Billyrrom さらなる飛躍を求めるバンドのリアル、「聴いてくれる人に対しては、ずっと正直でいたい」
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Billyrrom 『5th Anniversary Live』9.10 渋谷WOMB Photo by Hayato Niiya
2024年9月にリリースした1stアルバム『WiND』をひっさげ、国内6都市と台北で開催した『Billyrrom One Man Tour WiND 2025』は見事、全公演がソールドアウト。2020年結成の新進気鋭の6人組の勢いを、さらにスケールアップした形で見せつけた。その後もバンドは歩みを止めることなく、精力的に海外アーティストとのコラボレーションも含む新曲をリリースしつづけ、メンバー達がルーツに持つソウル、ファンク、ロックとオルタナティブな感性を掛け合わせながら、“トーキョー・トランジション・ソウル”と名付けた自分たちのバンドサウンドをアップデイトしてきた。
そんな彼らの活動はこの先も11月5日のEP『Jupiter=』のリリース、さらには2026年2月~4月の『Billyrrom Asia Tour 2026 “Jupiter=”』と続いていくのだが、今回、結成5周年を迎えるタイミングでメンバーたちに話を聞かせてもらったところ、この5年間、バンドの急成長とともにメンバーたちの心の内にもさまざまな変化が訪れていたようだ。
夏フェス出演、EPの制作、さらには9月10日(水)に渋谷WOMBで開催した『GER vol.2 ~5th Anniversary』のリハーサルと忙しい日々を送る中、インタビューにはMol(Vo)、Taiseiwatabiki(Ba)、Leno(Key/Syn)、Yuta Hara(DJ/MPC)の4人が参加。制作中のEPの方向性も含め、さらなる飛躍を求めるバンドのリアルを赤裸々に語ってくれた。
――11月5日にリリースするEPの制作が佳境を迎えているところではないかと思うのですが。
Mol:そうなんですよ。あと2曲録る予定なんですけど、その2曲を今まさに作っているところで。
Leno:間に合うのか?っていう(笑)。
Taiseiwatabiki:答えがリアルすぎないか?(笑)
――確かに夏の間ずっとフェスに出ていましたよね。
Leno:合間を縫って作ってはいたんですけど、常にこれまでとは違うことをやりたいと考えるタイプのバンドなので、その新しさっていうところを追求しながら、形にしようと頑張っているところです。
――そう言えば、昨年9月に1stアルバム『WiND』をリリースしてからもずっとリリースが続いているじゃないですか。
Leno:リリースしすぎですよ(笑)。
――なんでそんなにリリースするんだろうって。変な質問かもしれないですけど。
Taiseiwatabiki:そういう時代ですよね。
Mol:でも、自分たちをそういう場所に置くことも大事なのかな。たとえば1年に2曲しか出さないみたいなスタンスもあるとは思うんですけど、僕らはそういう世代だからこそ、そこに食らいついていく姿勢も必要なんだと思います。
Mol(Vo)
――同時に、さっきLenoさんが常に違うことをやりたいと考えるタイプのバンドだとおっしゃっていたように、試したいこととか、挑戦してみたいこととがあるから曲も作るし、作ったらリリースもするしってことでもあるんですよね?
Leno:それはもちろんです。
――現在、制作中のEPはすでに『Jupiter=』というタイトルが決まっているんですよね。タイトルって曲が揃ってから、最後に決まることが多いと思うんですけど、すでに決まっているということは、まずタイトルを決めて、それに合う曲を作っていったということなんでしょうか?
Leno:EPとか、アルバムとか、まとまった作品を作る時は、いつもコンセプトというか、なぜそれを作るのかみ、たいなことを1回、メンバー全員で長い時間を掛けて話し合うんですけど、なんで『Jupiter=』になったんだっけ?
Mol:さっきの話にもちょっと繋がるんですけど、ずっとがむしゃらにやっていると、道に迷うこともあるというか、何を信じたらいいのかわからなくなる時って、誰にでもあると思うんですよ。たとえば、僕らも曲作りに追われていると、なんでバンドを始めたのか、その気持ちをちょっと忘れてしまいがちだと思うんですよね。だから、初心を忘れないようにするために自分たちの進んでいく道の指針みたいなものを、このタイミングで1個決めたほうがいいねってなって、だったらJupiterってどうかな?って僕が提案したんです。モチーフとしてJupiter、つまり木星が僕の中でしっくり来たんですよ。勝手にシンパシーを感じたというか、太陽系最大の惑星であり、その静かな佇まいが今のBillyrromに通じているような気がして。みんなに話したら、そこから数珠つなぎに話がまとまっていって、最終的にLenoがまとめてくれたんですけど。
Leno:そうだったっけ?
Mol:憶えてないでしょ、全然(笑)。僕たちが目指すものがJupiterであり、同時に僕たち自身もJupiterである、みたいな。うまく説明できなくて申し訳ないんですけど。
――それで『Jupiter=』ってタイトルにイコールが付いているんですね。
Mol:それもあるし、その答えは僕たちの中にはあるけど、みんなはどうなんだろう?っていう意味も込めました。僕たちにとってJupiterというものが今の道標になっているけど、みなさんにはそういうものはありますか? そういう問いかけにも繋がっていくのかなとも思いますけど、声を大にして、君らはどうなんだ?って言うつもりはまったくなくて。そういうふうに感じる人がいるなら、そう感じてもらえればいいしっていう。
Leno:別にみなさんは、そんなに気にしなくていいと思うんですよ。
Mol:そうだね。これはけっこう自分たちの中の話かもしれません。
――なるほど。ところで、「Funky Lovely Girl」と「Hold Me Tight」と「Unknown Island」の3曲をまず聴かせてもらったんですけど、『Jupiter=』にはその3曲と、さっきおっしゃっていた現在制作中の2曲が収録されるわけですね?
Mol:そうです。全5曲になる予定です。
――その2曲が間に合うかどうかっていう。
Mol:僕ら、1メートル1秒で泳げるよね? じゃあ100メートル100秒で泳げるよね? みたいなスケジュールの組み方をしちゃうんですよ。でも、途中でバテる時もあるから、単純に計算通りには行かないじゃないですか。そこで、もうちょっと余裕を持っとけばよかったって、よくなるんですけど。なんだかんだ、いつも間に合ってるので、今回も大丈夫だと思います。
――「Hold Me Tight」がリリースされたばかりだと思うので、EPからの先行シングルである「Hold Me Tight」について話を聞かせてほしいんですけど。なぜこの曲を先行シングルに選んだんですか?
Leno:いかにもシングルっぽいアッパーチューンばかりだと疲れちゃうし、こういうメロウでアーバンな雰囲気の曲って久しくやってなかったので、Billyrromはそこも得意分野なんだから、ファンキーなディスコチューン以外でもシングルで出すべきかなって思って作りました。
――ピアノのリフがすごく印象的で、そのピアノのリフが曲のメインテーマになっていると思うんですけど、そのピアノのリフから作っていったんですか?
Mol:そうでした。ピアノがグルーヴのフックを握っている曲を作りたいって話をしていたら、Lenoがいきなりあのリフを弾き始めたんですよ。すぐにビビッと来て、めっちゃいいいからそのまま好きにやってよっていう。そこから16ビートをLenoが入れて、みたいな感じで、けっこうぽんぽんと進んでいきましたね。
――ピアノのリフは前から温めていたんですか?
Leno:いえ、その時、思いつきました。降ってきちゃいましたね(笑)。
――ピアノのリフがグルーヴを握るってBillyrrom的に新しいんじゃないですか?
Mol:そうですね。先行シングルにしたきっかけとしてもう一つ、曲を出した時に今度のEPはこれまでとちょっと違う雰囲気がありそうだなって感じてもらえるんじゃないかっていう意図もあったんですよ。
――1番のAメロのリフレインの《白紙に戻せない願い まだ溶け合うの?》の直後にブレイクが入るじゃないですか。
Leno:あれはMolのアイデアですね。ここでスネアだけ抜けたらかっこよくね?って突然思いついたみたいで、この2拍のブレイク新しいねって、即採用でした。
――ある意味キャッチーですよね。
Leno:シンプルだけど、意外とないと思います。
――ということはピアノのリフを元にスタジオでセッションしながら作っていったんですか?
Leno:いえ、パソコンとにらめっこで作りました。
Mol:だから、最初はもっとトラックっぽかったんですけど、実際にShunsuke(Dr)がドラムを叩いたら、手癖のちょっと荒い感じが加わるんじゃないかって予想できたから、最初はパソコンできっちり作り上げたんですよ。
Leno(Key/Syn)
――Lenoさんは今回、初めて作詞にも挑戦したそうですね。
Leno:そうなんですよ。この曲を作っていく過程で、今の俺らの心境や、世の中に対して思ってることと曲の雰囲気がマッチしてるなと思って、これ書けそうだなと思って、俺が書くって手を挙げました。
――歌詞は女性の目線で書かれていますけど、歌っているのは、今現在のBillyrromの心境だと?
Leno:主に女性の視点で書きましたけど、いろいろな視点が入っていますね。だから聴く人によって、たぶん視点は変わると思うんですけど。ただ、自分を蔑ろにして、現実をちゃんと見ないのはよくないよね。どんなに辛いことがあっても現実から目を逸らさないでっていうのは、どの視点においても入っているので、わかる人にはわかるところがあると思います。
――主に女性の視点で書いたのは、なぜだったんですか?
Leno:なんでだったかな。浮かんだんですよね。浮気される女の人が、なぜか。そこから広げていきました。
――いろいろな聴き方ができると思うから、歌詞の内容をここで掘り下げることはしませんが、自分を蔑ろにして、現実をちゃんと見ないのはよくないよねと、なぜLenoさんが思ったのか、それだけ聞かせてもらえますか?
Leno:それこそ、さっきの『Jupiter=』っていうタイトルの話にもつながるんですけど、最近、バンドの雰囲気が大人になってきたと言うか。いや、悪いことではないんですけど、現実をしっかり見なきゃな、みたいなことが増えてきて。楽しいだけでやっていってもいいかもしれないけど、そこのバランスって大事だなっていう。やっぱり、現実逃避したまま、何かに依存しすぎて、人生をダメにしてきた人も見てきたから、それじゃダメだよねっていう、けっこう自戒的な曲にはなっているかもしれないです。
Mol:でも、何でもそうなんじゃないかって。何かを始める時に、その世界のことを知らないほうが幸せだと思うんですよ。そのほうが自信を持って、物事を始められるから。でも、実際に扉を開けてみたら、思っていたよりも広い、それこそ宇宙のような空間が広がっていて、自分がちっぽけに感じられたりとか、まだまだ足りないなって思うことって、たぶんどの世界でも共通する経験だと思っていて。だから、ネガティブには全然考えていないんですけど、一歩大人になったBillyrromの感じが「Hold Me Tight」には出ているって僕は感じていますね。
――言ったら、まだ結成6年目ですもんね。この5年の間にバンドの規模ってかなり大きくなってきたと思うんですけど、その中でいろいろな現実を目の当たりにすることも多々あった、と。
Leno:そうですね。このバンドは友達が集まってバンドをやろうぜって始まったので、このバンドを仕事にしていくにあたって、この5年でメンバーそれぞれに成長したと思うし、心境の変化はけっこうありましたね。
――Molさんは、バンドを始めた時の気持ちを忘れたくないとおっしゃっていましたけど、大人になったと思う一方では、仕事だけになってしまったらつまらないという気持ちもあるっていう。
Mol:そうですね。仕事だけになったら、Billyrromの良さは出てこないと思うから、そのバランスが大事なんだと思うようになりましたね。
――実際、歌詞を書いてみていかがでしたか?
Leno:どういうことが書きたいのか、それは最初からはっきりしていたので、言葉はいっぱい出てきたんですけど、それを一つのストーリーにするのが大変でした。Billyrromに入る前に個人的に活動していた時は、韻の検索サイトを使って、適当に書いてたんですけど、さすがに真剣にやらなきゃと思って、夜通し、こういうふうに言ったらこういうふうに意味が通じるなってやりながら書き上げました。しんどかったけど、パズルみたいで楽しかったですね。ただ、今後、書くかはちょっとわからないですけど(笑)。
Mol:でも、Lenoが書いた歌詞、僕、大好きで。
Leno:そう言ってもらえるとうれしい。
Mol:最初、“こんな感じでどう?”ってもらった時からすごくおもしろいと思ってました。さっきいろいろな視点が入っているって言ってましたけど、どの視点で聴いてもおもしろい聴こえ方がするんですよ。だから、感情移入しやすいし、僕は元々、そういうタイプのボーカリストなので、レコーディングの時も歌いやすかったです。
Leno:歌詞のニュアンスがすごく出ていて、さすがだなと思いました。
Mol:ボーカルのレコーディングに立ち会ってくれたんですよ。やっぱり作詞した人がいてくれると、歌のニュアンスの擦り合わせもできるから、すごくやりやすかったです。
――さっき浮気されている女の人とおっしゃっていましたけど、他の視点もそういう具体的なイメージがあるんですか?
Leno:あるけど、秘密です。ご想像にお任せします。わかる人にはわかると思います。
Taiseiwatabiki(Ba)
――なるほど。あれこれ想像しながら、改めて聴いてみます。「Hold Me Tight」における各パートのアプローチについても聞かせていただけますか? Taiseiwatabikiさんのグルーヴィなベースプレイは、この曲に限らず、どの曲でもかっこいいし、もはやBillyrromの軸と言ってもいいと思うのですが。
Taiseiwatabiki:ベースのフレーズもLenoが考えたんですけど、最初聴いたとき、変な感じがしたというか。それこそベースラインもパズルみたいに16分のフレーズがちょっとずつずれているみたいな感じで。鍵盤で考えたんだと思うんですけど、そもそも普通にベースを弾いてたら思いつかないフレーズなんですよ。
Leno:でも、それをwatabikiが自分なりに解釈して、watabikiらしいいい感じのグルーヴを出せたので、結果、めちゃめちゃ良くなったと思います。
Taiseiwatabiki:セクションごとに表情が変わるっていうか、1番はちょっとタイトな感じで、サビで開けて、最後はベースがぐいぐい出てきて、デンデデデデみたいなフレーズがあるんですけど、だからこの表情の違いはちゃんと出したいなと思って、レコーディングには臨みました。
――ギターソロの裏でベースソロっぽいフレーズを弾いていますね。
Taiseiwatabiki:あれもLenoが作ったんですけど、歪ませたらおもしろいんじゃないかと思って。そこだけ歪みにモジュレーション系を加えた音色にして、パンチを出してみました。
――Molさんのボーカルはどんなアプローチを?
Mol:僕はちょっと感情が死につつある人をイメージしてました。感情が自発的にも死んでるんだけど、何かに殺されつつもある、みたいな。そういうちょっと不安定な精神状態にある人をイメージした記憶があります。
――曲が進むにつれ、感情が戻ってくるような印象もありましたが。
Mol:そうですね、最後は、感情が死ぬことに抗う気持ちをぶつけましたね。
――Lenoさんはピアノの他にシンセも加えていますね。
Leno:2番と最後のたたみかけるところに浮遊感のあるシンセを入れたのと、あと、今回、パーカッションもやりましたね。
Mol:トライアングルもね。めちゃめちゃうまいんですよ。
Leno:中学生の時に吹奏楽部でパーカッションやってたんです。最初はネットからひっぱってきたサンプルをはめてたんですけど、グルーヴがどうしても単調になっちゃうので、実際に叩いたほうがいいかなと思ってやってみました。そしたら、そのタイトじゃなさすぎる感じと、みんなのそれぞれのクセがちょうどうまい具合にはまって、いいグルーヴ感が出たんですよ。
Yuta Hara(DJ/MPC)
――Yutaさんは?
Yuta Hara:耳に溶け込む感じを意識しました。ループがかっこいい音楽が好きなので、DJが入るセクションのループ感みたいなところで、聴く人の耳に馴染んだらいいなと思って。
Leno:ボーカルの次くらいにフックになってるよね。
Yuta:印象的に残るようなことを意識しました。
――新境地と言える曲になったんじゃないですか?
Mol:今の僕らの精神性が表れたという感覚も僕はありますね。けっこう音楽ってナメられてんなって思うことが多くて、それが悔しくてたまらないんですよね。そういう気持ちって、たぶんメンバー全員が持ってると思うから、そういうところもぜひ聴いてほしいですね。
――7月に配信した「Funky Lovely Girl」はポップでキャッチーな曲で、「Hold Me Tight」とはまた全然違うんですけど、それ以前にリリースしてきたシングルもそれぞれに違う良さがあって。さっきおっしゃっていたように、本当に違うことをやりたいバンドなんだなって。
Leno:違うことをやりすぎるのもどうなんだろう?みたいな話もしますけどね。
Mol:さすがにやりすぎかもって。
Taiseiwatabiki:謎の反省会あったもんね。
Mol:でも、僕ら的には、どの曲にも通じるものはあるんですよ。
――それは聴いていても思います。
Mol:だから、違っていてもいいんじゃない?っていう。
Taiseiwatabiki:時期による気もするよ。
Mol:けっこう、その時のバンドの雰囲気とか、みんなの気分とかで作る曲がすごく変わるバンドなので、そういう意味では常に等身大なんだとは思いますけど、作りたい音楽と求められる音楽のバランスは、以前よりは向き合ってる気はします。やっぱり多くの人に届けたいので。好き勝手にやるんじゃなくて、そういうところは最近、すごく意識するようになったという部分で、階段を一段上った大人のBillyrromみたいなムードが今はちょっとあるような気がします。
Mol(Vo)
――せっかくなので、「Funky Lovely Girl」についても聞かせてください。この曲はJ-POPの逆を行くようなミニマルな構成というか、展開も聴きどころですね。
Taiseiwatabiki:それこそ、いろいろやりすぎじゃね?っていう反省会の直後にRin(Gt)がデモを送ってくれたんです。その時、もう1回ちゃんとディスコをやりたいよね、みたいな空気がバンドにあったから、J-POPっぽい展開がある感じじゃなくて、俺らが聴いていて、ちゃんと乗れる曲をやろうってなったんだと思うんですよ。
Leno:でも、構成はさておきですけど、J-POPっぽさはうまいこと演出できたと思います。J-POPに対するBillyrromなりの最適解は、けっこう作れたのかな。
Mol:そうだね。
――個人的にめちゃめちゃツボというところがあって。ブリッジの最後の《夜空の向こうを》の後にピアノのグリッサンドが入って、ハイハットでチキチキチキって刻むじゃないですか。あそこ、すごく好きなんですよ。めちゃめちゃ細かくてすみません(笑)。
Leno:俺らのこだわりが伝わったんだって思えるから、そういう細かいところが刺さるのが一番うれしいです。
Leno(Key/Syn)
――そのブリッジははっきりとしたキメを入れているわけではないんですけど、リズム隊のニュアンスで決めっぽくなっているのもすごくかっこいいですよね。
Leno:あれはShunsukeのアイデアですね。サンプリングみたいなことやりたいねっていう。ただ、そこをサンプリングでやらずにベースとギターも弾いて、それをループ加工して、みたいにやったらけっこう新しい感じになって。
Taiseiwatabiki:おもしろかった。でも、あれ、ベースはループしてない。
Yuta Hara:ベースは弾いてんだっけ?
Taiseiwatabiki:弾いてる。ギターはループしてるんだけど。だからちょっと変な感じで。
Mol:ダフト・パンクっぽい雰囲気があるというか、そういうのはアイデアとして、みんな意識してましたね。生と電子が交差してる感じというか。
Taiseiwatabiki:いい違和感。
Mol:そうそうそう。
Leno:めっちゃいい感じになって、さすがShunsukeって思ったし、今までそういう提案ってしてこなかったから、成長を感じられてうれしかったし。
Taiseiwatabiki(Ba)
――いい話ですね。いい話というか、友達同士が始めたバンドが、メンバー全員同じように成長していけているって、バンドをやる上で大事なところですよね。
Mol:確かに。作曲はRin、Leno、僕がメインだったんですけど、最近はみんな、けっこう前のめりに参加して作るようになってきて。それで言うと、Shunsukeは意見の量がすごく増えた印象があります。しかも、それがちゃんといい方向に働いているから、すごく助かってますね。
――そして、もう1曲。「Unknown Island」はアーバンな曲なんですけど、今作っている2曲は、他の3曲とはまた違うタイプの曲なんですか?
Leno:だいぶ違います。
Taiseiwatabiki:あれ、何ていうの? ラテン?
Mol:アフロビートっていうのかな。
Taiseiwatabiki:じゃあ、アフロビート・ロック・メタルです(笑)。
――メタル!?
Taiseiwatabiki:いや、まだ完成してないから、どうなるかは未定です(笑)。
Leno:そういう速くて変な曲と、あと、Rinが自分でラップする曲を作ってるらしいです。
Yuta Hara(DJ/MPC)
――これまでにないような曲になりそうですね。どんな曲になるのか楽しみにしています。このインタビューが公開される頃には、9月10日に渋谷WOMBで開催する『5th Anniversary Live』は終わっていると思うんですけど、3月のZepp Shinjukuワンマンで告知したところ、あっという間にソールドアウトしてしまったそうじゃないですか。
Mol:ありがたいことですね。
――WOMBってキャパはどれくらいでしたっけ?
Mol:ぱんぱんで500でしたっけ。でも、ぱんぱんにはせずに僕らが日頃お世話になってるクリエイターやアーティストを招いて、僕ら主催のパーティーみたいにしようと考えているんです。
Leno:だから、お客さんもクラブかバーに遊びにきたつもりで、お酒を飲みながら気楽に楽しんでほしい。
Taiseiwatabiki:何かやってんな、ぐらいの気持ちで。
――その日に『Jupiter=』を11月5日にリリースすることを発表して、先行シングルの「Hold Me Tight」をライブ初披露するんですよね?
Mol:そうです。
Leno:ヤバいです。
Taiseiwatabiki:マジ、ヤバいな。
――えっ、大丈夫でしょ?(笑)
Leno:パソコンで作る弊害って、やっぱりありますよ。いざライブでやろうってなったとき、全然合わないみたいな。
Mol:何回か合わせてみたんですけど、もうちょっと頑張らないと。
Leno:過去一ヤバいぐらい合わない。
Mol:赤裸々なインタビューすぎるね(笑)。
Leno:いや、そこも等身大で。
Mol:等身大で行きます。少なくともBillyrromを聴いてくれる人に対しては、ずっと正直でいたいんですよ。背伸びしたくない。本当にそう思います。こういう時代だからこそ、僕らはリアルで居続けたいし、それを好きだと思ってくれてる人もいると思うから。無理をする部分は僕らの中だけでいいのかな。聴いてくれる人には、ずっと正直でいたいと思いますね。
Leno:5周年ライブは俺らが一番楽しもうぜぐらいの気持ちで、アレンジもいろいろ変えて、やろうと思っているんです。だから、いつもとは違う特別なライブになりそうな気がしています。
『5th Anniversary Live』9.10 渋谷WOMB Photo by Hayato Niiya
――ライブと言えば、来年2026年の2月から4月まで、『Billyrrom Asia Tour 2026 “Jupiter=”』と題したアジアツアーを開催することが発表されました。
Leno:ソウル、香港、上海、北京、台北。香港はバンド初めて行くから、すごく楽しみですね。
――東京公演はZepp DiverCityということで、キャパ的にもチャレンジングなライブとツアーになるんじゃないかと思うんですけど、それも含め、今後、Billyrromはどんなふうに発展していきたいと考えていますか?
Taiseiwatabiki:これまではワンマンってなったら、ショーっていうか、どれだけ楽しませるか、みたいな、エンターテインメントの部分がけっこう大きかったんですけど、これからはそれもありつつ、もうちょいバンドとしてリアルなところを見せる感じになっていくんじゃないかなって思ってるんですけど。
Mol:作り上げたものよりは、人間っぽさみたいなものに惹かれるというか、たぶん、みんなそれは感じていて。だからそういうところがおのずとパフォーマンスにも表れるようになるんじゃないかなって思いますね。僕はブルーノ・マーズとか、マイケル・ジャクソンとか、ああいうスターもやっぱり好きなので、そういう部分も大事にしつつ、友達から始まったバンドという部分のリアルさっていうのがステージでもっと表現できたらいいなと思っています。
――EPのリリース後もまた、きっと新曲をどんどん発表していくんですよね?
Taiseiwatabiki:そうですね。
Mol:いろいろな曲をいっぱい作ってます。
Leno:その前にEPを完成させないといけないのに。マジ、現実を見ないと(笑)。
――いろいろ楽しみにしています。
Mol:頑張らないと。
――9月10日にリリースした「Hold Me Tight」の聴きどころは?
Rin(Gt) :遊び心ですかね。言葉にはしてないけど自分達が曲を作る中で、面白い曲っていうのは一つテーマとしてあった気がしてます。
Shunsuke(Dr): Billyrromとしては、キーボードのLenoの初作詞であるところと、曲自体も今までの曲とはまた違ったアプローチをしたので新しいBillyrromとしても楽しんでいただけるかなと思います。
――「Hold Me Tight」のプレイについて。ギター/ドラムそれぞれにどんなふうにアプローチしていきましたか? 新たなチャレンジはありましたか?
Rin(Gt) :ギターに関してはとにかくカッコ良さを追求しました。その他のトラックで曲の色や方向性は示していたので、そこに対してギターのとにかくカッコいい部分をスパイスとして入れたという感覚です。
Shunsuke(Dr): demoの段階でトラック感の強い印象だったので、バンドサウンドにしていく意識で叩きました。新しいチャレンジは、大サビ前のドラムブレイクは、シティポップのドラムを色々聞きあさり、そこにルーツが混ざって新しいアプローチができました。
Rin(Gt)
――11月5日にリリースするEPは、どんな作品にしたいと考えていますか?
Rin(Gt) :今までもこれからもそうなんですけど、自分達はBillyrromの今を常に描いていて、当たり前ですけどそれがすごくわかる作品になるのではないかなと思っています。結成から5年経ってそこまでで知った事や経験した事がブレンドされて生まれた新しいものと変わらないものが混在した作品になると思います。
Shunsuke(Dr) :1stアルバムのWiNDから変わったBillyrromと変わらないBillyrromを表現できればなと思います。
――結成5周年を迎えるわけですが、この5年間、バンドに取り組む気持ちはどんなふうに変化してきましたか?
Rin(Gt): 日々バンドというものを理解していくにつれて、バンドというものへの考え方はすごく変わりました。バンドって本当に生き物なので、調子が良い日もあれば調子が悪い日もあります。
でもそんな良いものも悪いものもひっくるめて生まれた何かをステージでお客さんに披露する。すごく変な職業だけど性に合ってる気がします。
Shunsuke(Dr): 色んな節目がありましたが、大きくは変わっていない気がしています。新しい自分たちを常に模索しつつも帰ってくる場所は大切にしているなと感じてます。
Shunsuke(Dr)
――来年のアジアツアーを含め、今後の活動の抱負を聞かせてください。
Rin(Gt) :より大きなものに挑んでいくと思います。そしてそれを飲み込むくらい自分達も大きくなっていくと思います。
Shunsuke(Dr) :ツアーは回る場所それぞれの会場で始まった瞬間からその場で思ったようにやれたらなと思います。今回のツアーが終わってまた一段階バンドが大きくなって、色んな環境で次のツアーを回れたら嬉しいです。
取材・文=山口智男
撮影=大橋祐希
ライブ写真=Photo by Hayato Niiya
リリース情報
※「Funky Lovely Girl」「Hold Me Tight」を含む全5曲入り
ライブ情報
2.21(Sat) 大阪:BIG CAT
2.27(Fri) 東京:Zepp Diver City (TOKYO)
3.14 (Sat) ソウル:KT&G Sangsangmadang
3.17 (Tue) 香港:PORTAL
3.20 (Fri) 上海: *TBA
3.21 (Sat) 北京: *TBA
4.18 (Sat) 台北::Legacy Taipei
▼国内公演のお申し込みはこちらから!
https://eplus.jp/billyrrom/
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