DNA GAINZ、削ぎ落としたアンサンブルが映し出す衒いのない生活。「みんなで伝説を作っていきましょう」 自主企画『UPBEAT ECHO!!!!』オフィシャルレポート

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DNA GAINZ

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DNA GAINZが3月25日に下北沢SHELTERにて開催した自主企画『UPBEAT ECHO!!!!』のオフィシャルレポートが到着した。


今、最もビラを配っているバンドと言っても大袈裟ではないオルタナティブロックバンド・DNA GAINZ。1カ月もの間、毎日都内のライブハウスへ挨拶回りを行い、目と目を合わせた愚直なコミュニケーションを交わしてきた4人が、2026年3月25日(水)に自主企画『UPBEAT ECHO!!!!』を開催した。

5thシングル「HEARTBEAT」を携え、2025年4月に開催したツアー『発展土壌』、6thシングル「utopia night」を引っ提げ、同年8月に繰り広げたツアー『風に乗った笑い声』同様、東京・下北沢SHELTERにて行われたこのイベント。ゲストにHammer Head Sharkを招いたこの日、彼らは幾倍にも増加したオーディエンスの前で、ロックバンドとしての成熟を示してみせた。

その深化を如実に表していたのが、殊更ソリッドになった音像だ。元来、彼らは天国や地獄、その狭間で苦心する人間たちを捉えてきた楽団であり、ある種の宗教的な側面を孕んだ世界を具象化するために、必然としてそのサウンドスケープは雄大なものであった。しかし、Hammer Head Sharkとの対談動画にて宏武(Dr)が「むやみに大きい音を出す必要はないと気付いた」という旨を語っている通り、やたらとフルテンにするのではなく、明確に音域を棲み分けることによって、メンバーそれぞれが鳴らす音符の輪郭を鮮明にしたのである。

例えば、ひゅるりと吹き始めた口笛で青くフロアを色づけた「ラフラブ」では、サビを導くイタガキ タツヤ(Gt)のプレイングが際立ち、「みんなで歌える曲です」と披露した「淡々燦」では、さっぱりと継ぎ足されるはだいぶき(Ba)のベースラインが浮上。従来のDNA GAINZが保持していた血沸くビートや、「PARADISE HELL」を代表とするどこでも快哉を叫べるテンション感は維持しつつも、4人に配られた楽譜がひと際明瞭になっていく。要するに、現在のDNA GAINZは自らの演奏と対峙し直すことで、各々のキャラクターを再度確立するフェーズにあるのだろう。パッションに軸足を置いていると思い込んでいたながたなをや(Vo,Gt)のロングトーンにスキルフルなこぶしやビブラートを見出したり、編まれる和声の緻密さに気づけたりするのも、この再構築があったからだ。

と、ここでハッとする。「HEARTBEAT」をはじめ、近年の作品群において切り込み隊長を務めてきたエレクトリカルな楽曲がすっかり鳴りを潜めているではないか。確かに、「明日でバンドを初めて4年。どんどん深いところへ更新していきましょう」と、投下した「utopia night」の咆哮までをルーパーに取り込んでいく筆法は変わらない。しかし、ボイスチェンジャーで加工された歌声は、飛び道具的な役割を担うわけではなく、あくまでもアンサンブルが内包する切迫感へスポットを当てるための照明係になっている。引き算で整頓された基盤を引き立たせるためのスパイスとして、電子的な音色の数々が用いられているのである。

こうした変化のバックグラウンドを指し示してくれたのが、細やかなハイハットと次第にボリュームを増した歌唱が牽引した「バラード」から新曲「ずっと旅」を結んだ終盤戦だった。季節から季節へワープしていくみたいな暮らしと<思い出を集めていく>だと思われる1節をしたためたこの歌は、旅を主題に置くことによって、逆説的に帰ってくるコロニーの在処を強調。上京をキッカケに1度はホームを見失ってしまった彼らが、いくつもの企画やファンとの会話を積み重ね、新天地をユートピアに変えんともがいてきた道のりを可視化していく。つまり、天地とキラキラなんてしていない街々をパッケージングしてきたDNA GAINZは、ようやく家という新たなピースを当て嵌めることができるようになったのではないか。

アンコールで演奏された新曲は、この仮説がまんざら間違いではないと告げていたはず。なんせ、コーラスがかった旋律で扉を開く同曲がフォーカスしているのは、高架下の街中華を想像させる麻婆豆腐なのだから。彼らのポートフォリオを眺めても、ここまで具体的な名詞が飛び出してくる日記めいたトラックはなかっただろう。にもかかわらず、サンダルとくたくたのジャージで出かける生活感を宿したナンバーを書き記すことができたのは、4人が半径数メートルの営みを愛せるようになったゆえに違いない。どこか夢見がちなマクロの世界だけじゃなく、数千円を握りしめる眼前の現実を愛おしく思えるようになったためにほかならない。ここまでの取材やMCで語ってきたように、地元である島根を離れた彼らは都市の冷たさばかりに囚われていた。しかし、今はもう違う。どこに住処にしようとも変わらない人の優しさがあり、素朴な日常にこそ真に求めていた体温が通っている。そう知ったDNA GAINZは、新たな居場所をようやくメロディーに翻訳できたのだ。

こうして終幕を迎えた『UPBEAT ECHO!!!!』。エンディングテーマに選ばれた「GOLD HUMAN」の最中、あたかも怪しげな会合を思わせるほどに飛び交った「DNA GAINZ!」のコールは、彼らのミュージックが少しずつ拡大している事実の裏付けだっただろう。「みんなで伝説を作っていきましょう」。こんな約束を実現するために必要だったのは、天から地底までを飛び回るどデカい音だけじゃなかった。リアルを見据え、地を踏みしめた彼らは、改めて飾らない365日と生命を綴っていく。

取材・文=横堀つばさ 撮影=稲垣 瑠里子

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