【インタビュー】氷川きよし、3年半ぶりの座長公演に向けた新たなる決意とは
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氷川きよし (撮影:田中亜紀)
『氷川きよし特別公演』が、2026年1月、東京・明治座からスタートする。3月に愛知・御園座、4月に大阪・新歌舞伎座と福岡・博多座を巡る。
2000年に「箱根八里の半次郎」で鮮烈なデビューを果たし、多くの人々を歌で元気付けてきた氷川きよし。2022年6月~9月に、東京・大阪・福岡・愛知の4都市4劇場での座長公演という、これまでにない規模での公演を開催し成功裡に導いたが、同年末をもって歌手活動の一旦休止を発表。1年余の休養期間を経た2024年8月に歌手活動を再スタートさせ、コンサートツアーを含む旺盛な活動を繰り広げてきた。
そして3年半ぶりの座長公演となる今回の『氷川きよし特別公演』では、第一部で、自身の代表曲「白雲の城」から着想を得た同名の時代劇を上演。そして第二部のコンサートでは、氷川きよしの原点である演歌を中心に、新曲やロック&ポップスまで、劇場版特別構成で見どころたっぷりのコンサートを予定している。
そんな氷川から意気込みなどを聞いた。
■平和への祈りを込めて、日本人らしい時代劇を
ーーまず、3年半ぶりの座長公演の意気込みをお聞かせください。
前回はドレスを着たり、おばあさんの格好をしたり、今まで20年やってきた時代劇とは違うものを演らせていただきました。休養期間、アメリカに2か月滞在して、期間としては短いのですが、「日本ってすごくいいところなんだ」と感じまして。日本の奥ゆかしさとか、そういった美点を表現した舞台になればと考えています。自分が年齢を重ねたことで、時代劇の良さもわかってきましたから。
ーーお芝居とコンサートの二本立て興行のスタイルも、今はかなり減ってきました。
最初の座長公演は、新宿コマ劇場での公演でした。今はもう劇場自体がなくなってしまいましたね。こうした座長公演も減って寂しい思いをしていましたけれど、明治座さんはショーとの二本立てといった、娯楽やエンターテインメントの歴史を大切にしてくださっていて、ありがたいです。
今回は2026年幕開けの舞台。どの世代の方々も観て楽しめる、舞台を作っていきたい。台本が上がったら、もう立ち稽古の時はせりふを全部入れておくくらいの心持ちで、座長として引っ張っていきたいです。
ーー代表曲「白雲の城」がモチーフとのことですが、氷川さんにとって、どのような曲だったのでしょうか。
復帰……この言い方は何だか大げさですが、昨年お休みが明けた年末に、紅白歌合戦出場のお話をいただきました。その時、一番最初に歌いたいと思ったのが、この「白雲の城」でした。「限界突破×サバイバー」でも「箱根八里の半次郎」でもなくて。とても寂しい歌なので、歌うのは苦しいんです。その時代のその人になりきって歌うという、スイッチを入れなきゃいけない。その、プロ魂をかき立てられる曲でもあります。
時代や場所が変わっても、全世界、誰しも、家族や愛する人を亡くしたら寂しいし、苦しくなる。生きていけなくなるぐらい、辛いと感じることもある。その中でも毎日生き抜いていく。今、世界でいろいろなことが起きていますが、平和を祈る人々の心は変わらない。そんな思いが歌の中で表現されている曲なんです。
(撮影:田中亜紀)
■休養期間を糧に
――休養の経験は、今回の舞台に活かされそうですか?
アメリカ生活は、正直とても大変でした。サンタモニカに滞在して、フロリダやラスベガスなどにも行って。ただ円安でしょう、お出汁ひとつ買うのにも日本とは大違い! 日本食を食べたいと思ったら、とんでもない値段がする。行ってすぐに、長くはいられないかもと不安になって、泣いてしまったんですよ。ひとりで海を眺めながら、自分で選んだことだけど、「どうしたらいいんだろう」って。ホームシックになってしまっていたのでしょうね。西海岸の海を見ながら、この向こうには太平洋があって、その奥には日本海もあって、日本へつながっているんだと。今この海に入ったら日本に帰れるかな、などと考えていました。その時に詞を書いた曲「暴れ海峡」は、今度のNEWアルバム『KIINA.』に収録されています。
ーー苦しみを、自分の中で曲にして昇華された。
自分の苦しい気持ちも言葉にして書いたら、心が軽くなったんです。アメリカにいる間、70曲ぐらい書きました。滞在中いろいろな方に会って、自分が演歌というフィールドでずっと頑張ってきたことを改めて評価してもらって。どんな姿形であろうと心は変わらない、人間である。そうしたことを伝えていける生涯にしたい、という気持ちになりました。今回の舞台は、新年と同時に新たなスタートを切らせてもらう、そんな気分です。
――お芝居について、魅力、楽しさ、難しさなどをお聞かせください。
演じることは好きです。でも好青年役は難しいですね。どちらかというと、前回の舞台で演じたおばあさん役のほうがしっくり来ます(笑)。赤木春恵さんが『渡る世間は鬼ばかり』で演じていたお姑さんのような強めなおばあさん役を演じたいとはずっと思っているんですけれど。憑依型なのね、ってよく言われまして、なりきるとアドリブでもセリフがどんどん出てきます。それはとても楽しいです。ともあれ、第一部のお芝居では主役として、作品の世界をしっかりと作りあげたいです。
――第二部では歌手としてのコンサート。セットリストなどはもう決めているんですか。
まだ決まってはいませんが、美空ひばりさんの曲を歌いたいです。私がまだ子どもの頃、ひばりさんが入院のために福岡にいらしたことがあり、それがテレビでニュースになっていました。それを見て、ひばりさんってすごい人なんだなと思ったことを憶えています。昭和、平成、そして令和の時代にずっと歌い継がれる歌姫。ひばりさんが亡くなった年齢に自分が近づいて、改めて凄さを感じます。憧れますし、敬意をもって歌わせていただきます。
――今回共演される方々で、面識のある方はいらっしゃいますか?
島崎和歌子さんは、役のイメージを聞いた時に私からキャスティングをお願いしました。昔からの知り合いで、本当にサバサバしたよい方。オファーを快諾してくださって嬉しかったです。ダブルキャストである中島唱子さんも長いお友達です。普段ニューヨークにお暮らしなのに、「あなたの公演なら私にとっても出る意味があるわよ」って言ってくださって。すぐお返事をいただけて嬉しかったですね。他の方は顔合わせがまだですが、お目にかかれることを楽しみにしています。
――東京、愛知、大阪、福岡と巡る公演ですが、お客さんの反応は土地によって異なりますか?
違いますね。食文化も違いますし(笑)。明治座さんは30代から舞台でお世話になっていますけれども、コロナ禍も経験して、お客さんと一緒に、寂しい思いも嬉しい思いもたくさん経験しました。名古屋は初舞台の地。徐々に打ち解けてくださる感じです。大阪は反応がすごい! ただ、厳しさも感じますね。やっぱり目が肥えてらっしゃるから。訓練、修行のような感覚で挑んでいます。そういう意味では、福岡・博多も芸の街なので、目の肥えた方々に審査されるような感じです。自分のふるさとだからこその感覚かもしれません。
(撮影:田中亜紀)
■新たな年を、よりパワーアップした自分で迎えたい
――2026年はどんな年にしたいとお考えですか?
「ホップ、ステップ、ジャンプ」の「ステップ」の年にしたいです。2025年は、「ホップ」の年という感覚でした。人前に立っている仕事ですから、日頃から私の動きや発言などを皆さんご覧になっていると思います。まだまだ未完成で、行き届かないところもたくさんあるでしょう。ですが、人間として誠実に、きちんとしていきたいなと考えられるようになりました。大人になったというか。私、八街(やちまた)という土地が大好きで、しょっちゅう行くんです。今までがむしゃらに走ってきましたが、そういうひとりでの息抜きもできるようになってきました。こうして、やっと「ホップ」になったので、続く「ステップ」、「ジャンプ」に向けて、この明治座で2026年の弾みをつけるという気持ちです。
――最後に、公演を楽しみにしている方々へメッセージをお願いします。
コロナ禍もあって、色々大変で、みんな頑張っている。でも一人じゃないんだよ、ここが居場所だよ、これからも頑張っていこうね、と皆さんの背中を押せるようなエンターテインメントを作りたいと思っています。時代劇という、現実とは違う世界、そして劇場ならではのコンサートが気分転換になっていただければ嬉しいですね。劇場でお待ちしています。
(撮影:田中亜紀)
取材・文=宇野なおみ
公演情報
氷川きよし
丸山智己 島崎和歌子(Wキャスト) 中島唱子(Wキャスト) 山崎樹範 上野なつひ 石倉三郎
◎第一部 白雲の城
【あらすじ】
戦国時代、白雲の城と呼ばれた上宮城。城主の弟、荒木吉継(氷川きよし)は、武勇を重んじる兄と違って、戦嫌いでのんびりした性格だった。吉継は兄に進言する。民の暮らしを第一に考えるべきだと。そして自ら城下へ行って民の声を聞き、水害被害を防ぐことの重要性を訴える。吉継の進言を受け入れた兄は、治水事業を成功させ、城下には平穏な日々が訪れた。ところが、平和な上宮城に暗雲が立ちこめる。圧倒的な兵力を持つ隣国の武将が戦の準備を始めたのだ…。
【みどころ】
氷川きよしの原点である演歌から、最新のロック&ポップスまで劇場版特別演出でお届けします。
【東京公演】
■会場:明治座
■公演日程:2026年1月31日(土)~2月18日(水)
■一般販売:2025年11月24日(月・祝)10:00~
■問合せ:明治座
■公式サイト:https://www.meijiza.co.jp/info/2026/2026_01_02/
■会場:御園座
■公演日程:2026年3月6日(金)~18日(水)
■一般販売:2026年1月20日(火)午前10時〜
■問合せ:御園座営業部 052-222-8222(10:00~17:00)
■公式サイト:https://www.misonoza.co.jp/lineup/month260306.html
■会場:2026年4月10日(金)~19日(日)
■公演日程:2026年4月10日(金)~19日(日)
■一般販売:2026年2月5日(木)午前10時〜
■問合せ:新歌舞伎座テレホン予約センター 06-7730-2222(10:00~16:00)
■公式サイト:https://www.misonoza.co.jp/lineup/month260306.html
■会場:博多座
■公演日程:2026年4月25日(土)~30日(木)
■一般販売:2026年2月21日(土)10:00~
■問合せ:博多座電話予約センター 092-263-5555(10:00~17:00)
■公式サイト:https://www.hakataza.co.jp/lineup/124