【コラム】『RADAR:Early Noise』『EIGHT-JAM』『バズリズム02』──2026年注目の新人は誰なのか?
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kurayamisaka
Spotifyによる『RADAR:Early Noise 2026』、『EIGHT-JAM』の「プロが選ぶ年間マイベスト10曲」、『バズリズム02』の「今年コレがバズるぞ!2026」が発表され、注目の新人が出揃った感のある2026年。今年で三回目となるこのコラムでは、3つのリストで紹介されたのべ70組の中から、注目アーティストを厳選して紹介し、今年の音楽シーンの展望を書いてみたい。なお、今年は昨年のAKASAKI、一昨年の離婚伝説のような、3つのリスト全てに名前が入っているアーティストは一組もいなかった。これはそれぞれのリストの独自性が強まったこと、評価軸の多様化の表れだと言ってもいいのかもしれない。
そんな中にあって、『RADAR:Early Noise 2026』に入るとともに、『バズリズム02』で1位に選ばれたのがkurayamisaka。2022年に東京・大井町で結成された5人組のロックバンドで、1990年代や2000年代のエモ、ポストロック、シューゲイザーなどに影響を受けつつ、それをポップに鳴らす楽曲が音楽ファンからの支持を集めている。彼らについては昨年のこのコラムでも触れているのだが、9月に発表したファーストアルバム『kurayamisaka yori ai wo komete』は『CDショップ大賞』の「青」(新人部門)で入賞作品に選ばれ、今年は10月にZepp DiverCityでワンマンライブを行うことがすでに発表されていたりと、さらなる活躍は間違いない。
2010年代後半からジワジワと盛り上がっていたエモリバイバルの機運がコロナ禍によって鎮火したかと思いきや、SNSとライブハウスの相乗効果で新たな盛り上がりを見せ、2020年代も後半を迎えた2025年はその流れがいよいよオーバーグラウンドに浮上。その象徴がkurayamisakaだったという言い方もできるだろう。『EIGHT-JAM』でいしわたり淳治が「AI秋元康」作詞によるAKB48の「思い出スクロール」を1位に選んだように、2025年は世間一般的なAI元年でもあったように思うが、そんな時代だからこそ、ロックバンドの人間的なダイナミズムが求められたという側面もありそうだ。
オルタナティブなバンドシーンは「ネクスト」を担う逸材が多数登場していて、kurayamisakaのベーシストである阿左美倫平が所属し、昨年ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文主宰のレーベル「only in dreams」からアルバムを発表したyubioiri、ポストロックやドリームポップ譲りの美しいサウンドスケープが持ち味で、2月にリキッドルームでのワンマンが決まっている雪国らも楽しみだが、やはり今のシーンの特徴はkurayamisaka同様に女性ボーカルのバンドが多いということだ。こちらもアルバムが『CDショップ大賞』の「青」で入賞作品に選ばれているHammer Head Shark、「ポストポップス」を掲げるBlume popo、「サイバーポップ・ロックバンド」を掲げるsidenerds、ボーカルのfukiがiVyというユニットでも活動するcephaloも面白いし、『EIGHT-JAM』で川谷絵音が10位に選んだTrooper Saluteはオルタナのシーンとも接点がありつつ、「シンフォニック」を掲げる音世界に他のバンドとは異なる独自の審美眼があり、台風の目になりそうな予感がする。
『RADAR:Early Noise 2026』の10組に選ばれ、『バズリズム02』では23位にランクインしていたのが、VaundyやChilli Beans.らを輩出した音楽塾ヴォイスの出身で、2024年に結成された、AirA、ユウキ サダ、SOI ANFIVERによる3ピースバンド、OddRe:(オドレ)。「20歳から22歳の2年間、音楽修行のために離島に2年間こもった」というエピソードもインパクト大なSOIによるジャンル横断的なトラックメイク、様々なジャンルをエモーショナルに歌うAirA、アイコニックな存在感を放つユウキ サダという3人のバランスが抜群で、ファンクやハウスなどの踊れる音楽を基調としつつ、ブルースロックのニュアンスを持ち合わせているのも面白い。 9月に横浜アリーナ公演が決定し、すでに「ネクストブレイク」の枠をはみ出しているChevon、『バズリズム02』で2位に選ばれたCLAN QUEENらとは同時代性が感じられ、どのバンドもドラムレスの3ピースで、バンドとトラックメイクのハイブリッドであり、強烈な女性ボーカルの存在が共通点だ。
年明けからバナナマンが出演するCMでフレデリックの「オドループ」のカバーが使用されたことが大きな話題を呼んだが、いつの時代も「バンド」と「踊る」ことの関係性は様々な角度から論じられてきた。「オドループ」と同時期にはKEYTALKが「MONSTER DANCE」で「踊れ踊れさあさあ踊れ」と歌い、4つ打ちのブームが訪れたかと思えば、その後は「シティポップ」というワードとともにディスコやファンクの大波がやってきた。コロナ禍によって一時期は家で踊ることを余儀なくされたものの、現在ではその反動として、より苛烈なレイヴやハイパーポップの文脈も徐々にメインストリーム化しつつある。こういった流れを全て飲み込みながら、新たなJ-POP/J-ROCKとしての「踊る」を体現するバンドたちの活躍は非常に楽しみだ。
ここまで「女性ボーカルのバンド」がメインになっているが、ソロでは男性アーティストに注目。『バズリズム02』で13位に選ばれ、『EIGHT-JAM』でいしわたりが「条司」を3位に選んでいるのが、2024年にメジャーデビューをしたjo0ji。フォーク由来の歌心を武器に、今も地元の鳥取県を拠点としながら楽曲を作り、ライブ活動を続けている。2024年に『RADAR:Early Noise』に選ばれて、昨年のツアーではEX THEATER ROPPONGIがソールドアウトと、すでに人気が高まっている中、そのダメ押しとなりそうなのが1月に発表された新曲の「よあけのうた」。この曲はこれまでEve、King Gnu、キタニタツヤ、羊文学らが歴任してきたアニメ『呪術廻戦』第3期のテーマ曲に起用されていて、さらなるブレイクは間違いない。WONKの江﨑文武とともにチャーチミュージック風のアレンジを手がけ、アニメの主人公である虎杖悠仁の境遇と自身の心情を重ねながら歌う「よあけのうた」は、文字通りjo0jiを新たな夜明けへと導くだろう。
『バズリズム02』の11位にランクインし、2025年の『RADAR:Early Noise』に選ばれていたLavt(ラウト)は2002年生まれ、2023年からこの名義で活動するシンガーソングライター。現時点での代表曲「L4DY」や、インディロック色を強めた最新作『glauben』を聴けば、jo0jiとも親交のあるimase、あるいはMega ShinnosukeやWurtSとも共振する現代的な作り手であることが伝わるはず。
最後にもう一人、2005年生まれの野本慶によるソロプロジェクト・Meg Bonusも期待大。ジャズとクラシック双方からの影響を消化したような作曲と、浮遊感のあるフューチャリスティックなトラックメイクを掛け合わせた楽曲が素晴らしく、すべてを一人で手掛ける野本の力量が伝わってくるし、実験には振り切らない、歌声の親密さとメロディーのポップさもいい。昨年リリースしたアルバム『New,man』になぞらえて、「君島大空以降の感性とTeleのポップセンスを併せ持った音楽的新人類」とでも呼べば、多くの人に興味を持ってもらえるのでは。
文=金子厚武
ライブ情報
3/19(木) 開演:18:30~ (開場 17:30~)
会場:Spotify O-EAST
出演:OSHIKIKEIGO/OddRe:/ハク。/名誉伝説
Fresh Finds Japan presents OPENING ACT:REJAY
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『2nd full album「yubiori2」release tour 2025』
2/15(日) 開演:18:00~ (開場 17:00~)
会場:WWW X (東京都)
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『One Man Tour 2026 “shion”』
2/25(水) 開演:19:00~ (開場 18:00~)
会場:LIQUIDROOM
ライブ情報
3/20(金・祝) 開演:19:00~ (開場 18:15~)
会場:FEVER
出演:Hammer Head Shark/tricot
ライブ情報
振替単独公演「Portrait the Position」
4/5(日) 開演:19:00~ (開場 18:00~)
会場:Spotify O-nest
ツアー情報
5月10日(日) Zepp Nagoya 16:00/17:00
5月16日(土) Zepp Namba 17:00/18:00
5月22日(金) Zepp Haneda 18:00/19:00
ライブ情報
4月29日 東京・大手町三井ホール
開場 16:30 / 開演 17:30