神戸セーラーボーイズと宮脇優がBoys☆Act ~maple『あの春を迎えに』で提示する友情と絆、現実を受け入れる強さ

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レポート
舞台

Boys☆Act ~maple『あの春を迎えに』  撮影=福家信哉

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Boys☆Act ~maple『あの春を迎えに』 2025.10.17(FRI)〜10.31(FRI) 神戸三宮シアター・エートー

10月17日(金)より神戸三宮シアター・エートーで上演中の、神戸セーラーボーイズ(以下、神戸セラボ)の「Boys☆Act」シリーズ第三弾、『神戸セーラーボーイズ Boys☆Act ~maple「あの春を迎えに」』。

神戸セラボ7名とゲスト2名による2チーム制での上演となっている本公演。17日に初日を迎えた髙山晴澄、山本歩夢、細見奏仁、石原月斗、三原大樹(ゲスト)からなる「teamフラット」に続き、21日(火)には、津山晄士朗、大熊蒼空、崎元リスト、石原、宮脇優(ゲスト)からなる「teamシャープ」の公演が幕を開けた。今回は「teamシャープ」のゲネプロをレポートしよう。

あらすじはこうだ。廃校が決まった小学校。この学校の最後の卒業生だった佐伯航(津山晄士朗)、枝野栄作(大熊蒼空)、今泉時生(崎元リスト)、大谷瞬(石原月斗)、宇都宮麟太郎(宮脇優)は、新型コロナウイルスの影響で卒業式ができないままだった。あれから5年半が経ち、校舎の取り壊しが決定する。航は「置いてきてしまった、あの春を迎えに行きたい」と思い、卒業生で幼馴染の仲間たちを小学校に招集する。そこで待ち受けていたのはーー?

佐伯航(津山晄士朗)、枝野栄作(大熊蒼空)

大谷瞬(石原月斗)、宇都宮麟太郎(宮脇優)、今泉時生(崎元リスト)

本公演は、過去と現在を行き来するタイムリープ青春会話劇だ。タイムカプセルに入っていた「当時の自分が書いた手紙」をアイテムとして、卒業式が行われる前の小学生時代と、2025年秋の現代が錯綜する。作中では、コロナという未曾有の出来事に否が応でも巻き込まれ、人生を翻弄された彼らの想いと人間模様がありありと描かれている。観客は自らの体験と重ねつつ、神戸セラボと宮脇が魅せる友情、そして現実を受け入れる強さに胸を打たれること間違いなしだ。

佐伯航(津山晄士朗)

5年半という長い時間が経過した教室に現れた航。嬉しそうに笑顔を浮かべ、埃を払って椅子に座る。冒頭の数分間、ウキウキした様子で思い出の詰まった教室に来れた喜びを全身で表現する津山の表現力に、早くも吸い込まれた。表情はもちろん、間や、身体の使い方が非常に細やかで、彼の演技力が右肩上がりで成長していることを実感させられた。津山は今年1〜2月に上演されたミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学vs比嘉で新垣浩一役を勝ち取った実力者だ。本公演でも、思わずもらい泣きするほどの情感豊かな演技で魅了した。

今泉時生(崎元リスト)、佐伯航(津山晄士朗)

今泉時生(崎元リスト)

時々おちゃらけるが、明るくて心優しき時生を演じた崎元は、キャッチコピーの「ハッピー花咲く!」の素に近いはっちゃけぶりを発揮。今年9月にはBloody Love 歌劇『ババンババンバンバンパイア』で準主役の立野李仁役に抜擢され、役者としての自信をつけたのか、その佇まいは堂々たるもの。さらに高校生になった時生は、純粋な思いやりからみんなを動かし、航の心を支えて解きほぐす包容力も垣間見せる。神戸セラボのムードメーカーとしてメンバーを信じ、見守ってきたからこその崎元の優しさがそのまま表れていた。

大谷瞬(石原月斗)

シングルキャストとして「teamフラット」と「teamシャープ」の両方に出演する石原は、瞬という同じ役柄ながら、一緒に演じるメンバーによって表情も演技も違っていた。特に宮脇演じる麟太郎との波長がピッタリで、宮脇が動かす空気や熱に引っ張られて起こる生き生きとした化学反応は、目を見張るものがあった。両チーム、どちらの「瞬」も瞬であり、板の上で自在に形を変える「演劇」というものの面白さを知ることができた石原の演技だった。

枝野栄作(大熊蒼空)

小学生と高校生の栄作を見事に演じ分けたのは、神戸セラボの「スマイルお兄ちゃん」こと大熊。コロナ前、幼馴染の間で安心して笑顔を見せる栄作と、コロナ後、進学した中学校にうまく馴染めず自信をなくしてしまった栄作の胸中を、メリハリをきかせて演じきった。Boys☆Act ~camellia『パニックカフェ』(2025年1月)の神戸セラボとの共演を経て加入したからこその自然なチームワークは安心感があり、彼の今後の活躍も予感させられた。

宇都宮麟太郎(宮脇優)

ゲストで大阪出身の宮脇は、身に纏う朗らかな雰囲気も相まって、小学生の麟太郎を自然体で演じた。時生や瞬と無邪気にふざけつつも、瞬と対峙する場面では迫真の演技で感情を露わに。コロナで自身の身に起きた出来事を受け入れ、強く前に進もうとする姿も健気だった。

大谷瞬(石原月斗)、佐伯航(津山晄士朗)、宇都宮麟太郎(宮脇優)

teamシャープを観ていて頭に浮かんできたのは「調和」という言葉。芝居パートで歌われた「旅立ちの日に」は、津山扮する航の涙や、航に寄り添う友人のあたたかさが、実際の神戸セラボの関係性を想起させ、胸がじんとした。さらに「大切なもの」では<今 胸の中にある あたたかいこの気持ち>という歌詞が物語とリンクし、より涙を誘う。

後半では、teamフラット同様に学生服のメンバーが合唱曲を披露。「見上げてごらん夜の星を」に続けて神戸セラボの代表曲「ボクラカラー」を、抜群の安定感で歌い上げた。

本公演はリピート観劇がおすすめ。回替わりの来場特典があるほか、会場で配られるパンフレットにはメンバー手書きのコラムがあり、各回ランダムで配布される。それぞれの個性が爆発したコラムをコレクションしてみてはいかがだろう。また、各チームによって本当に大きく空気が変わるため、ダブルキャストならではの雰囲気の違いを感じてもらいたい。両チームの演技はきっと、公演を重ねるごとにお互いから刺激を受けてブラッシュアップされていくだろう。それぞれが魅せる、航、栄作、時生、瞬、麟太郎の「春」を目撃してほしいと思う。

取材・文=久保田瑛理 撮影=福家信哉

公演情報

神戸セーラーボーイズ Boys☆Act ~maple『あの春を迎えに』
【日程・会場】2025年10月17日(金)~10月31日(金)神戸三宮シアター・エートー

【脚本】タカイアキフミ(TAAC)
【演出】佐野大樹(WBB)

【音楽】大石憲一郎
【美術】乘峯雅寛
【音響】中島 聡
【照明】山口 星
【衣裳】川島加菜果
【ヘアメイク】小屋敷裕子
【歌唱指導】今泉りえ
【演出助手】矢本翼子 千代麻央
【舞台監督】松澤紀昭
【技術監督】寅川英司

【宣伝美術】西本恵理子
【宣伝写真】宮坂浩見

【キャスト】
《teamフラット》
佐伯 航:髙山晴澄
枝野栄作:山本歩夢
今泉時生:細見奏仁
大谷 瞬:石原月斗
宇都宮麟太郎:三原大樹(ゲスト)

《teamシャープ》
佐伯 航:津山晄士朗
枝野栄作:大熊蒼空
今泉時生:崎元リスト
大谷 瞬:石原月斗
宇都宮麟太郎:宮脇 優(ゲスト)

※髙山晴澄の<たか>ははしごだかが正式表記
※石原月斗はシングルキャストとして両チームの公演に出演いたします。

価格】5,800円(全席指定/税込)
 
【公演に関するお問い合わせ】ネルケプランニング https://www.nelke.co.jp/contact/
【公演公式サイト】https://kobesailorboys.com/stage/ba-maple2-anoharu
【神戸セーラーボーイズ公式サイト】https://kobesailorboys.com/
【神戸セーラーボーイズ SNS】https://lit.link/kobesailorboys
【公演ハッシュタグ】#神戸セラボ #あのはる
(C)神戸セーラーボーイズ製作委員会