日本古来からの“祭り”が多彩なカルチャーを吸収して新たなエンターテイメントへ昇華!唯一無二の祭典『妖怪盆踊り2025』レポート
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撮影:大橋祐希
空と大地と人がつながる“ウェルビーイングタウン”をコンセプトとした立川の複合商業施設・GREEN SPRINGS。立川ステージガーデンやソラノホテル、話題の飲食店やショールームなどで構成され、訪れたものにワンランク上の時間を提供するこの場所の2階中央広場で毎年秋に開催される『妖怪盆踊り』が、今年は10月11日(土)、12日(日)、13日(月・祝)にかけて催された。『妖怪屋台村』と題した物販ブースやキッチンカーの出店に加え、『妖怪ディスコ』と題したDJブースや『やぐらステージ』におけるパフォーマンスなど、数々の演目で来た者を楽しませる本企画。そんな『妖怪盆踊り2025』の最終日である10月13日(月・祝)の様子をレポートしていこうと思う。
快晴に恵まれたこの日、立川駅から会場へと歩みを進めると、その道中には家族連れやカップルの姿が目に入る。中には和装姿の人や妖怪のようなボディペイントを施した人も多い。それもそのはず、本イベントにはドレスコードが存在し、
ドレスコードと言っても、会場で妖怪盆踊り公式グッズなどを購入すればOKだ
①妖怪になる
②和装(浴衣など)
③妖怪盆踊り公式グッズ着用
のいずれかクリアしないと『やぐらステージ』に入ることができないのだ。このレギュレーションのおかげもあって、会場の外にまで祭りの空気が漏れ出ていた。
立川駅から最も近い入場口から会場入りすると『妖怪ディスコ』から放たれる極上のダンスミュージックが耳に飛び込んでくる。その心地よい響きに身体を揺らしながら会場奥へと歩みを進めると、そこにはツノを生やした“鬼”、額に目を描いた“三つ目”、そして思い思いの妖怪に扮した人々が会場内を闊歩しており、その光景はかの名曲「ゲゲゲの鬼太郎」のフレーズを借りて言えば「墓場で運動会」といった様相。血が滾らずにはいられない。
さらに奥に歩みを進めると、そこにはお祭りさながらの露天が軒を連ねる。そのラインナップはタコスやカオマンガイ、炭焼きといったイベントでは定番の食事はもちろん、靴下やTシャツ、小皿といった商品を展開するブースも。さらには藁人形や妖怪のラテックス人形を扱っている店舗も出店しており、そのレパートリーは『妖怪盆踊り』ならではと言えるだろう。さらには祭囃子響かせ、獅子舞や子供たちによるひょっとこ踊りを披露するブースも見受けられ、会場内には独特の空気が漂う。
立川駅から最も離れた位置まで辿り着くと、そこには巨大な『やぐらステージ』が姿を現す。立川ステージガーデン、PLAY! MUSEUM、そして人気レストランが軒を連ねる商業ビルに三方を囲まれたこのステージには提灯と鬼の面が掲げられ、そのインパクト溢れるビジュアルが目を引く。そしてこのステージを取り囲むように『盆踊りスペース』が設けられており、放たれる音楽を全身で楽しめる。実によく考えられた配置だと膝を打たずにはいられない。
『やぐらステージ』における演目の中で、本イベントならではの出演者を挙げるとすれば、モノガタリ宇宙の会と民謡ユニットこでらんに〜の2組だろう。モノガタリ宇宙の会は江州音頭を披露する音楽グループで、彼らが和太鼓とギターの和洋混合サウンドに乗せて代わる代わる音頭を披露すると、そのリズムに突き動かされた人々が『盆踊りスペース』へと歩みを進めて舞い踊る。時間が経つにつれて集う人々が膨れ上がっていくと、その様子は日本伝統の盆踊り大会のようであり、西洋のレイブパーティのようでもあった。
民謡ユニットこでらんに〜はボーカルのフレディ塚本、津軽三味線弾きの秋山和久、太鼓・囃子のちゃんゆか、篠笛のミカド香奈子からなる音楽ユニット。彼らが各地で収集してきた民謡を披露すると、聴くものはその音色に身体を委ね、心地よく揺らす。その土着的な響きは自身が日本に生まれ育ったことを思い出させる。そんな彼らは最終日のパフォーマンスにおいて、ラストスパートには「東京音頭」「炭坑節」と誰もが知るナンバーを披露し、会場に高い熱気を生み出していた。さらには来場者からのリクエストを受けて「とらじょ様」をアップテンポで響かせるという離れ技に加え、「松坂」を披露して会場に一体感をもたらし、そのステージングを大団円の中締めくくった。
さらに最終日17時以降、本ステージではDJを中心とした4組のアーティストによるパフォーマンスが展開。その一番手を飾ったのは珍盤亭娯楽師匠&火縄銃ボーイズ。「日本全国酒飲み音頭」でDJをスタートさせると、続けて「スーダラ節」「いか踊り」と和物クラシックナンバーで聴く者を惹きつける。そのビートにあわせて提灯とLEDの光が入り混じると、そこには唯一無二の空間が生まれた。
さらにDJの合間には珍盤亭一門による『西遊記Ⅱ』と題した小芝居も繰り広げて聴衆の視点をかっさらうと、その後もダンサブルな和物ナンバーで会場を席巻し続ける。そしてラストには珍盤亭一門がステージ揃っての「マツケンサンバⅡ」でそのパフォーマンスを締めくくり、続いてのDJにバトンを渡した。
ステージには天狗の面を身につけたAtsushi K × Yoshitake Moriが登場。まずはAtsushi KがDJブースからビートを会場に届け、人々の身体を揺らす。するとそのグルーヴにあわせてYoshitake Moriがギターを爪弾かせ、会場の高揚感をさらなるものへと押し上げる。気付けば日は沈み、闇夜のなかで緑と青のライトが明滅。その光をやぐらステージに設置された巨大な鬼の面が反射すると、そこにはこの世のものとは思えない幻想的な光景が生まれていた。
後半に進むにつれAtsushi Kが用いるビートはケミカルさを増し、それに呼応して会場は熱くなる。そのプレイは老若男女全てに届く魅力に満ちていて、クラブミュージックに馴染みがないであろう子供たちすらも踊らせる。この日の経験が子供たちに与えたものは決して小さくないはずだ。改めて本イベントの意義を強く感じる。
さらにここでパソコン音楽クラブがステージに登場。盆踊りスペースに集まった人たちの熱気を反映させたかのように、開始早々からアッパーチューンを会場に叩きつける。自らも身体を揺らしながらパフォーマンスするその姿に会場は沸き、皆が手を天に掲げ、それを左右に振る。
ふたりのプレイは後半に差し掛かるにつれてエモーショナルさを増す。9月いっぱい暑い日が続いた2025年、その暑さがやっと一区切りし、秋を感じさせるに相応しい選曲が会場に心地よい風を巻き起こす。そんな彼らはラストスパートに「Inner Blue(PMC168 Remix) 」「Child Replay feat.柴田聡子」と自身が関わった楽曲をチョイスして盛り上がりを加速させ、大盛況のなかパフォーマンスは締めくくられた。
やぐらステージに立つラストマンとして登場したのは、ご存知、石野卓球。シンプルにして至高、雑味の一切ないビートでプレイをスタートさせると、その響きは聴くものの本能に訴えかけて躍らせる。さらにこのグルーヴをこれでもかと誇示しつつ、エフェクターを用いて展開をつけるそのプレイは、多くの現場を揺らしてきた石野だからこそできる、卓越したものだった。
そんな石野のプレイは時間を経つにつれて一層の力強さを増し、この日のクライマックスを華麗に彩っていく。ステージで満面の笑顔を見せ、全身でパフォーマンスする彼のサービス精神に惹きつけられずにはいられない。そして終盤にはワイングラスに注がれたワインを飲み干す瞬間も。その様子に大きな喝采が湧くと、その後も磐石なプレイを展開し続け、3日間続いた『妖怪盆踊り』を締め括ってみせた。
日本人が旧来から慣れ親しんだ「祭り」というエンターテイメントに新たなコンテンツを融合させることで、これまでにない“楽しさ”を生み出す『妖怪盆踊り』。その魅力を今年も存分に味わうことができた。秋の風物詩となった本イベントは来年どんな光景を見せてくれるのか楽しみだ。その進化を来年もここ『妖怪盆踊り』で確認したい。
取材・文:一野大悟 撮影:大橋祐希
イベント情報
『妖怪盆踊り2025』
会場:GREEN SPRINGS 2F 中央広場
(〒190-0014 東京都立川市緑町3−1)
時間:11:00~21:00
内容:妖怪盆踊り/アーティストライブ/妖怪ディスコ(DJステージ)/妖怪コンテスト/狐の嫁入り/立川百鬼夜行/魅世物小屋ショー/お囃子/たちかわミステリーZONE/妖怪屋台村(お祭り屋台)/キッチンカー
■「やぐらステージ」出演:
・10月11日(土)
民謡クルセイダーズ/U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS/Xiangyu/イマジン盆踊り部/民謡ユニットこでらんに~/モノノケダンスクラブ/モノガタリ宇宙の会/cocoon exs/妖怪囃子連
・10月12日(日)
思い出野郎Aチーム/どんぐりず/CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN/和太鼓師 広純-HIROZUMI/ジンタらムータ/こでらんに~と中西レモン/モノノケダンスクラブ/モノガタリ宇宙の会
・10月13日(月・祝)
石野卓球/在日ファンク/パソコン音楽クラブ/珍盤亭娯楽師匠&火縄銃ボーイズ/民謡ユニットこでらんに~/モノノケダンスクラブ/モノガタリ宇宙の会/Atsushi K × Yoshitake Mori
MC:木村mitsu/藤田みさ ※10月13日(月・祝)のみ
「やぐらステージ」DJ:ヤマモ/菅野カズシゲ/石井正宏/ゴリポポレコード店主/siva-T
主催:妖怪盆踊り実行委員会
運営:株式会社夏祭り
協賛:株式会社立飛ホールディングス、株式会社立飛ストラテジーラボ、株式会社河内屋ジェノス、サントリー株式会社、キリンビール株式会社、アサヒビール株式会社、AB InBev Japan合同会社、宝酒造株式会社、コカコーラボトラーズジャパン株式会社、有限会社たるたるジャパン
後援:立川市、立川商工会議所
公式ホームページ:https://yokaibonodori.tokyo/
公式Instagram:https://www.instagram.com/yokaibonodori/
公式X:https://x.com/yokaibonodori
問い合わせ:妖怪盆踊り実行委員会(運営事務局:株式会社夏祭り)
Mail:tachikawa@yokaibonodori.tokyo / Tel:042-519-3230(株式会社夏祭り)