梅棒、最新作『FINAL JACKET』稽古場レポート~11人で挑む、“新しい梅棒”のはじまり~櫻井竜彦&SuGuRuミニインタビューも!

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人気楽曲にあわせたダンスとノンバーバルな芝居で魅せるダンスエンターテインメント集団「梅棒」の最新作、梅棒 20th Breakdown『FINAL JACKET』が2025年11月に東京・愛知にて、12月に大阪にて上演される。記念すべき20回目の公演は、近年の梅棒作品としては珍しい「男臭さを感じる作品」だと、本作で主演を務める櫻井竜彦は語る。11月8日(土)の開幕に向けて、熱気あふれる稽古場を取材した。記事後半では、稽古場で実施した本作の主演・櫻井と、新加入メンバー・SuGuRuのミニインタビューも掲載しているので、あわせて楽しんでもらいたい。

※本レポートはネタバレを含みます。

稽古場レポート

タイトルにある“ファイナルジャケット”は本作のキーアイテム。人々の心を束ねることができるといわれる“伝説のジャケット”には強大な力が秘められており、いつしか5つのパーツに分かれて世界各地に散り散りに。そのジャケットのパーツを求め、いくつもの勢力がぶつかっていくことになるが……というのが本作のあらすじ。冒険ものの少年漫画好きにはワクワクせずにはいられないストーリーだろう。

今回、日替わりゲストは登場するものの、キャストは梅棒メンバーのみ。先日、新加入が発表されたSuGuRuを含めた全11名、全員が揃う作品となる。まさに20作目を迎える“梅棒の現在地”を知るにふさわしい作品といえるだろう。

稽古場では、衣裳つき通し稽古を前に殺陣返しが行われていた。手数が多く、その上、セットの移動も多い。お互いにカウントを取り合いながら、殺陣の動線やセットを動かすタイミングを細かく調整していく。キャストが梅棒のみということもあり、作・総合演出を手掛ける伊藤今人からの指示や、キャスト同士の声掛けは驚くほどシンプルだ。「ここ、こっちね」といった一言で、詰まっていた動きが一気に流れる。全員が同じ完成形を共有しているからこその呼吸の合い方だ。改めて、梅棒というチームの“同じ方向を向いて面白いものを作る力強さ”を感じた。

熱くはあるが、笑いも絶えないのが梅棒の稽古場。何度か調整した殺陣がバチッとハマると、どこからともなく「ナイッスー!」と高校球児のような掛け声が上がり、この後控える通し稽古へのテンションが上がっていく。

そして、この日が初めてだという衣裳を着ての稽古へ。今回はアンサンブルのいない11人での作品とあって、それぞれが複数の役を演じることになる。当然、衣裳替えのタイミングも多い。衣裳や小道具の位置を一つひとつ確認するキャストたちの様子からは、ピリッとした緊張感が漂っていた。

誰がどんな役を、またどんな衣裳を着るのか。ここからは極力ネタバレを避けながら、見どころをレポートしていこう。

まず衣裳だが、メインビジュアルの囚人服のほか、軍服やスチームパンク風の衣裳、ロックな衣裳も登場する。とくに自己紹介を兼ねたオープニングで全員が着用する軍服衣裳は、ひらみたっぷりのマントや裾がたまらない。キャラクター性を物語るソロや、関係性の示唆に富んだユニゾン、そして揃いの軍服での群舞のかっこよさは、すでにクライマックスかと思うほど。カチッとした軍服と、それとは対照的な重力無視のパフォーマンスのアンバランスさが心地よく、力技で心を掻っ攫っていく。

物語のメインとなるのが、櫻井が演じるアウトローな男。一匹狼といった風貌で、孤独を背負った佇まいがなんとも魅力的。櫻井自身の持つ朗らかな人柄は、お人好しな一面として随所に見え隠れするが、基本的には寡黙といった印象。一方で、男らしいダイナミックなパフォーマンスで、内側に持て余す熱や心の影を表現し、「この男はどんな過去を持つのか?」と観る者の興味を掻き立てた。

かわいらしい存在ながら、それだけではない。そんな意外性あるキャラクターを演じるのは鶴野輝一と野田裕貴だ。周りからの影響を受ける者と、周りへ影響を与える者、という2人の対比も印象的で、どちらも思わず「頑張れ!」と声をかけたくなるキャラクターを好演する。

男たちが織りなす複雑な相関図も見逃せない。櫻井と遠山晶司、遠山と多和田任益、遠山と塩野拓矢、伊藤今人と梅澤裕介……といった形で、それぞれが演じるキャラクターが複雑に絡み合う。憎悪や敵対、心酔、友情といった様々な矢印で彩られる相関図を紐解きながら楽しむのも一興だろう。

遠山は多くの感情を抱える男を哀愁たっぷりに演じ、少年漫画の“もう1人の主人公”といったポジションを熱演。多和田はすっかり板についたヴィランな役どころを新たなキャラクター性で生き生きと演じる。ニヤリと腹黒い表情で物語をかき乱す姿は痛快だ。孤軍奮闘といった立ち位置の塩野は物語にドラマを与え、梅澤はストーリーテラー的なポジションとして観客を物語の世界へ誘う。稽古では代役が演じていた伊藤のキャラクターも、アクションでは大活躍。パワフルな殺陣がついていただけに、伊藤が暴れる本番がより楽しみとなった。

ほかにも、ジャケットのパーツを探して各組織はいろいろな国に出向く。コミカルだったり、色気たっぷりだったり。異国情緒あふれるナンバーや登場キャラクターたちも見どころ。

中でも新加入のSuGuRuは、持ち前の身体能力でキャラクターの二面性をコミカルに表現し、梅棒に新風を吹き込んでいた。アクションやお笑いの要素を取り入れたという役にぜひ注目を。楢木和也は振り切った存在感と妖艶なオーラで、スタッフ陣だけでなく袖から見守るキャスト陣の笑いもかっさらっていた。柔和な笑みをたたえる姿が印象的な役を好演したのは天野一輝。囚人とは無縁そうに見える彼のギャップも見どころだ。

梅棒のメンバーが入れ代わり立ち代わりモブキャラクターとなって、各国の色を瞬時に生み出す点も面白い。袖の様子を見ていても、全員がほとんど足を止めることなく動き続けていた。そのノンストップな展開が、クライマックスへ向けて勢いを加速させ、従来の梅棒作品以上のスピード感を感じさせる。

本作は“ファイティングエンターテイメント”と銘打っているように、バトルに次ぐバトルが待ち受けるが、梅棒節がたっぷり効いたキュートでお茶目なナンバーも健在。とびきり可愛いアイドルソングのイントロが耳に入った瞬間、「来た!」と思わず頬が緩んでしまう場面も。これまでの20作品で培われた梅棒らしさを存分に楽しめる作品といえるだろう。

通し稽古後の梅棒メンバーの表情からは、作品への手応えと、「まだまだここから」という気迫とに満ちていた。怒涛のアクションで揺さぶられる脳と、男たちの熱くも切ない人間関係にぎゅっとなる感情とで、大忙しとなった約2時間は、きっとここから本番に向けてさらに進化するのだろう。スカッとすること間違いなしの梅棒流スペクタクル冒険譚の行く末を、ぜひ劇場で味わってほしい。

櫻井竜彦&SuGuRuミニインタビュー

――SuGuRuさんの加入によって、櫻井さんはどんな化学反応を感じていますか?

SuGuRu:おっ、言っちゃってくださいよ!

櫻井:視線の圧がすごい(笑)。SuGuRuには今回、いろんな楽曲の振付に入ってもらっていますが、今までの梅棒になかったものが確実に生まれていて、お客様も観たらすぐにわかると思います。SuGuRuの持ち味である、“音を感じられる”表現が増えたなと感じていますね。

――SuGuRuさんは振付のうえで意識されたことはありますか?

SuGuRu:それが全くなくて。梅棒 7th ATTACK『ピカイチ!』を観て衝撃を受けてから、梅棒の“音の視覚化”に追いつけるように、あえて梅棒の作品を観ないで自分の中のインスピレーションだけでスキルのレベル上げをしてきました。そうして自分の中で積み上げたものを、客演で出演させてもらった梅棒 19th GIFT『クリス、いってきマス!!!』で実感できたんですよね。だから、今回の振付では、変に意識して気張っちゃうとうまくいかない気がしたので、今まで通り、自分の見せたい音をメンバーに伝えてみようと思って、ありのままでやってみました。やっぱりメンバーの一員になったからには、新しい梅棒の色を出したい。そこが化学反応に繋がればいいなと。

櫻井:踊る方としては、めっちゃ難しいです(笑)。

SuGuRu:あはは(笑)。

――最後に「ここを見逃すな!」というポイントを教えてください。

櫻井:『進撃の巨人』まではいかないけけど(笑)、そういう規模感の少年漫画のような世界観を味わってほしいです。プラス、入り組んだ人間関係の中で生まれる熱さにもぜひ注目してください!

SuGuRu:梅棒らしい面白さあり、泥臭さあり。十人十色のキャラクターたちも魅力的です。どのキャラもあちこちで活躍していて、僕も演じる度に新たな発見があるなと感じています。「今日はこの人に注目しよう」と何回も楽しめる作品だと思うので、ぜひいっぱい観にきてほしいと思います!

取材・文=双海しお 撮影=角田大樹

公演情報

梅棒 20th Breakdown『FINAL JACKET』
 
【日程・会場】
<東京>2025年11月8日(土)〜11月24日(月・祝)サンシャイン劇場/24ステージ
<愛知>2025年11月29日(土)〜11月30日(日)ウインクあいち/3ステージ
<大阪>2025年12月5日(金)〜12月7日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール/5ステージ
 
【作・総合演出】伊藤今人[梅棒] 
【振付・監修】梅棒
【出演】
伊藤今人、梅澤裕介、鶴野輝一、遠山晶司、塩野拓矢、櫻井竜彦、楢木和也、天野一輝、野田裕貴、多和田任益、SuGuRu [以上、梅棒]
 
【日替わりゲスト】(出演日順)
千葉涼平[w-inds.]…11/11(火)・11/12(水)
福田悠太[ふぉ〜ゆ〜]…11/13(木)
滝澤諒…11/14(金)
高橋健介…11/15(土)
松崎祐介[ふぉ〜ゆ〜]…11/16(日)
辰巳雄大[ふぉ〜ゆ〜]…11/18(火)
鳥越裕貴…11/19(水)
越岡裕貴[ふぉ〜ゆ〜]…11/20(木)
小越勇輝…11/21(金)・11/22(土)

料金(全席指定/税込)】 ※未就学児入場不可
S席:9,000円 U-25サービスエリア:3,500円(25歳以下・身分証明書要提示・当日指定席)
 
梅棒 20th Breakdown『FINAL JACKET』公演特設サイト:http://umebou20th.dynamize.net/
梅棒オフィシャルサイト:https://www.umebou.com/ 
梅棒 OFFICIAL FANCLUB『ひのまる弁当』:https://www.umebou.net/ 

※現段階における予定のため、変更となる可能性がございます
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