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【2025年をプレイバック!】2年ぶり華やかに開幕!『スタクラ 2025 in 横浜』~高嶋ちさ子、石井琢磨、菊池亮太ら出演の1日目をレポート

2026.1.10
レポート
クラシック

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2025年10月4日(土)5日(日)横浜みなとみらいホール 大ホールにて『スタクラ 2025 in 横浜 ーSTAND UP! CLASSICー』が開催された。今回の公演では、同ホールの館長も務める構成作家の新井鴎子氏とともに、初年度から続く「クラシックを、もっと身近に、もっと自由に!」のコンセプトを受け継ぐ全5公演を展開。多くの来場者でにぎわった、初日の模様をお届けする。

高嶋ちさ子率いる熱狂のステージ。
ピアニスト石井琢磨のソロも光る、濃密な90分。

左から石井琢磨、高嶋ちさ子

『ちさ子と琢磨のなるほどクラシック入門』
日程:10月4日(土)13:00開演
出演:石井琢磨(ピアノ、MC)、高嶋ちさ子(ヴァイオリン、MC)、12人のヴァイオリニスト

猛暑の影響で配信コンサートとなった前回から2年、『スタクラ』が戻ってきた。2日間で5公演、そのオープニングを飾ったのは、ヴァイオリニストの高嶋ちさ子とピアニストの石井琢磨による『ちさ子と琢磨のなるほどクラシック入門』。開演の頃からポツリポツリと雨が降り出す生憎の天気ではあったが、久々の有観客のフェスティバルとあって、会場のみなとみらいホールは活気にみちている。

満席に近いホールの舞台に、まず登場したのは高嶋ちさ子とピアニストの近藤亜紀。高嶋のソロ演奏かと思いきや、ヨハン・シュトラウス1世の「ラデツキー行進曲」の前奏が流れると、客席両脇の入り口から「12人のヴァイオリニスト」が現れ、一気に会場が沸く。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートではアンコールに演奏されるこの曲を冒頭に演奏し、いきなり聴衆の心を鷲掴みにしてしまうアイディアには「やられた」という感じだ。手拍子が起こり、全員が舞台に上がると、色とりどりのドレスの裾を揺らして踊りながらの演奏で、舞踏会さながらの華やいだ雰囲気になる。

高嶋率いる「12人のヴァイオリニスト」は、今年活動19年目。メンバー紹介のあとは、ベートーヴェンの「交響曲第9番」。第4楽章の美味しいころを凝縮したコンパクトなヴァージョンで、かの有名なメロディーが映画音楽風、日本の合唱曲風など、さまざまなアレンジの中で歌われた。

ここでウィーンを拠点に活躍する人気ピアニスト、石井琢磨が登場し、「入団初日の石井琢磨です」。本人曰く「一番緊張する(高嶋との)トークを乗り越えた」後、ベートーヴェンの「愛」にフォーカスして選曲したという3作品を披露。端正ながらも、ふっと力が抜けるような温かい雰囲気で歌ったピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章、2000人のホールの隅々までよく通るppが印象的だった「エリーゼのために」、美しい音色で幻想的な世界を作ったピアノソナタ第14番「月光」第1楽章。緩徐楽章の曲を続けて聴き、石井の「ベートーヴェンは慈悲深い人だったと思う」という言葉に心から共感した。

石井琢磨

続いて石井は、自身の師であるアンナ・マリコヴァ女史のレッスンの話などを盛り込みながら、モーツァルト作品の楽しみ方をアドヴァイス。「きらきら星変奏曲」、「トルコ行進曲」、「ピアノソナタK.545」をメドレーで行ったり来たり、朗らかで楽しいモーツァルトを披露。

石井のソロコーナーの最後は「英雄ポロネーズ」。師に「技術をひけらかすのではなく、品よく、ノーブルに」と言われたとのことだが、石井の「英雄ポロネーズ」はまさにそれだ。

高嶋ちさ子

お次は赤いドレスに着替えた「12人のヴァイオリニスト」によるヴァイオリン奏法紹介のコーナー。ヴィブラート、ピチカート、トリル、フラジオレット、ポルタメントなどの奏法を取り入れると音はどうなるのかをメンバーが実演すると、「なるほど!」の心の声が会場中から聞こえてくるようだ。石井も加わって「ラ・カンパネラ」を演奏すると、知識が加わったことで、この名曲に超絶技巧が散りばめられていることを実感でき、再び「なるほど!」。

12人のヴァイオリニスト

続く「一芸選手権」のコーナーでは、紅白歌合戦の「けん玉ギネスチャレンジ」にも出場しているメンバーの「左手ピチカート、右手けん玉」に始まり、全身金色の衣装を纏い、足鍵盤とヴァイオリンで「マツケンサンバ」の演奏あり、首から下げたサックスや鍵盤ハーモニカを吹き、歌を歌いながらのヴァイオリン演奏あり。ヴァイオリン弾き語りによる中森明菜の「飾りじゃないのよ涙は」、楽器を逆さまに持ったり、背中に回した手で弓を持ちながら演奏した山本リンダの「狙い撃ち」など、メンバーの渾身の「芸」に圧倒される。

曲芸のようなパフォーマンスで大いに盛り上がったあとは、しっかり演奏で締める。「12人のヴァイオリニスト」の十八番である、ピアソラ「リベルタンゴ」は、躍動感と迫力に溢れる圧巻の演奏。

バラエティに富んだ内容で退屈する暇は一瞬もなく、本当にあっという間に最後の曲になっていた。「カルメン・ファンタジー」では妖艶で情熱的なアンサンブルを披露し、コンサートを華やかに締め括った。

アンコールは全員でロッシーニ「ウィリアム・テル・序曲」。「動画撮影OK」の演奏は、彼女たちのモットーである「観ても、聴いても、美しく、楽しい」を体現するパフォーマンス。譜面を一切見ず、華麗に踊りながら超絶技巧をサラリと弾きこなす、可憐な彼女たちの「お客さんを、とことん楽しませたい」というストイックなまでのプロ根性はあっぱれだ。

楽しく分かりやすい解説で曲への理解を深め、「クラシックを、もっと身近に、もっと自由に!」のコンセプトをまさに具現化したコンサートは、難しいことを考えずに楽しんでいいのだと思わせてくれた。ファンを惹きつけてやまない理由は、きっとこういうところにあるのだろう。