dialogue+1による女性ふたり芝居『The Breath of Life』(作:デヴィッド・ヘアー、演出:詩森ろば)が開幕
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dialogue+1『The Breath of Life』(左から)李千鶴 林田麻里 (撮影:市川唯人)
serial numberを主宰する演出家の詩森ろば、俳優の林田麻里/李 千鶴の3名による演劇ユニット、「dialogue+1」の第一弾作品『The Breath of Life』(作:デヴィッド・ヘアー、演出:詩森ろば、翻訳:鴇澤麻由子)が、2025年9月10日(水)、下北沢OFF・OFFシアターで開幕した(9月17日(水)まで上演)。
dialogue+1『The Breath of Life』(左から)李千鶴 林田麻里 (撮影:市川唯人)
「dialogue+1」は、serial number presentsの下、今後3年間にわたり、女性ふたり芝居を連続上演していく。その第一弾となった『The Breath of Life』は、イギリスの劇作家デヴィッド・ヘアーの戯曲。今はここにいないある男を巡る、元妻と元愛人による対話劇だ。辛辣さと孤独と仄かな友情の萌芽。女性なら身に覚えのある不可思議な関係性を余すところなく炙り出す作品となっている。
dialogue+1『The Breath of Life』(左から)林田麻里 李千鶴 (撮影:市川唯人)
dialogue+1『The Breath of Life』(左から)林田麻里 李千鶴 (撮影:市川唯人)
【詩森ろば 開幕コメント】
詩森ろば
この戯曲の舞台となるワイト島はイギリスの最南端にあり、登場人物であるマデリンの言葉を借りると「ガーデニング」と「死」しかない島です。そして、『The Breath of Life』はそこに訪ねてくる流行作家でもあるフランシスとマデリンとの一昼夜の物語です。彼女たちはほぼ初対面であり、そこまでの人生はまったく交わっていません。ただひとつだけ。ひとりの男を長い時間共有していたことを除いては。ホストであるマデリンはその男の元愛人。そしてフランシスは元妻です。しかも今、彼はイギリスを去り、アメリカで新しい女性と暮らしているのです。ほんとうに、ウンザリするほど辛辣な設定です。
ふたりはマデリン曰く『向こう岸』のワイト島で、はじめて自分たちの男との記憶を持ちよります。出会い、生活、そのすべてを。ふたりはとうぜんながら深く傷つきますが、しかし、自分の心の深層部にも相手の心の奥底にも容赦なく分け入っていきます。
その戯曲に『The Breath of Life』、つまり「命の呼吸」というタイトルがついている。それは何故なのか。わたしたちの稽古場はこの問いに対して何かしらの答えを見つけようと奮闘する日々だったように思います。
作家デヴィッド・ヘアーは「もはや中年とは呼べないし、ましてや老年とも呼べない。その中間の何か…私はまさにその瞬間の二人の女性を描きたかった。彼女たちの背後には長い過去があるが、彼女たちの前には大きな未来への期待がある。」とこの戯曲について語っています。
大きな未来への期待!
わたしが読み解いたのもまさにそれでした。そう。だって、マデリンを追いかけて向こう岸に渡ったフランシスが向こう岸に渡ったままだったら、こんなタイトルがつくハズはないのです。なのに、この戯曲の扉には、『生きるとは復讐の夢を見ることである』というゴーギャンの言葉が書いてある。いったい何がしたいの。デヴィッド。
これは、この物語は、こんな辛辣な設定でありながら、ふたりの女が手を携えて「精神の死」の淵から生還するシスターフッドの物語でもあります。だからわたしはこの物語が好きです。だからわたしはこの物語をこのふたりの俳優とやりたかったのだと思います。よくぞ出会えたね、という林田麻里と李千鶴という俳優ふたりは、はじめて会った役なのに仲良くなりすぎたり、かと思えばそれを用心しすぎてただの敵同士になったり、けして平坦ではない道を、皆で率直に言葉を交わすことで乗り越えてきました。最終通し、あの稽古場にあった、あの嘘のない瞬間を『最高の復讐』としてあなたに届けられますように。ぜひ劇場にお出かけください。
詩森ろば
左:林田麻里、右:李 千鶴
公演情報
『The Breath of Life』
【会場】下北沢OFF・OFFシアター
【作】デヴィッド・ヘアー
【演出】詩森ろば
【翻訳】鴇澤麻由子
【出演】林田麻里 李 千鶴
【公式HP】https://serialnumber.jp/next.html