藤井フミヤ、墓参りするほど愛するウィーンの画家に「見せたい」と絶賛、没入型展覧会『クリムト・アライブ 大阪展』の注目ポイントとは
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藤井フミヤ 撮影=松本いづみ
19世紀末のウィーンを代表する画家で、金箔をふんだんに使う日本の美術に影響を受けたグスタフ・クリムト。彼の世界を体感する没入型展覧会『クリムト・アライブ 大阪展』が堂島リバーフォーラムにて、2026年3月1日(日)まで開催中だ。同展では、360度を囲む巨大なスクリーンにクリムトの数々の傑作が映し出され、「黄金の世界」を光と音楽、香りから楽しめる。また、展示室内は写真や動画撮影も可能で、イマーシブシアターならではの特別な時間を過ごすことができる。
メディア向けの内覧会には、同展の公式アンバサダーを務める藤井フミヤが登壇。お墓やアトリエを訪れるほど、クリムトの大ファンだという。伝統を打ち破り、女性の力と装飾美を探求し、新しい芸術表現の形を模索したクリムトの「黄金の世界」について、内覧会でのメディアセッションの様子とともに藤井の“クリムト愛”たっぷりのインタビューをお届けしたい。
藤井フミヤ
メディアセッションで藤井は、公式アンバサダーの就任について「やっぱりクリムトファンなので嬉しかった。どんな世界が見えるんだろうという期待感もありましたね」と喜びを伝えた。また、クリムトの作品については「写実的な女性像を描きつつ、ジャポニズムに影響を受けている部分が日本人としてシンパシーを感じる。日本人的なセンスと、クリムトのセンスが一致した感じがあって、“この人の絵が好き”と感じる」と、クリムトの作品に惚れ込んだ経緯を語った。
さらに「金の使われ方は(尾形光琳を代表する)琳派に通じる部分があると言われるけど、(クリムトの)柄の合わせ方のインスピレーションは、着物の柄を(背景と)重ね合わせるジャポニズムから受けたのではないか。空間の作り方もクリムトらしくて、印象派の画家にはない技法」といった、画家としても活動する彼ならではの考察も聞かせてくれた。藤井のさらなるクリムト愛については、次のインタビューもぜひチェックしてほしい。
藤井フミヤ
――内覧会での登壇時に「クリムトの全てが好き」と語られていました。クリムトとの出会いについて教えてください。
出会いは随分前のことで詳しくは覚えていないんだけど、代表作の「抱擁」だったかな。それも本物の絵画や画集ではなく、アートブックか何かだったはず。当時は「何だこれ!?」と思ったんだよね。見たことのないタイプの絵だった。(サルバドール・)ダリの絵を見るような、不思議な感覚。
――そこからクリムトの絵画を掘り下げるようになったのでしょうか?
本格的にクリムトの他の作品も見たいと思ったのは随分経ってから。3~40歳くらいかな。それ以前は(アンディ・)ウォーホルみたいな現代アートが好きだったんだけど、その頃から僕が宗教画や裸婦画を描き始めて。その流れでクリムトの作品をより知るようになったんだよね。
――裸婦画は女性の曲線美が印象的ですが、そういった描写が画家としてのフミヤさんの琴線に触れたのでしょうか。
(サンドロ・)ボッティチェッリみたいに、昔の裸婦画は肉感的でふくよかな女神像が多いけど、クリムトは肩甲骨とか、節々とかがゴツゴツしているんだよ。
――いわゆる痩せ型、モデル体型の女性が多く描かれていますよね。クリムトは女性を描いた作品が有名ですが、今回の展覧会では自然美を描いた作品も登場します。
クリムトは人物画の9割近くを女性しか描いていなかったからね。風景画もかなりの数を描いているけど、いろいろな柄やデザインが混じった作品は、今回の展示企画に本当に向いているなって思うよ。クリムトはフランス人でもないし、パリで活動していたわけでもないから、印象派のアーティストみたく有名じゃなかったしね。もし彼がフランスでこの絵を描いていたら、印象派の一部になっていたかもしれない。印象的に描いたから“印象派”と呼ばれているけど、例え同じ時代でも、彼の絵はコラージュ的な雰囲気を持っているのがおもしろいよね。
――ある種、パンク的な要素を持っていたのかもしれないですね。
そうそう。クリムトはアカデミックを乗り越えて、ウィーン分離派のリーダーでもあったから。
藤井フミヤ
――前衛芸術を取りいれることを目的とした新進芸術家たちのグループです。
クリムトはその中でも、一番反発した人だね。クリムトを好きになったと同時に(クリムトの弟子であるエゴン・)シーレも好きになるんだけど、そのあたりの美学が好きで。ウィーンでクリムトの作品を観るということは、シーレの作品も観られるからね。「ベートーヴェン・フリーズ」(全長34mを超える大作)も観られるし、これはウィーンに行くしかないなって。
デッサンのラインが見える
――現地での作品鑑賞も素晴らしいですが、今回の『クリムト・アライブ 大阪展』は原寸以上に拡大されたクリムトの作品を間近に鑑賞することができるのも魅力のひとつかと思います。
クリムト本人も、あんなに拡大されて見せられるとは思ってもないだろうね(笑)。(拡大された)作品を観ると、正方形に区切られたデッサンのラインとか、絵の具と絵の具の隙間とかまでよく見えるもんね。そこが絵を描いている人間に言わせると、この展覧会のおもしろいところだよ。徳島にある大塚国際美術館ってあるじゃない? あそこは本物を再現した陶板だから、作品にどこまでも近寄れるし、写真も撮れる。絵描きにとっては、今回の展覧会はその感覚に近いかな。クリムトファンは感嘆して観ちゃうと思うよ。逆にアート初心者にとっても、敷居が低いのがいい。この会場はアトラクションみたいにアートを全身で楽しめる感じがある。あと、女の子はやっぱりクリムトの描く柄とか好きだと思うんだ。「この柄のワンピースが欲しい!」とか思うんじゃないかな。
――クリムトの作品は金箔を使った絵画に注目が集まりますが、初期の作品は比較的暗い印象を持ちました。
確かに人物の周りに描かれている柄とか以外は、比較的暗い。そのあたりは(ピエール=オーギュスト・)ルノアールや(クロード・)モネとも違う、どこか影を感じるよね。クリムトの作品は全体的に華やかだから、そういう暗さはあんまり感じないんだけど、なんとも言えない静寂さがある。
「接吻」
――今回の展示では現存する作品の多くを観られるのも魅力ですよね。お気に入りの作品はありましたか?
やっぱり「接吻」は構図もよく出来ているし、代表作と言われてもおかしくないけど……。「死と生」や「女性の三時代」もいいし。色々あるなぁ。
右が「生と死」
――クリムトファンとして、ひとつに絞るのは難しそうですね。
金を使った作品を多く出したあとに、「乙女たち」という金色を抑えた絵画もあって、それもいいんだよね。でも、根本的に金を使う手法をやり始めてからは、女性の描き方にクリムトっぽい感じが見え隠れしているなって感じるかな。
――フミヤさんご自身の音楽や芸術活動にも、クリムトとリンクする部分は感じますか?
どうだろう(笑)。でも、ロックンロールから始まったのは反発精神なのかもしれないね。会場では絵とリンクさせたクラシック音楽がかかっている。その完璧なリンクも臨場感があってすごくおもしろいよね。床にまでキレイに映る映像技術にも驚くし、ミュージシャンとしても、コンサートのひとつの空間を作り出す総合演出性が勉強になる。ここまでテクノロジーが来たんだと、クリムトに見せたいくらい。イベントから影響を受けたといえば、(2005年の愛知万博の)パビリオンを作った時に他のパビリオンを見学したら、映像がすごくよくってさ。その後すぐに、コンサートの現場監督やディレクターをみんな会場に連れていって「この感じでやるから!」って言ったことがあったね(笑)。でも、この歳になると映像とかには頼らないで、歌一本でいく感じだね。
――実力勝負、ですね。
やるだけやっちゃったからね。自分のアイデアが早すぎて、ソフトではなくハードがついてこなかったよね。
藤井フミヤ
――さすがです! 最後に、改めてファンのみなさんにメッセージをお願いします。
今回の大阪会場は、展示外での取り組みにめっちゃ力が入ってるよね。金曜日は展示を観ながらスパークリングワインが飲めるんでしょ? ここまで力が入ってるなら、やっぱり観に来て欲しいよね。どうせ来るなら、2回は観に来てほしいかな。おもしろい空間だし、新しい発見もあると思う。クリムトファンとしては、クリムトという世界をもっと広く知れ渡ってほしいよね。
会場に入る前には解説が展示されている
公式アンバサダーである藤井フミヤも魅了した同展では、大阪展限定の楽しみ方として、クリムトの作品デザインのバーカウンターとイートインスペースを展開。オーストラリア・ハプスブルク家ご用達の、伝統を誇る老舗ワイナリーが作るスパークリングワインや、大阪を代表するスイーツ「堂島ロール」を会場で味わうこともできる。
近隣のカフェやバーではイベントのタイアップ企画も実施。クリムトの作品から着想を得たカクテルやパスタを味わったり、観覧券・半券の提示でお得に飲食が楽しめたりと、一日を通して“クリムト”の世界を満喫できるので、そちらもぜひチェックを!
取材・文=黒田奈保子 撮影=松本いづみ