HY ファンとともに歩んだ月日に愛と感謝をこめて、改めて振り返る25年間のターニングポイントとバンドの未来への想い
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HY 撮影=菊池貴裕
25年ぶんの愛と感謝を歌にこめて。沖縄の言葉で“めでたいこと”“乾杯!”を意味する“カリー(嘉例)“をタイトルに掲げた『HY 25th Anniversary BEST!! Kary TOUR 2024-2025』が、9月21日の沖縄公演でフィナーレを迎えた。バンド結成25年、多くの喜びと楽しみを分かち合い、時には悲しみと切なさをスパイスに、ファンと共に歩んだ月日の果てにたくましく成長した今のHYがある。
そして楽しい時間はまだ終わらない。アニバーサリーの締めくくりとして、2026年2月23日に、東京ガーデンシアターで『HY 25th Anniversary「BEST!! Special TIME TRIP」』開催が決定した。ツアーとは異なる“ベスト・オブ・ベスト”の選曲で臨む、一夜限りの記念日ライブ。そのライブに向けた抱負、ツアーの振り返り、そして25年間のターニングポイント、30周年に向けての意気込みなど。様々なテーマについて、メンバー4人に語ってもらおう。
――今回の25周年ツアーは昨年9月からスタートして、ゆっくりと全国を回ってきました。振り返ると、どんなツアーでしたか。
名嘉俊(Dr):今回のツアーは週末開催で1年かけているので、長い感じはしていますけど、そういう生活リズムを1年続けるのは全然嫌いじゃないですね。(沖縄を)金曜日に出て月曜日に帰って来るんですけど、いつも近所のおばさんに「あんたまた金曜日から行くの」と言われたり、月曜日がゴミの日だから「近くに置いといてね」とか言ってくれるんですよ。それを1年間やってくれました。
――なんて親切な。
名嘉:その代わり、リサイクルできる缶とかは私にくださいと(笑)。家の近くに共同のカゴを置いて、僕が飲んだビールの空き缶をいっぱい入れてます。そういう関係性が、1年かけて今回のツアーで築き上げられたことが一番良かったです(笑)。
――素晴らしい(笑)。
名嘉:いいツアーでしたよ。44本があともう少しで終わるなと考えると(*取材日は8月末)、嬉しいような寂しいような感じがします。
新里英之(Vo,Gt):記念すべき25周年というツアーなので、本当にここまで来られたのもファンのみなさんのおかげだなと思っています。実際ライブが始まると、みんなから「おめでとう」という言葉をたくさんいただいて、そこであらためて自分たちの足跡を振り返ると、25年という長い月日を歩んできた歴史がたくさんあって、最初のオープニング映像も、自分たちがバンド始めて歩んできたという映像を作ったんですよ。そこからライブが始まっていくということで、すごく感動するものがありますし、25年やってきたいろんな経験が力になって、すごくいい緊張の中で、みんなの表情や声も感じて、メンバーの動きも感じながらやれている自分がいるので、僕にとっても特別で、ご褒美のようなツアーになっていますね。
新里英之(Vo,Gt)
――自分へのご褒美。いいですね。
新里:今までだったら緊張のほうが勝っていて、空回りする自分がいたんだけど、今は落ち着いているし、みんなに「おめでとう」と言われたいから、そこに甘えて、それを感じながらやっているような感じですね。その上で、僕たちだけがおめでとうじゃなくて、来てくれたみんなも今日この日を迎えられるのは頑張ってきた証だから、「みんなもおめでとう」ということで、どの会場もめっちゃハッピーな感じになっています。そして僕はいつも、沖縄のものを食べて、地元のパワーをもらってから県外に飛び出すんですよ。沖縄そばを食べるんですけど、毎週末に必ずそこにいるので、沖縄そば屋さんの人とめっちゃ友達みたいな感じになりました(笑)。「いただきます、行ってきます」って。
許田信介(Ba):みんなが言っている通り、ツアーが生活の一部になりつつ、すごくいたくさんのパワーをいただいて、「おめでとう」の言葉もいただいて。ライブが終わった後に、ファンクラブ限定のMEET & GREETとか、色々やっているんですけど、本当にファンの方たちのおかげで自分たちは音楽をやらせていただいているんだなと再確認して、ありがたいことだなと思いました。そしてライブは、週末だけやって、また2週間とか空いたりするんですけど、その間に沖縄ローカルのテレビの収録で、畑仕事をしていたりとか。たくさん芋がとれるので、これをファンの方全員に配りたいと思ったりするんですけど(笑)。そのくらい、感謝してもしきれないぐらいのパワーをいただいています。
仲宗根泉(Key,Vo):私もツアーが生活の一部みたいな感じで、金曜日になったら家を出て、月曜日に帰ってくるんですけど、月曜日は私のところも燃えるゴミの日で(笑)。朝8時に取りに来るので、さすがに家には着いていないので、お母さんに頼んだりしているんですけど。娘の学校の授業参観とか、そういうものがあってもなかなか行けなくて、だから出かけたくない気持ちもあるんですけど、行くとそこには待ってくれている人たちの笑顔があるんですよね。それと、私はファンレターをライブの前に読むようにしていて、いただいた人の封筒とかで、その人の顔がわかるから、前のほうの列の人だったりすると、手紙の内容に合わせて言葉を選んで、その人を見ながら歌ったりするんですよ。
――それは嬉しいですね。ファンの人にとっては。
仲宗根:沖縄から出る時は毎回ちょっと寂しく思っていても、そこに行くと私を必要としてくれている人がいて、ここに来た意味を感じさせてくれる瞬間がめちゃくちゃ多いので、“生きていて良かったな”“誰かのためになっているんだな”と思います。それと、25年やってきても「HYのライブは初めてです」という人が多いんですよ。私たちと同じ年齢層が一番多いんですけど、その方々が1、2歳の子供さんを連れてくることも多くて(*親子席もあり)、普通に子供の声とか、ライブ中に聞こえるし、何て言うのか、大きい保育園みたいなイメージもあって。それがあるから、あったかい雰囲気ですねとも言ってもらえるし。
――みんながその空間を大切に守っている。
仲宗根:コール&レスポンスする時も、「子供たち!」と言うと「ワー!」って返ってくる。そういうのも、この25年で変わったところですね。自分たちにもそういう歌が増えてきたこともあって、“この子たちが幸せになれるように”という願いを込めて歌うようにもなったし、そういう時に“25年経つってすごいんだな”ということを感じますね。
名嘉俊(Dr)
――25周年ツアーのセットリストは、25年のベストを意識して?
仲宗根:今回は私がセトリを決めたんですけど、みんなが聴きたいバラードを多めに選曲しています。こんなにバラードを多く持って来るのは、たぶん初ですね。それは、私たちがやりたいものを一回崩そうと思ったからで、バラードが多いと暗い感じになるから、HYらしくないよねというものがあって。HYは明るく元気なイメージがあるから、それを打ち出していたんですけど、みんなが聴きたいマストな曲というのは、自分たちが“HYはこういうふうに見せたい”というよりは、“みんなが聴きたいものはこれだよね”というところに寄せたほうがいいんじゃないか?という私の見解があって。
――はい。なるほど。
仲宗根:ここで統計を取って、また次のライブをやった時にどんな人が来てくれるのかを見てみたくて、初めて自分でセットリストを組ませてもらったんです。バラードを何曲も歌わなきゃいけないから、私にはプレッシャーですけど(笑)。でもやりがいはあるし、みんながすごく喜んでくれているのが伝わって、笑えて、涙するところもあって、“HYのライブってこんなに楽しいんだ”って、そういうHYのライブがどんどん多くの人に届いてほしいなと思いますね。
新里:HYはみんなが曲を作るので、どのカラーを出していくかで印象が変わるんです。今回はイズ(仲宗根)が出した新しい切り口がいいんじゃないかな?ということで、任せてみようと思ったんですね。イズもしっかり考えてくれて、特別感のあるセットリストになって、新しい発見がいっぱいありました。こんな感じで続けていけたら、喜んでもらえる人、リピートしてくれる人がまた増えるのかなと感じることができました。
許田信介(Ba)
――一度聞いてみたかったことがあって。今やHYの代表曲で、最近映画にもなった「366日」って、作った瞬間から特別な曲になるという予感がありましたか。
仲宗根:まったくないです。ほかの曲と一緒で、普通に作ったという感じで、あんまり評価してもらえる感じではなかったですね。私は毎回、曲を作るたびに友達に聴いてもらっていたんですけど、「366日」だけは誰も反応がなくてスルーされたんですよ。私の友達たちと同じような世代の方が私たちの曲を聴くので、その人たちの心理を知るためにそうやっていたんですけど、「366日」だけは、8人ぐらいに聴いてもらったのに誰も何も言わなくて、だから一番ダメなものだと思っていました。だけど会社の人は褒めるから、まぁ芸能界特有のお世辞かなと(笑)。自分の友達のほうが正直だなと思っていましたね。だから、世の中に出るまではどんなふうに受け止められるのかが全然わからなくて、ちょっと怖かったです。
――結果、世の中が正解でした。人の心に残り続ける名曲って、いったい何なんでしょうね。ねぇ俊さん。
名嘉:それはたぶん、アレじゃないですか。25年やってきて、最近よく言われるのが「(HYの曲は)青春でした」という言葉で。青春は絶対変えられないし、その時聴いた楽曲は一生なんですよね。そういう時に寄り添ってくれた楽曲に、自分たちの曲があったというのがすごく嬉しいです。20周年の時ぐらいまでは、「昔よく聴いてました」「懐かしいです」と言われるのがすごく悔しかったんですけど、年を重ねてきてだんだん考え方が変わってきたというか。誰かの青春に自分たちの楽曲がずっと残ると考えると、自分たちはすごいことをしてきたんだなと思うようになってきましたね。
――なるほど。
名嘉:20周年と今で違うことは「自分たちはそうそう変わらないから、自分たちの持ち味を出していったほうがいい」って、最近ヒデ(新里)がずっと言うんですよ。「自分の性格はこうだから、簡単には変えきれない」って。今は自分の個性がガンガン出していく方向に進めて行けているので、より一層ファンのみんなに対しても、「自分らしくて大丈夫だよ」という自己肯定感みたいなものは出てきましたね。それが20周年と25周年の違いです。
――その違いは大きいと思います。
名嘉:マイナスにとらえなくなりました。自分の時間の取り方とか、好きなものに集中するとか、20年よりも25年のほうが音楽に向ける気持ちがすごく強いので、音楽をやる理由が一つずつどんどん増えていけばいいと思っています。人生を通して。
――いい言葉です。
名嘉:ライブだけじゃなくて、信介が言った畑仕事もそうだし、いろんな刺激の中で、音楽をやる理由を一つずつ増やしていきたいなと思っています。
仲宗根泉(Key,Vo)
――もう一個、せっかくなので聞きたいことがあって。バンドのターニングポイントについて。たとえば『Street Story』がドカンと売れた時とか、独立した時とか、メンバーが4人になった時とか、25年間にいろんなことがあったと思うんですけど、今に繋がる大きなターニングポイントというと、まず何が浮かびますか。
新里:今挙げてもらったものは、全部ターニングポイントなんですけど、そうですね、やっぱり4人になった時かな。5人からギターが抜けて、その穴をどう埋めるか?というので、みんなそれぞれが自分にないものを出さないとHYが沈んでいくかもしれないという、本当にどん底というか、何をすればいいのかがわからない時があって。今までやっていた努力よりも、それ以上やらなきゃダメだというので、それぞれがパワーを出し始めて。この4人でしかできないものが生まれたり、結束力が強まったり、そこを乗り越えて頑張ったからこそ、今のこの4人の力に変わって25周年を迎えて、ステージでも僕たちの色を出しきれているんだと思う。それは本当に大きかったですね。一人メンバー抜けるのはすごく悩んだし、悲しかったし、でもそこから作る曲も変わってきていると思うし、人を大切にすること、出会いと別れを大切にすることをすごく深く感じながら、過ごしてきたような気がしますね。
許田:ターニングポイントで言うと、コロナもそうだったかもしれないですね。音楽が届けられない状況になって、みんなで考えて、配信とか色々やりつつ、そこから自分も健康面に気を使い始めて、トレーニングに目覚めたりもしましたし。コロナで自分と向き合う時間ができたおかげで、おかげというのもアレですけど、それは大きかったかもしれないです。
――コロナも、メンバー脱退も、逆境だからこそバンドを強くしたんじゃないかと思います。そして、25周年の締めくくりに、また一つ大きなライブが決まりました。2026年2月23日に東京ガーデンシアターで、『HY 25th Anniversary「BEST!! Special TIME TRIP」』が開催されます。
名嘉:本当はORANGE RANGEみたいに、21周年とか22周年とか、毎年周年をやろうかと思っていたんですけど(笑)。来年の2月で、25周年のお祝いをみんなでやりきって、その次へ向かおうと思っています。
――まだちょっと先ですが。どんなことをやろうと思っていますか?
名嘉:2枚目のベストアルバム『LOVE STORY~HY BEST~』(2024年)が出て、今回のツアーのセットリストはそれを基準にやっているので。東京ガーデンシアターでは、1枚目のベスト(『STORY~HY BEST~』/2018年)の感じも加えて、ベスト・オブ・ベストな感じになるんじゃないかな?と思っています。みんなが大好きな楽曲で、今回のツアーではやれていないものも多いので、それも織り交ぜていけたらいいですね。あと、初めての会場は自分も大好きなので、東京ガーデンシアターがすごく楽しみです。新曲とかもやりたいなと思っています。
新里:東京ガーデンシアターは、特別感がありますね。25周年ツアーのオープニング映像は、自分たちもすごく感動するんですけど、それとはまた別のオープニングも考えているので。「25周年ありがとう」と「僕たちは30周年に向けて行くよ」というものを見せられたらいいなと思うし、それは新曲にもきっと繋がるだろうし、新しいパワフルな、みんながHYを応援していきたいなと思えるようなライブをしたいです。
許田:47都道府県からぜひ来てほしいです。25周年の終わりであり、30周年に向けての始まりのライブでもありますし、1回きりなので、何か特別なことをしたいですね。それを楽しみにしていてほしいです。いろんな方を誘って来てほしいですね。今のツアーでも、初めて来る人たちが結構いて、ファンの方が連れてきてくれることが多かったりするんですよ。
仲宗根:職場の同僚とかね。
許田:そういう方に限って、前のほうのいい席だったりする時もあって、それを結構いじったりするので。イズさんが。
仲宗根:「初めて来たのにいい席だね」って(笑)。
許田:そういうのもお約束の一つだったりするじゃないですか。見せ方も色々あるし、HYらしいライブができたらいいなと思います。
仲宗根:25周年ツアーの集大成みたいなものだから、大きく何かが変わる感じではたぶんないと思うんですけど。HYの曲は、バラードで聴かれているものもすごく多いですけど、バラードじゃなくても聴かれているものがあって。私がインスタライブをすると、「あれ歌って」「これ歌って」というコメントがたくさん来て、絶対ライブ来たことないだろっていう感じの方から「これを歌って」と言われたりするんですけど(笑)。いわゆる一般の方で、HYのライブには来たことない方の“これを聴いてみたい”という曲がどれだけあるか、どの曲に何人ぐらいいるのかを調べたりしているんですけど、意外とバラードではない曲が挙がることも多くて。そういうものも東京ガーデンシアターでは歌っていきたいなというのもありますね。
――いいですね。
仲宗根:今回のツアーはバラードが多いので、その要素は残しつつ、それ以外にも聴きたい楽曲があるというみんなの思いを拾って、1回しかないライブなので、行かなかった人が後悔するぐらいの、そこだけの演出も色々考えているので。“もうこれでHY解散します”ぐらいに思ってくれれば、観に行きたいってなるじゃないですか。
新里:“最後だから”って(笑)。
仲宗根:解散はしないですけど(笑)。それぐらいの、私たちがやっていてもHYらしいし、お客さんが聴いてもいても「HYの曲ってめっちゃいい」「歌詞がこんななんだ」「この曲知らなかったけど好きになった」とか、言ってもらえるようなライブにしたいと思います。1本だから一球入魂で、みなさんが聴きたい曲を色々詰め込みながら。
――30周年に向けて、という言葉も出ましたけど。この先もまだまだ、夢や目標はありますか。
新里:そうですね。やりたいことを、より自由に、これから自分たちが生み出してくる曲が楽しみです。個人個人がバラけた時にはいろんなことを感じて、それをまた持ち帰ってきて、どんな曲をやるのかが楽しみだし。タイアップとかもあったりするんですけど、その中にもみんな自分の個性を入れたりしてくるので、その変化を楽しんだり、タイアップがない時は、より自由に曲を作れたり。レコーディングでも曲作りでも、これからもそういう感じで楽しんでいくんだろうなと思いますね。
取材・文=宮本英夫 撮影=菊池貴裕
ライブ情報
2026年2月23日 東京ガーデンシアター
開場 16:00/開演17:00予定
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プレオーダー四次先行
9月19日(金)18:00~9月28日(日)23:59
イープラス https://eplus.jp/HY/