蒼井優が「第九」歌詞の基になったシラーの詩を朗読 『サントリー1万人の第九』12/7開催
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左から 松岡茉優、佐渡裕、蒼井優(写真提供:MBS)
2025年12月7日(日)に大阪城ホールにて開催される第43回『サントリー1万人の第九』。1983年に始まり、師走の風物詩となった本イベントは、1万人でベートーヴェンの「第九」を合唱するコンサートで、今年は「1万人で歌を贈る日にしよう」をテーマに総監督・指揮を、今回で27回目となる佐渡裕がつとめる。また公演の司会として俳優の松岡茉優、第1部で楽曲を披露するゲストとして歌手の一青窈、さらに俳優の蒼井優が朗読で出演する。公演を前に、佐渡裕(総監督・指揮)、松岡茉優(司会)、蒼井優(朗読)が囲み取材に臨んだ。
なお、公演の模様は、12月20日(土)に特別番組(MBS・TBS系全国ネット)で放送される予定。1万人の力強い歌声とハーモニーを届けるとともに、「1万人の第九」の魅力を描く。
――今回が27回目の総監督・指揮となります佐渡さん、今年のテーマは「1万人で歌を贈る日にしよう」ということですが、佐渡さんが、今年の公演で一番伝えたいこと、そして楽しみにされていることを、改めてお聞かせくださいますか?
佐渡:今年はですね、やはり阪神淡路大震災から30年、それから戦争80年、そして大阪・関西万博があったということで、ちょっと特別な感覚がありました。随分昔から、この1万人の第九というのは世界に誇れるもので、世界中の人があっと驚くものだと思っていました。今までももっと発信していければいいのになと思っていたんですけど、YouTubeなどネット動画で世界に発信できる時代になってきたんだなと実感しました。たくさん海外の知り合いも見てくれたみたいで。そういう意味でも大阪・関西万博で第九をやったのはすごく大きな意味があったと思いました。だからそうしたいろんなことがあった2025年の締めくくりですね。
地球の反対側では戦争が今も起こっています。このベートーヴェンの第九というのは、2025年の色んな人の個人的な思いを振り返るのと、同時にまた世界を見つめる壮大な曲だと思うんですね。やはりベートーヴェンっていうのは、この2025年という年を予測してた、あるいは僕らのこうした大変な時代への応援歌を作ったのかなと思います。誰もが持っている楽器である声で、この2025年をしっかり受け止めて、ポジティブに前に進んでいきたい。そんな演奏会にしたいと思います。
――松岡さん2年連続司会をされるということについて、どんなお気持ちでしょうか。本番に向けての意気込みなど、いまの率直なお気持ちをお聞かせください。
松岡:私が18歳の時に初めて出た海外ロケがこの「サントリー1万人の第九」の番組だったんです。もちろんその時も佐渡さんが指揮でした。番組ではもっとベートーヴェンや第九を知ろうというコンセプトがあったんです。
私はベートーヴェンのお家に行ったり、ベートーヴェンが悩みながら書いていたその痕跡をたどるというロケをさせていただいて、その後スタジオにも呼んでいただいた年があって、その時は佐渡さんとベートーヴェンのことを伺うという、とても貴重なバラエティをやらせていただいた後に、昨年初めてこの第九の会場に伺って、わかってはいたけど、心も体も震えてしまって、本当に素晴らしい時間でした。一万人の命の輝きが一斉に高鳴っている様子があまりに美しかったです。
年末だったんですけれども、その一年間の中でやっぱり一番素晴らしい体験でした。今年もきっとそうなるんだろうなと思いながら、今年こそは感動に震えるでばかりではなくて以前の私のようにお茶の間で1万人の第九を楽しみにしてくださっている方に、きちんと言葉でこの感動を伝えられるように精一杯頑張ります。
――今回、蒼井さんが大阪城ホールの現地会場にて、1万人の合唱団を前に今朗読をされるということについて、どんなお気持ちでしょうか。本番に向けての意気込みなど、いまの率直なお気持ちをお聞かせください。
蒼井:松岡茉優ちゃんみたいなしっかりしてて、素晴らしい人が緊張したって聞いたら私みないなノミの心臓の人間ならどうなっちゃうだろうって思いながら(笑)
でもみんなとこう抱擁し合うような気持ちで、みんな仲間なんだっていう気持ちで行けばいけるかな、と思っています。どのみち緊張するとは思いますけど(笑)ここに集まってるという喜び、この時間を共有できる友が世界中にいるという喜びだけは忘れずに頑張ります。
――松岡さんは2年連続で「サントリー1万人の第九」というイベントに携わることになり、これから“佐渡練”と呼ばれる練習の見学にも行かれるそうですが、“第九”に対する距離感や気持ちに変化はありましたか?
松岡:去年現地に行って一番新鮮に思ったのは、小学校低学年の子たちが第九の歌詞について本当によく噛み砕いて理解していることでした。「それが出来ていないとと歌えないよ」みたいな大人なことも言われちゃったりしたんですけど。
ドイツ語の歌詞を覚えて1万人が歌うってだけでもどこもないことなんじゃないかって、歌い手として素人の私は思うんですが、そんなことは軽やかに超えて、皆様が第九の意味について捉えられていたことに驚きました。
あともう一つ新鮮だったのは、全国の津々浦々の代表の先生たちがずらっと最後に並ばれた時に、1万人の歌い手さんたちが先生たちに向けて送る拍手が、その日一番あったかかったんです。歌い終わった後の拍手よりも。あとは他の合唱での拍手よりも、先生たちに対する思いっていうのがすごく強く感じまして。その総大将である佐渡さんの佐渡練ですから、今日はどんな皆様の熱い拍手が聞けるのかと思うと、これから楽しみです。
――蒼井さんはさきほど佐渡さんと対談を終えて、改めてシラーの詩の中でご自身に最も響いた一節を選ぶとすればどこでしょうか?理由も併せてお教えいただけますか?
蒼井:「世界中の友よ、こんな音ではない」という一節があるんですけれど、この一文がものすごく好きです。ここにこの歌のこの出発点が全部詰まっている感じというか。歌詞を知らなければ、人生賛美みたいな賛歌みたいな感覚になってしまうんですけれども、そうじゃなくて、我々が目指せる一歩先、その先、その先、その先っていうものを捉えて離さないっていう、この勇気に対する賛美であって、今現在の賛美ではないっていうことが、ここの一文にギュッと凝縮されているところがものすごく私は好きです。
やっぱりこんな音ではないの、こんな音っていうのが自分の中にきちんと聞こえてなければいけないんだなと思っています。
――佐渡さんは蒼井さんとの対談を終えて、いかがでしょうか?
佐渡:普通の第九の演奏会では朗読なんてないんですよ。
1万人の合唱団はカタカナから一生懸命歌詞を覚えてくれていて、そのみんなで覚えたドイツ語を、今一度その世界観を含めて日本語の朗読でお客様と1万人に届けてもらおうと思っている、と今日蒼井さんにお伝えしました。
「こんな音ではない」という言葉からこの曲の歌は始まるんですけれど、この部分はベートーヴェン自身が作ってるんですね。その後からシラーの作詞部分になっていくんです。
ベートーヴェンがどうしても言いたかったのは、戦争があったり、疫病があったり、分断があったり……こんな世の中ではなくて、もっと心地いい、良い世の中にしようということだったんじゃないかと。
オーケストラで演奏される第九と聞くとなんだかすごく綺麗なクラシックの音楽だと思われそうだけれど、この「こんな音ではない」と言う部分に関してはすごい不協和音で、音がぶつかりあっているんですね。その中から、あの喜びの歌が誕生していくんです。
短い時間でしたけど、そういうことがお伝えできたかなと思いました。
そして蒼井さんが一人一人に届く言葉でしゃべりたいとおっしゃってた。それがすごく嬉しかったです。
公演情報
日程:2025年12月7日(日)午後3時開演
会場:大阪城ホール
ゲスト:一青窈(歌手)、太鼓芸能集団鼓童
朗読:蒼井優
ソリスト:ソプラノ/ハイディ・ストーバー
メゾ・ソプラノ/清水華澄
テノール/リッカルド・デッラ・シュッカ
バリトン/グスターボ・カスティーリョ
演奏:兵庫芸術文化センター管弦楽団
合唱:1万人の第九合唱団
司会:松岡茉優・三ツ廣政輝(MBSアナウンサー)
特別協賛:サントリーホールディングス株式会社
後援:(公財)関西・大阪21世紀協会、大阪府、大阪市、毎日新聞社、
スポーツニッポン新聞社、関西音楽大学協会、
大阪・神戸ドイツ連邦共和国総領事館、ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川
<特別番組>
2025年12月20日(土)午後4:00 ~4:54
<配 信>