「『UNDERTALE』がずっと大好き」生粋のゲーマーバイオリニスト河合晃太の"再現性"と"生演奏"バランスへのこだわりに、元[Alexandros]庄村聡泰が切り込む
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右からMUSICエンジン主宰・河合晃太、インタビュアー庄村聡泰 撮影=泉健也
敵を倒すも見逃すも、すべてプレイヤー次第の"誰も死ななくていいやさしいRPG"『UNDERTALE』。独特な個性豊かなキャラクター、そしてストーリー性で世界中で支持を得ている、トビー・フォックスによるインディーゲームだ。発売10周年を記念し、2025年9月からフルオーケストラコンサートを開催。追加公演を含め全国11会場を巡ってきたが、4月5日(日)の千葉県文化会館 大ホールを皮切りに、これまでとプログラムを一部変更し『UNDERTALE10th Anniversary Concert FINALE』としてついにフィナーレを迎える。同コンサートを企画から演奏までおこなう「MUSICエンジン」の主宰・河合晃太は、バイオリン/ビオラ奏者として活躍しながら、数時間でクリアしてしまうほど大のゲーム好きだそう。ゲーマーによる作品愛にあふれたコンサートを目撃した元[Alexandros]庄村聡泰が、同じくゲーマーでありドラマーの視点から河合の本質に切り込んでいく。
●今の活動に繋がる"引きこもりゲーマー時代"
左から庄村聡泰、河合晃太
ーー本日は本当に素晴らしい体験を、ありがとうございました。まずは改めて河合さんと『UNDERTALE』との出会いについてお聞かせください。
共演者の方から、「このゲーム楽しいよ」ぐらいな感じで、よく学校とかであるように友人から勧められて、そこからですね。
ーーおもしろすぎて仕事に支障をきたしませんでした?
あ、それはもう『UNDERTALE』に限らずゲームはずっと仕事に支障をきたしてますね(笑)。大好きなので。
ーー河合さんの人生で出会った順番でいうとクラシック、オーケストラという"音楽"、バイオリン/ビオラという"楽器"、そして"ゲーム"、どれが先でしたか?
両親が3歳半か4歳ぐらいから習わせてくれていて、気づいたらバイオリン持たされてたんですよね。その頃からクラシックがすごく好きだったかはわからないんですが。世代的にすごく流行っていたのもあって、同時期にゲームやアニメにも出会っていますね。ゲームをしたいし、アニメも観たいからバイオリンの練習をどうやってサボろうかとよく考えていました。でもバイオリンのことは嫌いではなかったので続けられていて。音楽の道に進みたいというよりは、バイオリンしかできない人間に仕上がっていたので、一般学校に行く選択肢はそもそも持っていませんでした。音大に進学してからは一応真面目にやってて、1年生の間にほぼ全部の単位を取り終えてたんですよね。でも2年生の時にそれまでの色々なものがブレイクしちゃって、引きこもり生活が始まりました。ベッドで寝て、起きたら目の前のパソコンをつけて、ひたすらゲームをやる生活でしたね。1日100歩も歩かないような生活が1~2年続きました。もちろんその間の単位は0なので、実技試験が追試でした。なんとか突破できて卒業はできているんですけど。でも今思えば、人生において引きこもりのゲーマー時期が、今の活動に繋がっているのかな。
ーーその時期はどんなゲームをやっていたんですか?
いわゆるオンラインのMMORPG(大人数同時参加型RPG)っていうやつですね。大学生の頃から6~7年くらいはやってたのかな。そこではギルドの団長をやってまして、社会生活においてはそこで得たものは大きいかもしれないですね。ギルドのルール作りをチャットでやるんですけど、うまい具合の提案の仕方とか、謝罪の方法とかはそこで学びました(笑)。
ーーMUSICエンジンというチームを率いる立場においてはとっても重要ですよね。『UNDERTALE』のみならず他のゲームも河合さんが直接交渉をされているんですよね?
そうですね。ずっと一緒にやってくれている西田さんの力を借りて、オーケストラ化したいゲームの制作者サイドに直接メールを送って、そこから交渉を進めています。
●フルオーケストラ化でのこだわりは「雰囲気をそのままに」
河合晃太
ーーご自身の音楽家、演奏家としての立場からゲームをオーケストラ化するという構想が具体的になっていったきっかけもお聞かせ頂けますか?
今日の公演に参加は叶わなかったのですが、チェリストの大澤久さんとの出会いが大きかったと思います。大澤さんは2012年から、ゲーム音楽をピアノトリオや少人数で演奏する活動をされていて、それを聴いた時に「こうアレンジできるんだ」と感動して。「私だったらこうしたいな」というアイデアを、ゲーマー生活で培われた提案力で徐々に実現させていくことができています。それと私たちが子供のころ、ゲーム音楽自体もものすごく発展していってるんですよね。ファミコンの矩形波からスーパーファミコンになるともっと色々な音がゲーム内で出せるようになってきました。PCエンジンの後期の作品では、ゲーム音楽に生録音の音源が使えるようにもなるんです。本当に恵まれた環境だったなと思っているんですけど、私の実家にはPCエンジンがあって、大好きな『天外魔境』をプレイしていたんです。その音楽を手掛けていたのが、一作目の『ZIRIA』では坂本龍一さん、『II 卍MARU』では久石譲さん、『天外魔境 風雲カブキ伝』では田中公平さん。特に好きなのが『カブキ伝』で、町や通常バトルはピコピコ音なんですけど、フィールドやボス戦になるとフルオーケストラに切り替わって、ゲームのストーリーが大きく動く瞬間と音楽が連動してるんです。ゲーム内で生録音の音源を初体験した『カブキ伝』から受けた影響は大きいですね。
公演の様子
ーー『UNDERTALE』もまさにチップチューン的なピコピコ音やバンドサウンド的な音やフルオーケストラなど、色々な音楽を使い分けたり、混ぜたりしていますよね。そうか、そこと『天外魔境』シリーズで河合さんが受けた影響が繋がっていくんですね。
『UNDERTALE』で使われている音源は基本全て打ち込みだとは思うんですけど、パワーに満ちた素晴らしいメロディラインがたくさんあります。ただコード進行で私が判別できないところがあって、低音帯の細かい動きに至るまで完璧に取れた上でオーケストラ化できているかと言われると、ちょっと自信がない箇所も正直、あります。あとは「もうちょっとこういう流れで進行する方がいいんじゃないかな」と思うところは私なりのアレンジは少しはありつつも、再現性には極力こだわりながらやっています。お越しくださるお客様の中にも多いとは思うのですが、やっぱりゲーム内で聴ける原曲が好きで、その気持ちを持ちつつ「フルオーケストラ化したらこうなりました」というのが、MUSICエンジンのスタンスですね。
ーー譜面は全て河合さんが書かれていると伺ったのですが?
そうですね。サントラがあればそれを、ない場合はなんとか録音して聴きまくり……といった作業です。よく発狂せずにこの膨大な量を書けたなと自分でも不思議なのですが、でもそこまでしたいと思わせてくれるゲームに出会えていること自体が幸せなことですよね。
庄村聡泰、河合晃太
ーー実は自分も大学生の頃、『ファイナルファンタジー』の曲をバンドでコピーして、それをCDにして、みたいな同人活動もしてたんですよ。学年でいうと43歳の代なので、今までのお話もめちゃくちゃ共感しながら聞かせていただいています。
私の一つ上なんですね。私は本当にゲームとアニメに特化した人間なんです。クラシックは未だに作曲家と曲の名前がイコールにならなくても、好きなゲーム作品の音楽は譜面も暗譜できているので、やっぱりクラシックの分野とは根本的に入り方が違っていたのかも知れません。MUSICエンジンは、私が好きだと思った作品の曲を許諾を取った上で演奏している団体です。その活動を続けていく中で出会ったゲームの一つ『UNDERTALE』をキッカケに、徐々に大きな規模で演奏させていただく機会に恵まれて、コンサート以外にも配信など色んな形で演奏させてもらえる機会に恵まれました。その『UNDERTALE』が2025年に発売から10周年を迎えるということで、もっと多くの方にこの素晴らしい楽曲たちを届けたいなと思っています。
●『UNDERTALE』楽曲を生演奏、観客とタマシイ震わす
庄村聡泰、河合晃太
ーー河合さんの思いは自分が感じた『UNDERTALE』のテーマの一つである、「誰も1人にさせない、置き去りにしない」っていうところと共鳴しているなと思いました。強くて温かい思いが、色々な人やところに伝播していますよね。
勧められたその日にやり始めて、次の日の夜中3時には全ルートクリアしていたので、作者のトビー・フォックス(Toby Fox)さんの凄さにただ引っ張られていますね。
ーー実に様々なジャンルの楽曲が聴ける作品でもありますが、特に思い入れの強い楽曲はありますか?
あくまでもゲームの内容があって、その次に音楽があるのだと思っています。確かに色んなジャンルの音楽が鳴っている作品ですが、プレイ中にこれはロックだな、ジャズだな、クラシックだなとか、そういう括りはせずに純粋にプレイを楽しんでいますね。でもそれこそがゲーム音楽の良さだと思っています。ストーリーのBGMとして色んな要素を内在させられるところは、やっぱり魅力ですよね。
ーー『UNDERTALE』のキーワードであるタマシイやケツイについてはいかがですか? 演奏中にそういった思いが燃える瞬間なども多々あるかとは思うのですが。
私自身、その楽曲が流れるシーンを思い浮かべながら演奏していますし、その臨場感は技術というよりは身体全体でアプローチしないと表現できないですね。もちろんそういう場面においてもピシッとスマートに演奏される方もいらっしゃいますが、私はそういう派閥なので(笑)。バイオリンをメインで演奏する人間ではありますけれども庄村さんが演奏するドラムと同様に、熱い楽曲やその音はモーションでも表現したいんですよね。
河合晃太
ーーライブ、コンサートならではの熱が伝わっていく感覚も感じていらっしゃるんですね。やっぱりテンションは上がりますか?
そこはお客様が作ってくださる空気が何よりだと思っています。 満席か否かという話ではなく、その作品が好きで来てくれてるお客様の空気感。昨今は色々なコンテンツのコンサートやアトラクションがあり、生でも配信でも、色んなものが色んな形で体験できます。そんな中で、私たちのために時間を費やしてきてくださる方の集中力や緊張感は、こちらのテンションも否応なしに引き上げられますよね。もう、その熱量があるおかげで本番はリハーサルの3、4段階くらい上がった状態で演奏できている感覚があります。
ーー今日の公演でも、自分がまさにそうだったんですが泣きながら観ているお客さんもいたと思います。繰り返しになりますが、本当に素晴らしい体験でした。
すすり泣いてくださっている音とか、お客様の様々なリアクションはこちら側にもちゃんと伝わるんですよね。だからこそ、とにかくそれに応えられるように、「次の曲、その次の曲で、もっともっといいものを出そう」と思いながら演奏しています。
公演の様子
ーーその感情の相互交通こそまさにライブですよね。音源を聴くだけでは絶対に味わえない感覚です。
そうですね。音楽以外に私のアクションや作ってくださったハートのオブジェの映像演出、お客様のリアクションを含めての空気感には、やはり毎公演特別なものを感じることができています。
●「人間が演奏するようにできている」ゲーム音楽に導かれ
庄村聡泰、河合晃太
ーーセットリストやコンサートでしか聴けない河合さん独自のインタールードですとか、そういったプログラムの組み方についてはどのように取り組んでいらっしゃいますか?
基本的にはまずそのゲームが好きで、そのゲームで流れる音楽が好きです。その順番が前提としてあるので、ちゃんとした理由がない限りは極力ゲームのストーリーラインに沿ったプログラムを心がけています。そしてその表現活動はゲームを作った原作者がいるからこそでもあるので、そこへのリスペクトは絶対に忘れないコンサートにしたいと思っています。
ーー逆にオーケストラ化する上で苦労した楽曲などもありましたか?
ゲームのBGM特有のノイジーなSEだったり、効果音が入っている楽曲だったりを、どうオーケストラに落とし込むかという悩みは常にありますね。無理にそのまま演奏するとチープになってしまうこともあるので。あとは私は編曲のプロでもないですし、特に打楽器については専門外な部分でもあるので、リズム面についてはドラマーやパーカッショニストに曲や譜面を渡して「原曲聴いてカッコよくしてください!」なんてざっくりしたオーダーを出してしまっています(笑)。でもちゃんとカッコ良くしてくれるんですよね。ありがたいです。
ーー極力同期音源に頼らず、人力の、手弾きによる体温が感じられる演奏であったことも非常にライブ感を味わえたポイントでした。
MUSICエンジンで演奏した作品の楽曲全てがたまたま、人間が演奏するようにできていたので、そこは不思議なところですね。私が好きな作品は、ゲームのストーリーとBGMが連動してるので、音楽だけでも大体の起承転結が成立してるんです。なのでそれをできるだけ忠実に、素直にオーケストラ化してみたらいつの間にか素敵になるという。ゲームの作者と、ゲーム音楽の作曲家のエネルギーが作品にそのまま乗っかっているんでしょうね。
ーーその感覚をフルオーケストラという、ゲームをプレイすることとはまた違った体験で作品の魅力を伝播させていくという河合さんの思いもそのまま乗っかっていたと思います。自分が思う『UNDERTALE』の魅力って、伏線回収のうまさだと思っているんですよね。ストーリーもさることながら、音楽でも同じメロディやフレーズが実は色んな場面に散りばめられていて。なのでこうしてストーリーラインに沿って一つのコンサートとしてそれを体験してみると、音楽でも一つのストーリーラインを形成しているというか、壮大な一つの組曲を聴いているような感覚でした。
そうですよね。クオリティがえげつないです。トビー・フォックスさんがおっしゃるには、実は劇中の音楽に独立しているものがなくて、全部が繋がるように作られているみたいなんです。だからこそ、アレンジのやりようも実はいくらでもあって、そのバランス感覚は難しかったですね。悩みつつも自分なりのアレンジで、極力再現性にこだわった形が今日聴いていただいたものになります。
ーー最後になりますが、本公演は今後ツアーのような形で全国を回られるご予定となっております。楽しみにされている方も多いと思いますので、そんなお客さんに改めてメッセージをお願いします。
発売から10周年を超えた作品ですし、私も『UNDERTALE』がずっと大好きですし、来てくださるお客様も『UNDERTALE』のことが本当にずっと大好きだと思います。その期待に応えられるように常にアップグレードを心がけながら、音に思いを込めて、1公演1公演を大切に演奏したいですね。公演後、お客様に「来て良かった」と思っていただける音を出せるように、お客様の記憶に残る音を出せるように、頑張りたいと思います。
庄村聡泰、河合晃太
取材・文=庄村聡泰 撮影=泉健也
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公演情報
出演: MUSICエンジン
公演日程・会場:2026年
・千葉 4月5日(日)千葉県文化会館 大ホール
・静岡 5月2日(土)三島市民文化会館 大ホール
・大阪 5月4日(月・祝) NHK大阪ホール
5月5日(火・祝) NHK大阪ホール
・愛知 5月24日(日)豊田市民文化会館 大ホール
・東京 5月29日(金)SGCホール(有明)
※演奏曲目など、詳細は公式サイトをご覧ください。
※上演時間=2時間30分予定(休憩あり)
※ピクチャー
SS席 11,000円 / S席 10,000円 / A席 9,000円 / 学生
*全席指定・税込み。
*特典付きSS席はピクチャー
*未就学児のご入場はご遠慮願います。
*お席の場所によりましては舞台・映像・演出の一部が見えづらい場合がございます。
*出演者及び公演スケジュール、演奏プログラムは予告なく変更となる場合がございます。
*
*ご入場の際に本人確認書類等をご提示いただく場合がございます。
*
*学生券/当日引換券は公演当日現在、小中高等学校、大学、及び専門学校に在籍中の方のみご購入いただける
学生券は他席種(SS席/S席/A席)との連席購入は出来かねます、予めご了承ください。
*ご購入時、
*公演当日、劇場内の模様を撮影し、放送・配信・複製頒布等する場合がございます。
*未成年者は、必ず保護者の方の同意の上
*車いすでご来場予定のお客様は、事前に公演事務局(0570-200-114/12:00~17:00 土日祝除く)までお問い合わせのうえご来場ください。(静岡公演・愛知公演のみ、別途車いす席の販売予定がございます。詳細は各公演お問い合わせ窓口へお問い合わせください。)
【静岡公演】静岡朝日テレビ イベントプロデュース部
054-251-3302(月~金 10時~17時30分 ただし祝日は除く)
【愛知公演】メ~テレ 052-331-9966 (平日10:00~18:00)
企画・制作: MUSICエンジン
協力: ハチノヨン (8-4)
Special Thanks Toby Fox / Fangamer
主催: UNDERTALE 10th Anniversary Concert 製作委員会(東京・千葉・大阪)/
メ~テレ(愛知)/静岡朝日テレビ(静岡)