一夜だけのスペシャル公演! 箏×アンビエント×エレクトロ、注目の箏奏者LEOが送る新たな音楽体験
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純邦楽の若手箏奏者のトップランナーと評価される一方、ロックやジャズ、現代音楽のシーンとも積極的に交流し、箏の新しい可能性を探求してきた LEO。この7月に出た通算7作目のニュー・アルバム『microcosm』ではフランチェスコ・トリスターノやタブラ奏者の U-zhaan、テクノの LAUSBUB など脱ジャンル型の様々な音楽家たちと曲ごとに実験的コラボレイションを展開し、テクノやプログレまで踏み込んだ一昨年『GRID//OFF』から更に攻めの姿勢を強めた。「まったく忖度なしで自分の音楽性を表現し、確立するために模索した」というその新作のお披露目ライヴを前に、意気込みを語ってもらった。
新作によって固めた音楽家としての根幹と自信
LEO『microcosm』ジャケット
――新作に対する周りの反応はどうですか?
2極化している感じですね。クラシック系のリスナーの方にとっては、前作『GRID//OFF』の方がわかりやすかったみたいで。クラシックからのつながりというか、道筋が見えやすかったんだと思います。今作は、インスピレイション元が何なのかわからないと言われたりして。純邦楽関係でもわりとそういう反応が多く、そもそも箏がどこで鳴っているのかわからないとか言われたり(笑)。僕自身、そういうとまどいの反応も理解できます。従来のリスナーを多少置いてけぼりにしちゃう可能性は作っている時からわかっていましたし。その代わり、それまで僕の音楽を聴いてなかった新しい層にもリーチできた実感がありますし、この新作が一番面白いと言ってくれる人もたくさんいる。反応の2極化は最初から想定ずみでした。
――そういった微妙な反応はあっても、今やっていることが自分の進むべき道だと確信しているわけですね?
ええ。自分のオリジナルな音楽的世界観というものがしっかり形成されてきたからこそ、他にどんなことをやっても自分の音楽性はもうブレないだろうな…そんな自信のようなものが芽生えてきているし、自分の中で住み分けができた気もしているんです。
――それは、たとえば純邦楽への向き合い方とか?
そうですね。ここ数年、僕はちょっと純邦楽を避けてたところがあって、向こうも僕を呼びづらかったりしていたと思うんですけど、最近は交流が増えています。僕の自宅に純邦楽の人たちを招いてセッションしたり。そのほかにも今後学生の方との交流の機会なども今考えています。
――純邦楽からの逸脱を通して、逆に、純邦楽に取り組む姿勢がポジティヴになってきたわけですね。
以前は、純邦楽を演奏する場合も敢えて自分らしさみたいなものを模索し、そこを強調していたましたけど、最近はそういった意識で奇をてらうようなことはしなくなり、普通にオーソドックスに演奏していても自分の中で納得いく感じになっているんです。箏のための作品として残っているものは、やはりいい曲ばかりだし、ひとつの完成形になっているとも思うんです。だから、演奏して一番鍛えられるな、勉強になるなと思い、改めて真剣に向き合う意欲が強まっています。
――音楽家としての根幹が固まったことで自信がつき、自然な表現ができるようになったと。
だと思います。以前は過剰なエゴに縛られて、純邦楽を演奏する場合でも人と違ったものでなくちゃいけないという思い込みがありました。でも最近は、自分より上手い人から素直に学び、吸収したいと思うし、自分のやっている新しいことを誰かに認めてもらいたいといった八方美人的な承認欲求もなくなってきました。
11月のライヴでは、自分の進化と全体像を示したい
――タブラ奏者 U-zhaan さんと8月にブルーノートプレイスでやったコラボ・ライヴでも、新作の曲を少しやりましたが、11月のライヴが正式な新作お披露目の場になります。参加メンバーは、アルバムで共演した網守将平さん(Synth)、大井一彌さん(Dr)、町田匡さん(Vn)に、チェロ奏者の中川裕貴さんという陣容ですが、どんな構成になりそうですか?
前半と後半で分かれる2部構成にする予定です。前半はストリングス2人とのトリオ、後半は網守さん、大井さんとのトリオ。先日、網守さんと大井さんにはうちに来てもらい、どういうことができるのかを探りながら即興で音を出してみました。ストリングス・トリオに関しても、やりたいことは自分の中ではだいたいわかっているので、事前に準備してから町田さん、中川さんとリハをやる予定です。
――つまり、新作の曲をそのままやるわけではない?
ええ。新曲もやるし、アルバムの曲もだいぶ形を変えて演奏するつもりです。
――以前のインタヴューで、最近は自宅のPCでの音作りに励んでいると言ってましたが、今回のライヴでもそういった音をたくさん使うんですか?
はい。ストリングス・トリオでの前半は、アンビエント・ミュージックのような、生楽器をベースにサウンドエフェクトを取り入れた音楽になると思いますが、後半は、3人で40~50分の全体の土台となるトラックを事前に作りこんで、生演奏と融合するようなライヴにするつもりです。8月のブルーノートのライヴでも数曲、トラックメイクした音源をベースに演奏したんですけど、同期音源と一緒に演奏する面白さ、新たな可能性も感じつつ、そこに縛られてしまうような危うさもあったので、今回は、自由なライヴ感や揺らぎも生かしたいと思ってます。その点に関しては、網守さん、大井さんは経験豊富なので、制御されたものと自由な寄り道を上手く調和させたものにできるのではないかと期待しています。
網守将平
大井一彌
町田匡
中川裕貴
――即興を取り込んだコンストラクション?
ですね。時間軸としては一定のテンポで進んでいくけど、聞こえ方としては即興的・偶発的にも感じてもらえるのかなと。
――アルバムでは1曲、筑紫箏も使っていたけど、今回のライヴで使う箏は通常の25絃箏だけですか?
8月のブルーノートでは、筑紫箏ではなく中国の古琴も使いました。今回も何か新しい楽器を使いたいとは思ってますが、まだ未定です。古琴はスティール弦の響き方が箏とは全然違うし、音色を気に入っているので、今後レコーディングなどで使う可能性があるかなと。最近、レッスンにも通っているんです。あと、先日、アイヌの民族楽器トンコリも買ったので、いつか使いたいなと思っています。
――そういう楽器への興味は、近年の新しい音作りの一環として湧いてきたものですか?
ええ、いろんな音色を扱うような作曲をするようになったからですね。それまでは、まず箏という楽器があり、音を譜面化して演奏するという形だったけど、最近はPCでデモ音源を作るようになり、いろんな音色の音を扱いだしたので、音の個性というものをより大事にするようになりました。
あと、海外での活動を広げる上で、自分の中での言いわけみたいな感じになっているんですが…海外の人たちにとっては日本の箏だろうが中国の古琴だろうが、どれも見慣れない撥弦楽器という点では変わりないわけで、日本の楽器だけにこだわる必然性はあまりないんじゃないかな、という気持ちもあって。だったら、色んな楽器の可能性を探ってみたいなと。ただ、さっきも言ったように、純邦楽により深く関わっていきたいという気持ちもあるわけで、そのどちらも、他人からの評価をあまり気にしなくなった結果だとは思います。
――今回のライヴ会場「新宿FACE」は360°のステージで演奏するそうですが、その意図は?
ここは本来コンサート会場ではなく、プロレス会場なんです。今回のアルバムやライヴの音楽性を考えると、カジュアルかつ挑戦的なスペースがいいなと思って。立地としても、普段のクラシックや純邦楽とは縁が薄い歌舞伎町ですし、360°ステージだとお客さんとの一体感も生まれたり、新鮮な感覚で楽しめるのではないかなと。何のジャンルかわからない、観る人・聴く人によって感じ方が違う今回のアルバムの空気感にもマッチするんじゃないかなと思いました。
――アヴァン・ポップの開拓者としてだけでなく、純邦楽の音楽家としての LEO さんの全体像と進化をアピールできる場になるといいですね。
それは僕も願っていることでして、ゴリゴリの純邦楽曲をリアレンジしたものもやりたいですね。新作は大きなジャンプだったように受け取られがちですけど、僕の中では前作『GRID//OFF』やそれ以前の作品からしっかり一直線につながっています。このライヴを観れば、そのつながり、ストーリー性を感じてもらえるんじゃないかと思ってるんです。だから、以前から僕の音楽を聴いてくれていた人も、最近僕を知ったリスナーの方も、どちらも楽しめるものにしたいですね。
インタヴュー・文=松山晋也(音楽評論家)
公演情報
会場:新宿FACE
出演:LEO(箏)、網守将平(Synth)、大井一彌(Dr)、町田匡(Vn)、中川裕貴(Vc)
一般:6000円(税込)
VIP席:9000円(税込)
※LEO直筆メッセージ特典付き
※良席(カウンターテーブルあり)
U25:4500円(税込)
フューチャー席:500円(税込)
U25:25歳以下の方限定・一般座席エリアのみ適用(VIP席は適用なし)。事前購入いただき、当日会場にて身分証を確認いたします。
フューチャー席:小学校1年生〜18歳以下の方限定。一般「東フロア」エリア(LEOの背面側)のみ適用となります。事前購入いただき、当日会場にて身分証を確認いたします。
※未就学児童入場不可。全席着席
※車椅子席をご希望のお客様は、必ず公演の2営業日前までに MITT TICKETにてお電話で
※18歳未満の方はご来場にあたり事前に保護者の同意を得てください。
※公演内容は変更になる場合がございます。
ゲストアーティストプロフィール
東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。同大学院音楽研究科修士課程修了。2013年日本音楽コンクール作曲部門1位及び明治安田賞受賞。大貫妙子、原田知世、Daokoなど多くのアーティストの作編曲を担当。映画『8番出口』のサウンドトラックや、NHK Eテレ『ムジカ・ピッコリーノ』の音楽監督を担当。23年には自身のキャリア初となるバンド・QUBITを結成。
電子音楽と肉体性の融合を探求する新世代のドラマー。DATS、yahyelに所属し、アイナ・ジ・エンド、UA、AAAMYYY、odol、木村カエラ、GLIM SPANKY、THE SPELLBOUND、Dos Monos、YOASOBI他多数のアーティストのライブ&レコーディングに参加。アート展示やCM等への楽曲制作も行い、幅広いフィールドで活動している。
ヴァイオリニスト。3歳よりヴァイオリンを始め、東京藝術大学を卒業、日本フィルハーモニー交響楽団に所属。近年ではtofubeats、パソコン音楽クラブ、in the blue shirt、MON/KU、ウ山あまね等多くのトラックメイカー/プロデューサーにストリングス提供を行うなど、クラシック音楽を軸足としポップスからクラブシーンに至るまで様々な音楽シーンを横断しながら活動を展開している。
関西を拠点に活動する音楽家/演奏家。チェロを独学で学び、そこから独自の作曲、演奏活動を行う。
2022年よりgoat、YPYでも活動する音楽家・日野浩志郎とのDUOプロジェクト「KAKUHAN」をスタートさせ、以降、同ユニットではヨーロッパの主要な実験音楽フェスティバルに参加している。2025年には初となるソロアルバムをリリース予定。令和6年度京都市芸術文化特別奨励者。