東京バレエ団『くるみ割り人形』マーシャ役・金子仁美&くるみ割り王子役・池本祥真に聞く~「信頼しあってこそのパートナー」
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東京バレエ団 金子仁美、池本祥真 (撮影:福岡諒祠)
東京バレエ団『くるみ割り人形』が、2025年12月に東京(6回)、堺、西宮、松江(各1回)、計9回・5組のペアで上演される。2019年に同バレエ団・芸術監督の斎藤友佳理による改訂・演出版にリニューアルされて以来、「大きくなるクリスマスツリー」や各国のキャラクターのチャーミングな踊りが人気の作品だ。2020年から主役のマーシャとくるみ割り王子のペアを踊り続けている金子仁美と池本祥真は、12月13日昼公演と12月28日の松江公演に出演する。「くるみ」ペアを組んで6年目の二人に、2025年の上演の意気込みを聞いた。
――「くるみ割り人形」では鉄板ペアのお二人ですが、最初に踊られたときのエピソードを教えてください。
金子仁美 2020年の公演は、私が直前に怪我をしてしまって、池本さんの王子にフルサポートしていただいたんです。
池本祥真 いや、そんなことない(笑)。
金子 本当に支えてくださって。私自身も初めての役だったので、絶対に降りたくなくて、意地でも舞台をこなしたかったんです。
池本 「金子さんの脚の調子が悪いので、なるべく支えてあげて」ということを、(斎藤)友佳理さんから言われたことを覚えています。金子さん本人が一番不安だったと思うので、しっかり支えたいなという思いはありました。
――初回から信頼関係が築かれていたのですね。『くるみ割り人形』は少女クララと大人のマーシャが子役とバレリーナによって踊り分けられる版もありますが、斎藤友佳理さん版ではマーシャが最初から最後まで主役ですね。
金子 1幕で子供らしさを前面に出すのはすごく大変です。7歳という設定なので……。活発で無邪気なところもありながら、まわりの子たちと少し違う雰囲気があって夢見る少女って感じです。とても純粋な子ども、私はそういう雰囲気で演じています。
――東京バレエ団の「くるみ割り人形」の人形はかなり顔が可愛いですよね。
金子 今ではとても愛着がわいています。
――王子はほぼ同じ顔の仮面をつけて登場するわけですが、仮面を外した瞬間に拍手が起こる時、何か特別な気分になりますか?
池本 いえ、そこでいつも拍手をいただいていますから(笑)。あの人形の仮面をつけていると、ほぼ前が見えないんです。照明も結構暗いから、限界まで工夫してようやく少し見えて……。
――ネズミとの闘いもあまり見えていないのですね? 見事な剣さばきなのですが……。
池本 でも、やらなきゃいけないですからね。
――池本さんは去年の12月にクラシックの『くるみ割り人形』を踊られた翌月の今年の1月には『ベジャールのくるみ割り人形』でベジャール役のビムも演じられました。
池本 あの役も7歳という設定で…(笑)。クラシックの『くるみ割り人形』とは全然違いますね。どこから入ればいいのか分からなかったけれど、映像を見て自分なりの役作りをしました。
――やはりプロだから、手取り足取りではなく、映像を見て自分で準備をするのですね。
池本 次のリハーサルまで覚えて来い、という感じで。
――ベジャールの『M』では重要な「シ」も演じられています。ベジャールさんは2007年に亡くなっているので池本さんのビムや「シ」を見ていないのが残念です。東京バレエ団には2018年に入られ、既に重要なダンサーとして活躍されていますが、居心地はいかがですか?
池本 居心地というか…(笑)。とにかくみんな真剣ですよね。クラス・レッスンもしっかりやるし。みんな下の名前で呼んでくれるのも新鮮でした。
――なるほど。『くるみ割り人形』に話を戻しますと、長らく東京バレエ団が上演してきたワイノーネン版から、斎藤友佳理版に変わったとき、芸術監督の友佳理さんとしては大きな思い入れがあったのではないでしょうか。
金子 くるみのマーシャは友佳理さんご自身も踊られてきた役なので、リハーサルではとても細かいところまで指導が入りますね。
池本 友佳理さんが旦那さんのニコライ・フョードロフさん(ボリショイ・バレエ元プリンシパル)と踊られた時の思い出のパズルみたいな世界だと思いました。あのアダージョの包み込まれる感じは、お二人の愛の記憶なんじゃないかと。
――愛のアダージョなのですね! 『ラ・シルフィード』が終わって『ドン・キホーテ』が始まって、『くるみ割り人形』へと続くわけですが、毎年「くるみ」のシーズンになるとカンパニーはどういう雰囲気になりますか?
池本 慌ただしい感じになります(笑)。主な役ダンサーがたくさんいるのでリハーサルの時間が限られているし、短い準備期間で真剣に作り上げていく感じです。
――今回も5ペア。マーシャ・金子さんから王子・池本さんに一言お願いします。
金子 私、本当に自分に自信を持てるタイプじゃなくて、本番前とか緊張してナーバスになってしまうタイプなのですが、祥真さんが一緒に踊ってくださる、支えてくださることで、安心感を与えられています。万一何かあっても、祥真さんが踊りで帳消しにしてくれると思っていますし、今年も一緒に心から楽しめると信じています。
池本 そんなこと出来ない(笑)。でも、信頼しあってこそのパートナーなので、またいい踊りが出来るかなと思っています。今年もよろしくお願いします。
――本当に、お二人が登場する日が待ちきれないです! ありがとうございました。
取材・文=小田島久恵 撮影=福岡諒祠
公演情報
■音楽:ピョートル・チャイコフスキー
■台本:マリウス・プティパ(E.T.A.ホフマンの童話に基づく)
■改訂演出/振付:斎藤友佳理(レフ・イワーノフ及びワシーリー・ワイノーネンに基づく)
■舞台美術:アンドレイ・ボイテンコ
■装置・衣裳コンセプト:ニコライ・フョードロフ
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■日時:2025年
12月11日(木)19:00
12月12日(金)12:30 ※学校団体が入ります。
12月12日(金)18:30
12月13日(土)12:30
12月13日(土)17:30 ※学校団体が入ります。
12月14日(日)14:00
■会場:東京文化会館
12月11日(木)19:00
マーシャ:沖 香菜子
くるみ割り王子:宮川 新大
マーシャ:足立 真里亜
くるみ割り王子:二山 治雄
マーシャ:秋山 瑛
くるみ割り王子:大塚 卓
マーシャ:金子 仁美
くるみ割り王子:池本 祥真
マーシャ:涌田 美紀
くるみ割り王子:生方 隆之介
マーシャ:沖 香菜子
くるみ割り王子:宮川 新大
■演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
■児童合唱:NHK東京児童合唱団
■日時:2025年12月24日(水)18:30
■会場:フェニーチェ堺 大ホール
■出演予定:
マーシャ:足立 真里亜
くるみ割り王子:二山 治雄
■指揮:井田 勝大
■演奏:大阪フィルハーモニー交響楽団
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■日時:2025年12月26日(金)17:30
■会場:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
■出演予定:
マーシャ:秋山 瑛
くるみ割り王子:大塚 卓
■指揮:井田 勝大
■演奏:大阪フィルハーモニー交響楽団
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■日時:2025年12月28日(日)15:00
■会場:島根県民会館 大ホール
■出演予定:
マーシャ:金子 仁美
くるみ割り王子:池本 祥真
※音楽は特別録音による音源を使用します。
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