赤飯 カバー、オリジナル、DJ、バンド、弾き語り――歌い続けた約4時間。新曲も連発されたてんこ盛りの生誕祭!
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赤飯
赤飯ワンマンフェス 飯フェス
2025.8.13(wed) 池袋harevutai
8月13日に開催されるのが恒例となっている赤飯の生誕祭。『飯フェス』というタイトルを掲げて東京・池袋harevutaiで行われた今年の公演は、
■歌声スナック赤まんま
開演時間となり、登場した赤飯、OKKY(Key, Cho)、たーちゃん(Dr, Cho)、まき(Key, Cho)、あすか(Per, Cho)、男女混声コーラス隊……ステージ上がいきなり大混雑。「バンドメンバーのこの人数感。花団かな?」という赤飯の言葉が、賑やかな状況を的確に言い表していた。「それでは『飯フェス』始めさせていただきます。『歌声スナック赤まんま』、よろしく~! 乾杯しちゃう? いくわよ。かんぱ~い!」――観客と杯を交わした後、歌声をムーディーに響かせてライブを華麗にスタートさせた……と言いたいところだが、OKKYのコーラス用のマイクが落下。「ちょっと待って!」ということになり、演奏がストップしてしまった。赤飯は「死ぬほど緊張してきたー!」と落ち着かない様子で、観客の間から「頑張れー!」という声がかかる。そんなコントのようなハプニングを経て、1曲目「Circle Of Life」(『ライオン・キング』テーマソング)が再開された。美しいメロディが響き渡り、コーラス隊のハーモニーが大地の鳴動と生命の輝きのようなムードを醸し出す。観客は聴き惚れていたが、フロアに突然サークルモッシュが発生。曲のBPMに合せてゆっくりと反時計回りで歩きながら輪を描き、手拍子をする人々が実に楽しそう。「我々は平等な生き物なのです。あなたも思い思いの動物になって、一緒にサークルを作ってみませんか?」と呼びかけられながら回転した人々の姿は、まさしくサークル・オブ・ライフ。曲が終盤に差し掛かると、サークルの中央に飛び込んだ赤飯を観客がリフトアップ。誕生したキングを神々しいライトが照らして『飯フェス』はスタートした。
「買物ブギー」(笠木シヅ子)、「セクシャルバイオレットNo.1」(桑名正博)「Friend Like Me」(『アラジン』劇中歌)……お気に入りの曲をバンド演奏で次々歌った赤飯。背景のスクリーンに映し出されていたのは、昭和レトロに飾り付けられた自宅トイレの写真――『歌声スナック赤まんま』のショート動画をインスタグラムで観ているファンにはお馴染みの風景だった。序盤では緊張気味だった彼だが、徐々に自宅トイレで過ごすのに近いリラックス状態に近づいたようだ。『ドラゴンボール』『ドラゴンボールZ』のOP&EDテーマの6曲「摩訶不思議アドベンチャー」「ロマンティックあげるよ」「CHA-LA HEAD-CHA-LA」「でてこいとびきりZENKAIパワー!」「WE GOTTA POWER」――6曲を一気に歌う「DBメドレー」は、かめはめ波が掌から飛び出しそうな雄々しい声、ラブリーな女性ボイスが冴え渡っていた。
「最近気づいたことがあって。激しい曲じゃないと騒げないという既成概念があるなあと。最近ミュージカルの曲が好きなんですけど、ミュージカルの曲って騒げるなあと思って。早速行きましょうか!」――そしてスタートした「Another Day Of Sun」(『ラ・ラ・ランド』テーマソング)は、明るい雰囲気のサークルモッシュが途中でウォール・オブ・デスへと変化。「あー夏休み」(TUBE)では、フロアを埋め尽くしている人々の波を乗りこなすクラウドサーフが次々ステージへと押し寄せた。そして『歌声スナック赤まんま』を締めくくったのは赤飯+OKKYによる2人編成での「Beautiful Things」(ベンソン・ブーン)。ピアノ伴奏で歌声を高らかに響かせた。
■DJ飯の種 aka 赤飯
「ゲスト、先に呼んじゃっていいか?」と赤飯が言い、デラックス×デラックスのアサガオ(Vo)、シダ(上手守備)、ラシ(下手守備)が登場。彼らの歌とダンスが加わり、『DJ飯の種』がスタートした。オープニングを飾ったのは、「かもめが翔んだ日」(渡辺真知子)。赤飯とアサガオが歌声をドラマチックに交わし、シダとラシがキレの良いダンスを繰り広げるのを眺めながら観客は元気いっぱいに身体を揺らす。「古い日記」(和田アキ子)では《あの頃は》に続いて《ハッ!》、「DESIRE -情熱-」(中森明菜)では《夢中になれないなんてね》に続いて《はー、どっこい!》という合いの手が加わった。赤飯、デラックス×デラックスの3人、観客のコンビネーションによって、名曲の数々が輝いていた。
シダとラシによるダンスソロが喝采を浴びた「ダンシング・ヒーロー (Eat You Up)」(荻野目洋子)。赤飯とアサガオも歌いながら軽やかにステップを踏んだ「LOVEマシーン」(モーニング娘。)。そして「Mrs. Pumpkinの滑稽な夢」(ハチ feat. 初音ミク)も披露された。スウィングするサウンドに彩られながら融け合った赤飯とアサガオの美声。昭和歌謡、J-POP、ボカロソングを歌ったデラックス×デラックスとのコラボレーションは、日本のポピュラーミュージックの変遷も辿らせてくれた。
『DJ飯の種』の後半は、ボカロソングメドレーによる赤飯ワンマンショー。「マトリョシカ」(ハチ feat. 初音ミク, GUMI)がスタートすると、沸騰した鍋のような様相を呈したフロア。続いて「古書屋敷殺人事件」(てにをは feat. 初音ミク)へと雪崩れ込むと、ますます興奮を露わにしながら観客が飛び跳ね始めた。ニコニコ動画への投稿で赤飯を知ったファンにとっては、懐かしい思い出の数々もよみがえる曲たちなのだろう。「独りんぼエンヴィー」(koyori(電ポルP) feat. 初音ミク)「心臓デモクラシー」(みきとP feat. 初音ミク)「天ノ弱」(164 feat. GUMI)も連発され、メドレーのラストを飾ったのは「Fire◎Flower」(halyosy feat. 鏡音レン)。VJを務めていたsaqkiiii!!!!による映像が絶妙だった。そして、「まだまだ騒ぎ足りないんじゃないか?」と赤飯が観客を煽り、「あれこれそれどれ」も披露。 “YM feat. 赤飯”名義でニコニコ動画にこの曲が投稿されたのは、2014年3月21日。「赤飯とYMで一緒にライブで荒ぶる曲を仕上げました。不感症なアホ面をぺちってします。ぺちっ。」というコメントが当時添えられていたが、往復ビンタをするかのような爆音の虜となった人々が、フロアをグラグラと揺さぶり続けていた。
■赤飯【弾き語り】with 324
「弾き語りの1曲目は必ず「セロリ」なので「セロリ」を聴いてください」と言い、歌い始めようとしたが、アコースティックギターのチューニングが合っていないことが判明。急いでチューニングしながら「今日、ど頭から死ぬほど緊張していて」と赤飯がつぶやくと、「なんで?」と問いかけた1人の観客。「なんで? やったことないことやってるからや!(笑)」とキレ気味に叫んでから歌い始めた「セロリ」(山崎まさよし)は、彼の弾き語りの十八番。ギターを爪弾きながら響かせる歌声が観客を温かく包んだ。「飯フェスめちゃくちゃ大変だ」「飯フェスめちゃくちゃつらいよね」「リハで正直体力ゼロ」「リハで体力ゼロになってる」「でもね」「きみらが楽しそうにすると」「わずかに体力回復してくる」「わずかを積み重ねていくと」「マックスまで回復していくよ」「だからさ だからさ ヘイ!」「最後まで諦めないでついてきてください」……途中で始まったコール&レスポンスは、メモをとる手が痛くなるくらいのバリエーションを繰り出してきた。終盤でもコール&レスポンスが交わされてエンディングに至った頃には、約10分が経過。時間が足りなくなってきたことに気づいた赤飯は、「One more time,One more chance」(山崎まさよし)のサビだけ歌うと、ゲストの324を呼び込んだ。ギターケースを背負った姿がスタジオ練習帰りのバンド少年のようだった彼は、イシバシ楽器の袋を赤飯に手渡した。中に入っていたのは、誕生日プレゼントのカポタスト。324曰く、MOROHAのUKも愛用している逸品なのだという。早速カポタストをアコースティックギターのネックにはめた赤飯。「時間押してるんで、全カットしますか?」(324)「バカヤロー!」(赤飯)「金返せー!」(観客)――漫才のようなテンポの良いやり取りを経て、オメでたい頭でなによりの曲が披露されていった。
「アコースティックでやるのは無理があるから、お前らも参加してくれ」と324が言っていたが、本当にその通り。2本のギター、2人の歌声だけでは表現しきれない様々な仕掛けがオメでたの曲には盛り込まれている。観客の合いの手の声が加わりながら力技で展開した「鯛獲る」。激しい手拍子とのスリリングな合奏となった「四畳半フォークリフト」。スローテンポのサークルモッシュ、ゆるやかなヘッドバンギングが民衆の切なる願いを示した「チン♂アゲ⤴交渉中」。「アコースティックのパワーだけでブラジルに行けるのでしょうか?」と赤飯に問われた観客のサークルモッシュ、ヘッドバンギングが池袋とブラジルを繋ぐトンネルを開通させた「花魁ドリルスピン」。そしてラストの「オメでたい頭でなにより」は、Wピースと大合唱の嵐となった。フロア内に発生したサークルの中心でリフトアップされながら歌い、「かかってこい!」と煽った赤飯を容赦なく挟み撃ちにした人々の波。ヘロヘロになりながらステージに戻った彼が324と響かせた渾身のギターコードが、エンディングを華々しく飾った。
■DJ飯の種 aka 赤飯
「時間が押し始めてるんで、DJをやりながら整体の施術を受けようと思います」――意味不明な言葉と共にスタートした2回目の『DJ飯の種』だったが、文字通りの意味でびっくり! 赤飯は整体院癒庵堂の院長による施術を受けながら「シミ」(マキシマム ザ ホルモン)を歌い始めた、首、腕、背中、頭……様々な部位をほぐされながらデスボイス、シャウト、スクリーム、女声を巧みに切り替えるこんなクレイジーなDJは、おそらく世界初だろう。前代未聞のマッサージショーを目の当たりにしながら大合唱とヘッドバンギングのエールを送った観客。「さくらんぼ」(大塚愛)へと突入した直後に施術は完了し、赤飯はラブリーボイスとデスボイスの併せ技で人々の盛り上がりをさらに加速した。
「推しごとメモリアル」(オメでたい頭でなにより)が始まるや否や、観客はペンライトを点灯。フロアはヲタ芸による光で一気に染まった。この曲のギターソロの部分は、324がエアギターのパフォーマンスをするのがオメでたライブの恒例だ。赤飯は舞台裏にいる324に呼びかけて登場してもらおうとしたが間に合わず。エンディング間際でようやくステージに現れた彼は、全力のダンスで合流した。赤飯と324が久しぶりに並んで踊る姿を観て胸が熱くなった観客もいたのでは? そして、熱狂的なファンのコール、ミックス、ガチ恋口上によって歌が全然聴こえない――というアイドル現場で度々起こる珍現象を赤飯のブリブリラブリーボイスで表現した「推しのこメモリアル」(オメでたい頭でなにより)。リフトアップされた観客がステージに送るエール、フロアから繰り出すケチャ、ロマンスの熱量がすさまじい。百戦錬磨のロックキッズも尻尾を巻いて逃げ出すアイドルファンの応援技によってフロアは完全に支配されていた。
■赤飯【BAND】
スタイリッシュな紫色の衣装を身にまとった赤飯が登場し、ライブがスタート。バンドメンバーは、Rio(G)、BOH(B)、原澤秀樹(Dr)、OKKY(Key)。オープニングを飾った「ぬりかべ」が観客を興奮状態へと一気に叩き込んだ。「ジャンクヒンズダンサー」と「垂乳根マチネ」はクラウドサーフ、ヘッドバンギング、ハンドクラップのフルコースと化し、会場内の気温は明らかに上昇。赤飯が刷毛で自身の顔面を黒く塗り、戦闘モードになってから披露した「ヨンプンジャックミュージック」と「puppeteer」は、轟く重低音、宙を切り裂くかのような歌声が壮絶だった。
「バラードを歌わせてください。鬱Pと2015年に作ったアルバムに入ってる「パンの唄」という曲。みんな、大事な人がいると思います。この曲の中ではお母さんのことが歌われてますけど、思い思いの大事な人を心の中に浮かべながら聴いてもらえればなと思ってます」と観客に語りかけてから歌い始めた「パンの唄」。ピアノ伴奏が歌声に翳を添えた序盤を経てギター、ベース、ドラムが合流。理不尽な世界でも失われることのない愛を滲ませる歌声が切ない。“絶唱”という表現がふさわしい狂おしさだった。「この雰囲気をいきなりぶち壊すような曲をやっていい? すみません。まだまだ見習いなんで」という言葉を聞き、次の曲が何なのかを察した観客。スタートした「見習いハーデス」は、壮絶なスクリームが人々の心に火を放った。疾走感に溢れたサウンドと正面衝突するかのような勢いでステージへと次々押し寄せたクラウドサーフ。シャウト、デスボイス、ホイッスルボイスが猛りまくっていた。そして再びMC。「この後、死ぬほどポップになる(笑)。お前ら、この温度差についてこられるか? 玉屋に作ってもらった新曲。「倍倍FIGHT!」? 違うっ! 違うよ!」――同じく玉屋2060%が手掛けたCANDY TUNEの曲を歌わされそうになりながら、新曲「YOINOMA SUMMER」へと突入した。赤飯の《ベイビーカモン 宵の間でサマー》に続き、観客から返ってきた《ベイビーカモン 夜明けまでダンス》。コール&レスポンスが交わされ、フロアは陽気なムードで包まれた。振り付けを担当したネス(REAL AKIBA BOYZ)と撮影したショート動画が公開されたばかりだが、浸透度がものすごい。この曲は今後のライブでも楽しい空間を作り上げてくれそうだ。
「YOINOMA SUMMER」がエンディングを迎えると、ステージを後にした赤飯とバンドメンバーたち。興奮が収まらない観客が手拍子をしながら《ベイビーカモン 宵の間でサマー》《ベイビーカモン 夜明けまでダンス》と叫び続けていた。そして楽器のセッティングチェンジが行われた後、黒色の衣装に着替えた赤飯が再登場。バンドは、Rio(G)、東野恵祐(B)、上原彰(Dr)、OKKY(Key)という編成になっていた。「ここからは僕のわがままです。すかしたこと言っていい? まだ自分が会ったことのない自分に会いに行きたくなりました。まだ見ぬ自分を発掘に行きます」――このMCの後に披露されたのは全てが新曲。飛び跳ねながら叫ぶ観客がフロアを震わせた「燃やせ」。骨太なギターリフを主軸としながら艶めかしく躍動した「FLY」。アグレッシブなバンドサウンドが高鳴り続けた「Only if I could fly」……USオルタナティブ、ラップメタル、ラウドロックの香りを濃密に漂わせるサウンドの連続だった。赤飯の歌は変化球を繰り出さず、ロックバンドのフロントマンとして直球勝負しているのを感じる。90年代後半から00年代初頭にかけて彼が吸収してきた音楽と真正面から向き合っているのが伝わってきた。
「自覚あるんですよ。気狂ってるなって(笑)。だって音源公開してないもん。しかも『飯フェス』の4時間駆け抜けて、最後にこれ持ってくるっていう。すみません、わがままで。人生1回きりなんで、後悔したくないなと思って。今やれることを全部やりたいなと思って。もちろん過去を否定するつもりは1ミリもなくて。これからも今までにやってきたことも研ぎ澄ませて、どんどん発信していく。それと並行してまだ出会ったことのない自分を発掘しに行きたいと思ってます。みなさんも自由でいいと思います。好きなところに会いに来てください」と語り、「次の曲は一句詠みます。蝉時雨、夏の季語です」という言葉を添えて歌い始めた「蝉時雨」。オリエンタルな旋律のイントロを経て幕開けた本編は、熱量の根底に和的な情緒を湛えていた。背景のスクリーンに浮かび上がった歌詞の言葉は白色の明朝体。観客のヘッドバンギングの熱気が、夏草の香りのようなやるせなさを醸し出しているのを感じた。
「人生1回きりしかないから、後悔のないように生きてもらえたらなと思ってます。今日、ワシのいろんな側面を見せました。クソみたいなこともやったし、新しいことに挑戦してるワシもおる。なんだかんだ、こうやって生きてるバカがここにいます。これを見て勇気を持ってくださいとか言うつもりもまったくないんですけど、それでも少しでも共感できる部分、“こいつ面白い”“また会いたい”と思う部分があったら、好きなところをつまんで結構です。あなたの人生にフィットするものを選んでください。全部全力でやります。だって楽しいもん。やっぱりライブはライフワーク。一生続けるだけやと思ってます。……とか言いながら、いつも自信がありません。選んでる選択肢 “ほんとこれが正しいんかな?”とずっと迷ってる。そもそも“自分はなんでこんな欠陥人間なんやろう?”っていつも思ってる。だけどライブにみんなが来て騒いでくれると、“まだやれることあんねんな”と肯定される。それでもライブが終わったらまた自己否定して、“自分って欠陥人間やな”って思うんですよ。あなたがたにもそういう人がいるかもしれないけど、それでええやん。初期不良でいいと思ってます。それでもやってくだけなんで」――抱える想いを語ってから披露された「初期不良」は、完璧には程遠い自分を受け入れながら精一杯に生きる決意の歌だった。Rioのギターソロを浴びて歓声を上げた観客に向かってダイブした赤飯。人々の頭上を漂いながら放つシャウトが壮絶だった。
アンコールを求める声に応えて戻ってきた赤飯が「最後、何やると思う?」と問いかけると、観客の間から上がった「ハッピーバースデイ!」という声。「なるほどね! あっ、今日、誕生日や! 42年間生きてきて、今日が一番プレッシャーのある誕生日でした(笑)。ライブに来てくれた時点で誕生日プレゼントやと思ってるので。ライブに来てくれるって命を頂いてると思ってる。だったらギターちゃんと練習せいって話やけど(笑)。やったんですって! やってこれやねん! 大丈夫。また上手くなるんで」――リラックスした様子のMCを経て披露されたのは「骸Attack!!」だった。『飯フェス』の演奏を担った全メンバーが集結したバンドは、Wドラム、Wベース編成。絨毯爆撃のような重低音が赤飯の破壊的な歌声と一体となり、『飯フェス』のエンディングを激しく彩った。
全出演者がステージ上に並んで記念撮影。そして終演を迎えたかのように思えたが、「YOINOMA SUMMER」のカラオケに呼び戻された赤飯が「もう声が出ない」とヘロヘロになりながら最後の力を振り絞って熱唱。歌い終えると「帰れ!」と言い、引退ライブでの山口百恵のようにマイクを床に置いて立ち去ったのだが……「赤飯、言ってないことあるよね?」と、けいたん(業務提携しているレーベル「METEORA st.」代表、REAL AKIBA BOYZメンバー)がPA席から呼びかけた。照れくさそうに戻ってきた赤飯は、スクリーンに映し出された「今冬 この時代にあえて CDの発売が決定! さらにその音源を引っ提げて! 東名阪ツアーの開催も決定! 詳細は後日発表!」という文章を読み上げると、再び「帰れ!」と言ってステージを後にした。
今年の生誕祭『飯フェス』は赤飯が積み重ねてきた表現を満遍なく盛り込み、新たに追求していきたいものも示していた。MCでも触れられていた通り、届けられたのはどれも彼にとってリアルでフレッシュな音楽だ。やりたいことの全てを進化、深化させていく今後の活動への期待も高めてくれる公演だった。
取材・文=田中大 撮影=新倉映見(えみだむ)