものまね界を盛り上げたいということについてもう少し詳しく伺えますか。

今、力をつけてきている若い子が多いのに、披露する場所が限られてきているんです。せっかくの面白い部分が世に知れ渡らないとか、そんなもったいないことがあっていいのだろうかと。ものまね界を引っ張っていかなきゃいけないのは僕たち世代じゃないかという、勝手な使命感で一歩踏み出したのが若手たちとのユニットライブでした。

――ユニットという視点でいうと、ホリさん、ミラクルひかるさん、山本高広さんという同世代でユニット・変人を組んでライブをされていますよね。

変人は僕らのスキルアップを目的にしているので、またちょっと別の捉え方ですね。それと2年前から『HRF 原口あきまさロックフェス』というのを始めて。これは若手と一緒に何かやりたいという気持ちはもちろん、うちの事務所にものまね以外でも芸人はたくさんいるのでみんな一緒に舞台に立てるようにフェスという形で開催しています。これからの人たちの力になればなと思っているんです。ものまね四天王(清水アキラ・ビジーフォー (グッチ裕三/モト冬樹)・栗田貫一・コロッケ)のみなさんが作り上げてくれた「ものまね」というジャンルを、僕たち世代もちゃんと引き継いでいかないといけないという気持ちの強さがフェスの実現につながりました。

――ものまねという芸を次世代へつないでいくという意味も込めて。

ものまね芸人って、どうしてもひとり作業で孤独なんですよ。そこを拾い上げることでいろんな見方も教えてあげたいなと思って。求められてないかもしれないけど僕たちが次の世代にバトンを渡すうえで、また次の世代へバトンを渡しやすい環境を作ってほしいなという考えもあります。

――そういうことに注力していたら、自分のことが後回しに……。

そうそう! 他の芸人さんがツアーやライブをやっているのを見て「みんな結構長くやってるんだなぁ」と言ったら、スタッフに「原口さんも30周年ですよね?」と。「あれ? そうだね、やべー何もやってねーな」と。今年は「30周年突破記念」になるけどちょうど50歳になる年でもあるし、ちょうどいいなと今年自分のライブをやることになりました。

原口あきまさ

――これまで30年と少し、ものまねという芸をずっと続けてこられた理由はどこにあると思いますか?

最初はお笑い芸人になるために福岡から上京して、漫才師やコント芸人として売れようとしたけどうまくいかず……でも夢は諦めたくなくて試行錯誤のうえにたどり着いたのがものまねだったというだけです。ただ思い起こせば、学生時代に話すのが苦手だった自分が、先生や友達のものまねをすることでコミュニケーションを図れた経験があるので、よく考えたらものまねという芸に自分自身が救われてきたのかな。まぁ当初はものまねって本当に自分の芸なのかなっていう葛藤はありましたけどね。

――ものまねする対象の方がいてこその芸ですし。

だからものまねも一度やってみて、ダメだったら次の芸を考えようくらいの感じだったんです。本当に。

――気負いのない感じで。

やってみたら意外と反応がよくて、周りに向いているのかもと気付かされる形でとことん追求してみようと、ここまできましたね。始めた当時にオーディションで、流行っていた『ねるとん紅鯨団』のとんねるずのものまねをやったんです。タカさん、ノリさんふたりともできたから、ちょっとコントっぽく1人で2人のやりとりを見せたんですよ。でもその時はそういう見せ方をするものまね芸人がいなかったから全然評価されなくてね。

――えぇ!? 私、変人のライブで原口さんが披露されていたひとりとんねるずで、腹筋が崩壊するかと思いました!

(木梨憲武のものまねで)こういう感じでやっても「誰、お前?」となっちゃって。ビビっちゃったよ。(石橋貴明のものまねで)だからちょっとなんて言うんですかね? 一歩二歩先に行っちゃってたというかね。そういう考え方にシフトチェンジしたんです。そしたら力が抜けたというか。

――ハハハ(笑)!

オーディションでは響かないけど、なんか印象に残るなぁくらいのものだったと思うんです。ただ、しゃべりものまねのすごさというのはバラエティー番組につながるものが絶対にあると思っていました。松村邦洋さんを初めて見た時は本当に衝撃的でしたし、関根勤さんは1人の方のしゃべりものまねでながーくしゃべることができるって……いい意味で異常なんですよ(笑)。その異常になりきれるかどうかだ! と思いました。遠回りしたこともあったけど、ものまねという芸を積み重ねてきてよかったなと思いますね。

ライブには笑いの先に感動もある

原口あきまさ

――今回、芸歴30周年を記念した単独ライブになります。ものまね芸人のみなさんは、どうにもユニットライブをされるイメージが強いのですが、単独で開催することの面白さというのはどういうところなのでしょうか。

ユニットライブをやらないと気付けない部分も多くあるんです。ユニットでの盛り上がりに対して、ひとりの時間を与えられた時の自分の中での構成だったりね。そういうところで他の芸人さんとは違うものを見せたいという強い思いが常にあるんです。一方で15年前まで定期的に単独ライブをしていた時は、自分の好きなネタを好きにやって、よりマニアックなものを見せるライブをしていたんです。今回の15年ぶりの単独ライブでは、ユニットでやるときとピンでやるときのいいとこどりみたいなことができたらいいなと考えています。

――しかも今回の単独ライブは、生バンドと一緒にされると伺いました。

そうなんですよ! 実は変人の東京公演ではノリで生バンドでのライブを取り入れたりしていたんですけど、地方公演まではなかなかバンドを連れて行けなくて。今回単独での公演なら取り入れられるかもと。バンドと一緒にやることで僕自身もちょっとしたアーティスト気分にもなれるし、特別感もありますよね。やっぱり単独公演が15年ぶりということも大きくて、15年前よりも大きな規模でやりたいし、たくさんの都市でやりたいし、内容ももちろんパワーアップしたい。思い起こせば前は、本当に自分がやりたいものまねとコントをとにかく並べるというやり方だったんです。似てなくても、とにかくやりたいものをやる。それはそれで楽しかったけど、今回は節目でもあるので見せたいものとやりたいものに加えて、みなさんに伝えたいメッセージ性のあるものも加えてね。タイトルにもある感謝を伝えたいなと思っています。

――その感謝を伝える部分をライブではどのように表現されるのか、構想はあるのでしょうか。

んー、これもう言っちゃっていいかなぁ。実はある方のところに、その方の姿で謝罪というか(笑)、感謝を伝えに行く予定になっています。

――わぁ! ご対面ですね! それはこれまでやりたかったけどやれなかったことですか?

それもあるけど「そういうことはやらなくていいの?」と言われたことでもありますかねぇ。今、ものまね的には歌まねブームが来ているんですよ。その方たちって、肩書きのところに「ご本人公認! ものまねアーティスト」と書いていて。あ、もうものまね芸人って言わないんだ……と。多分、ご本人に認められたっていうのは思い切ってやれるってことなんですよね。

原口あきまさ

――テレビの特番でものまね芸人さんを見ていた時は、勝手にものまねしているからこその面白さとか、ヒリヒリ感がすごくあったように思います。だからこそ、背後からご本人が出てきて動揺されて、泣き出す芸人さんもいらっしゃいましたよね。

僕でいうと、公認をもらっちゃうことで逆にやりづらくなるタイプだと思っていて。さんまさんのものまねをしているけど、さんまさんは自分のことが大好きなので僕がやっていることにそれほど興味はないんですよ(笑)。だからさんまさんに「お前、何してんねん!」なんて言われていたら、やっていなかったかなと思うんです。そういう意味で公認をもらっちゃうと僕はやりづらくなる。例えばGLAYのTERUさんのパフォーマンスものまねをやっていると、ファンの人には「そんな動きしてません!」と言われるんだけど、何回見てもやってるんですよ。

――その動きで笑う人がいるということは、やっていると捉えている人は確実にいることの表れのような気もします。

そうそう。なんならテレビで同じ動きをされていた時に「あれ? 僕のことを見ていてくれたのかな?」とか「僕へのアピールかな?」と思いそうになるほどです(笑)。でもこうなると、ご本人に会うことはできないなと思っちゃうんです。だからこそ、今回のライブのためにご本人に感謝を伝えに会いに行くというのは挑戦ですね。……これから会いに行く予定ですけど、なんなら当日キャンセルしたろかなと思うくらい。

――でも、ものまねを習得するって、いかにその人を見つめ続けて細やかに特徴を見つけるかの連続だから、公認どうの以前に……愛を感じますよねぇ。

(大声で)そうなんですよ! ほんでね? あまりその人の近くに寄りすぎるとやれなくなってしまうこともあるんです。プライベートで仲良くなったりすると、私的なテンションをそのまま披露しちゃうことがあって。ナイナイ(ナインティナイン​)の矢部(浩之)さんにすごくお世話になっているんです。一緒にご飯に行ったりすると、テレビの時とは真逆の感じで実はめちゃくちゃ声が小さくて低いんですよ。一時期プライベートをご一緒し過ぎた頃に、生放送で真似をしたら全然ウケなくて、なんでだろう? と思っていたら、プライベートのテンションやってもうた! と。矢部さんもそれをたまたま見ていたみたいで「原口、ちょっとプライベートで会う時間減らそか」と言われて。

――常に憑依できるようにインプットしちゃっているんですね(笑)。

だから、さんまさんとは一度もご飯に行ったことがないんです。行こうという話はさせてもらっているんですけど、実現せずで。以前華大(博多華丸・大吉)さんが福岡でフェスをやられた時に前日に大きな食事会があって、そこにさんまさんも来られたんです。その時が初めてプライベートのさんまさんを見る機会でした。こっちが勝手に見ていただけですけど、食事中のさんまさんにどうしても目がいってしまって。もう、見ちゃうんですよ。ずっと見ちゃう。ほんでどんなやりとりしているか、何を言っているか、どうご飯を食べるか焼き付けちゃって。この間さんまさんが関西でやられている番組でそれを披露したら、さんまさんは照れくさそうで。そのリアクションが芸人にとっては1番のご褒美だったので、やってよかったなとは思いましたけど……俺がプライベートの場にいると真似されちゃうからと呼ばれなくなっちゃうなと思いましたね。

原口あきまさ

――今回のステージではそういうプライベートものまねも見られますか?

大阪公演では兼光タカシくんとロバート・秋山くんが登場してくれるゲストコーナーがあるんですけど、内容をガチガチに固めずになんとなくフラットの状態にしてあるので、そういうやり取りが生まれる可能性はありますね。

――じゃあそこは3人のトークを軸に展開していく、と。

そうですね。あとはお互いにこれ見たい、あれやりたいみたいな流れからどんどん乗っかっていくと思います。

――特に今、関西では兼光さんのものまね芸に勢いがあると思っているので、めちゃくちゃ楽しみです。

彼は本当に器用なんです。だから無茶振りもできるし、コントみたいな仕立てにしても楽しいし、なんでもできそうで楽しみです。まあでもゲストさんに負担がかからないようにしたいなとは思っています(笑)。

――当日、どういうところに注目してもらいたいなどありますか。

ものまねの楽しみ方ってやっぱりこういうことだよなあ! と再認識してもらえるステージになると思っているんです。コンプラ第一の世の中になって、メディアで披露できる芸が限られてきている現状は否めません。芸人としては窮屈になってきているのは間違いないんです。でも舞台ならそういうことをあまり深く考えずに思い切りできる。だからこそこれからはもうライブの時代になっていくと僕は思っていて。ライブに来てもらえたら似ているということだけではなくて、「なんか笑えたよね」という笑いの先に感動もあったりね。そういう素晴らしいエンターテインメントのシーンを目標として、考えて進んできたんでね。原口あきまさの30年が詰まったステージになるので、そこを見てもらえたらうれしいです。

――てんこ盛りのステージになりそうです。

なんとなく、原口あきまさはものまねだけでなくいろんなことができるマルチプレーヤーだと思ってもらえたら最高ですね。お客さんを巻き込んだ面白い時間にしたいと思っています!

原口あきまさ

取材・文=桃井麻依子 写真=福家信哉

公演情報

原口あきまさ30周年記念ライブ~我夢謝裸~
出演:原口あきまさ
 
【福岡公演】
日程:2025年9月27日(土)
会場:西鉄ホール(福岡県福岡市中央区天神2-11-3 ソラリアステージビル6F)
時間:[1部]15:00開演 [2部]19:00開演
料金:前売6,000円/当日6,500円 ※3歳未満入場不可/3歳以上必要
ゲスト:松村邦洋・江頭2:50
主催:ケイダッシュステージ
問い合わせ:info-k@kdashstage.jp
 
【大阪公演】
日程:2025年10月12日(日)
会場:松下IMPホール(大阪府大阪市中央区城見1-3-7 松下IMPビル2F)
時間:[1部]15:00開演 [2部]19:00開演
料金:前売7,000円/当日7,500円 ※3歳未満入場不可/3歳以上必要
ゲスト:兼光タカシ・ロバート 秋山
主催:読売テレビ・キョードーグループ
問い合わせ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(12:00~17:00 ※土日祝休)
 
【東京公演】
日程:2025年11月3日(月・祝)
会場:草月ホール(東京都港区赤坂7-2-21 草月会館B1)
時間:[1部]15:00開演 [2部]19:00開演
料金:前売6,000円/当日6,500円 ※3歳未満入場不可/3歳以上必要
ゲスト:清水ミチコ・コージー冨田
主催:BSフジ
問い合わせ:info-k@kdashstage.jp
  • イープラス
  • 原口あきまさ
  • ものまね“とか”に真摯に取り組み続けて30年とちょっとーー 15年ぶりの単独ライブ『我夢謝裸』を前に、芸人・原口あきまさが考えていること