人気漫画『ホテル・カルフォリニア~HOTEL CALFORINIA~』に主演!福士誠治インタビュー
福士誠治 撮影/大倉英揮
ヤクザ・ヤンキーからマニア・オタクまで多彩で魅力的なキャラクターを生み出し、無二のギャグセンスを持つすぎむらしんいち。ヤングマガジンに掲載されていた彼の人気漫画、『ホテル・カルフォリニア~HOTEL CALFORINIA~』が初舞台化される。
物語の舞台は、北海道の山奥にある開業を間近に控えたリゾートホテル。 土砂崩れと社長の失踪によって、従業員たちが外界から完全に孤立。人里離れているのに環境は超豪華という奇妙な環境での共同生活が始まり、物語はとんでもない方向に・・・。
従業員たちはコスプレを始めて人の言うことを聞かず、 借金を取り立てに来たヤクザは銃をぶっ放す、クマは徘徊する、鎧武者が出没する。チンピラやろくでなし揃いの従業員見習い、ヤクザや老人たちといったどうしようもない人々が繰り広げる 「プチエロ&プチバイオレンス」な世界、それが『ホテル・カルフォリニア~HOTEL CALFORINIA~』。
キャストには人気俳優の福士誠治をはじめ、松尾伴内、なだぎ武、平田敦子、太田基裕など、バラエティに富んだ個性豊かなキャストたちが顔を揃える。この作品の主役で、借金を取り立てるヤクザ篠崎に扮する福士誠治が、作品と役柄を語った演劇ぶっく2月号のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。
福士誠治 撮影/大倉英揮
エッジの利いたキャラたちの中で関節部分になれれば
──原作漫画を読まれたそうですが、第一印象は?
色々なことが含まれていて群像劇といえば群像劇、サスペンスといえばサスペンスで、よくこれだけ詰め込めたなという。でも、読んでいてどんどんページをめくりたくなる面白さがありました。
──北海道のリゾートホテルが孤立して様々な事件が起きるという話ですが、恋愛とかバイオレンスもあるようですね?
恋愛というか、僕の役は1人の女性を追い続けるかたちになると思います。ヤクザという設定があるのでバイオレンスもあるというべきなのかな。
──キャラクター作りはどんなふうに考えていますか?
漫画のイメージはあるのですが、それに固執せず、演出の大堀(光威)さんと作り上げていったほうが面白いと思っています。この作品は登場人物のキャラがみんな濃いんですよ。全員、ある部分が欠落していて、ある部分が突起しているという人間ばかりで、その中で僕は、ヤクザという部分と人間的という部分をどこで突起させていくかで、そこを稽古中に探していくことになるだろうと思っています。
──原作がクライムアクションギャグコミックと言われていますが、ギャグの舞台と福士さんはあまり結びつかないのですが。
僕はコントも出たこともありますし、普通の芝居でも割りとギャグの方へ持って行ってしまうパターンもあるので(笑)。ただ今回は、お笑いライブみたいな舞台ではないことは確かです。勘違いコメディというか、芝居の中で変な違和感を笑いに変えていく感じかなと。登場人物がとにかくハチャメチャなんですよ。それに思惑がみんな外に向いているので、ドラマで相関図ってあるじゃないですか。それが書きづらい(笑)。まったく人のこと無関心みたいな人もいますし。
──そんな中ですでに役割を把握している感じですね。
たぶんこれだけ沢山のキャラクターが出てくると、みんな悩んでいると思うんですが、僕はキャラクター的に一番悩まずに済むポジションかもしれない。お金を取り立てるという目標がある役だし、女性のことやみんなに腹を立てたりすることで表現できるので。でもみんなは、それぞれ自分の役に突起した何かを見つけなきゃいけない。きっとみんな、相当エッジの利いたキャラクターで来るんじゃないかな。その中で良い意味で僕が関節部分になれればと思っています。
福士誠治 撮影/大倉英揮
ザ・エンタメと文学のちょうど真ん中にある作品に
──昨年は映像でも主演し、舞台も『狂人なおもて往生をとぐ~昔、僕達は愛した~』からスーパー歌舞伎の『ワンピース』まで、振り幅がすごいですね。
清水邦夫さんと尾田栄一郎さんというのは、なかなかないですよね。清水さんの『狂人なおもて~』は文学作品で、正直台本見た時はやめようかなと(笑)。
──「ごっこ」をするという入れ子構造で、福士さんの狂気を感じました。
役者としてのこういう思いがあって僕らはステージに立っているというのを、勉強させてもらいました。あの舞台で僕の何かが引き出されていたとしたら、それは清水邦夫さんと演出の熊林弘高さんのおかげで。熊林さんとはまたご一緒して、彼の世界を堪能したいと思いましたし、そういう素敵な出会いになりました。
──一方の『ワンピース』ではルフィの兄貴のエースで、アクションなどで大活躍でした。
『ワンピース』はザ・エンターテインメントで、テーマパークとも言われましたが(笑)、楽しかったですね。人を動かす作品としてはどっちもありだなと再確認しました。今回の『ホテル・カルフォリニア』はその両方が揃っている気がします。文学作品とエンターテインメントの間みたいな。6:4でエンタメにいけたら、サブカル的な玄人好きな作品になるんじゃないかな。お客さんに考えてほしい作品でもあるので。
──最近の福士さんの集大成的な舞台になる気がします。その先はどういう方向に行きたいというのはありますか?
ありますけど言葉にするとチープになる気がして(笑)。表現者でいられる時間が幸せなので、自分の中のよりクオリティーの高いものを出していけたらと思いますし、誰かの頭の中を具現化してやろうという気持ちもあります。自分の心が動く作品には参加したいですね。何でも経験して、たとえば『ワンピース』では見得も勉強させてもらって、他の舞台で見得を切ることはないとしても、それに近い表現は必要だったりするので、なんでも自分の引き出しとなっていけばいいなと思っています。
福士誠治 撮影/大倉英揮
ふくしせいじ○神奈川県出身。02年ドラマデビュー。06年NHK朝の連続テレビ小説『純情きらり』でヒロインの相手役を務め人気を博す。以来、映像や舞台で活躍中。最近の主な出演作品は、テレビは『徒歩7分』(NHKBSプレミアム)NHK木曜時代劇『まんまこと~麻之助裁定帳~』、舞台は『真田十勇士』『狂人なおもて往生をとぐ』スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』など。1月期ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ)に3話から出演予定。
【取材・文/宮田華子 撮影/大倉英揮】
〈公演情報〉
〈お問い合わせ〉ネルケプランニング 03-3715-5624(平日 11:00~18:00)