【インタビュー】成井豊×鍛治本大樹×林貴子×山本沙羅~演劇集団キャラメルボックス創立40周年記念公演『トルネイド/北条雷太の終わらない旅』の見どころと、劇団の“現在地”

18:00
インタビュー
舞台

(前列右から)鍛治本大樹、林貴子、(後列右から)山本沙羅/成井豊

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2025年6月30日に創立40周年を迎えた演劇集団キャラメルボックス。劇団創立40周年記念公演第一弾として16年ぶりの再演となる代表作『さよならノーチラス号』と新作『ナナメウシロのカムパネルラ』を7〜8月に上演したが、創立40周年記念公演第二弾として、『トルネイド/北条雷太の終わらない旅』が、2025年12月6日(土)〜7日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼで、12月13日(土)に新潟・りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館で、そして12月19日(金)〜25日(木)に東京・サンシャイン劇場で、上演される。

『トルネイド/北条雷太の終わらない旅』は、1995年に初演された『レインディア・エクスプレス』をベースに、2003年にタイトル変更と改訂の上上演した『彗星はいつも一人』を、さらにタイトル変更と改訂を施した作品。果たしてどのような舞台となるのか。脚本・演出の成井豊と、本作に出演する劇団員の鍛治本大樹(北条雷太役)、林貴子(朝倉ナオ役)、山本沙羅(酒井しずえ役)に話を聞いた。

<『トルネイド/北条雷太の終わらない旅』ストーリー>
山口県下関市。市役所に勤める酒井しずえは、クリスマスイブの昼過ぎ、⼀⼈暮らしの老人・朝倉ナオの家を訪ねる。しずえは高校時代の友人で、今は東京で高校教師をしている朝倉ヒカリから、祖母の世話を頼まれていた。「今夜は2人でクリスマス・パーティをしよう!」。料理の支度をしながら、ヒカリからの手紙を読み始める2人。そこには、ヒカリの前に現れた怪しい男・北条雷太の話が書かれていた。その名前を聞いて、ナオは知っている人だと言う。「うちの近所に住んじょった。今から55年前…」。

── 40周年の第2弾ということで非常に楽しみなのですが、まずは改めて、この公演に対する意気込みから伺えればと思います!

山本沙羅(以下、山本) 私がキャラメルボックスに入団してから、そこまで多くのイベントは行われていなかったのですが、この40周年はイベントもできたし、公演も打てて、劇団員としても本当に楽しい1年になっているなと思います。周年の締めくくりとして、また気を引き締めて、頑張ります!

林貴子(以下、林) クリスマス公演は、私たち劇団員にとっても、お客様にとってもきっと、本当に特別な公演なんです。40周年ということもありますけど、それだけに限らず、いつも通り誠意を持って、一生懸命お客様に作品をお届けしたいなと思っています。

鍛治本大樹(以下、鍛治本) 40周年の年というのもありますが、キャラメルボックスにとって、クリスマスの時期に行う公演は、やはり特別なものがあると思っています。今回上演する作品も、クリスマス感はそんなにあるようなないような感じですが……1年に1度、誰かのことを想う、そんな思いが溢れている作品だと思います。皆さんと素敵なクリスマスを過ごせることを今からワクワクしています。

成井豊(以下、成井) 第6回公演『子の刻キッド』(1987年)で、初日がクリスマスだったから、クリスマス公演と無理矢理銘打って始めただけで、それがこんなに続いちゃったんですよね(笑)。クリスマス公演だと分かっているから、サンタクロースなど、題材をいろいろ変えてきたのですが、このお芝居の初演はトナカイをテーマにしようと思って、『レインディア・エクスプレス』(1995年)というタイトルにしたんです。そうして、脚本を書いたら、トナカイが出てこなかったんですよ(笑)。再演の時に『彗星はいつも一人』(2003年)というタイトルに変えて、アイテムをクリスマスケーキにしました。ある男が、ある女の子にクリスマスのケーキを届けに来る話に。だから、クリスマス色はあるよ!(笑)

鍛治本 本当だ。めっちゃありますね(笑)。

成井 ……ということで、今回は3回目の挑戦となります。

── 改訂とはいえ、なぜこの作品を40周年の節目に上演しようと思われたのですか?

成井 初演はもう大昔になってしまいますが、僕は主人公の北条雷太が、もう大好きで! 40周年記念公演第一弾は、一番好きな脚本である『さよならノーチラス号』を上演したので、第二弾は一番好きな主人公の芝居をやろうと思い、取り上げました。書き直しが結構あるかなと思って、タイトルを変えたのですが、正直なところ、あまり大きな改訂はありませんでした(笑)。でも、新しいタイトルの『トルネイド』って、格好いいと思いません? 僕は気に入っています。

── 主人公が好きという想いもありつつ、やはりそれを鍛治本さんが演じるというのも、劇団として意味が大きいように思います。

成井 そうですね。多分すごい挑戦になるんじゃないかなと思いますね。(鍛治本に向かって)もう入団してから20年ぐらい経つ?

鍛治本 そうですね、20年弱です。(※鍛治本は2007年入団)

成井 出会った時は声も全然出ていないし、動きも良くないし、欠点だらけのしょうもない俳優だと思っていました(笑)。こんな下手な奴がいるのだろうかと思っていたんだけれど、今ではすっかり成長して、本当にいい俳優になりました。でもだからこそ、新しい面を発掘して、さらにいい俳優になってほしいなと思っています。多分、こういう役はやったことがないよね?

鍛治本 ないです。

成井 だって、(北条雷太は)190歳の武士ですよ? やったことあるわけがない(笑)。キャラクター的にもこういう役はやったことがないだろうけれど、勝算があるから抜擢しています。鍛治本ならやり遂げてくれるだろうし、鍛治本が雷太をやるのは、これも面白いんじゃないかと思っています。

── 成井さんの想いを受けて鍛治本さんはいかが思われますか? 配役を聞いた時の心境を教えてください。

鍛治本 北条雷太は前回まで(劇団看板俳優である)西川浩幸さんが演じられていた役なので、劇団員としてはやはり大きなものを感じています。本格的な稽古が始まる前に、再演(『彗星はいつも一人』)の映像を見たのですが、やはり僕にとって今までやってきたことのない役だと感じました。正直、今の段階では稽古前ということもあって、北条雷太が何を思って行動しているのか掴みきれてはいない状態です。そういうことは今までありませんでした。台本を読んだり、準備をしたりしていると、その人物の人となりが大体は分かり、「こういうところ、共感できるな」というような役が多かったものですから。なので、今回は本当に未知数でワクワクしています。

鍛治本大樹

── 林さんと山本さんはいかがですか? 改めて配役と、それを聞いた時の心境を教えてください。

林 私は朝倉ナオというおばあちゃんの役をやるのですが、年齢設定は80歳です。初演も再演も、劇団の大先輩である坂口理恵さんが演じていらっしゃったので、最初に配役を聞いた時はものすごいプレッシャーでした。でも、こんなおばあちゃんの役をやることもなかなかないですし、プレッシャーはありますけれども、楽しみかといえば楽しみです。

また、朝倉ナオの相棒的な存在として、山本沙羅ちゃんの演じる酒井しずえという、市役所職員の女の子とずっと仲良く一緒にいるのが面白いですね。そういう身内でもない年下の友人との関係性も楽しんでいければと。

林貴子

山本 私は、林貴子さんが演じる朝倉ナオの相棒、酒井しずえです(笑)。キャラメルボックスの作品には、お客さんと同じ目線で物語を理解していく役どころが結構登場してくると思うんですけど、今回、そのポジションに初めて就かせていただきます。お客さんとしてキャラメルボックスを観てきた身としては嬉しい気持ちもありつつ、やはりプレッシャーもありますが、相棒が貴子さんなので! この夏の公演で、そのポジションをすごく楽しそうにやられていた貴子さんが相棒という心強さがあります。とにかく楽しみたいなと思っています。

山本沙羅

── 林さんと山本さんの配役の決め手は?

成井 朝倉ナオは設定上80歳なんですが、クライマックス直前のところで回想シーンがあって、そこで20歳になるんですよね。だから、本当に70歳とか80歳とかの女優さんを持ってくると……まぁ、うちに、そんな人はいませんが。一番年長の俳優、大森美紀子さんだって64歳です。あまり老けた人を持ってくると、20歳のシーンがちょっと悲惨になりそう。そういう点で、“アラフォー”の林がナオにはぴったり。きっと80歳の演技もできるし、20歳の演技もできると期待しています。

山本は「客席と舞台のパイプ役は初めて!」と言っていますけど、厳密に言えば、キャラメルボックス作品で初めてなだけ。「成井硝子店」という、とある小さな劇団(※成井豊と、その家族による劇団)の公演でそのポジションをやってもらったことはあるし、NAPPOS PRODUCE『ぼくのメジャースプーン』(2022年)でも(キャラメルボックス劇団員の)岡田達也とコンビでそういう役柄をやってもらったことがあるんです。そういうポジションをやると、山本は生きるんですよね。彼女の得意技といってもいい。なので遂にキャラメルボックスでそれをやってもらう時が来た、と思っています。

成井豊

── 改めて物語の印象や見どころをお聞きしたいです。

鍛治本 僕は北条雷太をやらせてもらいますし、タイトルにも北条雷太と出てきますけど、『彗星はいつも一人』の映像を見させてもらって最初に思ったのは、群像劇だなということ。もちろん物語の発進力というか、北条雷太を含む3人の境遇がすごくエンジンにはなっていますけど、そこで色々な関係性の物語が巻き起こります。そういった意味では、すごくキャラメルボックスらしい作品だなと思いましたし、40周年の最後を劇団員で盛り上げるにはふさわしい作品だなという印象を持ちました。

林 キャラクターの話になりますが、私は個人的に“3人組”が大好物で好きなんです(笑)。今回で言うと、雷太を含む、190歳ぐらいのとんでもない3人組が出てくるわけですが、その面白さが私はたまらなく好き! やはりこの3人が会話しているシーンが個人的にすごく面白いなと思い、映像を何度も見返していました。

鍛治本 そうそう、他の2人も可愛らしいよね。

林 そうなんですよ。すごく魅力的で、なんか憎めない。

山本 不老不死の人が主人公で、ともすればすごく辛い題材にもなりそうなところを、この雷太だけじゃなくて、3人一緒に不老不死になったというコンビネーションがいいですよね。その不老不死の話と、新聞記者・佐々木岳彦と息子・村越大地くんの話が、主軸として2つ通っていて、どちらもすごく辛い面がありながらも、周りの登場人物たちのパワフルさや、お茶目で可愛らしいキャラクターなどいっぱい出てくるので、そういう意味で物語が辛くなりすぎずに、色々な思いをお客様にお届けできると思います。お客様にとって、どこを取っても「楽しかった」と思っていただける作品になるのではないかな、そうなりたいなと思っています。

── 成井さんはなぜ北条雷太に惹かれているのでしょうか?

成井 初演の脚本を書いたのはもう大昔なので、あまり覚えていないのですが、発想の原点はたぶん、高橋留美子さんの人魚シリーズという漫画だと思うんです。人魚の肉を食べてしまって不老不死になった漁師の話で、シリーズ物なのですが、そこで「不老不死って面白いな」と思い、考え始めたんです。あともう一つはね、映画の『フォレスト・ガンプ』。(今回の作風と)全然違いますけど(笑)、『フォレスト・ガンプ』は自分の映画ベスト3には入るぐらい大好きで、あの映画を見たおかげで、1人の男の人生や半生を描くのは面白いと思うようになり、その第1作がこれだったのです。まずは不老不死の幕末の武士の半生を描いてみようと。で、書いてみて、やっぱり面白かった。その後も手を変え品を変え色々やってきたのですが、その原点がこれだったのです。

なぜ雷太が好きなのかといえば、結局は大元に『フォレスト・ガンプ』があるからだと思います。ひたすら愚直なんですよ。良い言い方をすると、この上なく誠実です。でも、嫌な言い方をすると、バカで不器用。でも彼はそのようにしか生きられない。彼の倫理観からすると、新政府軍に降参はしても曲げられない。現実に妥協できない。その愚直さが本当に好き。ただ僕自身は愚直が好きなのに、愚直になりきれない、つい妥協しちゃう。楽に生きちゃう人間だからこそ、ひたすら愚直な雷太に憧れるんだと思います。シリーズ化したいと思いながらも、まだ1本しか書けていません。

── 劇団40周年ということで、劇団の現在地を探っていきたいです。この40年間に色々なことがありましたし、皆さんの入団時期もそれぞれ違うと思うのですが、キャラメルボックスの好きなところや魅力はなんですか?

鍛治本 僕はスポーツがすごく好きなのですが、プロ野球や甲子園、サッカーチームを応援するような感覚が、観客としてキャラメルボックスを観る時にあるなと思っています。クオリティを高く保つことはもちろん皆で頑張ってやっていますけれども、それ以上に、劇団員それぞれの成長だとか、「新人だったあの子がこういうポジションをやるようになったんだ」とか、そうした過程を一緒に年を重ねて共有できるのが劇団活動をする良さですし、キャラメルボックスにはそれがすごく色濃く魅力としてあるなと思っています。今回も冬公演で2人の新人がデビューします。本公演の初舞台は一度きり。それをお客さんと共に目撃できるのは劇団の強みですし、一番の魅力だなと僕は思っています。

鍛治本大樹

林 キャラメルボックスの魅力は一生懸命なところと、心の汗をかいているお芝居だというところ。今まで自分がお客さんとして観てきて、キャラメルのお芝居からたくさんのパワーをもらっていたので、そういうパワーを自分からも送りたい、と常に思いながらお芝居をしています。私は高校生の頃からずっとファンで、決め手になったのは『クロノス』の初演(2005年)を観た時。座席から立てないぐらいの衝撃を受けてしまって。自分が劇団員になっても、あの時の衝撃がずっと忘れられずにいるので、そういうお芝居を届けられたら、と思っています。

林貴子

山本 夏公演が2本立てで、そのうちの1本のほうに出演していたので、もう1本を久しぶりに客席で観て、「これがキャラメルボックスだよな!」と感じました。その感覚を具体的には言葉にできないのですが、他の劇団や他の公演を観た時には感じられない温もりがありました。それを、自分の学生時代に観ていたのと変わらず、この夏も体感できたのが本当に嬉しくて。多分、根底にずっと変わっていないキャラメルボックスの魅力みたいなものがあって、それは実際に観ていただかないと分からないものなのだと思います。

山本沙羅

── 成井さんには、キャラメルボックスのターニングポイントと、40年間変わらないことをお聞きしたいです。

成井 ターニングポイントと、変わらないこと。これは一つにまとめて話ができると思います。1985年に劇団を作った時はただの社会人サークルでしたから。プロになるなんて考えていませんでしたが、それが87年ぐらいから、なしくずし的に「プロを目指そうみたいなこと」になってきて。その頃って、一生懸命に芝居を作ることくらいしかポリシーがなかったと言いますか、どんな劇団にしたいとか、そういうことすらもあまりはっきりしていませんでした。僕自身もどんなお芝居を作るのか、まだ模索中だったのです。

そんな中で、だんだんと形ができていって、ターニングポイントと同時に劇団のカラーが決定的になったのは、今考えると1994年なのかなと思います。この年の夏に『ディアーフレンズ、ジェントルハーツ』というお芝居の再演で、主演を上川隆也にする予定だったんですけど、NHKの『大地の子』に出演することになっちゃって、急遽3ヶ月前に出演できなくなってしまったんですよ。そこで今井義博というしょうもない奴を主役に抜擢せざるを得なくなって……。でも抜擢すると、ちゃんと成長するし、ちゃんと面白かったんです。

当時、鴻上尚史さんが「劇団10年限界説」というのを唱えていました。20歳で劇団を作る、30歳になって劇団が売れてくる。そうすると、トップの俳優がみんなテレビや映画に行ってしまって、その劇団は潰れる。劇団は10年しか続かない。そう話していて、確かに他の劇団を見てみると、そういう現象が起きていて。うちも10年間近だったし、上川がNHKに行っちゃうし、その後、西川(浩幸)も、近江谷(太郎)も映像に行っちゃうかもしれない。そう思った時に、今井を主役に抜擢したように、次から次へと主役が生まれてくれれば、誰かがいつ卒業しても全然問題ないんじゃないかと思ったんですね。多くの劇団は旗揚げメンバーが10年経っても主役をやっていて、後から入ったメンバーは何年経っても脇役しかやらないけれど、キャラメルボックスはそうではなくて、役者が40人いたら40人がみんな主役をできるとすれば、いつ誰が抜けても全然問題ないという風にしようと決めました。多分そこでキャラメルのカラーが決まりましたね。

もちろん役者の一人ひとりを応援していただくのは本当に嬉しいことですが、例えば阪神タイガースは優勝できなくてもファンが離れないんですよ。それはやはり阪神タイガースのファンだから。今年阪神は優勝しましたけど、最下位の時でもファンが離れないのは、チームとしての阪神が好きだからでしょう? 同様にキャラメルを応援してもらえれば、上川が辞めたって、近江谷が辞めたって、お客様は離れない。そういう劇団にしようと94年に決めました。なので、変わらないことは、役者ももちろん大切なのだけど、劇団を応援してもらえるようなお芝居を作ってきたことです。

── 「10年限界説」にも係わらず、今や40周年になりました。成井さんが思い描くこれからのキャラメルボックスのヴィジョンとは? また、ご自身の作家としての未来像もお聞きしたいです。

成井 僕は今年64歳になるんですよ。もうゴールが見えてきているので、そのゴールに達する前に、これもやっておきたい、あれもやっておきたい、再演したいというものが結構あるんです。まさに今回の『トルネイド』もそうですしね。多分、これ以降は、再演する度にそれが最後の再演になると思うし、新作でも再演でも1本1本が本当に大切になっていくと思います。

僕は今まで、オリジナル新作戯曲を69本書いているんですよ。原作ものを合わせると百十数本ですが、できるだけ多く書きたい。ゴールまでにもう少し書き続けたいですね。1年に1本は難しいかもしれないけど、最低でも2年に1本新作を書きたい。そして、もっと上手くなりたいです。未だに30代で書いた『さよならノーチラス号』が一番好きなんてダメですよね。64歳になる今こそ代表作を書かなくては。尊敬する(SF作家の)梶尾真治先生は60代で代表作を書かれたんですよ。尊敬してますし、目標ですね。

成井豊

── たっぷりとお話をいただきました。最後に読者の皆さんへのメッセージをお願いします!

山本 40周年ということで、1年を通してたくさんの劇団員が出演していて、今回はダブルキャストと日替わりゲストもあります。日替わりキャストは『ナツヤスミ語辞典』(2019年)以来! あの時も本当に毎日稽古場に違う人が来て……本当にバラバラな人たちが同じポジションを担ってくださるので、お客様も1回と言わず何度でも足を運んでいただけたらと思います。お祭りにしていきましょう!

林 鍛治本さんも仰っていましたが、今回、デビューする新人が2人いるんですよ。新旧揃ったメンバーでお届けしているところも注目してほしいなと個人的には思っています!

鍛治本 成井さんが最も好きな人物は北条雷太と言っていましたけど、再演に出ていた石原(善暢)さんも「俺は北条雷太が好きだ」とお酒を飲みながら言っていましたし、きっとお客さんの中にも「北条雷太に久しぶりに会える」と楽しみにされている方がいらっしゃると思います。もちろん初めて観られる方はフラットに観ていただきたいですが、僕も稽古しながら、北条雷太という人物に出会っていく過程を楽しみながら、クリスマスまで皆さんと一緒に北条雷太と会う旅を楽しめたらなと思っていますので、ぜひその一員になっていただけたらと思います。

── 今回、2025年にこの作品を上演するということで、今の時代のお客様に向けた成井さんなりのメッセージがあればお聞かせください。

成井 メッセージは考えたことないんですよね。面白いお芝居を作りたい、それをお客さんに観てもらって楽しんでほしいという、その一心でやっているので、お芝居を通して伝えたいメッセージなんて特にないんですよね。でも、作り終わってみると、そういったものがいつの間にかあるんです。そこが不思議なところ。メッセージを伝えるつもりなんか毛頭ないのに。

『トルネイド』でいったら、やはり北条雷太の生き方に関心を持ってほしいし、笑うだけではなくて、応援したり愛したりしてもらえたらいいなと考えます。北条雷太が死ねない男なので、初演の時はすでに死んでしまった高校生を登場させ、今回は死が近くなった新聞記者を出しているのですが、例えば「死ねない男」と「死んでしまう男」の対比がこのお芝居のテーマなんだと思います。それによっていかに死ぬか、いかに生きるかが、きっとテーマになっているんじゃないかな。

それはメッセージというよりも、結局自分が関心があることなんでしょうね。北条雷太で言えば、愚直でいい。誰も褒めないかもしれないし、儲からないかもしれないし、有名にならないかもしれない。でも、愚直に生きることによって得られる幸せってきっとあるし、周囲の人たちがそれによって幸せになることもきっとある。愚直って悪いことじゃないよと、この作品はきっと描いているんじゃないかな。いや、そういうことを伝えたくて書いているわけではないですよ? でも出来上がったものを見ると、愚直の素晴らしさが描かれているように僕は感じる。今の時代はやたらコスパとかタイパとか、効率を重視するじゃないですか。何を言っているんですか。コスパやタイパが悪くたって幸せになれるの。かえってその方が幸せになれるかもしれないのですよ。そういったことを今のお客さんたちに観て欲しいんです。

取材・文・写真撮影:五月女菜穂

公演情報

演劇集団キャラメルボックス 劇団創立40周年記念公演②
『トルネイド 北条雷太の終わらない旅』
 
■脚本・演出:成井豊
■Cast(予定):鍛治本大樹
林貴子 山本沙羅 三浦剛 阿部丈二 岡田さつき 関根翔太 南澤さくら 辻合直澄 齋藤雄大
■Double Cast(予定):〈風〉伊藤ひろみ  滝田愛香 田中のぶと〈風〉石川寛美 早海亜衣理 安田一基 
■日替わりゲスト(東京公演のみ):大内厚雄 石原善暢 左東広之 多田直人
 
<Tour Schedule>
大阪 2025年12月6日(土)~12月7日(日)
新潟 2025年12月13日(土)
東京 2025年12月19日(金)~12月25日(木)
 
【大阪公演】
■日程:2025年12月6日(土)~12月7日(日)
12/6(土)18時
12/7(日)12時
■会場:サンケイホールブリーゼ
 
【新潟公演】
■日程:2025年12月13日(土)13時
■会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
新潟公演の詳細は、こちらをご覧ください。
https://www.ryutopia.or.jp/performance/event/38072/
 
【東京公演】
■日程:2025年12月19日(金)~12月25日(木)
12/19(金)19時
12/20(土)13時 / 17時
12/20(日)13時
12/22(月)休演日
12/23(火)13時
12/24(水)19時
12/25(木)13時
※開場時間は各開演時間の45分前。
※未就学児はご入場いただけません。
■会場:サンシャイン劇場
<e+プレオーダー(抽選先行)>
 2025/9/27(土)12:00~2025/10/9(木)23:59
※一般販売開始:2025/10/18(土)10:00~
 
■公式サイト:
劇団創立40周年記念公演① https://napposunited.com/caramelbox40th-1
劇団創立40周年記念公演② https://napposunited.com/caramelbox40th-2
サポーターズ・ミーティング 2025 https://caramelbox.com/681/
公式 X @caramelbox2019 
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