宮沢和史が語る『ブラジル音楽』の魅力とはーーBillboard Liveで『ブラジル音楽週間!』4日間オーガナイズ「日本とブラジルの交流も含め、みんなで作り上げる1週間に」
-
ポスト -
シェア - 送る
2024年にデビュー35周年を迎えた宮沢和史の音楽を語る時、欠かすことができないブラジル音楽は、もはや彼のバックボーンの1つと言ってもいい。そのブラジル音楽の魅力を今一度、多くの人に知ってほしい。そんな思いとともに数年来、温めていた企画が日本とブラジルの交流130周年を祝うイベントとして、2025年11月25日(火)、26日(水)、27日(木)、12月2日(火)の4日間、東京と横浜のBillboard Liveで開催されるライブイベント『Semana da Música Brasileira! ~ブラジル音楽週間!〜 』で実現する。
11月25日(火)・26日(水)は、宮沢も含む10人のメンバーからなる多国籍バンド、ガンガ・ズンバによる久しぶりの単独公演「Newest GANGA ZUMBA 2025 ~最新のガンガ ズンバ コンサート2025~」。11月27日(木)はブラジル音楽の“今”を伝えるデュオ、ヴァネッサ・モレノ&サロマゥン・ソアレスの初来日公演となる「ヴァネッサ・モレノ & サロマゥン・ソアレス × マルセロ木村 ~Brasil meets Brasil in Japan!~」、そして12月2日(火)は宮沢が日本におけるブラジル音楽のトッププレイヤーたちとブラジル音楽の名曲の数々を演奏する「Canta Brasil! ~宮沢和史ブラジルを歌う!~」が開催される。それぞれに全然違う魅力を持つライブをオーガーナイザーとして企画した宮沢がそれぞれの見どころはもちろん、スカも取り入れたビートバンド、THE BOOMのフロントマンとしてデビューした彼が沖縄の音楽を経て、ブラジル音楽を自らの血肉としていった経緯も改めて語ってくれた。
日本とブラジルの国交樹立130周年を機に
ブラジル音楽の魅力を伝えたい想いから企画
――『Semana da Música Brasileira! ~ブラジル音楽週間!〜 』を宮沢さんがオーガナイズされることになったいきさつから、まず教えていただけますか?
僕がブラジル音楽に本格的に取り組み出したの1994年ぐらいなんですけど、その頃からブラジルの音楽家たちがたくさん日本に来るようになったんです。サッシペレレとか、プラッサ・オンゼとか、サバスTOKYOとか、のちにBillboard Liveとかそういった料理と音楽がたのしめるお店が受け皿になっていたからだと思います。そこでブラジルの音楽家たちが歌いに来たり、フェスに出演するようになり、同時に東京のCDショップなどでも手に入るようになっていました。主に東京のショップではブラジルのCDの品揃えが豊富で、日本にいてもブラジル音楽に接する機会がすごく多かったんです。それに伴って、ジャズファンやロックフェスに行くような若い人たちもブラジルのミュージシャンに興味を持って、コンサートに来てくれるような状況が十数年ぐらい続いたと思います。
――確かに、あの頃、ボサノバをはじめ、ブラジルの音楽を耳にする機会が増えましたね。
ええ。でも、その後、ブラジルの経済が悪化したり、日本も円安になったりということがあって、なかなか交流ができなくなってしまった。ブラジルの音楽も最先端のものを買うことが段々難しくなってきて、CDショップに行っても往年の名作が置いてあるぐらいになってしまったんです。
――ブラジルの音楽に出会う機会が減ってしまった、と。
そうです。ブラジルファンとして何とかしたいと思いました。そこで、今年が日本とブラジルの国交が正式に結ばれてから130周年という節目にあたるので、改めてブラジルの音楽に接する機会を作りたい。ブラジル音楽ファンはもちろん、南米音楽ファン、ロックファン、ジャズファンの人たちにも見に来てもらって、ブラジル音楽を楽しんでもらいたいと考えました。『Semana da Música Brasileira! ~ブラジル音楽週間!〜 』と銘打った1週間は、どの日に来もてもらってもブラジルの音楽を十分に楽しんでもらえると思いますが、せっかくBillboard Liveさんで開催するからには、食事や飲み物でもブラジルを感じてもらいたいと思って、今、計画しているところです。それも含め、ブラジルに親しんでもらえる1週間にしようと思っています。単発のライブでは、その日は都合が悪いと足を運んでいただけないかもしれませんが、1週間かけて開催できれば、都合のいい日に来ていただけるのではないかなと。Billboard Liveさんとは別で、11月29日の1日だけ大阪の東京建物Brillia HALL箕面大ホールで、ガンガ ズンバとヴァネサ・モレノ&サロマゥン・ソアレスのライブをやるんですけど、Billboard Liveさんのほうでそのライブも含め、打ち出してもらえることになったので、『Semana da Música Brasileira! ~ブラジル音楽週間!〜 』ということにしました。
――以前から温めていた企画が130周年という節目に実現することになったわけですね。
そうですね。それから、ガンガ・ズンバという僕のやっている多国籍バンドも10人いるメンバーの2人がブラジルに住んでいるので、2016年以来、メンバー全員が揃っていないんです。だったら、節目を迎えるこの機会に久しぶりに全員で集まりたいねと。それが軸に話が進んでいったのですが、「せっかくなのでブラジルから他のアーティストも呼びたいね」「日本にいるブラジル人の音楽家にも参加してもらいたいな」といったふうにどんどん膨らんでいって(笑)。ブラジルの大使館や領事館にも協力していただき、日本とブラジルの交流も含め、みんなでこの1週間を作り上げようということになりました。
ブラジル音楽の魅力は、命を全うする前向きな「人間力」
音楽的ルーツからTHE BOOM「風になりたい」誕生秘話まで
――改めてお聞きしますが、宮沢さんにとってブラジル音楽の魅力というのは、どんなことなのでしょうか?
元々はボサノバから始まって、ハーモニーの美しさだったりメロディの素晴らしさ、ポルトガル語の響きや歌い手の発声のすごさなどに惹かれ、ブラジルに行ったんです。
――1994年にリオデジャネイロを訪れたそうですね。
実際に行ってみると、ボサノバを聴きながら思い描いていたエレガントさとはちょっと違っていて、もっとタフというかデンジャラスと言うか、とても混沌としていたんです。貧しい暮らしをされている人もいっぱいて、路上で暮らしているいわゆるストリートチルドレンもたくさんいたり、拳銃を持っているような子供もいる。僕も危険な目に遭いましたが、何度か訪れるうちにサンバのような音楽が生まれた理由がわかって、その魅力に惹かれました。犯罪がはびこっていたり、貧しい人たちがたくさんいるような場所は一般的にネガティブな雰囲気を醸し出すものですけど、ブラジルの場合は、「せっかく生まれてきたんだから、この命をまっとうしよう」というエネルギーを感じたんです。それは犯罪に手を染めて刹那的に流されて生きていこうということではなくて、「せっかく生まれてきたんだから、命を燃やして、楽しい時に踊ろう」とか「歌いたくなったらみんなで歌おう」とか、そういう前向きさや生きることへの意欲のような、簡単にいえば「人間力」がとても強くて。だからこそ生まれる音楽もやはり力強く感じるのだと思いました。
――ある意味、ブラジル音楽に対する概念が変わった。
それともう1つ。僕らがやっているロックミュージックって、やっぱりある種、紙芝居的といますか、立ち位置が決まっていて、照明が当たってキラキラしたものをお客さんに見てもらう音楽だと思っています。だけど、サンバのカーニバルは、もう誰が主役だとか関係なく、歌う人も踊る人もみんながその曼荼羅(マンダラ)の1つ1つになって、大きな渦を起こしているんです。そのエネルギーにとても惹かれました。94年に最初にリオデジャネイロに行ったとき、曲がばーっとできたんですけど、誰もが主役なんだというサンバの方法論の上に、日本人特有の精神性とか喜怒哀楽とかを乗せてみたいと思ってできたのが「風になりたい」でした。
――もちろんブラジル音楽そのものの魅力に惹かれて、リオデジャネイロに行かれたと。その一方では、さっきロックは紙芝居的とおっしゃったように欧米のロックだけでは物足りないという気持ちがあって、何かそれとは違うものをブラジル音楽に感じて、リオデジャネイロを訪れたというところもあったのではないでしょうか?
そうですね。ロックはスタイルだと考えている人には、僕がこれから言うことはちょっと理解できないかもしれないですけど……ロックというのは既存のものを100%信じるのではなくて、自分で触れて感じて、正しいと思うことをしっかりと音楽に乗せて伝えるアティチュードだと思うんですよ。だけど、ロックの音楽スタイルって長いことずっと変わらないよなという思いが僕の中にはあって。それよりもっと挑戦して、解体して、新しいものを飲み込んでいく態度そのものがロックなんじゃないかと。サウンドがどうとか、ファッションがどうとかは僕にとってあまり関係なくて、誰もやってないことをやるとか、誰もやったことのないミクスチャーをしてみるとか、そういう姿勢が僕はロックだと思っているので、ブラジルの音楽をTHE BOOMというロックのフォーマットにどう組み込んでいくか、ということは考えていました。「風になりたい」のレコーディングは、実は僕以外の3人は演奏していなくて歌のみで参加しています。
――そうだったんですか。
日本にいる大学生のサンバグループから50人ぐらい来てもらって、僕らのサポートのパーカッショニスト5人と、僕のギターと、あとはカバキーニョという楽器を演奏するブラジル音楽に強い人に来ていただいたんですね。それで、さっき話した「誰が主役ということじゃなくて、みんなで作り上げるんだ」「前も後ろも表も裏もないよ」と伝えて。それが僕らのロックスタイルだというのが1つのメッセージでしたね。当時はドラムを叩かなくても、エレキギターを弾かなくても、これはロックなんだという思いでやっていました。
――THE BOOMはデビューシングルの「君はTVっ子」でバンジョーも使っていましたし、初期の頃からスカも取り入れていましたよね。スカはもしかするとイギリスの2トーンスカの影響もあったのかもしれませんが、最初から欧米のロックだけではないバックグラウンドを持っていたように思います。
その通りだと思います。もちろん、ハードロックも含め、ど真ん中のロックも大好きで、かっこいいなと思いながら聴いていました。一方で、そのバックボーンというのは自分の人生とはあまりにも違うなとも感じていました。ハードロック・バンドに憧れて、なりきることはできるかもしれないけど、一生かけて自分の人生とかけ離れているものをやってもあまり意味がないのではないかと。自分は何なのかを考えた時、足元がわからなかったわけです。日本には伝統音楽もありますが、僕の故郷は戦争に、空襲で焼けてしまっているので、なかなか直接触れることも難しかった。しかも高度経済成長を経て、バブル景気でしたから、むしろ伝統的なものはより西洋化していく流れで遠ざけたところもありますよね。そんな時に僕がシンパシーを感じたと言いますか、かっこいいと思ったのが、ポリスやスペシャルズっていうバンドだったんです。元はイギリスのロックだけど、非常にミクスチャーで、当時、サードワールドと言っていたジャマイカの音楽をイギリス人なりに取り入れて、新しいものを生み出しているというのがとてもかっこよかった。それと同時に、何か違うものをミックスするという意味で、自分に近いとも感じました。ただ、自分は山梨に生まれた人間なので、出汁はカツオからとるよと(笑)。出汁はカツオでとるけど、食材はいろいろなものを使っていいんじゃないか。ちょっと乱暴ですけど、そういう考え方がアマチュアの頃から自分にはありましたね。
――その延長上に沖縄の音楽やブラジルの音楽があったということですね。
沖縄の扉を開いたことが、それをさらに加速させ、僕の音楽人生をガラッと変えましたね。沖縄という日本に一番近い外国といいますか、一番遠い日本といいますか……これだけ近いところに、こんなに異質でおもしろい文化があるのかと。あれだけ戦争や帝国主義に飲み込まれる歴史の中で、こんなに歌や踊り、芝居という伝統芸能が途絶えることなく、しかも曲の数はむしろ増えていることを知り、「何なんだろう、この島は!?」と興味が僕をひきずりこんでいったのです。その延長線上でインドネシアや、その他の東南アジアの音楽も聴いてみようとなり、南米まで辿りつきました。
「ブラジルの音楽をライブで聴いていただきたい」
そして「若い人たちにもブラジル音楽のすごさを知ってほしい」
――なるほど。そうして辿りついたブラジルの音楽を、改めて多くの人に楽しんでもらおうということで今回のイベントが開催されることになったのですね。さきほどもおっしゃっていました、11月25日(火)・26日(水)に開催される単独公演でガンガ・ズンバが久しぶりにリユニオンします。これを軸に、ほか出演者の顔ぶれ含めライブの内容はどんなふうに決めていったのでしょうか?
ただガンガ・ズンバのライブをやるとか、ブラジルから呼んできた人たちのライブを観ていただくといった一方的なステージではなくて、双方向といいますか、交流がまずないとダメだなと思いました。ガンガ・ズンバはメンバーが日本人に加え、ブラジル人、キューバ人、アルゼンチン人もいるので、今回のイベントに向いているバンドだと思います。やはりそこにプラスして、今現在、第一線で活躍しているミュージシャンをお呼びしたいと考えていた時、サンパウロのヴァネッサ・モレノの音楽に出会って、とても感動したんです。サロマゥン・ソアレスのピアノもそうなんですけど、その2人の音楽をデュオで聴けるというのはすごいことなので、彼女たちをお呼びしたいなと思いました。その時に日本にいるブラジル人のアーティストに加わってもらったら、今回の130周年の意義ある柱になるんじゃないかと考えて、調べてみたところ、数年前から日本を拠点にしている日系ブラジル人のマルセロ木村さんというギタリストに出会いました。うまいし、ものすごくかっこいいし、しかもピアノとのデュオという形で活動しているので、ヴァネッサ・モレノ&サロマゥン・ソアレスと同じ形で演奏できる。ツーマンにしたらものすごくかっこいいんじゃないかって思いました。これがまさに今回の柱です。
Marcelo Kimura(Vo,Gt)、海堀 弘太(Pf)
――そして、もう1つ。12月2日(火)の「Canta Brasil! ~宮沢和史ブラジルを歌う!~」も見逃せないと思います。
アントニオ・カルロス・ジョビンやアリ・バホーゾが残した名曲を歌うシャバチーバというバンドを、もうずっとやっていなかったんですけど、この機会にちょっとメンバーチェンジしてやってみようかなと。この3つの全然違うタイプのコンサートを1週間、『Semana da Música Brasileira! ~ブラジル音楽週間!〜 』と銘打ってやるわけですけど、東京と横浜だけで、大阪がないのはよくないなと思いまして、大阪はいっそのことヴァネッサ・モレノ&サロマゥン・ソアレスとガンガ・ズンバの対バンにして、大きなところでやろうとことになりました。
宮沢 和史 & JABATIDA2025(宮沢 和史(Vo)/笹子 重治(Gt)/コモブチ キイチロウ(Ba)/服部 正美(Dr,Perc)/今福"HOOK"健司(Perc)/鈴木 厚志(Pf)/城戸 夕果(Fl))
――11月27日(木)の公演で、ヴァネッサ・モレノとサロマゥン・ソアレスは初来日ということで話題になっていますね。宮沢さんとしては、やはり今現在のブラジル音楽の最先端のアーティストである彼らをこの機会に、ぜひ日本の人たちにも聴いてもらいたい、知ってもらいたいという思いがあるわけですよね?
そうですね。さっき言ったように90年代の半ばから2000年ぐらいまで、ブラジルには個性的なアーティストが揃っていたんですよ。ブラジルのヒットチャートはかなり個性的でクリエイティブなアーティストが上位を占めていて、日本に来れば、歓迎されて、集客もあったんです。それが時を経て、さまざまな理由でファンが少しずつ離れていっている今、かつて活躍していたアーティストを呼んで、当時のファンにもう一度集まってほしいということも考えてはみたのですが、あまり前向きじゃないなと思って。やはりZ世代も含め、若い人たちに聴いてもらいたい。最近は、アサイーボウルをキッカケにしてブラジルに興味がある若い子がたくさんいるんですよ。この間もアサイーフェスがあって、若い子たちがたくさん集まっていたみたいですが、往年のブラジルファンはもちろん、若い人たちにブラジル音楽のすごさを知ってもらうには、やっぱり現在進行形のバリバリの人がいいなと。そう思って声を掛けたところ、ぜひやりましょうと。
――2016年以来、メンバー全員が揃うガンガ・ズンバのライブの見どころについてもお聞かせください。
コロナ禍が大きかったと思いますが、10人揃うのは本当に久しぶりだから、メンバーみんながワクワクしているんです。やっと会えるよって。その思いが演奏に出ることは間違いないから、今まで以上に、すごい迫力のライブになると思います。代表曲を詰め込んだセットリストになると思うんですけど、ブラジルだとかロックだとか、ジャンルを超えた誰も聴いたことのないサウンドを楽しんでいただけると思いますね。メンバーにはパーカッションのマルコス・スザーノとキーボードのフェルナンド・モウラというブラジル人が2人いて、三線とコーラスでクラウディア大城というアルゼンチン人、そしてトランペットはルイス・バジェというキューバ人。あとは僕も含めて、日本人なんですけどLÄ-PPISCHのベースのtatsuがいたり、ギタリストとしても活躍しているソロシンガーの高野寛がいたり、ラテンとブラジル畑でずっとやってきたパーカッションの今福“HOOK”健司がいたり。ドラムの宮川剛はロックで、土屋玲子はクラシックからポップス、日本人のみんなも畑が違うから、10人揃って、たとえばスカやろうよとか、レゲエやってみようよとなってもスカやレゲエとは違う何かへんちくりんなものになる。みんな世代も違うし、解釈も違うから、自分たちでもどうなるかわからない。でも、そこがガンガ・ズンバの魅力で、人間臭いと思うし、さっきブラジルの魅力を混沌と言ったけど、ガンガ・ズンバはそれを音楽で具現化できるバンドだと思いますね。
――ガンガ・ズンバは来年、結成20周年だそうですね。
そうなんです。なので来年にもう1回、日本でやりたいなとは思っているんですよ。それぞれに活動している忙しいメンバーなので、継続した活動は難しいのですが、節目節目で集まるバンドだと思うから。今回、久々に集まったことをキッカケに、また来年もやろうという話は、みんなの中からも話が出るんじゃないかな。なので20周年、何かやろうとは思っています。
――ガンガ・ズンバは混沌とした魅力があるとおっしゃっていましたが、「Canta Brasil! ~宮沢和史ブラジルを歌う!~」は逆に成熟した魅力が見どころになってくるのかなと想像しています。
そうですね。メンバーが日本を代表する、百戦錬磨のブラジル音楽界の名プレイヤーたちなんですよ。そのメンバーたちとアントニオ・カルロス・ジョビン、アリ・バホーゾという名曲の数々を作った作曲家の曲を演奏します。ブラジルには名曲がこれでもかってぐらいあって、そこから入ったファンの方々もたくさんいらっしゃるので、そういう方々にもブラジルの音楽をライブで聴いていただきたいということと、若い子たちにもこんなに名曲があるんだよということを伝えたいと思って、「Canta Brasil! ~宮沢和史ブラジルを歌う!~」というすごいタイトルをつけました。ガンガ・ズンバのライブとは全然違うんですけど、このライブは僕自身も本当に楽しみにしています。
――名曲の数々に加え、宮沢さんご自身の曲も披露されるそうですね。
ええ。日本を代表するブラジル音楽界の名プレイヤーたちのアレンジで演奏します。
――そこも見どころだと思います。『Semana da Música Brasileira! ~ブラジル音楽週間!〜 』がブラジル音楽の入口になるという人もいらっしゃると思うのですが、このイベントをキッカケにブラジル音楽の魅力を知った人はここからどんなふうに掘り下げていったらいいでしょうか?
たとえば、僕が「Canta Brasil! ~宮沢和史ブラジルを歌う!~」で歌う曲なんかもネットで検索していただけば、いろいろなアーティストが歌っている映像が出てきますので、好みのアーティストと必ず出会えると思います。たとえば、日本でいえば小田和正さん、桑田佳祐さんクラスともいえるシンガー・ソングライターのカエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジルの若い頃に歌っている姿など、今はネットで何でも見られる時代ですから。どんどん掘り下げてもらえれば、宝の箱に辿りつけることは間違いないと思います。僕の時代はブラジルに行って、現地でCDやDVDを買って、ライブを見て深く知る必要がありましたが、今はキッカケと興味があれば、家にいながら旅ができますからね。
――便利な時代になりました。
今回のイベントがうまくいけば、ブラジル人のアーティストも日本に行こうという流れがまたできるかもしれないし、大使館、領事館のみなさんもまたこういう文化交流をやりたいと言ってくれるかもしれないし。そんな思いもあります。
Caetano Veloso - Sozinho (Ao Vivo No Rio De Janeiro / 1998)
――ところで、せっかくBillboard Liveでやるんだから、料理や飲み物でもブラジルを感じてもらいたいとおっしゃっていましたが、Billboard Liveの魅力についてはどんなふうに感じていますか?
僕の場合は、企画を立ち上げて、毎回、まったく違うコンセプトで開催させていただいています。たとえば、2019年4月に僕の企画でペルー、ブラジル、アルゼンチンという日本人が移民として渡った国の出身のシンガーを集めたコンサート(「NIPPONIA~ 南米の歌・南米で愛されるニッポンの歌」)も開催しました。アルベルト城間君とか、マルシアさんとかに出てもらったんですけど、そのコンサートもすごくうまくいきまして。Billboard Liveさんもそういった僕の活動に共感してくれたので、今回の話を「1週間っていう形でやりたいんだけど、どうかな?」と提案したところ、すごく乗ってくださって。Billboard Liveさんでやると、どんな企画でもその空気になるんですよ。そこは大きい。会場に合わせた企画ではなくて、こちらの企画にすっとハマるんです。ゆっくり音楽を楽しみたいという年配のお客さんもストレスなく楽しめるのもいいですよね。
――今回は料理と飲み物でもブラジルを感じてほしいとおっしゃっていましたが。
食と音楽って遠いようで、とても近いと思うんですよね。その土地を知る最も近道な方法が音楽と食だと思うんですけど、それが満たされるところもBillboard Liveさんの魅力ですよね。
――出演者の方がBillboard Liveの料理を召し上がるのかわからないですけど、宮沢さんは召し上がったことはありますか?
もちろん、ありますよ。客として食べたこともあるし、バックステージでも演者に料理を出してくれるので、それを楽しみにしている人も多いと思いますよ。食事をせずに楽屋入りする人も多いんじゃないかな(笑)。
――ありがとうございます。興味深いお話をいろいろ聞かせていただきました。最後に、『Semana da Música Brasileira! ~ブラジル音楽週間!〜 』が終わった後の宮沢さんの活動についても聞かせていただけますか?
去年、デビューして35周年だったので、各地で周年記念的なコンサートをやらせていただきました。今年は戦後80周年ということで、沖縄戦とは何だったのかという講演を沖縄はもちろん、沖縄以外でもやらせていただいたり。沖縄系のイベントに参加させていただいたりという機会がたくさんありました。『Semana da Música Brasileira! ~ブラジル音楽週間!〜 』はとても大きな楽しみでもあるし、歓びでもありますが、この企画を終えた後も沖縄だからとかブラジルだからとか関係なく、やりたいことをやっていこうと考えています。去年から、ここで歌ってほしい、この会場に来てほしいという希望を募って、僕とピアニストだけ、あるいは僕ひとりで歌いにいくというライブを『あなたの町で歌います♪プロジェクト』というタイトルでやっているんですね。これがとてもやり甲斐があって楽しくて。大都市ではなくて、少し離れた街にもいいコンサートホールがあるのに、あまり稼働していなかったりするところも多いので。ピアニストと僕だけ、あるいは僕ひとりだけだから、僕のパーソナルな部分も話しやすかったりするので、バンドのライブではなかなか話せないようなことも話すこともあるんです。なので、今の自分の年齢的にもやっていてとても楽しいんですよ。これは来年も、とりあえず夏までは続けていこうと思っています。
取材・文=山口智男
イベント情報
organized by Kazufumi Miyazawa
Newest GANGA ZUMBA 2025 ~最新のガンガ ズンバ コンサート2025~
【ビルボードライブ東京】(1日2回公演)
日程:2025年11月25日(火)
時間1stステージ 開場16:30 開演17:30 / 2ndステージ 開場19:30 開演20:30
日程:2025年11月26日(水)
時間:1stステージ 開場16:30 開演17:30 / 2ndステージ 開場19:30 開演20:30
【東京】
DXシートDUO ¥24,000-(ペア販売)/DUOシート ¥22,900-(ペア販売)/DXシート カウンター ¥12,000-
S指定席 ¥10,900-/R指定席 ¥9,800-
カジュアル ¥9,300-(1ドリンク付)
DXシート カウンター ¥10,900-/
S指定席 ¥10,900-/R指定席 ¥9,800-
カジュアル センターシート ¥10,400-(1ドリンク付)/カジュアル サイドシート ¥9,300-(1ドリンク付)
宮沢 和史(Vo)/高野 寛(Gt)/tatsu(Ba)/宮川 剛(Dr)/マルコス・スザーノ(Perc)/今福"HOOK"健司 (Perc)/フェルナンド・モウラ(Key)/ルイス・バジェ(Tp)/土屋玲子(Vn,二胡)/クラウディア大城(Vo)
organized by Kazufumi Miyazawa
ヴァネッサ・モレノ & サロマゥン・ソアレス × マルセロ木村
~Brasil meets Brasil in Japan!~
日程:2025年11月27日(木)
時間:1stステージ 開場16:30 開演17:30 / 2ndステージ 開場19:30 開演20:30
DXシート カウンター ¥9,000-
S指定席 ¥9,000-/R指定席 ¥7,900-
カジュアル センターシート ¥8,500-(1ドリンク付)/カジュアル サイドシート ¥7,400-(1ドリンク付)
Vanessa Moreno(Vo,Gt)/Salomão Soares(Pf)/Marcelo Kimura(Vo,Gt)/海堀 弘太(Pf)/
宮沢 和史 (Organizer)
organized by Kazufumi Miyazawa
Canta Brasil! ~宮沢和史ブラジルを歌う!~
日程:2025年12月2日(火)
時間:1stステージ 開場16:30 開演17:30 / 2ndステージ 開場19:30 開演20:30
DXシートDUO ¥22,200-(ペア販売)/DUOシート ¥21,100-(ペア販売)/DXシート カウンター ¥11,100-
S指定席 ¥10,000-/R指定席 ¥8,900-
カジュアル ¥8,400-(1ドリンク付)
<宮沢 和史 & JABATIDA2025>
宮沢 和史(Vo)/笹子 重治(Gt)/コモブチ キイチロウ(Ba)/服部 正美(Dr,Perc)/今福"HOOK"健司(Perc)/鈴木 厚志(Pf)/城戸 夕果(Fl)