「人間って、難しい」平間壮一×真瀬はるかが語る、『無伴奏ソナタ-The Musical-』の“人間らしさ”

2026.5.12
インタビュー
舞台

左から 平間壮一、真瀬はるか

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天才音楽家の人生を通して、人間の本質に迫る『無伴奏ソナタ -The Musical-』が再演を迎える。

前回公演からクリスチャン役を演じる平間壮一と、新たにオリビア役として出演する真瀬はるかは、実は約10年前に一度共演している間柄。本作で再会を果たした二人に、作品の魅力はもちろん、“人間らしさ”とは何か、そして俳優として表現と向き合う日々について語ってもらった。

【ストーリー】
すべての人間の職業が、幼児期のテストで決定される時代。 クリスチャン・ハロルドセンは生後6ヶ月のテストでリズムと音感に優れた才能を示し、2歳のテストで音楽の神童と認定された。そして、両親と別れて、森の中の一軒家に移り住む。そこで自分の音楽を作り、演奏すること。それが彼に与えられた仕事だった。彼は「メイカー」となったのだ、メイカーは既成の音楽を聞くことも、他人と接することも、禁じられていた。 ところが、彼が30歳になったある日、見知らぬ男が森の中から現れた。男はクリスチャンにレコーダーを差し出して、言った。 「これを聴いてくれ。バッハの音楽だ……」


時を経て再会した二人

――お二人は今回が初共演なのでしょうか?

真瀬:実は、2014年のミュージカル『オーシャンズ11』で共演しているんです。

平間:僕は大阪公演だけの出演だったんですよね。当時は稽古で一気に詰め込んで舞台に立っていたので、自分のことでいっぱいいっぱいでした。なので、時を経てまたご一緒できるのがとても嬉しいです。

真瀬:振り返ってみると、シャカリキ踊っているすごい人がいたのを覚えています!

平間:あのときの僕は、自分のことを役者だと思っていなかったんです。まずはとにかくダンスを踊って、役をもらえるようにと必死に頑張っていました。

真瀬:そのときから役者を目指していたんですか?

平間:いや、当時はただ目立ちたかっただけなんです(笑)。いつからか機会をいただくようになって、しっかりやらなきゃと、役者としての自覚を持つようになっていきました。でも、正直今でも芝居や歌は怖いんです。そもそも、最初は喋りたくないからダンスをやっていたんですもん。


真瀬:怖いという気持ちはわかります。『オーシャンズ11』は、私にとっては宝塚を退団したあとの最初の舞台復帰作だったんです。退団したときに「もう舞台には立たない」と決めていたのですが、演出の小池(修一郎)先生が声をかけてくださり、舞台に戻ることになったんです。

久しぶりに板の上に立ったとき「ああ、やっぱり私は舞台をやりたかったんだ」と気付くことができました。それ以来ずっと舞台を続けてきましたが、その中でも何度も挫折を味わって、その度に「自分に俳優は向いていないのかな」と思うことも。それでもやっぱり戻ってきちゃうんですよね。『無伴奏ソナタ』でも、クリスチャンは何度も大切な音楽を奪われてしまうのですが、結局は音楽に引き戻されてしまいます。そんなクリスチャンの姿と自分に、共通するものを感じました。

「天才俳優」と「歌の人」〜互いに感じた魅力〜

――真瀬さんから見た、平間さんの印象を教えてください。

真瀬:私的には、平間さんは天才俳優! 「俺は芝居で生きていくんだ」というイメージでした。きっとものすごく努力をされたり、緻密に台本を読んだりしていらっしゃると思うのですが、板の上に立っているときはすごく役に入り込んでいるんです。まさに、天才音楽家のクリスチャンという役にピッタリだなあと思いました。

平間:全然そんな人じゃないですから(笑)。ただの変な人です(笑)。

真瀬:いや、それだったら負けませんよ! 私も変な人なので(笑)。

――平間さんから見た、真瀬さんの印象はいかがですか?

平間:歌! 歌の人という印象が強いですね。

真瀬:本当ですか?

平間:はい、本当に歌が素敵で。だから今回その歌声を聞けるのが嬉しいですし、クリスチャンとオリビアとして一緒にお芝居できるのが何より楽しみです。

真瀬:「歌の人」とおっしゃってくださいましたが、私もお芝居は好きなんです。だから今回、平間さんとお芝居できるのをとっても楽しみにしています。

家族でも恋人でもない、クリスチャンとオリビアの関係性

――本作は2年前に上演され、今回は再演となります。こんなにすぐ再演があると思っていましたか?

平間:「再演したいね」という話はしていました。千穐楽が近づくにつれて、やるなら早くやりたいなと僕は思っていたんです。時間が空いてからまたあの辛さに戻ってくるのが怖くて。でも、今思うと2年という期間があって良かったなと思います。2年分の経験を積んで、いろんな人に出会って、世界の状況も変わってきました。その上でこの作品をやったときに、ただ辛いだけじゃないかもしれないなと思えるようになったんです。

真瀬:2年という月日が経ったからこそ、私は出演できるという奇跡なわけで。前回公演のとき、私は『ゴースト&レディ』に出演していたのですが、周りから『無伴奏ソナタ』の評判を聞いていたんです。「絶対に真瀬が好きなタイプの芝居だから観たほうがいい」と。当日券を探して観ようとしていたのですが、残念ながら仕事が入ってしまって……。それくらい当時から気になっていた作品だったので、お話をいただいたときは「アレでしょう」と(笑)。ご縁があると直感して、ぜひやらせていただきたいと思いました。前回公演のオリビアは、私が大尊敬している宝塚の先輩の霧矢(大夢)さんが演じていらっしゃいました。プレッシャーもありますが、私のオリビアを作っていけたらいいなと思います。

――クリスチャンとオリビアは、何とも言えない不思議な関係性ですよね。二人の関係をどう捉えていますか?

平間:クリスチャンとしては、それこそ母親の温もりのような安心感もあり、同時に恋人に抱くようなキュンキュンした感情にもなり、でもそれが一体何なのかはわからない。ただただ一番近くにいてくれた、大事な人だと思います。クリスチャンは幼い頃から家族と離れて音楽を作る生活をしてきたので、家族というものを知らないんです。ただ、自分の心が動く人はこの人(オリビア)だな、ということだけは感じていて。物語が進むにつれていろんな人と関わっていく中で、「みんなが言う家族って、この人のことだったんだなあ」と気付いていくんだと思います。

真瀬:平間さんがおっしゃるように、母親とか恋人とか、簡単に区切ることができない絆があるのだと思います。だから、何よりもその心の繋がりを大切に演じていかなきゃいけないな、と考えています。彼らの絆を場面場面で見せていくことになるので、まずはカボチャのスープ(クリスチャンの大好物)をたくさん作って練習しようと思います! 実際に作るシーンは出てこないんですけどね(笑)。

“人間らしさ”の塊のような作品

――『無伴奏ソナタ』という作品を通して、“人間らしさ”の観点からどんなメッセージを受け取りましたか?

平間:僕個人としては、人間のひどさみたいなものを受け入れられる人間になりたいな、と思いました。何かひどいことがあったときに、ただ苛立ったりムカついたりするんじゃなくて、「人間ってそういうところもあるよね」と当たり前のように思えるようになりたい。その上でどうするかが大事なわけで。この作品を通して、人間誰しも間違えることは絶対にあるよね、と思えるようになりました。

真瀬:私はこの作品から、旧約聖書のアダムとイヴのお話を連想したんです。楽園にいるときの彼らは何も知らなくて、ピュアで真っ白。でも禁断の果実を食べることで、もしかして私たちが裸なのはおかしいんじゃないかと気付く。クリスチャンにとっては、バッハの「無伴奏ソナタ」が禁断の果実で、それをきっかけに自分の作ってきた音楽に対して疑問を抱いたり、欲が出てきたりする。

それこそが、我々人間なんだと思うんです。例えば、ダメだとわかっていても、このくらいいいか、とやってしまうことがあるじゃないですか。それってすごく人間らしいですよね。そもそも演劇をやってそれを観ること自体、人間しかやらないことです。劇場の中の人間らしさが溢れる空間を、みんなでシェアできたら面白いんじゃないかなあ。人間をいろんな角度から描いた、人間らしさの塊のような作品だと思います。

平間:人間って、難しいですねえ。

真瀬:本当、人間って難しい!

役と共に生きている二人

――お二人とも様々な作品にご出演されていますが、作品や役の切り替えはすぐにできるタイプですか?

平間:場所と人が変われば、自分も変わる感じですね。でも、考えにハマって抜け出せなくなることはあります。『無伴奏ソナタ』だったら、「みんな幸せだったらいいのにと思うけれど、幸せを求めるからこそ悪いことも起きてしまって……」みたいなことがずっと頭の中でループして、苦しくなっちゃうんです。

真瀬:稽古を終えて家に帰っても、役が抜けないタイプ?

平間:いや〜、僕そういう人苦手なんですよ。なのに、自分がそうなっちゃっているらしいです(笑)。役は抜けているつもりなんですけど、つい考えちゃうんですよね。

真瀬:それは私も一緒かも。役は抜けても、頭の中のどこかでずっと作品のことを考えている気がします。不思議なことに、今の自分の人生のタイミングにすごくフィットする役に呼ばれている感覚がいつもあるんです。だから、日常と切り離せないくらい考えざるを得ないというか。そこに俳優という仕事の面白さがある気がするんですよね。

――お二人とも、役と共に生きていらっしゃるんですね。最後に、今回の公演で楽しみにしていることを教えてください。

真瀬:今回オリビアという役を演じるにあたって、「なぜ私がこの作品に呼ばれたのか」を探しに行く“真瀬はるかとしての旅路”が楽しみですね。もうひとつ、私はオリビア以外の役も演じるのですが、音痴なキャラクターを演じるシーンがあるのでそれも楽しみなんです。どデカい歌声で盛大に音を外したいと思います(笑)。お楽しみに!

平間:再演からキャストが変わるので、それが本当に楽しみです。あと、演出の成井(豊)さんが稽古中に沢山笑ってくれるんですよ。だから稽古自体もすごく楽しいんです。前回は、キャラメルボックスさんの舞台版から新たにミュージカル版を作る過程に時間をかけてきました。今回はそのときに作った土台があるので、最初からお芝居に全集中して臨みたいと思います。

取材・文=松村蘭(らんねえ) 撮影=福岡諒祠

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公演情報

『無伴奏ソナタ -The Musical-』
 
【原作】 オースン・スコット・カード 【翻訳】 金子 司
【脚本・演出・作詞】 成井 豊 【音楽】 杉本雄治
 
【出演】
平間壮一  多田直人(キャラメルボックス) 真瀬はるか  熊谷彩春  長江崚行  / 西川大貴 /
畑中智行(キャラメルボックス) 原田樹里(キャラメルボックス) 大久保祥太郎  西野 誠  町屋美咲
 
【東京公演】 2026年7月17日(金)~7月26日(日)サンシャイン劇場
【大阪公演】 2026年8月8日(土)~8月9日(日)クールジャパンパーク大阪 WW ホール 
 
企画・製作:ナッポスユナイテッド AMUSE CREATIVE STUDIO
 
【公演オフィシャルサイト】 https://napposunited.com/sonatathemusical2026
【公演オフィシャルX】@mubansoumusical
 
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