加藤和樹、"新しい自分"との出会いに期待!~ミュージカル『サムシング・ロッテン!』インタビュー
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ルネサンス時代のイギリス、劇団を経営するニックとナイジェルのボトム兄弟は、時代の寵児シェイクスピアに対抗心を燃やしている。一方で『ロミオとジュリエット』に続くヒット作を書かねばと悩むシェイクスピアは、以前からその才能に目をつけていたナイジェルからなんとか次作のアイディアを得ようと画策し……。日本では福田雄一の演出で2018年に初演された、大ヒットブロードウェイミュージカルが7年ぶりに再演される。スーパースター・シェイクスピア役は、今回新たに加藤和樹が参加。シリアスな作品が続いた加藤が、この底抜けに楽しくバカバカしく最高に面白い作品にどう挑むのか、話を聞いた。
――ずっと福田雄一さんとミュージカルでご一緒したいと思っていた、と情報解禁時のコメントでおっしゃっていました。福田さんの作品のどんなところに惹かれていらっしゃるのでしょう。
『モンティ・パイソンのSPAMALOT』(2015、21年)を観た時に、劇場で腹を抱えるくらい大笑いしたんです。それ以降、大好きで。福田さんの作品は映像でも舞台でも、独特な笑いがあって、それが僕にはツボ。映像では『グリーン&ブラックス』(WOWOW)でご一緒させていただきましたが、いつか福田さんの舞台作品に出たいなという思いがあったので、今回は光栄ですし、夢が叶いました。今回のシェイクスピア役に関しては、福田さんから直接ご連絡をいただいたんです。
――『サムシング・ロッテン!』という作品に関しては、現時点ではどんな印象をお持ちですか。
初演は拝見できず、映像で拝見しました。……家で映像を観ながら、自分で気持ち悪いなと思うくらい一人で笑っていました(笑)。テンポがよく、間の使い方が秀逸で、お客さんの笑いのポイントをちゃんと押さえている。しかも“笑い”という面だけでなく、ストーリーも面白いし、タップナンバーなどミュージカル作品としての見どころもしっかりあって、劇場中を巻き込んで盛り上がれる。本当にハッピーミュージカルだなと感じています。また、様々なミュージカル作品の有名なナンバーの一節やセリフ、シェイクスピア作品のセリフなどが作品の中に取り入れられて、それも笑いに変えている。ミュージカル好き、演劇好きのための作品になっているところも魅力です。
僕はどうしても暗い作品が多かったので(笑)、自分がこの世界に入れるというのは、まだ想像がつかないのですが、新しい自分に出会えるんじゃないかなと期待しています。
――たしかに加藤さんはあまりコメディの印象はありませんが……コメディはお好きですか?
大好きです。自分がやるイメージがまだついていませんけど(笑)。でもシリアスなお芝居では得られないものがあると思っています。コメディーの感覚というかセンスというか、脚本にある純粋なお話の面白さと福田さんの演出で、お客さんの心をいかにほぐせるかというのは、非常に難しいことだと思います。だから稽古は大変だろうなと今から思っています。
――演じるのが、シェイクスピア役。演劇史に燦然と輝く偉大な劇作家ですが、本作のシェイクスピアは文豪のイメージとはちょっと違っていますね。
僕もシェイクスピア作品は何作か出演させていただいていますが、僕らが抱くシェイクスピアの印象とはまったくかけ離れていますね(笑)。癖が強くナルシスト、演じていて面白いとおもう部分がたくさんある。彼の登場曲の「Will Power」という楽曲などは、特に「俺を見ろ!」というような歌。いかに突き抜けて演じられるかがポイントになりそうです。初演では西川貴教さんが演じていらして、西川さんだからこそ出せる面白さがありました。今回は自分……加藤和樹がシェイクスピアと融合することで生まれる面白さをどう開拓していくかがチャレンジだなと思います。
――そのシェイクスピア役にどう挑んでいきたいですか。
僕はどちらかというと事前に作り込むより、稽古場で役を作っていくタイプなので、現段階ではっきりとは言えないのですが、自分だからできるシェイクスピアのカッコよさを全部まとめて表現できたらと思っています。僕とシェイクスピアはあまり重なる部分はありませんが、僕も歌詞を書いたりもしますので、彼の苦悩みたいなところは、わからなくもない。……まああまり悩むシーンは出てきませんが(笑)。また、この作中でのシェイクスピアは、周りから時代の寵児だ天才だともてはやされてはいるけれど、『ロミオとジュリエット』以降のヒット作が書けないと悩んでいます。そういう葛藤は劇作家さんや作家さんにとっては身近なものだろうし、一度売れてしまったらどうしても“その次”を期待されてしまうプレッシャーもあると思う。本当は自信がないのに虚勢を張っている、見えないところの弱さみたいなものがふと垣間見える瞬間があってもいいのかな。自分もいつも自信がない人間ですので、そういうところで気持ちがリンクするところを見つけて演じていきたいですし、彼の本質の部分にも向き合えたらと考えています。
――この作品のシェイクスピアは一般的なイメージとは違いますが、シェイクスピアというものはやっぱり俳優さんにとって憧れる存在なのでしょうか。
やっぱり役者としてはシェイクスピア作品に挑戦したいという気持ちはもちろんあります。世界観がしっかりしているから、好き嫌いはあると思うのですが、役者にとってはあのセリフをどうアプローチしていくのかという楽しみ方は絶対ある。だから今回、ひとかけらでも(笑)関わることができて嬉しいですし、シェイクスピアが好きな方が観ても絶対に楽しめると思います。
――シェイクスピアに対抗心を燃やしている劇作家のニックは初演から続いて中川晃教さんが演じます。中川さんとは今年も上演された『フランケンシュタイン』をはじめ、共演も多いですが、本作について何かお話はされていますか?
まだ具体的な話はまったくしていませんが、僕としては心強い反面、怖さもあるんです。というのは、アッキーさん(中川)って面白いことが好きなんです(笑)。突拍子もないことを急に振ってきたりするので、ドキドキする。また、アッキーさんは笑いに対してもすごく真面目で、真っすぐだからこそ面白いところがある。『サムシング・ロッテン!』でも何の疑いもなく突き進んでいくニックの姿が面白いし、おそらく福田さんもそこを活かす演出をされていたと思うのですが、自分がそのアッキーさんを受けた時にどんな感情になるのか、果たして笑わずにいられるかが心配ではあります(笑)。
――最後に改めて、『サムシング・ロッテン!』に挑むにあたり加藤さんが楽しみにしていることを教えてください。
個人的には、どういう加藤和樹が見られるか、僕自身とても楽しみにしています。なかなかミュージカルでこんなにはっちゃけることもないので、その姿を年末年始に観に来ていただければ。僕もスーパースターになった気持ちで、シェイクスピアというスーパースターを演じたいと思います!
取材・文:平野祥恵
公演情報
出演:中川晃教、加藤和樹、石川禅、大東立樹(CLASS SEVEN)、矢吹奈子、瀬奈じゅん
岡田誠、高橋卓士、横山敬
植村理乃、岡本華奈、岡本拓也、神谷玲花、小山侑紀、坂元宏旬、髙橋莉瑚、高山裕生、茶谷健太、横山達夫、吉井乃歌、米澤賢人
小林良輔(スウィング)、七理ひなの(スウィング)
作詞・作曲:ウェイン・カークパトリック、ケイリー・カークパトリック
脚本:ケイリー・カークパトリック、ジョン・オファレル
演出:福田雄一
翻訳・訳詞:福田響志
【東京公演】
日程:2025年12月19日(金)~2026年1月2日(金)
会場:東京国際フォーラム ホールC
【大阪公演】
日程:2026年1月8日(木)~12日(月)
会場:オリックス劇場
公式HP http://www.s-rotten2526.jp
公式X @s_rotten2526