溢れるインスピレーションで世界を広げ、”進化”続けるピアニスト紀平凱成がおくる2026年ツアー『Progression』~「ドラマ性を感じるステージに」

インタビュー
クラシック
2026.2.4

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爆発的なインスピレーションと、瞬時に聴衆を虜にする魅力でファンを増やしているピアニスト紀平凱成。2026年の全国ツアーは2月15日(日)の浜離宮朝日ホールを皮切りに、大阪、仙台、札幌の4都市を回る。2025年も大規模なコンサートへの参加や楽曲提供など多忙だった紀平が、パワーアップして臨むツアーのタイトルは「Progression(進化)」。紀平と、彼を支える”Team Kyle" スタッフに、ツアーに向けた意気込みを聞いた。

――タイトル「Progression」にはどんな思いを込めたのですか?

最初は「SMILE」にしようと思ったんだけど、僕の好きなELP(エマーソン・レイク・パーマー)やジェネシスみたいな1960年代から70年代のプログレッシブ・ロックのことが頭に浮かびました。プログレッシブ・ロックはクラシックとロック、ジャズの即興を融合させた音楽で、複雑なコード進行や斬新な転調、変拍子があって、コンサートやアルバムには独特の世界観があります。子供の頃からそういった音楽が大好きだったし、大好きなビートルズやクイーンやレッド・ツェッペリンの音楽にも同じエッセンスを感じます。
僕が尊敬するピアニスト、カプースチンがクラシックとジャズ、民族音楽を緻密に融合させていたように、僕も自分のルーツになっている音楽を、ピアノを通して表現したいと思ったので、このタイトルにしました。

――ツアーの選曲は決まっていますか? 新曲も演奏するんだよね。

僕が影響を受けたアーティストの曲に自由に大胆にアレンジを加えたり、そこに即興演奏やオリジナル曲を混ぜて、全体で一つの大きな物語を作っていく感じだね。クラシックの組曲や交響曲のようにドラマ性を感じるステージにしたいと思っているんだ。昨年はたくさんの新しい曲を吸収して、特にオスカー・ピーターソンのライヴ演奏やラフマニノフの前奏曲、ドビュッシーのエチュードを家でもよく聞いて、色々なインスピレーションをもらい、笑顔になっていたんだけど、毎日どんどん新しいアイデアが浮かんでくる感じ。プログレ的な解釈で演奏しようと思っている楽曲もあります。

――新しい世界が広がっているんだ。

新しい曲もたくさん作リました。そのほかにも、例えば「FLYING」は24曲からなる組曲なんだけど、2021年8月に思いついて一気に弾いた24曲を、今、録りためています。録りながら、一曲ずつ丁寧に仕上げていて、既に2曲はアルバムに入れているんだけど、ほぼ全曲が出来上がってきている。この24曲っていう構成は、ショパンやカプースチンの「24の前奏曲」に影響を受けているし、全体の世界観にはシューマンの「謝肉祭」も入っているよ。

――旅先で作曲することも多いんですよね。

秋から冬にかけて河口湖、高山、函館を訪れて、大きなインスピレーションを得たよ。旅先でひらめいたモティーフやメロディ、リズムなどをたくさん書き留めて、どこへ行くときもインスピレーションを感じた瞬間にすぐに書けるよう、五線譜を常に持ち歩いているんだ。各地の自然や街の空気、光の変化がそのまま音楽に反映されていく感覚があって、楽曲作りに新しい風を吹き込んでくれたんだ。

――2025年は充実した一年だったんですね。

2025年は厄年だったからじっくり充電する期間なのかなと思っていたんだけれど、思い出に残るような色々な経験をさせてもらいました。北海道科学大学高等学校の合唱部とコラボ(2024年12月)してからは、最近のJ-POPもよく聴くようになったよ。3月には札幌でソプラニスタの岡本知高さんと共演し、10月には菊池亮太さんとの2回目となる2台のピアノの演奏もできたし、12人のヴァイオリニストの方たちとも共演もでき、音楽で響き合うことの面白さを実感した。他にも、河口湖の「音楽と森の美術館」での経験が印象に残っていて、美術館のシンボルになっているダリの大きな犀のモニュメントをイメージした曲を作って欲しいと依頼を受けたんだ。下見に行ったとき「子守歌」「ワルツ」「躍動」の3部作をその場で思い付き、一気に書き上げたんです。

――すごい! 2026年はどんな年にしたいですか? 抱負やプランなど教えてください。

色々な場所に出向いて、世界の出来事を感じとり、たくさんの人と出会って音楽を生み出すためのインプットや刺激を増やしていきたい。もっと演奏する機会を増やして、ひとつひとつの演奏の場で、音楽を通じて笑顔や前向きな気持ちを共有する時間を大切にしていきたいです。たくさん曲も出来ているので、それらを丁寧に仕上げていきたいと思っています。

――2026年のツアーは浜離宮朝日ホールからスタートするね。どんな初日をイメージしていますか?

とにかく笑顔満開でスタートしたい! 浜離宮朝日ホールという特別な空間の雰囲気を全身で味わいながら、会場全体がひとつになれる初日にしたいです。大阪は2022年以来久しぶりの公演になるので、4年分の成長を感じてもらえるようなパフォーマンスを届けたいし、仙台は4回目になるけど、新しいホールなのでどんな響きになるのか今からとても楽しみです。同じ会場に呼んでいただけることは当たり前ではないし、本当に嬉しいです。地方での公演ではその土地ごとに毎回新しい出会いがあり、どの公演もその日限りの特別な時間だと感じています。岡本知高さんから「コンサートはご褒美と思っている」と言われたけど、本当にその通り。それまで一生懸命稽古して、コンサートはもう自分が好きなように思うように演奏していい、最後のご褒美なんだと。そのつもりで日々の稽古と本番に臨みます。

――岡本知高さんとは4月4日の札幌公演でも共演されます!

声とピアノで呼吸を合わせながら、一緒に音楽を作っていける時間が今からとても楽しみです。2人でその瞬間にしか生まれない表現を大切に、笑顔で楽しんで演奏したいな。

――コンサート本番は「ご褒美」なんだものね。最後に、ファンの皆さんへの想いを聞かせてください。

いつも支えてくれるファンの皆さんには、心から「ありがとう」を伝えたいです。ライブは僕が一方的に音楽を届ける場ではなく、同じ時間を一緒に過ごす場所だと思っているんだ。僕は写真を撮るのが大好きで、僕が写真を撮るときにはみんな笑顔になってくれる。出来ることなら皆さんの顔を覚えて、本当は写真を撮ったりしながら、もっと近い距離でつながれたら嬉しい。これからも音楽を通して、笑顔の時間を共有していけたらと思います。

取材・文=小田島久恵 撮影=iwa

公演情報

紀平凱成ピアノコンサートツアー2026 『Progression』
 
出演:紀平凱成(ピアノ)
予定曲目:
Down Forest(紀平凱成)
Blue Bossa Station(紀平凱成)
Flyingより (紀平凱成)
White Whisper (紀平凱成)
戦場のメリークリスマス(坂本龍一)
Mirage (オスカー・ピーターソン)
前奏曲より(ラフマニノフ)
8 Concert Etudesより (カプースチン)
※曲目は変更になる場合があります
 
日程・会場
・東京公演 2月15日(日)浜離宮朝日ホール
・大阪公演 3月1日(日)あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール
・宮城公演 3月7日(土)仙台銀行ホール イズミティ21 小ホール
・北海道公演 4月4日(土)札幌コンサートホールKitara 大ホール
スペシャルゲスト:ソプラニスタ岡本知高(北海道公演のみ)
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