ミュージカル『マリー・キュリー』ポーランドパビリオンで昆夏美・星風まどかが、偉大な科学者に想いを馳せ――「2チームで相当違う」と再演の見どころを語る
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昆夏美、星風まどか
2020年に韓国で初演され、韓国ミュージカルアワードで大賞のほか5冠を受賞。2023年の日本初演は、連日スタンディングオベーションとなり、大きな反響を呼んだミュージカル『マリー・キュリ―』が、新たなキャストを迎え、2025年10月25日(土)~11月9日(日)に天王洲 銀河劇場、11月28日(金)~11月30日(日)に梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで再演される。上演に先立ち、「EXPO 2025 大阪・関西万博」ポーランドパビリオンにて取材会が開催されオフィシャルレポートが到着した。
ノーベル賞を2度受賞した、マリー・キュリーこと、マリア・スクウォドフスカ=キュリーは、ポーランド出身の世界的科学者。彼女を描いたミュージカルが、日本で上演されることを偶然街のポスターで知ったマルタ・ジェリンスカ氏(2025年日本国際博覧会ポーランド政府副代表)の働きかけで、『マリー・キュリー』カンパニーとこの場が企画された。当日は、マリー・キュリー役をダブルキャストで演じる昆夏美・星風まどか、演出の鈴木裕美、マルタ・ジェリンスカ氏が登壇した。
会場となったパビリオン内のホールは万博期間中、定期的にコンサートが開かれており、グランドピアノが置かれた温もりのある空間。マリー・キュリー役の扮装で登場した昆と星風を前に、マルタ氏は「こんなキレイなきらめきを持っている方々に演じていただけるのが、本当に嬉しいです。今日お越しいただいたことで、役作りのインスピレーションになれば」と目を細める。
昆は「このような素晴らしい機会に恵まれて幸せです。ポーランドのパビリオン内は香りがとても良くて、豊かなポーランドの風景に、ちょっと涙が出てくるような気持ちになりました」。星風は「ポーランドという国の素敵さを、私も一歩足を踏み入れた瞬間に、体いっぱいで感じました」。鈴木は「ポーランドへ行ったことはないのですが、行きたいなという思いに駆られました。(ポーランド語で)“お招きいただきありがとうございます”」と伝えると、マルタ氏は驚きと喜びの表情を見せる。そして、それぞれ質問に答える形で、取材会が進んだ。
鈴木裕美、昆夏美、星風まどか、マルタ・ジェリンスカ
――マリア・スクウォドフスカ=キュリーさんは、母国ポーランドでどのような存在ですか?
マルタ:マリアは大変な時代に生まれ、人生で色々な障害と戦わなければならなかったけれど、女性でも様々なことを達成できることを証明した、ポーランドにとって大切な方。彼女は人生で二つの元素を発見しましたが、そのひとつはポーランドから名前をとって「ポロニウム」としました。それほど母国を愛したという証しになると思います。
――マリー・キュリー役のお二人が、役作りで心がけたいことは?
昆:女性が科学を究めるなかでの偏見や差別、未知なるものを発見しなければという思い。今を生きる私には到底想像がつかないほどの超えなければいけない壁が、ずっとマリーさんの人生にのしかかっています。それを超える信念というか、内なる秘めた強さというものを彼女の核として役作りをしていきたいです。また、親友のアンヌ、夫のピエール、二人との関係性を嘘なく演じることで、作品の濃度が高まると思うので、チーム一丸となって作っていきたいです。
星風:科学者という前提があるので、私とはまったく異なる世界だと感じていますし、今を生きる自分の想像にすぎない知識だけで演じるのは、やはり違うと思うんです。まだ稽古前なので、今は資料や韓国版のミュージカルを拝見するなど、勉強をしています。今後は演出の裕美さんからたくさんお話を伺って、イメージを膨らませ、キャストの皆さまとたくさんセッションしぶつかり合って、『マリー・キュリー』の中に生きる彼女を精一杯演じていきたいです。
■初演の俳優たちに敬意を表しつつ、新たな『マリー・キュリー』を作りたい
――鈴木さんが初演に続き演出されるうえで、大切にしたいポイントは?
鈴木:再演をやらせていただけるというのは、初演の評判が非常に良かったからで、初演の俳優さんたちには敬意を表したいです。でも今は気持ちを新たにして、新たな方たちと『マリー・キュリー』を作っていきたいという思いです。マリーと親友のアンヌ、女性二人が主人公とも言える物語であり、マリア・スクウォドフスカ=キュリーがパイオニアとして生きていくさま、夫と命を削って研究していくさまに、多くの方が励まされるかと。「ここにものすごく頑張った女性がいたよ!」ということをお目にかけられると思います。私たちはやっぱり「キュリー夫人」という名前で伝記を読んでいたと思うのですが、「誰かの奥さん」ではなくて、個人の名前が(作品の)タイトルになっているということが、ある意味すべてだと思います。彼女は彼女として生きたんだということ、そのタイトルこそが女性たちへの励ましにもなるはずです。
――マリー役のお二人も、マリー・キュリーの生き方に励まされる部分はありますか。
昆:ありがたいことに、私は今まで「女性だから」と後ろ指を指されることはなく、のびのびと自由に、自分のやりたい芸事に打ち込ませていただいてきました。でも、自分の存在を否定されたら、きっとポキッと折れてしまうだろうな、と自分の性格上感じています。(マリーは)やめたら終わりだと、諦めない。その先で彼女が見たものに、観客の皆さんは勇気をもらうと思います。私も同じですし、今度はそれをお届けする立場になったので、精一杯頑張りたいです。
星風:彼女がこうと決めたら最後までやり遂げるという強い信念みたいなものは、私自身も計り知れない。私もそうなりたい、そうでありたいです。この作品の中で、彼女は最後まで「約束を果たせなかった」と思い続ける。先ほど裕美さんもおっしゃっていたように、命を削って生きている。そんなかっこいい女性に私自身も憧れを抱き、力をいただきます。そんな風に強く生きたいなと思います。
――今回はマリー役をはじめ、メインの役がダブルキャストの2チームとなっています。それぞれに期待していることは?
鈴木:稽古前に決め込みすぎると、見る力が弱まって、ある枠に追い込もうとしちゃうので、それは避けようと思っています。でも(2チームは)相当違う上演になると思います。(ピエール役の)松下優也くんと葛山信吾くんも大変違いますし、たぶんお話が違って見えるぐらい、違うと思います。やはり今生きている俳優たちの間に、どんな関係性が生まれるかということを注意深く稽古場では見たいです。
――最後に本日の感想とメッセージをお願いします。
昆:先ほど、パビリオンの皆さまにこの扮装でご挨拶に行くと、とても温かく迎えてくださり、「私たちですみません」という気持ちになってしまうぐらいでした(笑)。マリアさんがポーランドの皆さまに愛され、尊敬され続けているのを肌で感じましたし、今この時代に生きる私たちが国を超えて務めさせていただくという責任を、今日改めて実感しました。裕美さんもおっしゃってましたが、本当に(2チームで)全く違うものになるのではないかなと、私たち自身も思っています。その違いを楽しみながら、カンパニー一同務めていきたいので、どうぞ応援をよろしくお願いします。
星風:本日ポーランドのパビリオンにお招きいただき、ポーランドの空気、マリアさんが思い続けた母国への大切な思いを肌で感じました。そして、マリアさんがポーランドの方々からいかに愛され、いかに偉大な方であるかということを本日たくさん吸収し、学ばせていただきました。この感じたことを糧に、精一杯務めてまいりますので、ぜひふたパターンを観に来ていただけたら嬉しいです!
鈴木:明日からの稽古、私も楽しみにしています。何が起こるのか、大変期待していますし、彼女たちのパワーで、「あるところ」までお客様をお連れすることができると確信しています。ぜひ2回(2チーム)観に来てほしいです。
マルタ:万博は10月に終わってしまい、私たちは帰国してしまうのでミュージカルを観られないのが残念です。観られる方がうらやましいです! マリアさんは人生において、様々な立場で生きてきました。例えば、お母さんとして、妻として、そして科学者として――。このミュージカルをご覧になる機会がありましたら、ぜひそれぞれの立場における彼女の力を、感じていただければと思います。(鈴木・昆・星風に)そしてもし将来お時間があれば、ポーランドにお越しください。いつでもご案内いたします。
鈴木・昆・星風:ありがとうございます!
日本版は演出の鈴木裕美が、韓国版で加えられた台本の創作部分を「ありえたかもしれないもう一人のマリー・キュリーの物語」として捉え、Fact(歴史的事実)とFiction(虚構)を織り交ぜた「ファクション・ミュージカル」として届ける。出演は、昆夏美・星風まどか(Wキャスト)、松下優也・葛山信吾(Wキャスト)、鈴木瑛美子・石田ニコル(Wキャスト)、水田航生・雷太(Wキャスト)ほか。
取材・文=小野寺亜紀
公演情報
東京公演に関するお問い合わせ:
東京公演主催:AMUSE CREATIVE STUDIO、AMUSE ENTERTAINMENT INC.
日程:2025年11月1日(土)
会場:天王洲 銀河劇場
開演:17:30~
<e+貸切公演>ならでは
・お席は、【独自席種・独自価格】です
・アフタートーク付(星風まどか、ほか予定)
【キャスト】
マリー・キュリー:星風まどか
ピエール・キュリー:葛山信吾
アンヌ:石田ニコル
ルーベン:雷太
能條愛未
可知寛子
清水彩花
石川新太
坂元宏旬
藤浦功一
山口将太朗
石井咲
石井亜早実
飯田汐音(Swing)
【手数料0円】座席選択販売
受付期間:2025/6/7(土)10:00~2025/11/1(土)17:30
大阪公演に関するお問い合わせ:キョードーインフォメーション 0570-200-888 (12:00~17:00/土日祝休業)
大阪公演主催:キョードーグループ
マリー・キュリー(Wキャスト): 昆夏美 ・ 星風まどか
ピエール・キュリー(Wキャスト): 松下優也・葛山信吾
アンヌ(Wキャスト): 鈴木瑛美子・石田ニコル
ルーベン(Wキャスト): 水田航生・雷太
坂元宏旬 藤浦功一 山口将太朗 石井咲 石井亜早実
飯田汐音(Swing)
翻訳・訳詞:高橋亜子
プロデューサー:松本有希子 多田里奈 イ・ギョンビン
企画・製作:AMUSE CREATIVE STUDIO