yamaとChilli Beans.が語る自然体の美学ーー「ありのままが許されるのは音楽の一つの特権」
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『EXtra SHOT ver.1』
2026年3月30日(月)、東京・EXシアター六本木にて『EXtra SHOT ver.1』が開催される。Jeremy QuartusとBillyrromがマッチアップを果たした『EXtra SHOT ver.0』の開催から約4カ月を経て、EXエンタテインメントが満を持してスタートさせる同イベント。その幕開けを華々しく飾るのは、デビュー5周年を迎え、自身のルーツと対峙するEP『C.U.T』を3月にリリースするyamaと、2月に全4カ所を巡るワンマン&対バンツアーを終えたばかりのChilli Beans.だ。共演経験はあるものの、初めてのツーマンとなる2組。厳かな雰囲気で始まった対談は、開始数分で笑いに満ちたものと相成った。それもそのはず。バンドとソロというかけ離れた場所に属するかのように思える両者には、ある共通点があったのだ。キーワードは自然体。4人は不完全であることを恥じることなく、自らのストロングポイントに変えてしまう強さを備えていたのである。そんなしなやかさの源泉と、バンドとソロ双方の魅力、難しさに迫るインタビューを送る。
■「3人の手が入ることで、それぞれの色を出しながらも統一感のあるパレットになっている」(Maika)
――お2組は2023年に大阪で共演も果たされていますが、ツーマンは今回が初めてということで。まずは、お互いの出会いについて教えてください。
yama:活動を始めた時期も近い(yamaは2020年4月に「春を告げる」をリリース、Chilli Beans.は2021年8月に1stEP『d a n c i n g a l o n e』をリリース)ので自然と楽曲も聴いていましたし、ヴォイス(Chilli Beans.も所属していた音楽塾)づてに噂を聞くこともあって。直接ご挨拶させてもらったのはイベントのタイミングだったんですけど、ずっと近しいところにいるというか、勝手に知り合いのような感覚を抱いていましたね。
Maika(Ba,Vo):それこそ楽曲は存じ上げていましたし、私もヴォイスから話は聞いていたので、yamaさんが言ってくれた状態と本当に同じで。なので、初めてお会いした時は「ご本人だ!」みたいな。
Moto(Vo):そうだね。イベントの時にステッカーを交換したことを、私は凄く覚えていて。その時の雰囲気が柔らかかったので、優しい人なんだなって思ったんです。
yama:あ! 今でもそのステッカーは持ってますよ。3人とも気さくに話しかけてくださったから、とても有難かったなと。
――同じようなキッカケ、近しいタイミングでお互いのことを知ったようですが、それぞれが鳴らしている音楽についてはどのような印象をお持ちですか。
yama:全体的に統一感があって、きちんとカラーリングされている楽曲だと感じています。お客さんもそのブランディングに魅力を感じているんじゃないかなと思いますし、洗練されているなって。
――統一感というのは、コンセプトが一貫しているという意味ですかね?
yama:世界観がブレないというか、パレットの色味が同じだと思うんですよ。急に彩度の高い色が入ってくるんじゃなくて、色のトーンが統一されている。にもかかわらず、きちんと振り幅があって、色味も豊かなのが格好良いですね。
Moto:好きな音楽ジャンルや土台になっているものはそれぞれ違うんですけど、最終的には3人の手が加わって作品になっていくから、何となく同じような雰囲気になるのかな。
Maika:そうだね。私たちは聴いている音楽も違うけれど、共通している部分もいっぱいあって。3人の手が入ることで、それぞれの色を出しながらも統一感のあるパレットになっているんだろうなっていう。
yama:凄く納得できました。というのも、Chilli Beans.の音楽って一つのジャンルに収めるのが難しいくらいの個性があるのにバラバラにならないから、ずっと不思議だったんですよ。でも今のお話を聞いて、3人の好みやエッセンスが混ざっているおかげで唯一無二な音楽が生まれているんだなと思いました。
――それで言うと、Chilli Beans.の皆さんはどのようなバランス感でそれぞれの個性ややりたいことを混ぜ合わせていくんでしょう。
yama:確かに。作品作りの順番や役割は決まっているんですか?
Moto:「こんな曲あるよ」とか、「こういうテーマなら私が向いてそうだね」みたいに、誰か1人が持ってきた発想を、やりやすい方向にそれぞれパスしていますね。
Maika:何となくお互いの得意とする領域があるんですよね。それは担当楽器だったり、「この曲はギターのリフを聴かせたいからLilyが良いね」「この曲はベースを効かせたディスコファンクにしたいから私がやるね」みたいな曲のイメージだったりするんですけど。とにかく3人の得意分野を活かせるようにしています。
――ゴールに向かってベストなスタートを切れるように、分担しながら制作していると。少し話を戻して、Chilli Beans.のお3方にもyamaさんの楽曲の印象を伺いたいのですが、いかがでしょうか。
Moto:スタイリッシュな感じだよね。
Maika:うんうん。大阪のイベントでライブを拝見した時、照明の広がりが印象的だったんですよ。会場にライトが広がっていくのと同時にyamaさんの声が飛んでいく瞬間は神聖な感じで。メロディーもキャッチーで耳に残るし。
Lily(Gt,Vo):声も透き通ってるよね。楽曲ももちろんですけど、ライブを見させてもらって、やっぱり迫力もあるんだなと。
yama:いやぁ、有難いです。それこそ「色のトーンが統一されているのが羨ましい」と話したんですけど、自分もここからは「yamaの音色ってこれだよね」っていうyamaだけの色を統一していきたいんですよ。もちろんポップスが好きで音楽を始めたから、そこをベースにしつつも、音を絞っていくことにも挑戦したい。そういう意味で3月にリリースするEPは、自分のルーツや好きな音楽、やりたいことをやれたんじゃないかなって。
――このタイミングで、yamaさんがやりたいことを追求するモードに入ったキッカケは何だったんですか?
yama:活動を始めたばかりの頃はライブをやったこともなかったですし、インターネットだけで音楽を発信していた分、自我みたいなものがあまり出せていなかったんですよね。でも、活動を続けていくうちに、奥底にある感情がちゃんと浮上してきた。そこでようやく、作品の原動力になるのは、音楽が楽しいとか、心が動くとか、自分のワクワクなんだなと気づいたんですよ。だからこそ今は、そういう気持ちを大事にしようとしていますね。
■「みんなが受け入れてくれるからこそ、自然体を見せていきたい」(yama)
――Chilli Beans.の皆さんも2025年6月に発表したEP『the outside wind』のインタビューで「Chilli Beans.は自分らしくいれる場所だし、その時のモードやワクワクを反映している」といった旨をお話されていたじゃないですか。そういう意味では、yamaさんが話してくださったことと重なる部分もあるのかなと。
Maika:いつも口癖みたいに「自然体が1番」って話をしているので。本当にその通りだなって思います。
yama:そう! 自然体、それが言いたかったんです。ついつい難しく話しちゃったんですけど、端的に言うと心から自然体でいたいんですよ。自分は結構取り繕っちゃうタイプなので、そのままでいれたら最高だなと。
Maika:分かります。ナチュラルでいるのは難しいけどありのままでいたいし、それが許されるのは音楽の一つの特権な気もしますよね。
Moto:でも逆に、取り繕ったり、見せたい姿を貫き通すのも格好良くないですか?
yama:それがなかなか難しいんですよ……。活動当初は一言も喋らずにライブをやったりもしていたんですけど、いつしかファンの方は抜けてる部分も面白がってくれることに気づいたんですよね。この前、ライブ中に転んでしまったんですが、もはや爆笑しながら「やべぇー!」って叫べる自分がいて。そういう取り繕わなさに救われたというか、みんなが受け入れてくれるからこそ、自然体を見せていきたいなと思うんです。
――yamaさんは取り繕ってしまう自分を曝け出している最中とのことでしたけれど、Chilli Beans.の皆さんはいかがでしょうか。こうしてお話をしていると、「自然体が1番」が口癖だというのも嘘じゃないと分かるほどのラフな雰囲気なんですが。
Lily:3人でいると、こうやってふわふわしちゃう(笑)。でも、1人で活動をしていたら全然違ったと思うんです。苦手なところも見せたくない部分もあるし、何でもオープンにできるタイプなわけじゃないから。でも、ここまでの時間で色んな側面を共有しているので、「ここは出しても大丈夫」「誰かが助けてくれる」って安心できるんですよ。
Moto:最初はみんな心を閉じていましたし、私もコミュニケーションがとにかく苦手で。自分の気持ちを上手に伝えられないから、そもそも伝えること自体を諦めてた。でも「こういうことがしたい!」って言ってみたら、それを受け入れてくれる人がいたんです。そうやって話を聞いてくれる人がいるからこそ、自分も耳を傾けたいなって。
――リラックスして話せるような環境に出会えたことが大きかった。
Moto:そう。どうなろうとも自然体でしかいられないことに気づいたんですよね。そうしたら、ナチュラルでいれる場所って素敵だなと思うようになりました。
■「バンドは自分の思い通りにならない部分が面白い」(Lily)
――お2組の共通点として自然体というキーワードも出てきましたが、ここからは両者の違いについて伺わせてください。お相手の作品や活動を見ている中で、自分たちにはないと思う部分や羨ましいと感じる部分はありますか。
Moto:うーん……。私もそういうの(仮面)をしてみたいな。お茶目な部分もお持ちだとは思うんですけど、ミステリアスな雰囲気が伝わるし、楽曲のイメージも分かりやすくなるから、本当に格好良いなと。私も羽とか付けようかな。
yama:あはははは! たまに大変だなって思うこともあるんですけれど、自分にとって(仮面は)心の鎧みたいなもので。私はバンドで活動をしているわけじゃないから、誰かに頼れない。でも、これを付けると自分を強くできる気がするんですよね。
――yamaさんから「バンドで活動をしているわけじゃない」という話もありましたが、この2組の最も異なる部分は演奏形態だと思うんです。yamaさんは2021年の取材で「軽音部にすごく憧れていた」「自分で曲を作ろうと考えたこともあるんですけど、今まで世に出せる作品ができたことがない」と口にしていらっしゃいますけれど、現在ではソングライティングも担当するようになったわけで。そうした中、バンドという形態、生き物を今どのように捉えていらっしゃるのでしょう。
yama:今でもバンドへの憧れはあるんですが、色んなアーティストと関わりを持ったことで、バンドは絶妙なバランスで成り立っているものなんだと改めて実感する機会が増えました。なので正直に言うと、1人で良かったなと思うことも多くなってきたんですよね。というのも、バンドはやっぱり人対人だから、パズルのピースみたいに凸凹がハマらないと難しいじゃないですか。何かあった時に絶対にメンバーと向き合わなきゃいけないし、絶対に切っても切れない関係で。自分はそういう関わり方に耐えれるだろうか?と思うんです。一方で、1人での活動は全部の責任が自分にのしかかる分、どんな失敗も自分のせいにできる安心感もあるなって。
――1人で全てを背負うことは怖くないんですか。
yama:もちろん全然楽なことではないですし、恐怖もあります。でも、それこそさっき話したみたいに、自分の不完全さや完璧じゃない部分が長所になると気付けたことが大きかったのかもしれません。誰かのせいにするっていう選択肢がなくなるから、ありのままの自分を見せるしかない。それを面白がってもらえるからこそ、少しずつ1人で背負うことも怖くなくなってきたんです。
――なるほど。Chilli Beans.の皆さんはもともとシンガーソングライターコースで学んでいた経験をお持ちですが、バンドの魅力はどこにあると思います?
Lily:想定外が起きるところかな。自分の思い通りにならない部分が面白いと思います。もちろん1人で完成させられることの喜びもあるし、それも好きなんですけど、想定外を楽しめる自分が心地良くて。そういう意味では、私にはバンドという形が合っていたのかもなと。
――Lilyさんは元々想定外を楽しめるタイプだったんですかね。
Lily:いや、元々は何でも完璧にやりたい性格だったんですよ。でも、自分の求めているものが、ハッキリと見えているわけではなかった。そういう状況の中で、色んな人の生活や考えていることが入り込んできた結果、「自分の考えは、1個の見方でしかないんだ」ってことに気付いたんです。そうしたら、自分自身に縛られないようになったというか、「この考えも、このアイデアも、この発想も素敵だな」と受け入れられたんですよね。正解は1個じゃないんだなっていう。
Maika:それで言うと、私もバンドをやっていなかったら、もっとガチガチな人間だっただろうなと考えることがあって。そもそもシンガーソングライターを目指していたから、1人で音楽活動をする未来を想像していたし、バンドを組むなんて思いもしていなかった。その意味では、結成自体が予想外なんですよね。でも、Chilli Beans.として活動していくうちに、お互いの持っている譲りたくないポイントを交えることで作品が面白くなっていくんだと学んで。だからこそ逆に、Vaundyだったり、WurtSだったり、1人でやっている人は凄いなと改めて思います。強いなって。
――yamaさんも含め、お1人で活動されているアーティストの方のどの部分に強さを感じるのでしょう。
Maika:例えばライブ前とかも、私は2人がいてくれるからこそ、どんなに緊張していても「よし、行こう!」って思えるんですよ。もし仮に自分だけだったら、果たしてステージに立てるんだろうか?って考えてしまう。それくらい2人に寄りかかっていますし、そうやって頼ること自体をバンド活動から学びました。なので、ソロの方々へのリスペクトは日々増していっています。
Moto:確かに2人がいてくれると、心強いよね。まずは何でも「良いね」とか、「こうしてみようよ!」って言ってくれるから、自己肯定感が上がるというか。もし誰かが「もう無理」ってなっても、代わりに「俺が行く!」って戦ってくれる人がいる。そこに助けられているなと。
yama:褒めていただいて有難い一方、バンドの難しさもあると思うので、逆に自分はバンドで活動している皆さんを凄く尊敬していますね。お互いにないものねだりかもしれないですけれど。ただ、馴染みのトラックメーカーと一緒に制作していく時は、バンドに近しい部分もある気がしていて。それこそ、予想外が起こる面白さも分かりますし、セッションをすることで生まれてくる新しい何かはワクワクするんですよね。
■「面白くなることは確定していると思う」(yama)
――ここまでお互いの共通点や相違点を切り口に、自由であることや人と考えを分かち合うことの面白さについて語り合っていただきましたが、お2組が共演するイベント『EX ENTERTAINMENT presents「EXtra SHOT ver.1」』が3月30日(月)に東京・EXシアター六本木にて開催されます。まずは、お相手のライブのどのような部分を楽しみにされているかを教えてください。
yama:今日のお話からも感じた部分ではあるんですけれど、Chilli Beans.の皆さんはライブでも自然体で演奏されている印象があって。ステージをステップで駆け回っている様子も素敵だなと思いますし、自分も清々しい気持ちになれるというか、前進するためのエネルギーをもらえるような気がするんですよ。だからこそ、そういうライブや熱量に応えられるように、自分も全力を出し切りたいですね。よろしくお願いします!
Maika:(深いお辞儀をしながら)よろしくお願いします……。それこそ、今日こうやってお話をしてからライブを見れるのも楽しみですし、3年前の大阪からどんな風に世界観が変化したのかも気になるなと。
――改めて3月30日(月)の『EXtra SHOT ver.1』は、どのようなライブにしたいですか。
Moto:そうだなぁ……格好良いライブ。
Maika:おぉ、それが1番難しいからね。でも、格好良いライブはしたいよ。
Moto:うん。ライブができることに感謝して、来てくれたみんなが「楽しかった! 気をつけて帰ろ!」って思える日にしたいですね。
yama:この対談の時点で、面白くなることは確定していると思うんで。それこそ、共通のワードとして自然体って言葉も出てきましたけれど、ソロでやっているからか、ツーマンのバトルみたいな雰囲気に馴染み切れない部分も実はあるんですよ。でも、交わることによって、お互いの重力にワーっと引き寄せられる感覚は間違いなくあるから。お互いが楽しい方向に引っ張っていって、お客さんに楽しんでもらえるように頑張りたいなと思います。凄く楽しみです。
取材・文=横堀つばさ
イベント情報
開場 18:00 / 開演 19:00
<出演>
Chilli Beans. / yama
<
1Fスタンディング/2F指定 各¥6,800(税込)
※本公演は1ドリンク制です。入場時にドリンク代として600円をお支払いいただきます。
一般発売:2026年2月21日(土)12:00~
イープラス https://eplus.jp/extra_shot/
関連リンク
■yama オフィシャルサイト https://www.sonymusic.co.jp/artist/yama/