「歯ぁ悔い縛って踊ってくれ!」どんぐりずニューアルバム『DONGURI ZOO』&2年半ぶりのツアーを語る
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どんぐりず 撮影=大橋祐希
どんぐりずのニューアルバム『DONGURI ZOO』の収録曲「JUNGAROO」に<音楽とメタファー>というワードがある。これが本作を読み解くキーワードだと感じた。群馬出身の2人のパブリックイメージといえば、彼らが地元・桐生で主催するフェス名と同じく『HACHA MECHA』(ハチャメチャ)だ。もちろん今回のアルバムもそのバイブスはそのまま、いや強化されているとも言える。だが同時に彼らがハチャメチャに踊る/踊らせる理由も、数々のメタファーから垣間見ることができた。今回のインタビューでは、「NO DANCE NO LIFE」を掲げるどんぐりずのインテリジェンスを探る。さらに2年半ぶりのツアー『どんぐりず TOUR 2026「DONGURI ZOO」』への意気込みも聞いた。
「俺たちは性格的にかっこつけるタイプじゃない」
――今日はマネージャーもなしで、お二人だけで現場に来られましたが、ツアーも二人で組んでいるんですか?
森:うん、そうですそうですね。
――会場への連絡も?
森:そこはイベンターの方にお願いしています。
チョモ:各地にお世話になっている人がいて、みなさんに面倒みてもらっているみたいな。
――さて、今回のアルバム『DONGURI ZOO』、すごくかっこよかったです。どんぐりずといえば、ユーモアとダイナミックなダンスミュージックのイメージが強かったのですが、今作には社会に対するシリアスな目線も感じました。アルバム全体でどんぐりずのアティテュードを表明でしているというか。
森:最初は何も考えずいっぱい作っていたんですが、何曲かできて並べてみると、全体的にバラバラで。そういう作品も好きであるんだけど、なんかアルバムを通して聴くには疲れちゃうなあと思ったんですよね。チョモと話し合って、曲と曲に繋がり持たせてアルバムとして流れのあるにしようと方針を変えました。3曲目までは最初に作った曲だけど、4曲目から最後までは2週間くらいで作りました。
――90〜00年代の電気グルーヴを思い出したんですよね。
森:なんだろう。俺たちは性格的にかっこつけるタイプじゃないんですよね。例えばソロの客演とか、ファッション系の撮影ならかっこつけたりもするけど、どんぐりずとして活動する場合はこういうノリになります。
――大沢伸一さんとのユニット・DONGROSSOでの活動が本作に影響している部分はありますか?
森:このアルバムについてはないです。大沢さんとやっている時は大沢さんとの曲のことしか考えてなかったです。
チョモ:大沢さんとの制作は、毎回パンチで気合いを注入するというか。ただ大沢さんからは一緒にいるだけで無意識にいろんな影響を受けていると思います。
「足し算で遊ぶ感じが楽しい」
森
――『DONGURI ZOO』を聴き始めて、前半はノリ重視のダンスアルバムだと思っていましたが、「UFO DUB」あたりから雰囲気が変わってきました。
チョモ:そうっすね。1〜2曲目だけ別のアルバムだよね(笑)。
森:最初はアルバム全体が1〜2曲目のテイストだったんです。だけどさっきも言ったように全曲並べて聴いてみると「なんか疲れるアルバムだなあ」と感じてしまったので方向転換して。
チョモ:特にダンスミュージックのシーンではシングルがメインじゃないですか。最初に作っていたアルバムはシングルみたいな曲ばかりの作品だったんです。でも俺らはバンドにも影響を受けてきていて、アルバムとして1曲目から最後の曲まで通して聴くのも好き。2人で収録予定曲を通して聴いた時にそんなことを思い出したんです。「あ、俺らアルバム作ってたんだ」みたいな。そこから全体を組み立て直したんです。
森:3曲目の「カラビナ」以降は作り直した曲がメイン。次の「UFO DUB」、さらに「湘南新宿ライン」までは流れを意識して新たに作って、6曲目の「Who's the best?」は1年くらい前からあった曲でライブでも何回かやっているんですけど、「湘南新宿ライン」に合いそうだから今回のアルバムに収録しました。そういうふうに作っていって、3曲くらい削ったらアルバムとして聴ける感じになりました。
――今作はパーティーにまつわるあれこれを歌っている曲が多いと思ったのですが、「カラビナ」のリリックは何を暗喩しているのかわからなかったです。
チョモ:「干からびるなあ」ってことです。特に意味はないっす。
――トラックに合わせて、語感の良い言葉をあてていくようなイメージですか?
森:そうっす。この曲もトラックとしては前からあったよね。
チョモ:そうそう。最初は四つ打ちで作っていて、歌を入れてみたら気分じゃない雰囲気になったので、グルーヴをいじっていたら今のディープハウスっぽい感じになったんですよね。歌に関しては、俺らの日常のことで、制作して、パーティーやって、遊びに行って、みたいな感じになると時間の感覚がおかしくなってくるんですよ。作ってたら朝になっていたとか、起きたら真夜中だったみたいなことが多くて。ざっくりとそういうことがテーマになってます。
――なるほど。パーティーアニマルなどんぐりずっぽい。個人的に「UFO DUB」がすごく好きなんです。
森:やばいっすよね。
チョモ:俺は1番好きな曲です。
――前半はハウスっぽい跳ねるリズムに浮遊感あるシンセサイザーが乗っているけど、途中からダブレゲエっぽいベースラインが入ってくる展開がかっこよすぎました。
チョモ:まさに四つ打ちのグルーヴとダブのグルーヴをミックスした曲で、ベースが入るところからスネアの位置が変わるんですよね。それだけなのに、1曲の中でBPMが倍になったり、半分になったりする。そこがおもしろいなあと思って。一時期は引き算のトラックメイクを意識していたけど、今作はまた足し算で遊ぶ感じをやっています。
「Who's the best?」は森羅万象系
チョモ
――「Who's the best?」はビートもリリックも大好きです。
チョモ:この曲は全部生音をサンプリングしているんですよ。ミニマルでトライバルな感じになったと思う。
――演奏は誰が?
森:チョモっす。
チョモ:俺がジャンベとスネアとライドシンバルをそれぞれ叩いて、録音した音を切り貼りしていて。低音の部分はジャンベの音なんです。そこに森がラップしているだけだから、この曲は4つの要素だけでできているんです。シンセっぽい音もジャンベのリズムを一拍ズラしてエフェクトをかけています。
――だから少しローファイな感覚があったのかも。リリックについても伺いたいのですが、この曲では「自意識と承認欲求」という現代社会で多くの人を潜在的に惑わせているトピックに対して、「フロアで無我夢中に踊ってれば、お前も俺も最高だぜ」と実にどんぐりずらしいアンサーを返していたのが痛快だと思いました。
森:本当ですか。サビはその通りっすね。フックのとこはリリックについて考えながら散歩している時に、神社で授かったんですよ。土臭いジャンベの音に導かれたんすかね。森羅万象系(笑)。俺もお気に入りです。
――レイヴ感満載ですね。ちなみに普段はどうやってリリックを書くことが多いですか?
森:iPhoneのメモですね。一個、キーワードみたいな単語が出てくればどんどん行けるけど、逆もまた然りみたいな。「UFO DUB」なんかは結構早かったです。
――書き直したりはしない?
森:たまにするっす。ちょっと(歌詞が)できてから、ちょっと(声をトラックに)入れて、チョモにデータもらって聴いてみて、こっちのほうが気持ちいいと思う箇所があれば変えます。でもそんなに大きくは変えないです。
――リリックで悩むことはありますか?
森:使いがちな言葉を避ける。結構やっちゃうんですよ。そこはかなり意識的になっていますね。
あなたは本当に弾けた森を見たことありますか?
――「天然記念物」は深く潜るようなグルーヴのトラックですが、なぜ“天然記念物なのかなあ”と考えながら聴いていました。
森:チョモが「天然記念物」って言いたかっただけっす。
――お二人の地元・群馬県が鶴の形に似ているから、鶴サブレーとかあるんですよね? それにどんぐりずのワンアンドオンリー感を掛けてリリックに落とし込んだのかなと想像してみたり。
森:だいたいあってますけど、全部後付けっす(笑)。チョモが作ったトラックに“俺は天然記念物♪”と入っていたから、ヴァースで俺が意味を持たせにいったみたいな。
――僕は森さんがぶっ飛んだキャラクターというイメージだったんですが、さっきの撮影を見てたり、さらに今の制作エピソードを聞いたりするとチョモさんもまた違ったぶっ飛び方をしているなあと思いました。
森:バレてんじゃん(笑)。
チョモ:なんかその印象をつけたがる人が多い(笑)。
森:ついてるよ。みんな言ってるもん。
チョモ:そんなことはないと思いますけど……。
森:全国の友達がいつも言ってくるんですよ。「実はチョモのほうが……」みたいな(笑)
チョモ:「俺は知っているけど」みたいな。でも、そういう人たちに言いたいのは、本当に弾けた時の森がどんだけすごいかってことなんですよ。見たことないでしょって(笑)。
――いろんな面でお互いにフォローしあっているんですね。
森:そうっすね。リリックも常に共有してますし。サウンドのアイデアを俺が出したり。常に2人でやってます。
どんぐりずサウンドのこだわり
――で、8曲目に「skit」を挟んでの「JUNGAROO」。僕はこの曲が1番好きです。
森:渋いっすよね。俺も大好きなんですよ。
――アルバムの流れでいうと、「JUNGAROO」「NO DANCE NO LIFE」向けて一呼吸つく意味合いで8曲目に「skit」が入ったのかな、と。
森:マジでそうです。8曲目で一休み。この曲は最初イントロのシンセとビートだけのループだったんです。まずフローを思いついて。で、「ここにラップを入れたい」「ここは空けたい」「このくらいの長さが欲しい」みたいのをやりました。そこからチョモがトラックをまとめて、俺がヴァースとフックのリリックを作って。最初は4分くらいの曲でした。
――完成版は6分以上になりました。
森:俺らは1曲完成させて、次の曲に取り掛かるというやり方ではなく、何曲も同時並行に制作していて。「JUNGAROO」を7割くらい作ってから、他の曲も進めて、だんだんアルバム全体の方向性も見えてきたんですね。そこから再び「JUNGAROO」の仕上げをしたらどんどん曲が長くなっていった。
チョモ:感覚で音を足したり、展開を作ったり、ループを伸ばしたり。
森:イントロももっと短かったよね。
チョモ:そうそう。この曲は気持ちよさを重視しました。
――「JUNGAROO」というワードはどこから出てきたんですか?
森:ジャングルとカンガルーです。「GORILLA」を作り終えた段階で、『DONGURI ZOO』というアルバムタイトルは決まっていたので、もう1曲くらい動物のタイトルを入れようと思っていました。
――この曲を良いスピーカーで聴いたらすごそうです。
森:この間、この曲をWALL&WALL(東京都)でやったけどめっちゃ気持ちよかったです!
――今作はミックスとマスタリングも重要ですね。
チョモ:ミックスは俺で、マスタリングは大阪のマイトくんにお願いしています。マイトくんが東京に来た時や、俺らが大阪に行った時によく遊んでいるんですね。だから感覚的に俺らの音楽性ややりたいことを理解してくれています。俺は90パーくらいの段階で、「今回こんなんできました」って一回マイトくんに音源を投げるんですね。そうすると、「これじゃダメ」と返却されるんです。
――どういうことでしょうか?
チョモ:マイトくんには「今回の作品はこういう感じでやりたい」みたいなアイデアを常に伝えていて。俺はミックスも感覚でやっているから、音響のプロの耳だと「ここはサブがちょっと広がりすぎている」とか、「この帯域はどっちに持っていきたいんだ?」とか、「ベースが出過ぎ」とか、たくさん指摘してくれるんです。それを受けて俺がミックスし直して。何回かやりとりして、最終的にマイトくんにマスタリングをお願いしています。俺は素人なので、プロにジャッジしてもらえるのは勉強にもなります。
――マスタリングした音源をチョモさんが再度マイトさんに戻すこともある?
チョモ:はい。でもそういう場合は大抵ミックスまで遡らないといけないので、俺がトラックをミックスし直して、マイトくんにマスタリングしてより洗練した音にしてもらいます。マイトくんと出会えたことは本当に大きい。やりとりはめちゃくちゃ楽しいです。
どんぐりずスピリットを具現化した
「JUNGAROO」&「NO DANCE NO LIFE」
――「JUNGAROO」はリリックも好きです。取材の準備をしている中で、Red Bullがキュレートするマイクリレー企画「RASEN」のインタビューを読んだんです。そこで「ふざけて核心を突けるのが本当にクールな人だと思う」と話されていて。
森:言ったかもですね。
――「JUNGAROO」のリリックはこの発言を裏付けていると思ったんです。特に<音楽とメタファー>と、フックの<JUNGAROO is always hopping higher/Life needs some more complication/JUNGAROO is always hopping higher>ですね。社会も個人も複雑な現代で、ジャンガルーのように高く飛び続ける。これは「Who's the best?」の内容にも通じるというか。……深読みしすぎですかね?
森:実は、俺、メタファーの意味を知らなかったんですよ。でも言葉としてかっこいいからとりあえず言ってみたんですね。で、調べてみたら、俺らが普段やっていることそのままだったので、アリだろ、と。
――(笑)。
森:ただそれだけです。でも話してくれた解釈は普通にあってると思います。
チョモ:あいすぎてて怖いくらい(笑)。
――そしてアルバムはタイトルからしてどんぐりずらしい「NO DANCE NO LIFE」で締めくくられます。
森:これはもう曲名が先にあって。俺ら、地元の桐生で『HACHA MECHA』というフェスを主催していて。去年、“NO DANCE NO LIFE”というワードでTシャツとキャップを作ったんですけど、その段階で絶対にこの言葉で曲を作ろうと思っていたんです。
――「NO DANCE NO LIFE」はクラブやレイヴで一生懸命踊っていて、明け方とか午前中くらいのどろどろに疲れた時にDJがかけてくれるご褒美系の曲だと思いました。
チョモ:むしろゾンビ系(笑)。
森:ゾンビに向けたご褒美(笑)。
――トラックはどんなイメージで作っていったんですか?
チョモ:ご褒美ハウス作ろうぜっていう(笑)。
森:この曲は2人でめっちゃ考えて作りました。
チョモ:真ん中の俺らが合唱しているとこね。
――キーワードを出し合う的な?
チョモ:あのパートってシンセサイザーのビートのほうが歌よりも強いんです。「どう歌おっか?」から入って、相談しながらメロディーを考えて、森が一言目を出したら、二言目を俺が考える、みたいな。
森:箇条書き系じゃなかったっけ?
チョモ:そうそう。パズルみたいな感じでした。順番を入れ替えたり、ここはこっちの言葉のほうが良いよね、と書き直したり。
――そんなアルバムを携えて、ツアーが開催されます。
チョモ:ツアーは2年半ぶりなんですよ。前作『DONGRHYTHM』の時は、自分ら独立したばかりでいろんなことが手探りだったというのと、『HACHA MECHA』の立ち上げ準備もあってツアーができなかったんです。
――それこそ『HACHA MECHA』は話題になったし、DONGROSSOで知った人もいるでしょうし。
チョモ:初心者大歓迎。
森:そうそう。東京、大阪、福岡でぜんぶ違った雰囲気になると思う。例えば、大阪なんかは俺らのふざけた感じを歓迎してくれるんですよ。福岡はクラブカルチャーが盛んだし、東京は言わずもがなって感じで。去年「バイブス県立グルーヴ高校校歌」って曲も出しましたし、ひさしぶりのツアーなんでぶちかましたいですね。
――では最後に読者へのメッセージをお願いします。
森:アルバムは疲れたなって時に聴いてくれたらって思います。肩肘張らずに楽しんで聴けるアルバム。「疲れるのヤダな」と思って作ったので。
チョモ:でもライブには肩肘張って来て、歯ぁ食い縛って踊ってくれ!
取材・文=宮崎敬太 撮影=大橋祐希
ライブ情報
2026年2月22日(日)福岡・The Voodoo Lounge
OPEN 18:00 START 18:30
2026年3月6日(金)大阪・梅田BANGBOO
OPEN 18:30 START 19:00
2026年3月13日(金)東京・渋谷WWW X
OPEN 18:15 START 19:00
リリース情報
2026年1月21日(水)DIGITAL RELEASE
<収録曲>
1. GORILLA
2. パンナコッタビンタ
3. カラビナ
4. UFO DUB
5. 湘南新宿ライン
6. Who's the best?
7. 天然記念物
8. Skit
9. JUNGAROO
10. NO DANCE NO LIFE